30 / 35
25.オルドの名
男は娘と妻を兵士に預けると、夜会の会場ではなく特別に用意されていたという控室へ向かった。
その部屋へ案内した使用人の男は、俺をちらちらと盗み見ていた。
男の同伴者ということで、入り口で止められはしなかったが、娘と妻にもこの兵士にもひどく怪しまれている。
応接室へ着いてソファに座るや否や、男は使用人に尋ねた。
「司祭と聖女様はいついらっしゃるのだ?」
「間もなくの予定です」
使用人は俺と男の前にグラスを置き、果実酒を注いだ。2人分の給仕が終わると、少しお待ちくださいと言って部屋を出ていく。
酒を飲んだことはなかったが、孤児院から王城まで何も飲んでいなかったので、俺はすぐにグラスの酒を飲み干した。
一拍遅れて、男も酒を口に含む。
「う…っ!がぁ…っ!」
口に含んだ直後、男は呻き声を上げ、酒を吐き出すと、そのまま床に倒れてしまった。
「ど、どうしました…っ?!」
俺は、あわてて男に駆け寄った。顔色が、ひどく悪い…。
「な、なんてことだ…!」
状況から推察すると、さっきの使用人が、毒を盛ったのか…?
飲んでから吐き出すまでの時間がかなり短かったから、即効性の毒のようで顔色は真っ青だが、まだ息がある…!
はやく、なんとかしないと…。しかし、どうしたら?!
「ん…?」
男が倒れた床に、暗黒神のお守りが落ちているのを見つけた。これは俺が作った本物のお守りだ…!
「ひょっとしてこれが、少し毒を吸ったから助かったのか?それなら…!」
俺は男の手を握ると、瘴気を吸う要領で毒を吸った。
徐々に、男の顔色が戻ってくる。
「は…、はぁ…、はぁ…っ!」
死んだように静かになっていたが、呼吸も少しずつ戻ってきた。良かった…。
「大丈夫ですか?」
「あ、貴方が、解毒魔法を…?」
「…魔法ではありませんが…」
そう、この力は魔法ではない。自分でもよくわからない、自分の力だ…。
「く、くそぉっ!油断した!アイツら、私の口を塞ぐつもりだ…っ!」
「アイツら?口を塞ぐ…?」
俺に聞き返され、男はハッとして押し黙った。
その沈黙を破るように、部屋の扉が開く。
「何か、物音がしましたが…。どうなさいましたか?」
「司祭っ!」
男は部屋に入ってきた教会関係者に掴みかからんばかりの勢いで怒鳴った。
「私の飲み物に毒を仕込んだのは貴方ですか?!」
「…毒?何のことです…?」
「私は今、毒で死にかけたのです!あなた方、約束の金を惜しんで、私の口を封じようとしたのでは無いですか?!」
男は報奨金に、コンラッドと娘の婚約まで手に入れたようだが…。更に教会からも金を手に入れようとしていたのか…?
娘が誘拐されただけで、そこまで貰えるものなのか?
男に責められた司祭は苦し紛れに、俺を指差した。
「わ、私ではありません!毒を盛ったのは、きっとその怪しげな男でしょう!」
「私はこの方に救われたのだから、違うっ!しらばくれるな!お前では話にならない!もういい、聖女に直接、確認する!」
「お、お待ちください…!」
部屋を出ようとする男を、司祭は止めようとした。部屋には教会の神父と思われる男達が次々と雪崩れ込んでくる。
これって、あれだよね?!いわゆる、仲間割れ…!
よく分かんないけど、俺、大勝利の予感…っ!
「おい、やめろ!」
俺が教会の神父達を一喝すると、全員がぴたりと動きを止めた。俺はそのまま、誘拐された娘の父親を引っ張って部屋を出ると、夜会の会場へと向かう。
待ってて、コンラッド!今、汚名を雪ぐからっ!
「まてーっ!」
後ろから神父達が追いかけて来たが、無視して夜会が行われている広間への扉をばーんと開けた。
楽しげな音楽は一瞬で止み、歓談していた人たちも全員こちらに注目する。
「おい、何事だ?!」
声を荒げたのは、広間の中心にいたアドリア王太子殿下だった。隣にいる聖女は俺に気が付き、少し高い場所から冷たく俺を見下ろしている。
辺りを見回したが、コンラッドの姿がない。
それでも俺は迷いなく、聖女のところへ向かった。
「暗黒神の教祖様…、何故ここへ?」
「俺は招待されたんですよ」
首についているマジックバックから手紙を取り出すと、手紙はサラサラと崩れ去った。
証拠隠滅の魔術がかけられていたらしい。随分用意周到だ。
「まさか、誘拐犯を、夜会に招待するわけがありません」
「俺は誘拐犯じゃない。招待状以外にも証拠がありますよ…!」
「証拠…?」
「ええ、彼です」
「失礼ですが、存じ上げません」
俺が、娘の父親をグイ、と前に押し出すと、聖女は汚い物を見るかのように、扇子で顔を隠した。
どうやら言い逃れするつもりらしい。もっと近くで顔を見せてやろうと近づくと、聖女はパチンと手を叩き、俺の足元を指差す。
「そこで止まりなさいっ!」
「へ?!」
俺の足元の床には、足がすっぽり収まるくらいの丸い輪が描かれていた。
これ、猫がつい入っちゃう猫転送装置という名のただの丸い輪だあーっ!
「な、なんだこれっ!魔法陣なのか?!つい、はいってしまったぁ~っ!」
「まあ、呆れた。本当にこんな仕掛けに引っかかるなんて、貴方本当に猫なのね…?」
「しまったぁー!」
床に円があると、なんか分かんないけど入っちゃうんだあー!
それより、俺が猫の生態に依ってるって、誰に聞いたんだ…?!
やっぱり、子供達が俺を売ったのか…?
「そこで大人しく聞いていなさい。子供たちを、ここへ…!」
聖女が近くの神父に合図すると、子供達が連れてこられた。
「カイ、リオ、クレイ…!」
呼びかけると、三人は少し表情を歪める。
俺の胸は、ドキンと鳴った。
いやな、予感がする。
「さあ、あなた達…。正直に、今までの事を話しなさい?大丈夫、みんな貴方達の味方よ…?」
「あ、あの…。ぼくたち、暗黒神の教祖にずっと閉じ込められて、人買いに売られそうになってましたっ!」
「へ?!」
ななな、何だって?!
「俺がいつ、そんなことした!?ずっと、孤児院で一緒に暮らしてただろう…っ!?」
あまりの衝撃で、俺はぶるぶると震えていた。
子供達は眉を下げて、聖女の影にさっと隠れる。
「暗黒神の教祖様。子供たちを脅さないでください!」
「ちょっと、ちゃんと話をさせてくれ!カイ、リオ、クレイ…!」
俺が呼びかけると、聖女の背後からカイだけが顔を出した。
カイはぽろぽろと涙を流している。
「だって、こう言えば、クレイは本当のお父さんとお母さんのところへ帰れるんだ。俺とリオも、ビョルンの養子にしてもらえるって言われて…」
「…え…?」
クレイは家に帰れて、カイとリオはビョルンの家の養子になる…?
「俺たちがいなければ、ノワールだって、猫になるつもりなんだろ!」
確かにそうだ。猫になってコンラッドに飼われるのが俺の夢。
でも、それはお前達が大人になるまではと、我慢してきたんだ……!
「あなた達、もう下がりなさいっ!」
聖女は、子供たちに余計な事を言わせまいと、この場から追いやろうとした。
聖女が、子供達に餌を与えて、俺を人さらいだと証言させたことは明らかだった。
『それでも、信じていた。ずっと一緒に暮らしてきたから…俺を売ったりしない、そう、信じていた』
ーーけど、裏切られた。
ーーコンラッドも、いない。
ひょっとして、みんな、バルドラースの言う通り、俺を裏切ったのではないか…?俺を信じるなんて、嘘だったんだ。
「さあ!誘拐に人身売買、聖像破壊…!その犯人である暗黒神の教祖を捕えなさい!」
聖女が叫ぶと、一斉に神父や、聖騎士達が俺を捕まえようと襲い掛かってきた。
ーーその時、俺の心臓がパキンと割れる、音がした。
胸の奥にあった黒い靄が染み出し、ゆっくりと広がっていく。冷たい闇が血管を這うように、体の隅々まで染み渡る。
気づけば、流した涙さえ、闇に染まっていた。
同時に会場の空気は凍り、そこかしこで悲鳴が上がる。
『お前達は仲が良くて、兄弟のように過ごしてきた。クレイが家族の元に帰りたい気持ち、一緒にいたカイとリオはその気持ちを叶えてやりたい、そんな優しい気持ちだったんだろう…?それに、小さいお前達は、不安だったんだ。猫になりたい俺より、ビョルンに理想の家族像を見たのかもしれない…。わかっている。全て、わかっているよ…。だからこれは決して、恨みの感情では無いんだ』
ーー恨んでいないのに、体の中から瘴気のような闇が、とめどなく溢れてくる。
子供達の言う事を否定することは出来る。誘拐された娘の父親は怪しい。男の持っているオルドのお守りを出せば、アドリア王太子は彼を調べるだろう。
しかし、俺は口を噤んだ。
『全てを許そう、哀れな子供たちよ…。なぜなら、私は…』
ーー私は…?
俺はただの『ノワール』だ。暗黒神を名乗ったのも、自分を大きく見せて、身を守りたかっただけ。それだけのはずだが…。
俺はなぜ、その名を『オルド』と名付けたのだ…?
それだけのはずなのに、滾る力が身体を突き破りそうになった。
ーー目覚めの時が近い。私は…!
『私はその昔、魔王と呼ばれていた…!』
ーーああ…!
強大な力が目覚めるのを感じる…。
身体からわずかに滲み出す力だけで、辺りをあっという間に闇で覆い尽くし、悲鳴さえ飲み込んでしまった。
『私の名は……!』
ーー暗黒神であり、魔王、オルド…!
「ノワール!」
その部屋へ案内した使用人の男は、俺をちらちらと盗み見ていた。
男の同伴者ということで、入り口で止められはしなかったが、娘と妻にもこの兵士にもひどく怪しまれている。
応接室へ着いてソファに座るや否や、男は使用人に尋ねた。
「司祭と聖女様はいついらっしゃるのだ?」
「間もなくの予定です」
使用人は俺と男の前にグラスを置き、果実酒を注いだ。2人分の給仕が終わると、少しお待ちくださいと言って部屋を出ていく。
酒を飲んだことはなかったが、孤児院から王城まで何も飲んでいなかったので、俺はすぐにグラスの酒を飲み干した。
一拍遅れて、男も酒を口に含む。
「う…っ!がぁ…っ!」
口に含んだ直後、男は呻き声を上げ、酒を吐き出すと、そのまま床に倒れてしまった。
「ど、どうしました…っ?!」
俺は、あわてて男に駆け寄った。顔色が、ひどく悪い…。
「な、なんてことだ…!」
状況から推察すると、さっきの使用人が、毒を盛ったのか…?
飲んでから吐き出すまでの時間がかなり短かったから、即効性の毒のようで顔色は真っ青だが、まだ息がある…!
はやく、なんとかしないと…。しかし、どうしたら?!
「ん…?」
男が倒れた床に、暗黒神のお守りが落ちているのを見つけた。これは俺が作った本物のお守りだ…!
「ひょっとしてこれが、少し毒を吸ったから助かったのか?それなら…!」
俺は男の手を握ると、瘴気を吸う要領で毒を吸った。
徐々に、男の顔色が戻ってくる。
「は…、はぁ…、はぁ…っ!」
死んだように静かになっていたが、呼吸も少しずつ戻ってきた。良かった…。
「大丈夫ですか?」
「あ、貴方が、解毒魔法を…?」
「…魔法ではありませんが…」
そう、この力は魔法ではない。自分でもよくわからない、自分の力だ…。
「く、くそぉっ!油断した!アイツら、私の口を塞ぐつもりだ…っ!」
「アイツら?口を塞ぐ…?」
俺に聞き返され、男はハッとして押し黙った。
その沈黙を破るように、部屋の扉が開く。
「何か、物音がしましたが…。どうなさいましたか?」
「司祭っ!」
男は部屋に入ってきた教会関係者に掴みかからんばかりの勢いで怒鳴った。
「私の飲み物に毒を仕込んだのは貴方ですか?!」
「…毒?何のことです…?」
「私は今、毒で死にかけたのです!あなた方、約束の金を惜しんで、私の口を封じようとしたのでは無いですか?!」
男は報奨金に、コンラッドと娘の婚約まで手に入れたようだが…。更に教会からも金を手に入れようとしていたのか…?
娘が誘拐されただけで、そこまで貰えるものなのか?
男に責められた司祭は苦し紛れに、俺を指差した。
「わ、私ではありません!毒を盛ったのは、きっとその怪しげな男でしょう!」
「私はこの方に救われたのだから、違うっ!しらばくれるな!お前では話にならない!もういい、聖女に直接、確認する!」
「お、お待ちください…!」
部屋を出ようとする男を、司祭は止めようとした。部屋には教会の神父と思われる男達が次々と雪崩れ込んでくる。
これって、あれだよね?!いわゆる、仲間割れ…!
よく分かんないけど、俺、大勝利の予感…っ!
「おい、やめろ!」
俺が教会の神父達を一喝すると、全員がぴたりと動きを止めた。俺はそのまま、誘拐された娘の父親を引っ張って部屋を出ると、夜会の会場へと向かう。
待ってて、コンラッド!今、汚名を雪ぐからっ!
「まてーっ!」
後ろから神父達が追いかけて来たが、無視して夜会が行われている広間への扉をばーんと開けた。
楽しげな音楽は一瞬で止み、歓談していた人たちも全員こちらに注目する。
「おい、何事だ?!」
声を荒げたのは、広間の中心にいたアドリア王太子殿下だった。隣にいる聖女は俺に気が付き、少し高い場所から冷たく俺を見下ろしている。
辺りを見回したが、コンラッドの姿がない。
それでも俺は迷いなく、聖女のところへ向かった。
「暗黒神の教祖様…、何故ここへ?」
「俺は招待されたんですよ」
首についているマジックバックから手紙を取り出すと、手紙はサラサラと崩れ去った。
証拠隠滅の魔術がかけられていたらしい。随分用意周到だ。
「まさか、誘拐犯を、夜会に招待するわけがありません」
「俺は誘拐犯じゃない。招待状以外にも証拠がありますよ…!」
「証拠…?」
「ええ、彼です」
「失礼ですが、存じ上げません」
俺が、娘の父親をグイ、と前に押し出すと、聖女は汚い物を見るかのように、扇子で顔を隠した。
どうやら言い逃れするつもりらしい。もっと近くで顔を見せてやろうと近づくと、聖女はパチンと手を叩き、俺の足元を指差す。
「そこで止まりなさいっ!」
「へ?!」
俺の足元の床には、足がすっぽり収まるくらいの丸い輪が描かれていた。
これ、猫がつい入っちゃう猫転送装置という名のただの丸い輪だあーっ!
「な、なんだこれっ!魔法陣なのか?!つい、はいってしまったぁ~っ!」
「まあ、呆れた。本当にこんな仕掛けに引っかかるなんて、貴方本当に猫なのね…?」
「しまったぁー!」
床に円があると、なんか分かんないけど入っちゃうんだあー!
それより、俺が猫の生態に依ってるって、誰に聞いたんだ…?!
やっぱり、子供達が俺を売ったのか…?
「そこで大人しく聞いていなさい。子供たちを、ここへ…!」
聖女が近くの神父に合図すると、子供達が連れてこられた。
「カイ、リオ、クレイ…!」
呼びかけると、三人は少し表情を歪める。
俺の胸は、ドキンと鳴った。
いやな、予感がする。
「さあ、あなた達…。正直に、今までの事を話しなさい?大丈夫、みんな貴方達の味方よ…?」
「あ、あの…。ぼくたち、暗黒神の教祖にずっと閉じ込められて、人買いに売られそうになってましたっ!」
「へ?!」
ななな、何だって?!
「俺がいつ、そんなことした!?ずっと、孤児院で一緒に暮らしてただろう…っ!?」
あまりの衝撃で、俺はぶるぶると震えていた。
子供達は眉を下げて、聖女の影にさっと隠れる。
「暗黒神の教祖様。子供たちを脅さないでください!」
「ちょっと、ちゃんと話をさせてくれ!カイ、リオ、クレイ…!」
俺が呼びかけると、聖女の背後からカイだけが顔を出した。
カイはぽろぽろと涙を流している。
「だって、こう言えば、クレイは本当のお父さんとお母さんのところへ帰れるんだ。俺とリオも、ビョルンの養子にしてもらえるって言われて…」
「…え…?」
クレイは家に帰れて、カイとリオはビョルンの家の養子になる…?
「俺たちがいなければ、ノワールだって、猫になるつもりなんだろ!」
確かにそうだ。猫になってコンラッドに飼われるのが俺の夢。
でも、それはお前達が大人になるまではと、我慢してきたんだ……!
「あなた達、もう下がりなさいっ!」
聖女は、子供たちに余計な事を言わせまいと、この場から追いやろうとした。
聖女が、子供達に餌を与えて、俺を人さらいだと証言させたことは明らかだった。
『それでも、信じていた。ずっと一緒に暮らしてきたから…俺を売ったりしない、そう、信じていた』
ーーけど、裏切られた。
ーーコンラッドも、いない。
ひょっとして、みんな、バルドラースの言う通り、俺を裏切ったのではないか…?俺を信じるなんて、嘘だったんだ。
「さあ!誘拐に人身売買、聖像破壊…!その犯人である暗黒神の教祖を捕えなさい!」
聖女が叫ぶと、一斉に神父や、聖騎士達が俺を捕まえようと襲い掛かってきた。
ーーその時、俺の心臓がパキンと割れる、音がした。
胸の奥にあった黒い靄が染み出し、ゆっくりと広がっていく。冷たい闇が血管を這うように、体の隅々まで染み渡る。
気づけば、流した涙さえ、闇に染まっていた。
同時に会場の空気は凍り、そこかしこで悲鳴が上がる。
『お前達は仲が良くて、兄弟のように過ごしてきた。クレイが家族の元に帰りたい気持ち、一緒にいたカイとリオはその気持ちを叶えてやりたい、そんな優しい気持ちだったんだろう…?それに、小さいお前達は、不安だったんだ。猫になりたい俺より、ビョルンに理想の家族像を見たのかもしれない…。わかっている。全て、わかっているよ…。だからこれは決して、恨みの感情では無いんだ』
ーー恨んでいないのに、体の中から瘴気のような闇が、とめどなく溢れてくる。
子供達の言う事を否定することは出来る。誘拐された娘の父親は怪しい。男の持っているオルドのお守りを出せば、アドリア王太子は彼を調べるだろう。
しかし、俺は口を噤んだ。
『全てを許そう、哀れな子供たちよ…。なぜなら、私は…』
ーー私は…?
俺はただの『ノワール』だ。暗黒神を名乗ったのも、自分を大きく見せて、身を守りたかっただけ。それだけのはずだが…。
俺はなぜ、その名を『オルド』と名付けたのだ…?
それだけのはずなのに、滾る力が身体を突き破りそうになった。
ーー目覚めの時が近い。私は…!
『私はその昔、魔王と呼ばれていた…!』
ーーああ…!
強大な力が目覚めるのを感じる…。
身体からわずかに滲み出す力だけで、辺りをあっという間に闇で覆い尽くし、悲鳴さえ飲み込んでしまった。
『私の名は……!』
ーー暗黒神であり、魔王、オルド…!
「ノワール!」
あなたにおすすめの小説
最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件
竜也りく
BL
「最悪だ……」
その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。
イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。
入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。
イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。
しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~
トモモト ヨシユキ
BL
10000回の善行を知らないうちに積んでいた俺は、SSSクラスの魂として転生することになってしまったのだが、気がつくと本だった‼️
なんだ、それ!
せめて、人にしてくれよ‼️
しかも、御主人様に愛されまくりってどうよ⁉️
エブリスタ、ノベリズムにも掲載しています。
魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます
トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。
魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・
なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️
エブリスタにも、掲載しています。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。