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【第42話:あれれ?】
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◆Side:ユウト
パズに先行させたオレたちは、未だに騒ぎが起こっていると思われる門に辿り着けずにいた。
「すみません! 通してください!!」
「ダメだ! 火の手があがっている上に、逃げてきた者の話だと激しい戦闘が起こって死傷者が多数出ているらしいのだ!」
「冒険者だろうと危険すぎる! 通すわけにはいかない!」
街を巡回していた衛兵たちが、住民に危険が及ばないように避難指示をしていたところに出くわしてしまい、行く手を阻まれてしまったのだ。
「オレたちは冒険者です! もし戦っているのが魔人であれば、ギルドマスターのガッツイさんからも頼まれているんです! ここを通してください!」
「馬鹿を言うな。その若さでギルマスからそんな指名依頼など受けるわけないだろう?」
「もうっ! 頭が固いわねぇ! さっさと通しなさいよ! 手遅れになったら、あなた責任とれるの!?」
「そうだよ~? おじさん、ギルドマスターから頼まれているのって本当だよ~?」
「う~ん……しかしだなぁ。どう見ても君たちは……」
そんな押し問答をしていた時だった。
「その人たちを通してあげてください!」
見知った女性が駆け寄ってきた。
「あっ! ダリアナさん!」
「え? ダリアナの知り合いなのか?」
衛兵の男と『赤い狐亭』のダリアナは、どうやら知り合いのようで、
「その人たちの強さは私が保証します! 娘さんが同じぐらいの歳だから心配なんだと思いますが、どうか通してあげてください!」
と、頼んでくれた。
やけにかたくなに通るのを拒むと思ったら、自分の娘とオレたちを重ねていたのかもしれない。
「ん~、にわかには信じられないが、冒険者向けの宿を営んでいるダリアナのいう事なら本当なのか……わかった! 通って良いが、本当に気を付けるのだぞ?」
衛兵の男は、それでもダリアナの説得に少し悩んでいたようだが、最終的にはそう言って折れてくれた。
「ダリアナさん、ありがとうございます! でも、ここは危険だからリズと一緒に避難していてくださいね!」
「わかったわ。ユウトさんたちも本当にお気を付けて。あなたたちの強さはわかっているつもりですが、絶対にまた宿に帰ってきてくださいね。じゃないと、リズが悲しみますから」
と言って、ダリアナは見送ってくれた。
◆
ようやく門が見えるところまで辿り着いたオレたちの視界に飛び込んできたのは、目で追うのがやっとという、パズと魔人と思われる男の次元の違う戦いだった。
「なな、なんて速さなのよ……」
「うわぁ……パズって、ここまでの強さだったんだぁ……」
ミヒメとヒナミはパズの全力の戦いを見るのがこれが初めてだ。
驚くのも無理は無かった。
「う、嘘だろ……」
だけど、オレは別の意味で驚いていた。
パズがおそらく全力で戦っているという事。
そして、その全力を出した上で……。
「パズと互角の戦いをしているだと……」
ダンジョン最奥で戦った魔人とは、レベルがまったく違う。
パズが戦っている相手は、あの強かった魔人とも比べ物にならない強さだった。
「あれは魔人なのか? 遠目だから気付かなかったけど、もう人の原型がほとんど残ってないじゃないか……」
まだ距離があり、高速で移動しながら戦っているので最初は気付かなかったが、よく見れば、ダンジョンで戦った魔人たちと違って角が生えているだけでなく、身体の形状まで人とは違う何かになっていた。
その姿は前世の記憶に残る、悪魔や魔族などといった者たちと近いだろうか。
背には歪な不ぞろいの翼を生やし、頭には山羊のような曲がった角。
服を突き破って見える地肌は黒く変色していた。
その姿に驚き、思わず立ち止まっていると、パズが下手くそな咆哮をあげ、自身の周りに氷柱をいくつも発生させて、まるで機関銃のように撃ちだした。
「ばぅぅぅん!」
しかし、凄まじい速度で次々と撃ちだされる氷柱を、魔人は素早く動き回り、全て避け切ってみせた。
「うわぁ……なによこれ……こんな戦いに援護なんて出来ないじゃない……」
ミヒメの呟きにオレも全くもって同感なのだが、だからと言って、ここで何もせずに見守っていることしか出来ないというのは嫌だ……。
「なにか……何かオレたちに出来る事はないのか」
オレたちもダンジョンに通うようになり、かなりの強さを身に着けたつもりでいた。
だけど、あの戦いに加わっても、パズの足を引っ張ってしまうだけだろう。
オレたちは確かに強くなった。
だけど、強くなって相手の強さがより正確に把握できるようになった今だからこそ、全く敵わない相手だとわかってしまった。理解させられてしまった。
飛び交う氷と炎。
とてつもない速さで行われる肉弾戦。
とてもではないが、戦いの次元が違い過ぎた。
「あぁぁ、もうっ!! どうしたら良いのよ!?」
「パズ凄すぎるよ~……ん? あれれ?」
オレと同じように悔しがる二人だったが、ヒナミが何か気になったかのような声をあげる。
「どうしたんだ? 何かあるのか?」
もしかして、何かパズの力になれるのかと期待を込めて尋ねてみたのだが、
「ん~わかんないんだけど……ユウトさん、ユウトさんなら何か感じないかな? 違和感って言うのかな?」
ヒナミに言われて改めてパズと魔人の戦いに目を向ける。
最初は、やはりその戦闘の凄まじさに目を取られ、何もわからなかったのだが、じっくりと戦いを目で追っていると、確かに何か違和感のようなものを感じ取った。
「おかしい。確かに何かおかしい気がする……」
だけど、それが何かがわからない。
戦闘自体は互角の戦いを展開しているように思えるが、何かパズの動きが幾分不自然に感じ、無理をしているように見えるのだ。
「……もしかして……」
もう少しで何かその理由が掴めそうなのにと、歯がゆい思いしていたその時、ミヒメが何か呟き、突然走り出した。
パズに先行させたオレたちは、未だに騒ぎが起こっていると思われる門に辿り着けずにいた。
「すみません! 通してください!!」
「ダメだ! 火の手があがっている上に、逃げてきた者の話だと激しい戦闘が起こって死傷者が多数出ているらしいのだ!」
「冒険者だろうと危険すぎる! 通すわけにはいかない!」
街を巡回していた衛兵たちが、住民に危険が及ばないように避難指示をしていたところに出くわしてしまい、行く手を阻まれてしまったのだ。
「オレたちは冒険者です! もし戦っているのが魔人であれば、ギルドマスターのガッツイさんからも頼まれているんです! ここを通してください!」
「馬鹿を言うな。その若さでギルマスからそんな指名依頼など受けるわけないだろう?」
「もうっ! 頭が固いわねぇ! さっさと通しなさいよ! 手遅れになったら、あなた責任とれるの!?」
「そうだよ~? おじさん、ギルドマスターから頼まれているのって本当だよ~?」
「う~ん……しかしだなぁ。どう見ても君たちは……」
そんな押し問答をしていた時だった。
「その人たちを通してあげてください!」
見知った女性が駆け寄ってきた。
「あっ! ダリアナさん!」
「え? ダリアナの知り合いなのか?」
衛兵の男と『赤い狐亭』のダリアナは、どうやら知り合いのようで、
「その人たちの強さは私が保証します! 娘さんが同じぐらいの歳だから心配なんだと思いますが、どうか通してあげてください!」
と、頼んでくれた。
やけにかたくなに通るのを拒むと思ったら、自分の娘とオレたちを重ねていたのかもしれない。
「ん~、にわかには信じられないが、冒険者向けの宿を営んでいるダリアナのいう事なら本当なのか……わかった! 通って良いが、本当に気を付けるのだぞ?」
衛兵の男は、それでもダリアナの説得に少し悩んでいたようだが、最終的にはそう言って折れてくれた。
「ダリアナさん、ありがとうございます! でも、ここは危険だからリズと一緒に避難していてくださいね!」
「わかったわ。ユウトさんたちも本当にお気を付けて。あなたたちの強さはわかっているつもりですが、絶対にまた宿に帰ってきてくださいね。じゃないと、リズが悲しみますから」
と言って、ダリアナは見送ってくれた。
◆
ようやく門が見えるところまで辿り着いたオレたちの視界に飛び込んできたのは、目で追うのがやっとという、パズと魔人と思われる男の次元の違う戦いだった。
「なな、なんて速さなのよ……」
「うわぁ……パズって、ここまでの強さだったんだぁ……」
ミヒメとヒナミはパズの全力の戦いを見るのがこれが初めてだ。
驚くのも無理は無かった。
「う、嘘だろ……」
だけど、オレは別の意味で驚いていた。
パズがおそらく全力で戦っているという事。
そして、その全力を出した上で……。
「パズと互角の戦いをしているだと……」
ダンジョン最奥で戦った魔人とは、レベルがまったく違う。
パズが戦っている相手は、あの強かった魔人とも比べ物にならない強さだった。
「あれは魔人なのか? 遠目だから気付かなかったけど、もう人の原型がほとんど残ってないじゃないか……」
まだ距離があり、高速で移動しながら戦っているので最初は気付かなかったが、よく見れば、ダンジョンで戦った魔人たちと違って角が生えているだけでなく、身体の形状まで人とは違う何かになっていた。
その姿は前世の記憶に残る、悪魔や魔族などといった者たちと近いだろうか。
背には歪な不ぞろいの翼を生やし、頭には山羊のような曲がった角。
服を突き破って見える地肌は黒く変色していた。
その姿に驚き、思わず立ち止まっていると、パズが下手くそな咆哮をあげ、自身の周りに氷柱をいくつも発生させて、まるで機関銃のように撃ちだした。
「ばぅぅぅん!」
しかし、凄まじい速度で次々と撃ちだされる氷柱を、魔人は素早く動き回り、全て避け切ってみせた。
「うわぁ……なによこれ……こんな戦いに援護なんて出来ないじゃない……」
ミヒメの呟きにオレも全くもって同感なのだが、だからと言って、ここで何もせずに見守っていることしか出来ないというのは嫌だ……。
「なにか……何かオレたちに出来る事はないのか」
オレたちもダンジョンに通うようになり、かなりの強さを身に着けたつもりでいた。
だけど、あの戦いに加わっても、パズの足を引っ張ってしまうだけだろう。
オレたちは確かに強くなった。
だけど、強くなって相手の強さがより正確に把握できるようになった今だからこそ、全く敵わない相手だとわかってしまった。理解させられてしまった。
飛び交う氷と炎。
とてつもない速さで行われる肉弾戦。
とてもではないが、戦いの次元が違い過ぎた。
「あぁぁ、もうっ!! どうしたら良いのよ!?」
「パズ凄すぎるよ~……ん? あれれ?」
オレと同じように悔しがる二人だったが、ヒナミが何か気になったかのような声をあげる。
「どうしたんだ? 何かあるのか?」
もしかして、何かパズの力になれるのかと期待を込めて尋ねてみたのだが、
「ん~わかんないんだけど……ユウトさん、ユウトさんなら何か感じないかな? 違和感って言うのかな?」
ヒナミに言われて改めてパズと魔人の戦いに目を向ける。
最初は、やはりその戦闘の凄まじさに目を取られ、何もわからなかったのだが、じっくりと戦いを目で追っていると、確かに何か違和感のようなものを感じ取った。
「おかしい。確かに何かおかしい気がする……」
だけど、それが何かがわからない。
戦闘自体は互角の戦いを展開しているように思えるが、何かパズの動きが幾分不自然に感じ、無理をしているように見えるのだ。
「……もしかして……」
もう少しで何かその理由が掴めそうなのにと、歯がゆい思いしていたその時、ミヒメが何か呟き、突然走り出した。
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