新米イケメンα騎士が友父の俺で筆下ろしを熱望してくるので困惑しています

あさ田ぱん

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本編

3.はじめて♡って?

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 ライアンの『初めて』って、何だろう…?本人、言い終わった後、視線を泳がせているし、顔もちょっと赤い。

「すみません、何の初めて、ですか?」

   聞き返したらライアンはぴくぴくと顔を引き攣らせた。え、な、何なの?

「ですからその…私は未経験でして……」

 『未経験』…?って、だから

 俺が首を傾げると、ライアンは顔を真っ赤にして「大人の階段をのぼりたい、ということです」と言った。

 『大人の階段』、『未経験』…。

 ひょっとして、アレか?嬉し恥ずかし『初めて♡』の経験のこと?!それを俺にほしい?!ーーってことは、つまり…。

「でも俺、男だけどΩだから、その~…。アレが普通の男性より小さいんだ。だからライアン君を満足させられないと思うんだよね?」

 それにライアンときたら、騎士なだけあって鍛えていてガタイがいい。身長も俺より十センチ以上高そうだ。オメガの細腕で、ライアンのあの足持ち上がるか?!抱けるのか、αを!?騎乗位なんてもってのほか…腹上死するっ!
 だから俺にその役割は無理だよ?と精一杯、伝えてみたつもりなのだが、伝わっただろうか…?

「え…。ア、アレが小さい…?」
   ライアンはゴクリ、と、生唾を飲み込んだ。そうだよ、って意味で俺も慎重に頷く。

「いや、そうじゃなくてっ!ち、違いますっ!そっちじゃありませんッ!」
「そっちじゃないって、どっち?」
「ど…どちらかというと、私のアレをニコラさんのアソコへ…」
「ライアン君のアレが俺のアソコに?!」

 俺は死にかけの金魚みたいに口をぱくぱくさせた。だって俺、ライアンの友達のおとーさんで、立派なおじさんだよ?!

「なななな、なぜそんなことっ…!」
「実は今度騎士団で魔獣討伐に行くのですが、騎士団長がそこで最も活躍したものを報奨代わりに娼館に連れて行くというんです。私は騎士団で最も強い。ですからこのままではきっと娼館に連行されてしまう…っ!」

 ライアンはがくんと項垂れた。普通、娼館に連れて行ってくれるなんて、喜ぶんじゃないのか?それをなぜ、そんなに落ち込んでいるんだ?こんなおじさんじゃなくて、綺麗なお姉さんと大人になれば良いのに!

「はっ!すると、ルイも!?」
「ルイはまだ、そこまでの腕はありません」

   何だとー?!俺はちょっとムッとした。でも、ルイが娼館に行くのは親としては複雑だったので少しだけ安堵した。

「初めてが娼婦なんて…。侘しいではありませんか…」

   つまり素人童貞は嫌ってこと?でもだからって相手俺ってちょっと、手当たり次第過ぎない…?
 ライアンに少し、不信感が湧いた。しかしライアンは真剣な顔で俺の手をぎゅっと握る。

「やはり初めては好きな人に捧げたいんです!ずっと、憧れて…ニコラさんが好きでした!」
   王子様のような美形に手を握られ告白され、普通なら『きゅん』とするのかもしれないが…俺はじっとりした目をライアンに向けた。

「でも先に、娼館の話を聞いてしまいましたから。ライアン君は素人童貞が嫌なだけなのかなって…」
「ぐ…っ!そ、それは…!確かに話の順番がまずかったことは確かです…」
「それに娼館が嫌なら、活躍しなければ良いんじゃ…」
「わざと手を抜くことは出来ません」

 ライアンという男は娼館も拒否、八百長も拒否するかなり真面目な男のようだ。堅物ともいえる。
 ライアンは握った手に更に力を込めた。

「初めて会った十五の時からお慕いしていました。ずっと、貴方と結ばれたいと思っていて…夢を叶えていただけませんか?」

   ライアンは最後の一押しとばかりに、熱い眼差しで口説いてくる。ライアンという人は、本当によく分からない。

「だったら、先日のヒートの時にしてしまえば良かったのに…。てっきり私のフェロモンは効かない方なのかと…」
「それは誤解です!あの後、素振りを一日千回しても平気な私が腱鞘炎になる程自慰行為に耽ったのです。どれ程の我慢だったか想像に難くないはずだ…!」

 自慰行為で腱鞘炎…?素振り千回しても平気な男が腱鞘炎になる自慰の回数って一体…。それでも千回は超えないだろうから、回数よりも手首を動かす速度が相当高速だったということ…?
 ライアンは感極まったのか俺を胸の中に抱きしめた。抱き合うと、ライアンの中心が熱を持っているのがわかる。
 
 で、でかぁっ!ていうか今のでもう勃ってるって、若ぁーー!十八歳すごーっ!

「や、やっぱり無理です…!ライアン君のアレを俺のアソコに、なんて…!」
「え、ひょっとしてアソコも小さいんですか…?」
   ライアンはまたゴクリと生唾を飲み込んだ。な、何を想像しているんだっ!恥ずかしい…!

「それは…わからないけど…」
「わからないんだ…」

   ライアンは三度目の、生唾を飲み込む。ちょっと、飲み過ぎじゃないか…?

「それに俺はずっとヒートなしの、枯れてるΩなんだ!」
「か、枯れ……。大丈夫です!丹念に前戯をして、それでも痛いようなら人気の魔女特製秘薬入りの香油を用意します!」

 魔女の秘薬ってなんだよ!しかもなんか色々道具まで調べてて怖いっ!俺はやや涙目のまま首を振って、全身で『無理だよ』を表現した。

「無理かどうかはやってみないと分かりません。ですから試しに一度だけ…!」
「一度だけ?やっぱり俺を娼婦代わりにするつもりで…」
「ちちち、違いますッ!今のは無理っていう流れを何とかしようとしただけで、深い意味はありません!」

    抱きしめていた腕を解いて、ライアンは俺を見つめた。

「言葉では私の気持ちが伝わらないので、行動で示します。今度の魔獣討伐、団長含め、全ての騎士団員の頂点に立ちます…貴方のために!」
「で、でも…」
   初めに『私が騎士団の中で最も強い』って自分から言ってたよね?それだと騎士団の頂点に立ったとしても当然の結果で、今回だけ、俺のためにすっごく頑張ったってことにはならなくない?腱鞘炎になってるから、その分を加味しろってこと…?だったら、『腱鞘炎を乗り越えて頂点に立ちます!』って言えば印象が違ったのに…。

 ライアンという人は、話の持っていきかたが少し、いやだいぶ下手なようだ…。

 その不器用さが少しかわいいな、なんて…。そう思えるのはやっぱり俺がお父さん目線だからだろうか?

「結果を見て決めてください」

   ライアンはそう言って、俺を家まで送ってから帰って行った。
 

 
 



  
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