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17.【最終話】アレンのアレン
しおりを挟む長い決勝戦の後、気を失って眠っていた。しかし明け方、天蓋の向こうからそっと呼びかけられ、パチリと目を覚ました。
「……レイ様、アストラル侯爵から伝言です。アストラル侯爵邸は厚い、灰色の雲に覆われている。雷雨の前に帰宅せよ」
専属召使のミーナが、俺を探して呼びに来たのだ…。つまり、『ハハゲキドスグカエレ』と、いうこと。俺が絶世の美少年にも関わらず、今まで純潔を守り抜いたのは、この母あってこそ。
アレンは疲れてぐっすりと眠っている…。
アレンお前、そんなだから匂い袋取り替えられたことに、気付かないんだぞ?でも、すごく幸せそうな寝姿だ…。俺はアレンを小突く代わりに、頬にそっと口付けた。
そして置き手紙を書き、こっそり、とある事をした。俺の憧れの、あれ……♡
「これでよし、っと…。あれ…?」
アレンの部屋の、壁に白猫の仮面が二つ掛けられていることに気がついた。どこか見覚えがあるその仮面は、ノクシアの秋祭りの時期には数多く売られているもので、珍しくも、ないものだが…。
何となく、心に引っ掛かりを覚えながらも、俺はアレンの部屋を後にした。
****
闘技大会の翌日は王城で祝勝会が行われる予定だったのだが、午後から俺は貧民街にやって来ていた。
ーー正確に言うと、『俺たち』である。
あの日、俺がかけた転移魔法は帰処…、心の拠り所に帰るという魔法だった。
それは、会場に居合わせたものを家族や恋人の元へと帰した。一年の終わりに素晴らしい贈り物だったと、陛下に褒められた上、敗者復活戦に勝った、大会の優勝者として勲章まで頂いてしまった。
てっきり怒られると思い、朝イチで陛下に謝罪に行ったのだが、逆に褒められて驚いた。更に、驚いたことは…。
「まさか、祝勝会を中止して、自ら炊き出しをされるとは…」
カインは炊き出しの鍋をかき混ぜながら、俺をチラチラと見て頬を染める。
「城の召使たちも沢山、闘技大会の観戦に来ていて、大多数が私の魔法で家に帰ってしまったんだ。それを祝勝会だからと呼び戻すのはかわいそうだろ?そのまま、家族と新しい年を迎えさせたいという陛下の意向もあったし、祝勝会は中止に決まったんだ。けど、そのために用意していた食材は余ると勿体無い…」
陛下は祝勝会の食材についても好きにせよ、と仰った。そのため俺とアレンは、有志をつのり貧民街で炊き出しをする事にしたのだ。
「レイ様は、この街の、いえ、ノクシアの英雄です」
俺の隣で玉ねぎを切っている大男は、涙を流しながら、俺を讃える。
この大男は、イザベラを攫った一味の首領だった男だ。今は『社会奉仕をする』刑が執行され、俺の手伝いをしている。
「おい、お前達!気安くレイに近付くな…!涙を流すな、頬を染めるな!」
食材を運んできたアレンは、俺の両隣の男を見て怒鳴った。案外、アレンは嫉妬深い、ということが判明した。
「二人は料理しているから、頬が赤くなって、泣いてるだけだよ?」
気にしすぎだよ!と俺が言うと、アレンは面白く無さそうな顔をする。
「レイ、年が明けたら直ぐに式をあげよう。でないと次から次へと虫が湧く」
この間まで、婚約破棄しようとしていたくせに、今度は逆に結婚を早めよう、とアレンは言う。流石に、掌返しが過ぎるんじゃないか…!?
そして甘い顔で俺を見つめたと思ったら、腰に腕を回し引き寄せた。そのまま口付けようとするので、俺は慌てて、手で避ける。
そういう直接的なやつより、秘めた匂わせ的なやつが好きなんだ。そう、俺がやりたかったのは…!
「アレン、それより…、昨日交換しておいた下着、履いてきてくれた?」
「下着…?」
「手紙も置いておいただろ?」
そう、昨日部屋を出る前にこっそり、アレンの下着と俺の下着を交換してきたのだ!騎士同士がこっそり付き合う時の、秘密の交換…。俺の憧れのやつ!
「まさか、手紙読まなかったとか…?」
「いや、読んだ。でも…」
「でも?」
俺はちょっとだけ紐で調整して、ちゃんと履いてきた。それなのに、アレンは履いていないのか?俺はたちまち、悲しくなってしまった。
しゅんとした俺にアレンは慌てて、抱きしめる。
「レイ…。レイの下着は小さすぎて入らなかったんだ。すまない」
ーー入らなかった…?
俺は顔は可愛いくて手足も長くすらっとしているが、背丈は170cmくらいあり割と普通に男だ。それなのに、俺の下着が入らなかった……、だと…?
つまりアレンのアレンがアレ……、ってことだな……。確かに昨日、アレンのアレンはアレだった。
「アレン、アレンが好き…」
「レイ…!?」
アレンのアレンも好き…!
こんな素敵な婚約者が出来たのだ。筋骨隆々の騎士に攫われなくて良かった…!
アレン、愛してる。もう一生、他の男に攫われる、許可などおろさないでくれ…!
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完結おめでとうございます🎊
とっても面白くて更新が日々の楽しみでした♪
マイペースなレイと空回って三枚目になってしまうアレンのすれ違いにニヤニヤしてました。
レイの好みじゃないけど好きになってもらえて良かったねアレン💕飾ってある仮面からものすごい執着が漂っていて…出会いについては掘り返さないほうが良さそうかも😊
感想ありがとうございます!
アレンを二枚目にするはずが、三枚目、四枚目に…。でもニヤニヤしていただけてよかったです(*´∇`*)
最後までありがとうございましたm(_ _)m
めちゃくちゃ面白かったです!!!
大好きなお話になりましたー
レイが本当に最高でした!
結婚後のお話もいつか読みたいです🙏🙏🙏
感想ありがとうございます!
レイを気に入っていただけて嬉しいです(*´∇`*)
結婚後のイチャイチャもかけたらいいなー、と思っています^ ^
鼻息フンス!フンス!してる腹黒王子
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楽しい〜
もうすぐ完結ですか?
もう少し追いかけっこしてるの見てたかったなぁ〜涙
でも、二人が幸せそうでなにより。
感想ありがとうございます!
まもなく最終話なので、
最後まで読んでいただけると嬉しいです(*´∇`*)