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番外編
【ライアン視点最終話】12.初恋は友達のお父さん〜あと三年〜
****
「体調はどうだ…?」
「もう何ともありません」
あれから数日後、体調とアソコが回復した私を、アンジュは秘密裏に私室へ呼び出した。
「少し困ったことになった。ニコラがお前を蹴飛ばした後、騎士団に駆け込んで騒ぎになったんだ」
「……私も聞きました」
そうなのだ、ニコラは私をΩに暴行しようとした犯人だと思い込み、ニコルを連れて騎士団に駆け込んだらしい。騎士団が駆けつける以前に、私はルイとアンジュに運ばれていたので、その場では事なきを得たのだが…。
「騎士団がキチンと調べてしまってなぁ…。ニコルの家令が、兵士に金を握らせていた。お前と二人にして、既成事実を作ろうとしたのだろう」
「そうですか…」
「もっと悪いことに、ニコラはむしろ被害者のお前を蹴ってしまった。ニコラが知らなかったとはいえ、王位継承権のあるお前を平民が蹴ったとなれば、ただでは済まない」
「そ、そんなバカな…っ!」
自分もヒート事故で辛い目に遭っているニコラの、あの場での行動は当然だし、ニコラに全く非はないのだ…!
「お前ときたら、頭から上着を被っていた上に、下半身はだらしなく乱れていて…。どう見ても暴行犯だ。ニコラは悪くない」
アンジュも私と同じ見解のようで、どうしたものか、とため息をついた。
「ニコラはなぁ…、ニコルをとても心配して、騎士団でもニコルを一生懸命慰めていたらしい。ニコルが反省して、懺悔するほどにな」
「そうですか…」
確かに、その様子は想像に難く無い。
「ニコラは相手が誰か分かっていない。でももし相手が王位継承を持つと知っていても、同じ事をしただろう。ニコラはルイの父親で、心根が優しいんだ。だから、私は大事にしたくない」
「全く同感です。私が、陛下に話をします」
「いや、お前からだとどうなるか分からない…。リファー公爵に頼んで、叔母様から話してもらおう」
「母上に……」
母は陛下の娘だ。その母に頼めばきっとうまく取り計らってくれるだろう。でも同時に悔しくなった。私はまだ父や母に頼らなければ、何も解決出来ない子供なのだと、分かってしまった。
早く大人になりたい。好きな人を自分で守れる、大人に。
****
「来年また、王立学園を受験することにしました」
ニコラと一字違いの、ニコルは父親と共にリファー公爵家へ謝罪に訪れたのだが、その別れ際、ぽつりと呟いた。
「学園はαの巣窟だが、大丈夫なのか…?」
「ええ、ニコラさんに必殺技を伝授していただきましたから」
結局ニコラはお咎めなしになった。そもそも、彼は正当防衛で、悪くないのだ。そしていまだに、真相は知らない。それでいいと、アンジュも私も思っている。
「ニコラさんが応援してくれているから、来年は合格できる気がしています」
……なんで突然、そんな自信が芽生えたんだ?お前、「産まれただけで家名に傷をつけた」とか卑屈な事を言っていたΩか?それになんだ、応援って!
少し頬を染めて語る、ニコルに良くない感情が湧く。
「ニコラさんは、一人で息子さんを育てている、尊敬すべきΩです。私も彼のように、いえ、将来は彼のようなΩを支援できるような力をつけたいと考えています」
ニコルはそう言って、目を輝かせた。
俺は知っている。その目の輝きは…!
ニコルが頭を下げて、公爵家から去っていく後ろ姿を見つめながら、思った。
大丈夫だ。来年入学ということは、私が一年先に大人になる。腹を壊して運ばれたりしない、ニコラを守れる大人になったら、すぐに告白して、私が誰よりも先に恋人になるんだ。そうすれば「ΩとΩがムフフ」という事態は回避出来る。
しかしその後、城で働くニコラをこっそり見に行き、愕然とした。なんと、ニコラはチョーカーをつけていたのだ。しかも、あれはニコル・オランド家の家紋である馬の絵がつている。一体どういうこと…?
動揺している間に仕事を終えたニコラの元に、息子のルイがやって来た。
「父さん、チョーカーすることにしたの?」
「うん。この間、ニコルにもらったんだ」
ちょっと嬉しそうにニコラは笑った。やはり、ニコルのやつ、忌々しい…!
そう思ったのは俺だけではなかったようで、ルイは表情を曇らせた。
「でも、今までチョーカーなんてしていなかったんだから、かえって不自然じゃない?『私はΩです』って触れて歩いてるみたいだ」
「そ、そんなことないよ…!ただ、ニコルの気持ちが嬉しかったから、一度くらいはつけないとなって…」
「じゃあ、もう、一度つけたからいいだろう?」
ルイはそう言って、チョーカーをとってしまった。そして優しく微笑む。
「父さんは元々フェロモンが薄い。それに城のアルファはこの間の騒動で抑制剤を飲む決まりにアンジュ殿下が変更したし、チョーカーをつける方が危ないよ。帰りは俺が迎えにくるから」
「ありがとう…!」
ルイは執着系の恋人みたいな台詞を言って、ぴったりと寄り添い父親と連れ立って帰って行った。
そういえばルイのやつ、初めて会った日も「父を助けたい」とか言っていたっけ。どうやらルイは執着系父親溺愛息子のようだ。まさか、「父と息子がムフフ」じゃないよな…?!
成人するまでの三年で、解決しなければならない問題が色々と可視化された。
「忙しくなるな…」
とりあえず、ルイに嫌われるとニコルのように排除されてしまうから、それは避けよう。ルイの親友になって、それから…。
三年後、最後の仕上げに私を、大人にしてもらおう。大人の男に。
大きく息を吸い込むと、風に乗ってニコラの甘い香りが漂ってくる。そんな気がした。
今はまだ、友達のお父さんだけど。
待っていてください、今は、息子の隣で。
「体調はどうだ…?」
「もう何ともありません」
あれから数日後、体調とアソコが回復した私を、アンジュは秘密裏に私室へ呼び出した。
「少し困ったことになった。ニコラがお前を蹴飛ばした後、騎士団に駆け込んで騒ぎになったんだ」
「……私も聞きました」
そうなのだ、ニコラは私をΩに暴行しようとした犯人だと思い込み、ニコルを連れて騎士団に駆け込んだらしい。騎士団が駆けつける以前に、私はルイとアンジュに運ばれていたので、その場では事なきを得たのだが…。
「騎士団がキチンと調べてしまってなぁ…。ニコルの家令が、兵士に金を握らせていた。お前と二人にして、既成事実を作ろうとしたのだろう」
「そうですか…」
「もっと悪いことに、ニコラはむしろ被害者のお前を蹴ってしまった。ニコラが知らなかったとはいえ、王位継承権のあるお前を平民が蹴ったとなれば、ただでは済まない」
「そ、そんなバカな…っ!」
自分もヒート事故で辛い目に遭っているニコラの、あの場での行動は当然だし、ニコラに全く非はないのだ…!
「お前ときたら、頭から上着を被っていた上に、下半身はだらしなく乱れていて…。どう見ても暴行犯だ。ニコラは悪くない」
アンジュも私と同じ見解のようで、どうしたものか、とため息をついた。
「ニコラはなぁ…、ニコルをとても心配して、騎士団でもニコルを一生懸命慰めていたらしい。ニコルが反省して、懺悔するほどにな」
「そうですか…」
確かに、その様子は想像に難く無い。
「ニコラは相手が誰か分かっていない。でももし相手が王位継承を持つと知っていても、同じ事をしただろう。ニコラはルイの父親で、心根が優しいんだ。だから、私は大事にしたくない」
「全く同感です。私が、陛下に話をします」
「いや、お前からだとどうなるか分からない…。リファー公爵に頼んで、叔母様から話してもらおう」
「母上に……」
母は陛下の娘だ。その母に頼めばきっとうまく取り計らってくれるだろう。でも同時に悔しくなった。私はまだ父や母に頼らなければ、何も解決出来ない子供なのだと、分かってしまった。
早く大人になりたい。好きな人を自分で守れる、大人に。
****
「来年また、王立学園を受験することにしました」
ニコラと一字違いの、ニコルは父親と共にリファー公爵家へ謝罪に訪れたのだが、その別れ際、ぽつりと呟いた。
「学園はαの巣窟だが、大丈夫なのか…?」
「ええ、ニコラさんに必殺技を伝授していただきましたから」
結局ニコラはお咎めなしになった。そもそも、彼は正当防衛で、悪くないのだ。そしていまだに、真相は知らない。それでいいと、アンジュも私も思っている。
「ニコラさんが応援してくれているから、来年は合格できる気がしています」
……なんで突然、そんな自信が芽生えたんだ?お前、「産まれただけで家名に傷をつけた」とか卑屈な事を言っていたΩか?それになんだ、応援って!
少し頬を染めて語る、ニコルに良くない感情が湧く。
「ニコラさんは、一人で息子さんを育てている、尊敬すべきΩです。私も彼のように、いえ、将来は彼のようなΩを支援できるような力をつけたいと考えています」
ニコルはそう言って、目を輝かせた。
俺は知っている。その目の輝きは…!
ニコルが頭を下げて、公爵家から去っていく後ろ姿を見つめながら、思った。
大丈夫だ。来年入学ということは、私が一年先に大人になる。腹を壊して運ばれたりしない、ニコラを守れる大人になったら、すぐに告白して、私が誰よりも先に恋人になるんだ。そうすれば「ΩとΩがムフフ」という事態は回避出来る。
しかしその後、城で働くニコラをこっそり見に行き、愕然とした。なんと、ニコラはチョーカーをつけていたのだ。しかも、あれはニコル・オランド家の家紋である馬の絵がつている。一体どういうこと…?
動揺している間に仕事を終えたニコラの元に、息子のルイがやって来た。
「父さん、チョーカーすることにしたの?」
「うん。この間、ニコルにもらったんだ」
ちょっと嬉しそうにニコラは笑った。やはり、ニコルのやつ、忌々しい…!
そう思ったのは俺だけではなかったようで、ルイは表情を曇らせた。
「でも、今までチョーカーなんてしていなかったんだから、かえって不自然じゃない?『私はΩです』って触れて歩いてるみたいだ」
「そ、そんなことないよ…!ただ、ニコルの気持ちが嬉しかったから、一度くらいはつけないとなって…」
「じゃあ、もう、一度つけたからいいだろう?」
ルイはそう言って、チョーカーをとってしまった。そして優しく微笑む。
「父さんは元々フェロモンが薄い。それに城のアルファはこの間の騒動で抑制剤を飲む決まりにアンジュ殿下が変更したし、チョーカーをつける方が危ないよ。帰りは俺が迎えにくるから」
「ありがとう…!」
ルイは執着系の恋人みたいな台詞を言って、ぴったりと寄り添い父親と連れ立って帰って行った。
そういえばルイのやつ、初めて会った日も「父を助けたい」とか言っていたっけ。どうやらルイは執着系父親溺愛息子のようだ。まさか、「父と息子がムフフ」じゃないよな…?!
成人するまでの三年で、解決しなければならない問題が色々と可視化された。
「忙しくなるな…」
とりあえず、ルイに嫌われるとニコルのように排除されてしまうから、それは避けよう。ルイの親友になって、それから…。
三年後、最後の仕上げに私を、大人にしてもらおう。大人の男に。
大きく息を吸い込むと、風に乗ってニコラの甘い香りが漂ってくる。そんな気がした。
今はまだ、友達のお父さんだけど。
待っていてください、今は、息子の隣で。
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