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【第23話:敷かれ具合】
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「なんだ? 表の方がやけに騒がしくないか?」
「ば、ばぅ?」
ん? なにかパズの態度が怪しい気がするのだが……。
そして、さっきの嫌な予感がふつふつと再燃しだしている気がするのだが……。
「なぁパズ……さっき、『誰にも気づかれる事無く、見つけたから褒めるのだ!』とか言ってたよな?」
「ばばば、ばうー! ばぅわぅー!」
みみみ見つけたよー! 間違いなく、気付かれる事無く見つけたよ! 間違いなく気付かれずに見つけたー! と言っている。
「パズ……やけに『見つけたー』を強調して伝えてきている気がするんだが?」
そう言えばこの方向って……騒ぎの起こっているのは、やはりあの商店のあった方な気がするぞ……。
「もしかして、目当てのモノを見つけた後……見つかったのか?」
「ば、ばぅぅ……」
うん。やっぱり脱出する時に見つかっていたようだ。
尻尾を垂らして上目遣いでカワイイアピールしているが、目が泳ぎまくっている。
冷や汗が見える気がする不思議。
しかし、この感じだと絶対に普通に走って逃げたりしてないよな……。
「それで、見つかった後……どうした?」
とりあえず単刀直入に聞いてみる。
「ば、ばぅ?」
「ど・う・し・た?」
「ばばぅ!」
「ついさっきの事なんだ。忘れてないだろ? ……で、何やらかした?」
「ばぅぅ……わぅぅ、ばぅわぅ」
要約すると、凍らせたと……屋敷を……。
「へ~、凍らせたんだ~屋敷を~…………って、マジかっ!? 屋敷丸ごとかっ!?」
「ばば、ばぅ?」
ど、どうやら、人のいるところは避けて凍らせたようだが……マジだった。
神様はどこまでパズに凄い力を与えたんだ?
そんな事、たぶん国お抱えの魔法使いが一〇人集まっても出来ないぞ。
まぁこの世界は科学調査とかないから、パズがやったとはそう簡単にバレないだろうし、そもそも名乗り出ても信じて貰えないかもしれないが、何てことをするんだ……。
どうする……悪人を懲らしめたった事で、スルーしておくか……?
……うん。そうしよう。思考放棄しよう。
「つ、次から、帰りも気を抜かないようにな……帰ってくるまでが潜入だ。うん」
と、オレもなんか変なことを言いつつ、結局男たちを放置したまま、宿へと戻ってしまったのだった。
ちなみに、店の氷は遠隔でも消せるという事だったので、パズにはすぐに消しておいて貰った。
ちょっとどういった状況なのか一目見たかった気もしたが、見たら見たでげんなりしそうなので、好奇心は押し殺しておいた。
◆
宿『赤い狐亭』に戻ると、元気いっぱいにリズが迎えてくれた。
「パズちゃんおかえり~!! あ、お兄さんも!」
オレはついでですか。そうですか……。
まぁでも、今回はほぼパズの活躍のお陰だしな~。
「ただいま。リズ」
「ばぅ!」
出迎えてくれたリズの相手をしていると、奥からダリアナが、気の弱そうな男と一緒に慌てて出てきた。
「パ、ユウトさん、大丈夫でしたか!?」
今、パズって言いかけましたよね……?
良いですよ。うん。今回はオレ、いいとこなしですしね……。
「はい。何とか、ね。でも、パズのお陰で取り戻してきましたよ。パズ、頼む」
「ばぅわぅ!」
オレはそう言うと、パズに視線を送って取り返したランプをアイテムボックスから取り出して貰い、近くのテーブルの上に置いてあげた。
すると、それまで後ろに控えて所在なさげにしていた男が、
「おぉぉ!! これです! 間違いありません! ここ、これをどこで!?」
と言って、話しかけてきた。
「えっと……この人は、旦那さんですよね?」
一応、念のために確認しておく。
「はい。うちの頼りない夫です。……あなた!! 先に挨拶してお礼でしょっ!!」
「はぃぃ!? すす、すみません! もも、申し遅れましたが、私はダリアナの夫のセグトと申します!! この度は、ああ、ありがとうございます!!」
ダリアナって、おっとりしているように見えるけど、旦那は中々の尻にしかれ具合だな……。
まぁ今回のトラブルは、お小遣い稼ぎになると目の眩んだ旦那のせいだし、怒られても仕方ないだろう。
「はじめまして。ユウトと言います。こっちはパズ。問題の商品は、これで間違いないですね?」
「はい。ダリアナからはお話は聞いております! お世話になっております! このランプの形にこの刻印。紛失した商品は、これで間違いありません!」
形はありきたりで、どこにでも売っているようなランプだが、確かに特徴のある家紋のような刻印が刻まれている。
この刻印を見てそう言うなら、間違いないだろう。
「それじゃぁ、これはお渡ししておきますね」
そう言ってランプを渡すと、二人は頭をさげ、リズが
「お兄さん、ありがとう!!」
と言って、オレの腰に抱きついてきた。
「はは。どういたしまして。でも、ほぼほぼパズのお陰なんで、礼ならパズに言ってやってくれるかな?」
オレはしゃがんで目線を合わせると、パズを抱きかかえてリズの前にだしてやった。
「わぁぁ♪ パズちゃん、ありがと~!!」
「ばぅ♪」
しかし、これでとりあえずは商品を取り戻せたわけだが、これで問題がすべて解決ってわけにもいかないだろう。
さっきの屋敷丸ごと凍結騒ぎは白を切り通すとしても、これを渡すだけでピタリと嫌がらせが止むとも思えない。
だから、これからの事をダリアナ、セグトの二人と相談しようと思っていたのだが……。
「いたぁぁぁ~~~!!」
「やっと、パズ見つけたよ~!」
宿の入口から、そんな声が聞こえて来たのだった。
「ば、ばぅ?」
ん? なにかパズの態度が怪しい気がするのだが……。
そして、さっきの嫌な予感がふつふつと再燃しだしている気がするのだが……。
「なぁパズ……さっき、『誰にも気づかれる事無く、見つけたから褒めるのだ!』とか言ってたよな?」
「ばばば、ばうー! ばぅわぅー!」
みみみ見つけたよー! 間違いなく、気付かれる事無く見つけたよ! 間違いなく気付かれずに見つけたー! と言っている。
「パズ……やけに『見つけたー』を強調して伝えてきている気がするんだが?」
そう言えばこの方向って……騒ぎの起こっているのは、やはりあの商店のあった方な気がするぞ……。
「もしかして、目当てのモノを見つけた後……見つかったのか?」
「ば、ばぅぅ……」
うん。やっぱり脱出する時に見つかっていたようだ。
尻尾を垂らして上目遣いでカワイイアピールしているが、目が泳ぎまくっている。
冷や汗が見える気がする不思議。
しかし、この感じだと絶対に普通に走って逃げたりしてないよな……。
「それで、見つかった後……どうした?」
とりあえず単刀直入に聞いてみる。
「ば、ばぅ?」
「ど・う・し・た?」
「ばばぅ!」
「ついさっきの事なんだ。忘れてないだろ? ……で、何やらかした?」
「ばぅぅ……わぅぅ、ばぅわぅ」
要約すると、凍らせたと……屋敷を……。
「へ~、凍らせたんだ~屋敷を~…………って、マジかっ!? 屋敷丸ごとかっ!?」
「ばば、ばぅ?」
ど、どうやら、人のいるところは避けて凍らせたようだが……マジだった。
神様はどこまでパズに凄い力を与えたんだ?
そんな事、たぶん国お抱えの魔法使いが一〇人集まっても出来ないぞ。
まぁこの世界は科学調査とかないから、パズがやったとはそう簡単にバレないだろうし、そもそも名乗り出ても信じて貰えないかもしれないが、何てことをするんだ……。
どうする……悪人を懲らしめたった事で、スルーしておくか……?
……うん。そうしよう。思考放棄しよう。
「つ、次から、帰りも気を抜かないようにな……帰ってくるまでが潜入だ。うん」
と、オレもなんか変なことを言いつつ、結局男たちを放置したまま、宿へと戻ってしまったのだった。
ちなみに、店の氷は遠隔でも消せるという事だったので、パズにはすぐに消しておいて貰った。
ちょっとどういった状況なのか一目見たかった気もしたが、見たら見たでげんなりしそうなので、好奇心は押し殺しておいた。
◆
宿『赤い狐亭』に戻ると、元気いっぱいにリズが迎えてくれた。
「パズちゃんおかえり~!! あ、お兄さんも!」
オレはついでですか。そうですか……。
まぁでも、今回はほぼパズの活躍のお陰だしな~。
「ただいま。リズ」
「ばぅ!」
出迎えてくれたリズの相手をしていると、奥からダリアナが、気の弱そうな男と一緒に慌てて出てきた。
「パ、ユウトさん、大丈夫でしたか!?」
今、パズって言いかけましたよね……?
良いですよ。うん。今回はオレ、いいとこなしですしね……。
「はい。何とか、ね。でも、パズのお陰で取り戻してきましたよ。パズ、頼む」
「ばぅわぅ!」
オレはそう言うと、パズに視線を送って取り返したランプをアイテムボックスから取り出して貰い、近くのテーブルの上に置いてあげた。
すると、それまで後ろに控えて所在なさげにしていた男が、
「おぉぉ!! これです! 間違いありません! ここ、これをどこで!?」
と言って、話しかけてきた。
「えっと……この人は、旦那さんですよね?」
一応、念のために確認しておく。
「はい。うちの頼りない夫です。……あなた!! 先に挨拶してお礼でしょっ!!」
「はぃぃ!? すす、すみません! もも、申し遅れましたが、私はダリアナの夫のセグトと申します!! この度は、ああ、ありがとうございます!!」
ダリアナって、おっとりしているように見えるけど、旦那は中々の尻にしかれ具合だな……。
まぁ今回のトラブルは、お小遣い稼ぎになると目の眩んだ旦那のせいだし、怒られても仕方ないだろう。
「はじめまして。ユウトと言います。こっちはパズ。問題の商品は、これで間違いないですね?」
「はい。ダリアナからはお話は聞いております! お世話になっております! このランプの形にこの刻印。紛失した商品は、これで間違いありません!」
形はありきたりで、どこにでも売っているようなランプだが、確かに特徴のある家紋のような刻印が刻まれている。
この刻印を見てそう言うなら、間違いないだろう。
「それじゃぁ、これはお渡ししておきますね」
そう言ってランプを渡すと、二人は頭をさげ、リズが
「お兄さん、ありがとう!!」
と言って、オレの腰に抱きついてきた。
「はは。どういたしまして。でも、ほぼほぼパズのお陰なんで、礼ならパズに言ってやってくれるかな?」
オレはしゃがんで目線を合わせると、パズを抱きかかえてリズの前にだしてやった。
「わぁぁ♪ パズちゃん、ありがと~!!」
「ばぅ♪」
しかし、これでとりあえずは商品を取り戻せたわけだが、これで問題がすべて解決ってわけにもいかないだろう。
さっきの屋敷丸ごと凍結騒ぎは白を切り通すとしても、これを渡すだけでピタリと嫌がらせが止むとも思えない。
だから、これからの事をダリアナ、セグトの二人と相談しようと思っていたのだが……。
「いたぁぁぁ~~~!!」
「やっと、パズ見つけたよ~!」
宿の入口から、そんな声が聞こえて来たのだった。
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