猫の首に鈴をつけたい騎士団長とおひさま浴びてヘソ天で寝たい闇の教祖

あさ田ぱん

文字の大きさ
25 / 35

20.帰宅

しおりを挟む
 


 コンラッドとにゃんにゃん♡すること複数回…。

 いつのまにか眠ってしまっていたようで、朝、コンラッドの胸の中で目を覚ました。

 あまりにも幸せで夢うつつだったが、布団を捲ると、身体にはにゃんにゃん♡の証がそこかしこにあった。腰は痺れ、肌には赤い鬱血痕がちっている。

 夢じゃなかったぁ…!

 興奮したからか、首元の鈴がちりんと鳴った。この鈴のせいで大変なことになったのだ。このまま、つけておくわけにもいかず、俺は仕方なく、その鈴を取って、枕元に置く。

「ノワール起きたのか…?」

物音に反応したらしいコンラッドはうっすらと目を開け、眠そうに瞼を擦っている。

 どんな顔をしていいか分からず、俺は慌てて子猫に変身した。

「ん…?子猫になったのか…?」

コンラッドは子猫になった俺に、頬擦りしてキスする。

 嬉しくてゴロゴロと喉を鳴らすと、部屋の扉が叩かれた。

 コンラッドはしばらく無視していたが、あまりにも続くのでさっと服を羽織り、扉を開けた。

「コンラッド…!」

 やって来たのは、聖女だった。
 コンラッドを見た彼女は、驚いて目を丸くしている。

「おはようございます。聖女様…。昨日はありがとうございました」
「…もう、身体はいいのですか…?」
「ええ、すっかり」
「すっかり…?まさか、あんなに昨日、苦しんでいたのに…?」

聖女が訝しげに首を傾げると、後ろにいたお母様が部屋に入ってきて、俺を抱き上げた。

「私も本当に不思議だったの。でも、この子が来て、少しして様子を見に来たら、コンラッドは起き上がっていたの…!」

 『少し』とは言い難い時間、俺たちはにゃんにゃんしていたが…。必死に医者を探していたお母様の体内時計は思いの外、ゆっくり進んでいたのだろう。

俺は興奮したお母様に両脇を掴まれ、足がプランとして、少し心もとない状態で聖女の前に掲げられた。

「……その猫、暗黒神オルドの印がついていますね…」
「え…?」

お母様は俺のチャームを見て、しまった、という顔をした。光の女神の使徒である聖女のいる前で暗黒神オルドの印を持つ俺を褒めてしまったのだ。まずい事を言ったと、すぐに悟ったらしい。

「まさか、お母様まで…、暗黒神オルドに助けられたと言うのですか?」

聖女は眉に皺を寄せて、俺を睨みつける。

 その様子に気がついたコンラッドが、お母様から俺を取り上げた。

「母上、滅多なことを言わないでください。その前に聖女様が浄化魔法をかけてくださった、その効果が遅れて現れたのですよ…!」
「そ、そうね…!そうだわ!私ったら、昨日から気が動転していて…。聖女様、本当にありがとうございます…」
「……」

慌ててコンラッドが場を収めようとお母様の言葉を取りなしたが、彼女の機嫌を損ねたらしい。無言で踵を返し、部屋を出て行ってしまった。

 慌てて、コンラッドのお母様が後を追う。

 コンラッドはそれを見送って、誰もいなくなると俺の頭を撫でた。

「…昨日、魔力切れまで治療してくれた聖女の手前、ああ言ったが、私が回復したのはお前のおかげだ。ノワール、ありがとう…」
お礼なんてにゃあにゃにゃ…」

 俺を庇って怪我をしたのだから、助けるのは当然のこと…。それに、コンラッドと抱き合えて、本当に嬉しかった。

 「俺こそありがとう」の代わりに「にゃあ」と、鳴くと、コンラッドは少し、真剣な顔をする。

「…事情は分からないが、あの子供達を育てているんだろう?私が手助けするから、ノワールはここにいろ」
「……」

 コンラッド…。

 嬉し過ぎる、申し出だった。

でも……。あの子達は『闇属性』かつ『黒目黒髪』なのだ…。
 コンラッドは差別なく接してくれているが、他の人はそうではない。

 やはり魔法が使えるようになるまでは、世間から隔離して俺の元で育てた方が、危険は少ない。

俺が静かに首を振ると、コンラッドは優しく頭を撫でてくれた。

「ノワールは成人とはいえ、十八歳。まだまだ子猫の部類だ。私を頼っていいんだぞ…?」

その言葉だけで嬉しくて、俺はコンラッドに頬擦りした。

 ーー今日は不思議だ。

 いつもなら朝になると魔力が弱まるのに、体の中に力が漲っている。

 コンラッドが優しくしてくれたからだろうか…?




 コンラッドに頬擦りしていると、こんこんと窓を叩く音がした。

「…アーケス!」

 窓を叩いていたのは騎士団の伝令鳥であるカササギのアーケスだった。コンラッドが窓を開けると、部屋の中に入り、俺に向かってびゅん、と飛んでくる。


盛りのついた泥棒猫めがっカチカチカチカチカチ団長に何をしたカチカチカチカチカチっ!?」

コンラッドとはナニ♡を、しっぽり♡したわけだが…。

 怖い怖い!すっごい怒ってる…!

 アーケスは飛びながら嘴で俺を攻撃しようとした。

「やめろ、アーケス!」

アーケスはピタリと動きを止めると、泣きそうな顔で、コンラッドの肩にとまった。嘴を頬につん、と擦り付けている。

だって浮気したぁカチカチカチカチ~。わあーんカチカチーン!」
「伝令だな。ご苦労…」

二人の会話は噛み合わないままだったが、コンラッドはアーケスの足に巻かれた紙を取ると、読み上げた。

「……証拠不十分で、アドリア王太子殿下がビョルンを解放した…」

王太子殿下が、ビョルンを…?

 何故かは分からないが、とにかく、ビョルンへの疑いが晴れて良かった…。

 ビョルンは俺のせいで捕まったのだ。一度、謝罪をしなければ。

 俺は開いている窓から、ぴょんっと外へ出た。

「ノワール…!気をつけていけ。ちゃんと戻ってこい!」

コンラッドの呼びかけにうなずいて、俺はビョルンの邸に向かった。




 俺が邸に戻ると、ちょうどビョルンが釈放されて帰って来たところだった。


「ビョルン、良かった!解放されて…!あの、ご迷惑をお掛けして…」
「謝罪されても、バルちゃんは戻らない…。私はバルちゃんを探す。出て行ってくれ…!」

ビョルンは俺に冷たく告げた。

「孤児院は約束通り、好きにしろ」

ビョルンはそれだけ言うと、すぐに出て行ってしまった。



 俺がビョルンを怒らせてしまったので、俺たちは邸を出て孤児院へ戻った。

 孤児院へ到着するなり、子供達は不満を爆発させた。

「ビョルンの家を追い出されたの、ノワールのせいだよ!」
「そうだよ!だいたい今までどこ行ってたの?まさかまた、あの騎士団長のところ?鈴までつけられて探されて、飼われてるわけ?!」
「……」

ビョルンに追い出されたのは俺のせいだ。子供達の言うことは間違っていないから、反論できない。

 俺が黙っていると、子供達は自分の部屋へ走って行ってしまった。

 何故かついて来た前院長が、俺の肩を叩く。

「ほら、ここよりビョルンの家の方がずーっと日当たりもいいし立派で快適だったからさ。ずっとあそこに居たいと思っちまったんだよ…。でもそのうちまた、ここに慣れるさ」

 …それは俺も、同じだった。

 コンラッドのおひさまの匂いのする部屋が、大好きだ。だから子供達の気持ちは理解できる。さぞ、がっかりしただろう…。

 今の俺に出来ることは金を稼いで、子供達が大人になるまで出来るだけ良い環境で過ごさせてやること、それだけだ。

「お前は一人でよく頑張ったよ」
「…急に、どうしたんですか?」
「いや本当に…。出て行っちまって、悪かったな…」

 俺はずっと、院長が娼館で遊んでいるのを、見ていた。今更、見え透いた謝罪なんて、言われても信じられない。

 たぶん、金がなくなったからここに居座ろうという魂胆だな?

「院長、ここにいるつもりなら、子供達に魔法を教えてもらえませんか?それと、夜、子供達を見ていてほしいんです」
「ん…?いいぞ!」

俺は早速、暗黒神オルドのお守りを作った。

 それと、この間燃やしてしまったリオのお守りの代わりに、少し大きめのルナちゃん像も作った。リオの家族、ダンゴムシもたくさん添えて…。

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

処理中です...