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第一章

第41話 神々

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 城を出たあと定宿にしている「時精霊の隠れ家」に戻ったのだが、キューレの口にした言葉に驚かされることになった。

「主さまは、やはり使徒・・だったのですね!」

「……は? なんだそれ?」

 いや、まったくもって意味がわからない。

 シトって使徒のことだよな?
 神様の使いてきな?

 なにをどうしたらそういうことになるんだ?

「なんだそれって、神託をお受けになっていたではないですか!?」

「シンタク?」

「はい! 神託です!」

 シンタクって神託のことだよな?
 神様からのお告げてきな?

 さっきからキューレは何を言っているんだ?
 そんなもの受けてなど……受けてなど……受け……って、まさか!?

「キャンペーンのことか!?」

「え? 主さまは神託のことをそう呼ぶのですか?」

「いや、そうじゃなくて……えっとだな。キューレのいう神託って、王城で指名依頼を受けている時にキューレにも見えたアレのことだよな?」

「はい! 声も聞こえました!」

「システムアナウンスもか……」

 やっぱりか……。

 ちょっと待ってくれ。
 次から次へと疑問を解決する前に、あらたな疑問を足していかないでくれ……。

 どういうことだ?
 キャンペーンは運営が期間を区切って行うイベントのようなものだ。
 期間限定で交付されるクエストと言ってもいい。

 そのキャンペーンを受けたからといって、なんで使徒や信託なんて話に……いや、でも……たしかにリアルとなったこの世界で運営もなにもないのか。

 システムアナウンスやキャンペーンもそうだが、そもそも誰がオレをこの世界につれてきた?

 この能力だってそうだ。
 この世界の異邦人のことはまだ詳しくは調べられていないが、オレのようにクオータービューを視界に透過表示するようなゲーム的な能力は誰も持っていないはず。

 それなら、この力は誰が授けてくれた?
 こんなとんでもない力を人に与える事ができるとしたら……。

「まじか……」

 オレ……知らないうちに使徒になっていたのか!?

 宿に帰ってキューレにさっきオレに言おうとした話を聞いたら、その後は指名依頼の作戦を練ってさっそく行動にうつろうと思っていたのだが、なんだかぶっ飛んだことになってしまった。

 いや、まぁ、異世界に来てしまっている時点でぶっ飛んでいる状況なのだが。

「でも、もし仮にオレが使徒だったとして、仕える神様はどの神様なんだ?」

 ゲームの『ベルジール戦記』では、設定上はいく柱かの神様が存在した。

 だが、ゲーム中に神様は登場はしていなかったため、正直いってあまり印象に残っておらず詳しくは覚えていない。

 攻略に役立ちそうな情報ならだいたい暗記していると思うのだが、ゲーム上の世界観や細かい背景、装備のフレーバーテキストなどはさすがに覚えていないものが多い。

「え? 主さまはご自身が仕えている神様がわからないのですか?」

「……そ、そうだ。そもそも使徒であるかもしれないってことを今知った……」

 なぜかすごい恥ずかしいんだが、なんの情報も与えられずに使徒だと気付けという方が無理だろ……。

「そうだ。キューレはどうなんだ? たしか元ネタ……元々は北欧神話の主神オーディンに仕えていたはずだが」

 ふと疑問に思ったことを尋ねると、キューレは不思議そうにこちらを見つめ、首をかしげながら答えた。

「え? オーディン? 私が仕えるのは主さまただ一人ですが?」

「そ、そうか」

 今度はなぜかすごい照れるんだが、それは置いておくとして、この世界ではゲーム上の設定が優先される感じか。

 話が少しそれたな。

「この世界で一番信仰されているのは創造神『メルフィーユ』様だよな?」

「はい。この世界の主神ですから」

「あとはメルフィーユ様を支える五柱の神と、地域などに根付いた神々か」

 この世界は多神教だし、多くの神々が信仰されている。

 その中でもあまねくすべての人々に信仰されているのが主神メルフィーユ様だ。

 しかし、ほとんどの人はメルフィーユ様に加えて自分の仕事や地域、所属する組織などに関わりの深い神様を他にも信仰していたはずだ。
 現にこの王都にも、さまざまな神様を祀るいくつもの神殿がある。

 だから、オレが仮に使徒だとしても、どの神様に仕える身なのかわからなかった。

 しかし、自分が仕える神様がわからない使徒だなんて聞いたこと無いぞ……。

「ん~本当にオレが使徒なのだとしたら、せめてどの神様の使徒なのかぐらいは知っておきたいが……」

「主さま、それでしたら一度、各神殿を回ってみてはいかがでしょうか?」

「なるほど。たしかに何かわかるかもしれないな。でも、まずは指名依頼について行動を開始しよう」

 使徒の件はすごい気になるのだが、具体的な内容でキャンペーンも進行したことだし、まずはそちらの計画を先に練って行動にうつそうと思う。

 もともとそのつもりだったしな。

「神託を優先されるわけですね」

「あ、あぁ、そうだな。そちらを優先する」

 キャンペーンのことを神託と言われると、なんだかおおごとな感じがして緊張する。
 でも考えてみれば、過去のキャンペーンを振り返ってみても、それらがリアルでおこなわれることだと考えれば、キャンペーンというのはどれも実際におおごとなのか。

 キューレの思わぬ発言で使徒かも知れないというとんでもない可能性がでてきたが、まずは魔神信仰ビアゾの指名依頼に取り込むことにしよう。
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