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第一章 後半
第87話:神獣セツナ
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◆◇◆◇ 時は少し遡り リリー視点 ◆◇◆◇
私たちはコウガと別れてすぐ、ジルさんの背に乗せてもらい、神獣の森の「とある場所」へと連れてきてもらいました。
風よりも速く飛んでいたようですが大丈夫なのでしょうか?
以前、音速を超えては駄目だと言われてた気が……。
≪ここで間違いないな?≫
「あ、はい。ジルさん。ありがとうございます……にゃ」
意を決し、ルルーと視線を交わして頷きあうと大きな声で呼びかけた。
「「神獣セツナ様! どうか私たちに『白の試練』への挑戦をお許しください!」」
セツナ様には語尾に「……にゃ」をつけるのは逆に失礼にあたるのでつけません。
ジルさんもすごい竜ではあるのですが、なんと言うか……突き抜けすぎていて逆に普通に接することが出来ています。
神獣様に対しては何かこう……と、失礼なことを考えていると、とつぜんジルさんが森に向かって声をあげました。もちろん実際には魔法音声なのですが。
≪セツナよ! ちょっと話がある! こっちまで顔をだすのだ!≫
は!? ジルさん、セツナ様になんてことを!? とか思っちゃいましたが、よく考えるとジルさんの方がきっと格が上なのでしょうね……。
なんか……なんかすごくもやもやするけど、その言葉は飲み込むことにしました。
森の奥から一陣の風が吹き抜けた刹那、そこには神獣セツナ様が悠然とお立ちになられていました。
その姿はとても神々しく、白く美しい絹のような毛を風に靡かせ、森の木々から差し込む木漏れ日を受けて輝きとても幻想的です。
≪お呼びでしょうか。ジルニトラ様≫
圧倒的な存在感を放つ、その神獣セツナ様がジルさんの前で跪くように身を伏せています……。
「ジルさんってやっぱりすごいんだ……にゃ」
ルルーがジルさんにとても失礼なことを呟いていますが、正直言うと私もちょっと思っちゃいました。
このことは内緒にしておきましょう……。
≪セツナよ。お主が加護を与えたこの者たちは我の主の仲間でな。『白き試練』とやらに私もちょっと協力をしようと思っているのだ≫
「え? ジルさん、運んでくれるようにお願いはしましたけど、試練に協力するというのはどういうことです? ……にゃ」
私たちは、ジルさんに神獣の森深くにあるこの『白き試練の地』を探すことと、そこまで連れていって欲しいということはお願いしましたが、どういうことでしょう? 試練に協力して欲しいなどとは頼んでいません。
≪うむ。お主たちはコウガやリルラとの実力差をすこしでも縮めたいと考えておるのであろう?≫
そうですね……。ジルさんの言う通りです。
ジルさんはもちろん除くとしても、ハイエルフのリルラや邪竜の加護を得たコウガと比べても、その実力は大きく開いてしまいました。
その差は神獣の加護を与えられ、大きく力をつけた今でも広がり続けているように感じるのです。
いいえ。感じるのではなく事実そうなのでしょう。
だって私とルルーは、カリンさんから回されたCランクの依頼ですら、本気で挑まなければ危ういことがあるのですから……。
コウガさんはA級冒険者ぐらいの実力はあるとフォローしてくれますが、Cランクの依頼でも梃子摺るのですから、S級冒険者の試験を受ける二人とは比べるのもおこがましいです。
でもオーガキングがCランク依頼って、Aランク依頼なんてどんな強い魔物が出てくるのでしょう……。
「私とリリーは二人で一人です。でも……このままじゃぁ二人で頑張って力を合わせても一人前にも届きません!」
「私たちは胸を張ってコウガの仲間だと言える強さが欲しい! 仲間のリルラちゃんやコウガと肩を並べて戦える力が欲しい!!」
私とルルーはつい感情的になり、思わず叫ぶようにこたえていました。
≪加護を授けし子らよ。『白の試練』には一年以上の歳月が必要ぞ? それはわかっておるのか?≫
セツナ様の言葉に思わず気持ちが揺らぎそうになります。
だってその間はコウガたち会えなくなるのですから……。
「そ、それは……わかってます! それでも足手纏いのまま……このままでは駄目なんです!」
「リリーと話し合い、すごく悩んだけど……それでも受けると決めた!」
そう。『白の試練』には少なくとも一年の月日がかかるとされているのです。
最後に試練が受けられたのは今から百年以上前。
試練の内容までは伝えられていません。
ただ、過酷な試練を長い月日を耐え抜いた者だけが新たな力を授かり、その強さを飛躍させることができると伝えられています。
≪加護を授けし子らよ。しかし、時と言うのは残酷なものです。あなたたちの想う者が変わらずその心を持ち続けているとは限りませんよ。それでも本当に良いのですか?≫
セツナ様には私たちの心などお見通しのようです。
その間コウガに会えないのは辛いですし、もし心が離れてしまったらと思うと不安で仕方がありません。でも……それでも!
「かまいません! その時はまた最初から絆を取り戻してみせます!」
「コウガならきっと待っててくれる! 私たちは信じてる!」
≪そうですか。あなたたちの気持ちはわかりました。それなら『白の試練』への挑戦を認めま……≫
私たちの想いをセツナ様がくんでくれて、いよいよと思ったその時でした。
≪まぁ待つのだ。我が協力すると言っているではないか。遠慮する必要はない。コウガの仲間であるお主らのために、ここは一肌脱ごうではないか!≫
あれ? どうしてでしょう? なにかすごく嫌な予感がします……。
「「えっと……ジルさん? ……にゃ」」
その時でした。ジルさんが莫大な魔力を解き放ち、黒い光の奔流が押し寄せる津波のように溢れ出たのです。
え……これってぜったい自重してないよね?
≪じ、ジルニトラ様!?≫
セツナ様もなにか頬が引き攣るような表情を浮かべています。
後ずさっていますがジルさんはまったく気にしていません……。
≪我の魔法神としての力を貸してやろう。頑張ってくるのだぞ?≫
すると、私たちの足元に……い、いいえ! こ、この試練の地すべてを覆うようなとてつもない大きさの魔法陣が!?
≪緩やかな時の流れし夢幻の世界よ。その扉を開いて現世に顕現せよ。『時の狭間の神域』≫
その言葉と共に、セツナ様を含む私たちは時の狭間へと放り込まれたのでした。
私たちはコウガと別れてすぐ、ジルさんの背に乗せてもらい、神獣の森の「とある場所」へと連れてきてもらいました。
風よりも速く飛んでいたようですが大丈夫なのでしょうか?
以前、音速を超えては駄目だと言われてた気が……。
≪ここで間違いないな?≫
「あ、はい。ジルさん。ありがとうございます……にゃ」
意を決し、ルルーと視線を交わして頷きあうと大きな声で呼びかけた。
「「神獣セツナ様! どうか私たちに『白の試練』への挑戦をお許しください!」」
セツナ様には語尾に「……にゃ」をつけるのは逆に失礼にあたるのでつけません。
ジルさんもすごい竜ではあるのですが、なんと言うか……突き抜けすぎていて逆に普通に接することが出来ています。
神獣様に対しては何かこう……と、失礼なことを考えていると、とつぜんジルさんが森に向かって声をあげました。もちろん実際には魔法音声なのですが。
≪セツナよ! ちょっと話がある! こっちまで顔をだすのだ!≫
は!? ジルさん、セツナ様になんてことを!? とか思っちゃいましたが、よく考えるとジルさんの方がきっと格が上なのでしょうね……。
なんか……なんかすごくもやもやするけど、その言葉は飲み込むことにしました。
森の奥から一陣の風が吹き抜けた刹那、そこには神獣セツナ様が悠然とお立ちになられていました。
その姿はとても神々しく、白く美しい絹のような毛を風に靡かせ、森の木々から差し込む木漏れ日を受けて輝きとても幻想的です。
≪お呼びでしょうか。ジルニトラ様≫
圧倒的な存在感を放つ、その神獣セツナ様がジルさんの前で跪くように身を伏せています……。
「ジルさんってやっぱりすごいんだ……にゃ」
ルルーがジルさんにとても失礼なことを呟いていますが、正直言うと私もちょっと思っちゃいました。
このことは内緒にしておきましょう……。
≪セツナよ。お主が加護を与えたこの者たちは我の主の仲間でな。『白き試練』とやらに私もちょっと協力をしようと思っているのだ≫
「え? ジルさん、運んでくれるようにお願いはしましたけど、試練に協力するというのはどういうことです? ……にゃ」
私たちは、ジルさんに神獣の森深くにあるこの『白き試練の地』を探すことと、そこまで連れていって欲しいということはお願いしましたが、どういうことでしょう? 試練に協力して欲しいなどとは頼んでいません。
≪うむ。お主たちはコウガやリルラとの実力差をすこしでも縮めたいと考えておるのであろう?≫
そうですね……。ジルさんの言う通りです。
ジルさんはもちろん除くとしても、ハイエルフのリルラや邪竜の加護を得たコウガと比べても、その実力は大きく開いてしまいました。
その差は神獣の加護を与えられ、大きく力をつけた今でも広がり続けているように感じるのです。
いいえ。感じるのではなく事実そうなのでしょう。
だって私とルルーは、カリンさんから回されたCランクの依頼ですら、本気で挑まなければ危ういことがあるのですから……。
コウガさんはA級冒険者ぐらいの実力はあるとフォローしてくれますが、Cランクの依頼でも梃子摺るのですから、S級冒険者の試験を受ける二人とは比べるのもおこがましいです。
でもオーガキングがCランク依頼って、Aランク依頼なんてどんな強い魔物が出てくるのでしょう……。
「私とリリーは二人で一人です。でも……このままじゃぁ二人で頑張って力を合わせても一人前にも届きません!」
「私たちは胸を張ってコウガの仲間だと言える強さが欲しい! 仲間のリルラちゃんやコウガと肩を並べて戦える力が欲しい!!」
私とルルーはつい感情的になり、思わず叫ぶようにこたえていました。
≪加護を授けし子らよ。『白の試練』には一年以上の歳月が必要ぞ? それはわかっておるのか?≫
セツナ様の言葉に思わず気持ちが揺らぎそうになります。
だってその間はコウガたち会えなくなるのですから……。
「そ、それは……わかってます! それでも足手纏いのまま……このままでは駄目なんです!」
「リリーと話し合い、すごく悩んだけど……それでも受けると決めた!」
そう。『白の試練』には少なくとも一年の月日がかかるとされているのです。
最後に試練が受けられたのは今から百年以上前。
試練の内容までは伝えられていません。
ただ、過酷な試練を長い月日を耐え抜いた者だけが新たな力を授かり、その強さを飛躍させることができると伝えられています。
≪加護を授けし子らよ。しかし、時と言うのは残酷なものです。あなたたちの想う者が変わらずその心を持ち続けているとは限りませんよ。それでも本当に良いのですか?≫
セツナ様には私たちの心などお見通しのようです。
その間コウガに会えないのは辛いですし、もし心が離れてしまったらと思うと不安で仕方がありません。でも……それでも!
「かまいません! その時はまた最初から絆を取り戻してみせます!」
「コウガならきっと待っててくれる! 私たちは信じてる!」
≪そうですか。あなたたちの気持ちはわかりました。それなら『白の試練』への挑戦を認めま……≫
私たちの想いをセツナ様がくんでくれて、いよいよと思ったその時でした。
≪まぁ待つのだ。我が協力すると言っているではないか。遠慮する必要はない。コウガの仲間であるお主らのために、ここは一肌脱ごうではないか!≫
あれ? どうしてでしょう? なにかすごく嫌な予感がします……。
「「えっと……ジルさん? ……にゃ」」
その時でした。ジルさんが莫大な魔力を解き放ち、黒い光の奔流が押し寄せる津波のように溢れ出たのです。
え……これってぜったい自重してないよね?
≪じ、ジルニトラ様!?≫
セツナ様もなにか頬が引き攣るような表情を浮かべています。
後ずさっていますがジルさんはまったく気にしていません……。
≪我の魔法神としての力を貸してやろう。頑張ってくるのだぞ?≫
すると、私たちの足元に……い、いいえ! こ、この試練の地すべてを覆うようなとてつもない大きさの魔法陣が!?
≪緩やかな時の流れし夢幻の世界よ。その扉を開いて現世に顕現せよ。『時の狭間の神域』≫
その言葉と共に、セツナ様を含む私たちは時の狭間へと放り込まれたのでした。
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今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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