【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 後半

第73話:欺瞞の迷宮

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 ◆◇◆◇ リリー視点 ◆◇◆◇


 私たち二人でリルラとコウガの見送りをしてから出発する予定だったのですが……。

「「あぁ!? コウガ!!」」

 リルラとはちゃんとお話できましたが、ジルさんが同時にコウガまで転移させてしまったので「気をつけて」の一言すら言えずに飛んでいってしまいました。

 転移魔法そのものが伝説級の魔法なのに、それを別々の場所への転移魔法を並列で発動させるとか、もう驚けばいいのか、呆れた方がいいのか……。
 ジルさんの非常識さにはあらためて脱帽です。

「行っちゃいました……にゃ」

「呆気に取られて別れの寂しさが吹っ飛んでしまった……にゃ」

 私たちはジルさんをジト目で見つめるのですが、人の細かい表情を読めないジルさんには効果はありませんでした。
 何かちょっと悔しいです……。

「別れのキスをとか思ってたのに残念……にゃ」

 ルルーが抜けがけしようとしていたことを呟いています。

 まぁ私も似たようなことを考えていたのですが、もう転移されてしまったので今さらいろいろ言っても始まらないと諦めることにしました。

「ルルー、もうコウガは転移してしまいましたし気持ちを切り替えましょう。それじゃぁジルさん。私たちも出発しましょうか? ……にゃ」

≪うむ。それでは向かうとするか。一応最後に確認しておくが……本当に良いのだな?≫

「はい。もう覚悟は出来ています。神獣様の元にお願いします……にゃ」

 そう。私たちの本当の目的地は、獣人の里への単なる里帰りではありません。
 獣人の里のさらにその奥にある神獣様の森が本当の目的地なのです。

≪うむ。まぁたとえ足や腕がなくなろうと生やしてやれるし、致命傷だろうと我が一瞬で治せるので、安心して試練に挑むと良い≫

 ジルさんが治せるというのなら、本当に治せるのでしょう。
 というか、ジルさんなら死んでも三秒以内なら大丈夫とか言いそうです。

 でもそういう事態は遠慮したいですし、それに甘えるわけにもいきません。
 私たちの本当の目的は、白き獣の獣人に伝わる神獣降臨の儀を執り行い、さらなる高みを目指すことなのですから。

「ありがとうです……にゃ」

 ジルさんが飛竜サイズになってくれたので、ルルーと二人で背に跨りました。
 最初の頃は高い所はとても怖かったのですが、今では空の旅は大好きなのでちょっとわくわくします。

「「それじゃぁジルさん! お願いします! ……にゃ」」

 こうして私たちは、ジルさんと共に風のように飛びたったのでした。


 ◆◇◆◇ コウガ視点 ◆◇◆◇


 オレは今、蹲って胃が落ち着くのを待っていた。

「うぅ……気持ち悪い……」

 ただでさえ転移のあとは気持ちが悪くなるのに、身構えもしないうちにいきなり飛ばされたものだから、いつもより輪をかけて気持ち悪い……。
 ちなみに転移の後遺症ともいうべきこの症状、リリーとルルーはここまで酷くないみたいだし、リルラにいたってはまったく平気みたいだから、かなり個人差があるみたいだ。羨ましい。

 しかし、このまま蹲っているのは危険だ。
 オレはなんとか吐き気を抑えつつ立ち上がると、周囲の状況を確認する。

「あれ? ここはいったい……どこなんだ?」

 ジルにはあらかじめ飛ばす場所は伝えてあったし間違えることはないと思うのだが、ギルドマスターから聞いていた『欺瞞の迷宮』の情報とまったく一致しない。
 説明では『欺瞞の迷宮』は蔦の絡まる緑に覆われた・・・・・・石造りの迷宮と聞いていた。それなのに、目に映るこの迷宮の姿に緑の要素・・・・は一つも存在していなかった。

 すこし嫌な予感がしたオレは、背に固定していた雷槍『ヴァジュランダ』を手に持ち構えると、警戒のランクを一段引き上げた。

「この荒れようは……ここで激しい戦いでもあったのか?」

 どうやらジルに間違いはなく、迷宮の入り口付近の安全な場所に転移してもらったようなのだが……周りの木々はすべて枯れるか焼け落ち、迷宮の壁には石が焦げたような黒い跡が散見される。

 聞いていた話だと、この『欺瞞の迷宮』は蔦が壁を覆い、その成長した木々が視界を阻み、昼間の太陽の光さえ届きにくいという話をだった。だが、蔦はすべて焼け落ち、光を遮るはずの木々は存在しなかった。

 通路まで浸食した蔦が行く手を阻むという話だったが、その面影はない。

「あ、明るいな……。行く手を阻むものもないし、奥まで通路が見通せるんだけど……」

 どちらかと言えばドラゴンゾンビとの戦いよりより、薄暗い迷宮に一人で挑むことの方に不安を感じていたのである意味大助かりなのだが、正直かなり不気味だ。

「でも、環境の変化こればかりは仕方ないよな……」

 これでもう迷う心配がなくなったし、あとは迷宮最奥にいるドラゴンゾンビと戦うだけだ。前向きに考えよう。
 ただ、ドラゴンゾンビとの戦いだって決して楽な訳では無い。状況を冷静に受け止めつつ、あらためて気持ちを引き締めたのだった。



 迷宮に足を踏み入れて二時間ぐらい歩いた頃だろうか。
 何者かが遠くで激しく争うような音が聞こえてきた。

「なんだ……? 連続した爆発音に金属音。それにこれは……ブレスの音か!? 誰かがドラゴンゾンビと戦っている!?」

 まじか……これ、先約がいてドラゴンゾンビを倒してたら依頼失敗になるのか?

 どちらにしろ確かめなければ!

 オレは複雑に入り組んだ迷宮の壁を【月歩】で飛び越えると、争う音を頼りに壁から壁へと飛び移りながら駆けていく。
 この高さからでも迷宮の壁に遮られて戦いの様子はまったく見えないが、戦いの音が段々と近づいてきているのでこちらで間違いない。

 今まではいつドラゴンゾンビと出会うかわからなかったので、体力を温存して迷宮に沿って歩いて移動していたのだが、今は一刻も早く状況を確認するべきだ。

 そうして壁から壁へと飛び移りながら駆けること数分。ようやく戦いの様子が見えてきたのだった。
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