猫の首に鈴をつけたい騎士団長とおひさま浴びてヘソ天で寝たい闇の教祖

あさ田ぱん

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10.古の厄災

 ……なんてこった。

 詰んだ~…!だってまさか、女神像で焼き芋してるとは、思わないじゃないか?!

 コンラッドは天国にイッちゃってるし…、ここは、自分の力で切り抜けるしかない!

「ご、ごか…!」

 誤解って言おうとしたら、また緊張で噛んでしまった。

「ご加護など馬鹿が信じることだ、だと?!貴様ー!言うに事欠いて!」

え……。

 そんなこと言ってないのに勝手に言い換えられてる!完全に俺が女神像を焼いていると決めつけて、俺をなんとしてでも悪者にしたいのか?なんなんだ、この人達…っ!

 呆れて力が抜けた俺の手から女神像が滑り落ち、薪の中に落下した。

 緊迫した空気の中、火の粉がはぜる、ぱちぱち、という音が響く。

「こいつ!我らの目の前でなんてことを!」

騎士達が俺めがけて、一斉に走ってくる。

 だから、誤解なんだって~!

 俺は怯える子供達を、背中に庇った。

 すると…。

 ばちばち、と突然、火の勢いが増した時のような、大きな音がした。

 背後から禍々しい気配を感じ、振り返ると炎は黒紫の煙に変わっていた。

「しょ、瘴気だ……っ!」
「逃げろ!撤退ー!」


騎士団の兵士たちは、子供が三人いて俺が抱えきれないと思ったのだろう、カイとリオを背負って走り出した。俺もクレイを背負って走る。

 学校の敷地を出て少しすると、兵士は二人を降ろした。

「この辺りは封鎖する。取りあえずここを離れろ!」

 俺たちが燃やした女神像のせいでこうなったのに、救出してくれた挙句、解放してくれるなんて…!さすがコンラッドの部下だ。やさし~!さっきなんだコイツって思ってごめん!

 兵士たちは、周辺の住民を避難させるため、散り散りに走っていった。

「住人は避難せよ!」
「狼煙を上げろ!応援を呼べ!」
「いや、直接、教会へ…」
「そんな暇はないっ!とにかく急げ!」

騎士団の兵士たちは必死に住人を避難させようとするが、コンラッドが不在の影響か、指揮を欠いて明らかに混乱していた。

 その間に、背後で瘴気が勢いを増す…。

「恐ろしい…、な、なんだっ、これは…!」
「急げ!逃げろ!」

俺と子供達も逃げ惑う人々の波に呑まれ、押し出されるようにその場を離れた。

 通りを一本外れ、かろうじて息をついたその瞬間、地の底から響くような轟音と共に、地面が揺れる。爆ぜるような衝撃音が、街全体を震わせた。

「……何だ、あれは…?!」

 視線を上げると、漆黒の柱が空へと立ち上がり、瘴気が雲を突き破っていた。

 その瘴気の中心で、黄金の閃光が二つ、ゆらりと灯る…。

 ーーそれは、瞳だった。

 爬虫類を思わせる、冷酷な縦裂瞳。獣のものとも、人のものとも異なる、神話から抜け出たような災厄の眼差し…。

 ただ睨まれただけで、騎士団の兵士や街の住人達もその場にへたり込んでしまった。叫び声すら出せず、全員その場でただ、震えている。

『――ようやく封印が解けた。全く、とんだ苦労をさせられた…』

 低く、重く、耳ではなく魂を震わせる声が瘴気の奥底から響き渡る。それは怨嗟を孕んだ声…。


 ……あいつ、『とんだ苦労をさせられた』ってことは、『苦労人』なんだな?…俺も、闇属性で生まれ、前院長に置いていかれ、『苦労』は知っている。

 けど、だからといって、罪のない人を傷付けていい理由にはならない!

「カイ、リオ!クレイを連れて、逃げられるか?」
「え、ノワールは、どうするの?!」
「ノワールも逃げよう!」

見回した限り、前回と違い聖女が姿を見せていない。たぶん、それはコンラッドが天国にイッちゃってるからだろう。それなら闇属性で瘴気が効かない俺が、行くしかない。

「ちょっとあいつをやっつけてくるから、みんなはこの先で待っていてくれ!」
「そ、そんな…!いくらなんでも危なすぎるよ!」
「大丈夫。俺に瘴気は効かないから!」

俺は子供達にもう一度魔法をかけて、髪の色を安定化させた。心配そうにする子供達が駆け出したのを見届けてから、暗黒神オルドの面とマントを被り、逆方向へ走る。

『勇者を血祭りにあげてくれる!』

 耳を裂く咆哮が、街を覆い尽くした。

 瘴気は嵐のごとく吹き荒れ、視界を呑み込む。その中心から姿を現したのは、漆黒の竜…。

 ……あれ、古の勇者に打ち滅ぼされた、闇竜じゃねーかっ!

 俺の仮面、うっかりお揃いだよ!

 ど、どうしようー?!

『お前達の崇める神とやらを呪うがいい…!』

 闇竜はゆっくりと首をもたげ、座り込む人々に向けて口を開いた。

 そこから吐き出されたのは、靄のように広がるドス黒い霧。恐ろしい速さで、街を飲み込むように広がっていく…!

「そんな姿で悪さするなあっ!」

 俺がまた疑われちゃうだろうがぁ!

 倒れている兵士の剣を拾い、霧の前に飛び出した。自分の魔力を剣に纏わせ、迫り来る黒い霧を一閃、打ち払う。

『なんだ、お前は…!』

 まさか、効かないとは思っていなかったのだろう。闇竜は酷く動揺していた。俺はその隙を見逃さず、闇竜に向かって飛びかかる。

「私は、暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖だ!口を慎め!」

 そして、闇竜に向かって真っ直ぐに剣を振り下ろした。

『がっ…!ま、ま、さか…っ!う、ぐぁ゛ぁ゛ーーっ!』

 悲鳴のような、雄叫びを上げると闇竜は瞬く間に霧散してしまった。
 
 闇竜が消えた後、残った靄も、剣で一払いすると、跡形もなく消え去る。

「ふー。なんだったんだあいつ…」

地面にふわりと着地して、剣をそっと兵士に返すと、周囲の視線を感じた。騎士団の兵士や地面に座り込んでいた人達が、目を丸くして俺を見ていたのだ。

 ひどく驚いた様子で固まっていたが、次第に、ざわめきが起こった。

暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖様が、我らをお救いになった…!」
「私も見た!闇竜を一瞬で祓われた!」
「先日も、彼は聖女さまも敵わなかった、瘴気を一瞬で祓ったのだ!」
暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖様…!」

俺が、子供達を迎えに行くために、学校とは反対の方向へ歩き始めると、ざわめきは大きな歓声に変わった。

暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖様!ありがとうございます!」
暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖様!きゃあーっ!」
暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖様、万歳!」

人々は、口々に暗黒神教団オルド・テネブラルム教祖への賞賛を叫ぶ。

「オルド!」
「オルド!」
「オルド!」
「オルド!」

 ーーかつてない、状況…。

 これは…。

 これは、いけるかもしれない…っ!!


「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ~!暗黒神教団オルド・テネブラルムのお守り、今なら銀貨一枚だよー!祈祷は銅貨五枚!いかがですかぁ~!?」

 思い切って倍以上に値上げしちゃった~!
 ちょっと高くてごめんよー、でも目指せ、家賃完済~!!

「買ったー!」
「私も!」
「俺も頼む!」
「いや俺が先だーっ!」
「押さないで、順番でーす!あっ、仮面と服は引っ張らないで~!」
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