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第一章 中盤
第68話:式典
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冒険者ギルドでのやり取りから三日後、オレたちは『月下の騎士』授与の式典に出席するため、王城内の待合室に来ていた。
「コウガ様! どうでしょうか!」
部屋の扉が開いたかと思うとドレス姿に着替えたリルラが駆け込んできて、いつものようにオレの腰に抱きついてきた。
「リルラ。すこし離れてくれないと見れないよ?」
オレがそう言って軽く頭を撫でてあげると、嬉しそうにはにかんですこし距離を取った。
リルラは可愛いフリルのついたグリーンのドレスに身を包み、髪をリボンで束ねていてまるで貴族のご令嬢のような姿だった。
いつも可愛いリルラだが、今日の姿はいつもより五割増しで可愛い。
そしてスカートの両端をつまんで片足を後ろに引くと、軽く膝を曲げて挨拶をしてくれた。たしかカーテシーというやつだ。
「コウガ様。挨拶の仕方はおかしくありませんか?」
先日王城に呼ばれた際に作法などはあらかじめ教えて貰っていたのだが、まだちょっとぎこちなさが残っている。
だけど、それがまた初々しくて可愛いらしく感じさせた。
「ちょっとぎこちないけど、ちゃんと出来てると思うよ。そのドレスもよく似合ってる」
そう言葉を返すと、リルラは顔を真っ赤にして嬉しそうにはにかんだ。その姿がまた輪をかけて可愛いのだが、決して年齢のことを思い出してはいけない。
そんなやり取りをしていると、今度はリリーとルルーが部屋に戻ってきた。
「こ、コウガ。どうでしょうか? ……にゃ」
「これ……ちょっと動きにくい………にゃ」
ちょっと見違えた。
そこにはまるで、どこかの国のお姫様のような二人の姿があった。
二人とも純白のドレスに身を包み、すこし恥ずかしそうな表情を浮かべている。いつもの凛とした姿と違ってとても可愛らしく、それでいて綺麗で、少女から大人へと変わりつつある今だけの魅力を纏っていた。
リリーはレースが施されたすこしふっくらとしたデザインのドレスに、宝石が散りばめられたカチューシャがとても良く似合っている。
それに対してルルーのドレスはスタイルを強調するような細身のドレスで、首のチョーカーと相まってすこし艶っぽい印象を与え、こちらもまたとても良く似合っていた。
「ちょっと見惚れてしまったよ。いつもスタイリッシュな服装が多いから……その……二人ともすごく似合ってる」
ちょっといつもと違って照れてしまうな。
なかなか面と向かって褒めようと思うと、言葉が出てこない。
「コウガ様もとてもカッコいいですよ! 王子様みたいです!」
「はは。王子様って……こんな田舎者つかまえてやめてくれよ」
その言葉に思わず苦笑してしまう。
ハイエルフがみんなそうなのかはわからないが、リルラはいつも自分に正直で素直だ。
でもね……オレは深き森の名もなき村で育ったとびっきりの田舎者の少年なんだ。
前世の記憶があるおかげで、そこまで野暮ったくないとは思っているが、それでもただの冒険者だ。
ジルのお陰で能力はあがったが、その本質は変わらないし、こんな貴族様の着るような衣装は似合わないし息が詰まる。
「そんな事ない……そういう姿も悪くない……にゃ」
「なんなら普段着はその格好でも良い……にゃ」
「まぁ! いいですね! コウガ様、こういう服を何着か揃えましょう♪」
「いやいやいや! ないから! 普段からこんな服装で過ごすとか絶対ないから!」
そんな風に賑やかにしていると、扉をノックする音が部屋に響いた。
「はい! どうぞ!」
話題を変える助けが来たので慌てて返事をする。
「失礼いたします。『恒久の転生竜』の皆様。式典がもうすぐ始まりますが、ご準備の方はお済みでしょうか?」
入ってきたのはメイドさん。いよいよ式典が始まるようだ。
今さらながらに、ちょっと緊張してきた……。
「は、はい。もう着替えも終わりましたし大丈夫です!」
「それでは会場にご案内いたします」
いよいよ式典が始まる!
オレたちは視線を交わすと、みんなで部屋を出たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一〇分ほど歩くと会場となる大広間へとたどり着いた。
そこには大勢の人の気配があった。
会場がわずかに覗けるこの位置で、しばらく待つようだ。
数百人は入りそうな大理石の大きな広間に、色とりどりの花が飾られ音楽が奏でられている。
本格的な演奏を聴くのはこの世界に生まれてから始めてかもしれない。
そして広間では、既に大勢の貴族と思われる人たちが思い思いの飲み物を片手に歓談し、式典が始まるのを待っていた。
この世界での一般的な式典というのがどういったものかわからないが、今回はパーティーを催し、その中で執り行うような形式になっているそうだ。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました」
執事のような出で立ちの男が進行役のようで、その声を合図に式典は進められていく。
そのままつつがなく執り行われ、ほどなくしてまだ入場していなかった上級貴族である公爵家と王族の入場が行われた。
会場には割れんばかりの拍手が響き渡り、国王様が指定の位置に着いてもしばらく鳴りやむことはなかった。
そして……とうとうオレたち『恒久の転生竜』が入場する番が回ってきた。
「どうぞ、そのまま真っすぐにお進みください」
緊張して躊躇していると、ここまで案内してくれたメイドさんが声をかけてくれた。
「は、はい!」
オレたちは王様たちが入場したのとはまた別の扉から入場し、進行役の男の指示に従い進んで行く。
すると、示し合わせたように大きな拍手が起こったのだが、ある一角にいる人たちだけは拍手をする様子がなく、鋭い視線をこちらに向けていた。
あらかじめ話を聞いてはいたのだが、オレたちに『月下の騎士』の称号が授与されるのを快く思わない人たちがいるそうだ。
こういう人たちが一定数いるのはわかっていたことだし、そのまま気にせずに指定された位置、国王様の前まで歩みを進めていこうとしたのだが……一人の男がオレたちの前に立ち塞がった。
身長二メートルを超えるその巨漢の男は、たしか公爵家の現当主だったはずだ。
反感を抱いているとは聞いていたが、まさか行動を起こすとは思っていなかった。
「実力の無い者どもに名誉ある『月下の騎士』を与えることは出来ぬ! まずはその強さをここで示せ!」
はぁ……何か面倒くさい展開になりそうだ……。
「コウガ様! どうでしょうか!」
部屋の扉が開いたかと思うとドレス姿に着替えたリルラが駆け込んできて、いつものようにオレの腰に抱きついてきた。
「リルラ。すこし離れてくれないと見れないよ?」
オレがそう言って軽く頭を撫でてあげると、嬉しそうにはにかんですこし距離を取った。
リルラは可愛いフリルのついたグリーンのドレスに身を包み、髪をリボンで束ねていてまるで貴族のご令嬢のような姿だった。
いつも可愛いリルラだが、今日の姿はいつもより五割増しで可愛い。
そしてスカートの両端をつまんで片足を後ろに引くと、軽く膝を曲げて挨拶をしてくれた。たしかカーテシーというやつだ。
「コウガ様。挨拶の仕方はおかしくありませんか?」
先日王城に呼ばれた際に作法などはあらかじめ教えて貰っていたのだが、まだちょっとぎこちなさが残っている。
だけど、それがまた初々しくて可愛いらしく感じさせた。
「ちょっとぎこちないけど、ちゃんと出来てると思うよ。そのドレスもよく似合ってる」
そう言葉を返すと、リルラは顔を真っ赤にして嬉しそうにはにかんだ。その姿がまた輪をかけて可愛いのだが、決して年齢のことを思い出してはいけない。
そんなやり取りをしていると、今度はリリーとルルーが部屋に戻ってきた。
「こ、コウガ。どうでしょうか? ……にゃ」
「これ……ちょっと動きにくい………にゃ」
ちょっと見違えた。
そこにはまるで、どこかの国のお姫様のような二人の姿があった。
二人とも純白のドレスに身を包み、すこし恥ずかしそうな表情を浮かべている。いつもの凛とした姿と違ってとても可愛らしく、それでいて綺麗で、少女から大人へと変わりつつある今だけの魅力を纏っていた。
リリーはレースが施されたすこしふっくらとしたデザインのドレスに、宝石が散りばめられたカチューシャがとても良く似合っている。
それに対してルルーのドレスはスタイルを強調するような細身のドレスで、首のチョーカーと相まってすこし艶っぽい印象を与え、こちらもまたとても良く似合っていた。
「ちょっと見惚れてしまったよ。いつもスタイリッシュな服装が多いから……その……二人ともすごく似合ってる」
ちょっといつもと違って照れてしまうな。
なかなか面と向かって褒めようと思うと、言葉が出てこない。
「コウガ様もとてもカッコいいですよ! 王子様みたいです!」
「はは。王子様って……こんな田舎者つかまえてやめてくれよ」
その言葉に思わず苦笑してしまう。
ハイエルフがみんなそうなのかはわからないが、リルラはいつも自分に正直で素直だ。
でもね……オレは深き森の名もなき村で育ったとびっきりの田舎者の少年なんだ。
前世の記憶があるおかげで、そこまで野暮ったくないとは思っているが、それでもただの冒険者だ。
ジルのお陰で能力はあがったが、その本質は変わらないし、こんな貴族様の着るような衣装は似合わないし息が詰まる。
「そんな事ない……そういう姿も悪くない……にゃ」
「なんなら普段着はその格好でも良い……にゃ」
「まぁ! いいですね! コウガ様、こういう服を何着か揃えましょう♪」
「いやいやいや! ないから! 普段からこんな服装で過ごすとか絶対ないから!」
そんな風に賑やかにしていると、扉をノックする音が部屋に響いた。
「はい! どうぞ!」
話題を変える助けが来たので慌てて返事をする。
「失礼いたします。『恒久の転生竜』の皆様。式典がもうすぐ始まりますが、ご準備の方はお済みでしょうか?」
入ってきたのはメイドさん。いよいよ式典が始まるようだ。
今さらながらに、ちょっと緊張してきた……。
「は、はい。もう着替えも終わりましたし大丈夫です!」
「それでは会場にご案内いたします」
いよいよ式典が始まる!
オレたちは視線を交わすと、みんなで部屋を出たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一〇分ほど歩くと会場となる大広間へとたどり着いた。
そこには大勢の人の気配があった。
会場がわずかに覗けるこの位置で、しばらく待つようだ。
数百人は入りそうな大理石の大きな広間に、色とりどりの花が飾られ音楽が奏でられている。
本格的な演奏を聴くのはこの世界に生まれてから始めてかもしれない。
そして広間では、既に大勢の貴族と思われる人たちが思い思いの飲み物を片手に歓談し、式典が始まるのを待っていた。
この世界での一般的な式典というのがどういったものかわからないが、今回はパーティーを催し、その中で執り行うような形式になっているそうだ。
「皆様、大変長らくお待たせいたしました」
執事のような出で立ちの男が進行役のようで、その声を合図に式典は進められていく。
そのままつつがなく執り行われ、ほどなくしてまだ入場していなかった上級貴族である公爵家と王族の入場が行われた。
会場には割れんばかりの拍手が響き渡り、国王様が指定の位置に着いてもしばらく鳴りやむことはなかった。
そして……とうとうオレたち『恒久の転生竜』が入場する番が回ってきた。
「どうぞ、そのまま真っすぐにお進みください」
緊張して躊躇していると、ここまで案内してくれたメイドさんが声をかけてくれた。
「は、はい!」
オレたちは王様たちが入場したのとはまた別の扉から入場し、進行役の男の指示に従い進んで行く。
すると、示し合わせたように大きな拍手が起こったのだが、ある一角にいる人たちだけは拍手をする様子がなく、鋭い視線をこちらに向けていた。
あらかじめ話を聞いてはいたのだが、オレたちに『月下の騎士』の称号が授与されるのを快く思わない人たちがいるそうだ。
こういう人たちが一定数いるのはわかっていたことだし、そのまま気にせずに指定された位置、国王様の前まで歩みを進めていこうとしたのだが……一人の男がオレたちの前に立ち塞がった。
身長二メートルを超えるその巨漢の男は、たしか公爵家の現当主だったはずだ。
反感を抱いているとは聞いていたが、まさか行動を起こすとは思っていなかった。
「実力の無い者どもに名誉ある『月下の騎士』を与えることは出来ぬ! まずはその強さをここで示せ!」
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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