猫の首に鈴をつけたい騎士団長とおひさま浴びてヘソ天で寝たい闇の教祖

あさ田ぱん

文字の大きさ
34 / 35

29.【最終話】【アドリア殿下視点→ノワール視点】荒ぶる理由※

しおりを挟む
 私の影から、魔王が荒ぶっているとの報告を受け、ハーケンベルク邸へ駆けつけた。

「このところ手がつけられないんです。ほら、見てください!」

 私の影で、ハーケンベルク邸の使用人として潜入しているナタリーが指差した先を見ると、魔王…、子猫の『ノワール』は餌である茹でた鶏肉をガツガツと貪っていた。

 顔に皺まで寄せ、夢中で食べている。かなりの好物である事は窺える。

「…ただ餌にがっついているだけだろう?!」
「『餌』じゃありません!これは『うまうま』と申します!」

 どう見ても猫の餌だが、餌と言ったらナタリーに叱られてしまった。
 
「健康を考えてお魚も食べていただきたいのですが、『うまうま』しかお食べになりません。それで少し、太ってしまわれて…」
「……」

 魚以外出さなければそのうち諦めて食べるだろうに。
 と、言うとまた面倒なことになりそうな気がして、私は何も言わない事にした。

「他に変わったことはあるか?」
「最近、とにかく機嫌がよくないのです」
「まさか、何かに危害を加えたり…?」
「ええ!」

 ナタリーは部屋にある柱を指差した。その柱には麻縄が巻き付けられている。
 
 食事を終えたノワールは、とことこと歩いていき、その柱でばりばりと、爪とぎを始めた。

「ほらっ!」
「ほら、って、決められた場所で爪とぎをしているだけだろうが!!」
「でも最近爪とぎの様子が、激しいんですよ!」
「少し体重が増えたから、力が強くなったんじゃないのか?!」

 うまうまをたくさん食べて太って、食後の腹ごなしで決められたところで爪とぎして…。

 すっごい良い子じゃねえかッ!!!!

「……他には何かあるのか…?」
「コンラッド様のお洋服を洗濯すると、お怒りになり、くっさい洗濯物が片付きません!」
「もう黙れ…っ!」

 呆れた私は立ち上がり、帰ろうとした。すると、ナタリーが慌てて追いかけてくる。

「殿下、ほら、見てください」

 ナタリーに促されて、しぶしぶ子猫の方を振り返る。子猫のノワールは窓の外をぼんやりと眺めていたが、少しすると悲しそうに鳴き始めた。

「なぉ~、なぉ~ん…」
「ルミリア国教会の組織見直しで、コンラッド様はお忙しく、数日、お帰りになりません…。ノワール様が悲しみ、鳴いて鳴いて…。可哀想で見ていられません!」
「……それで、わざわざ私を呼んだのか?」
「悲しみは、瘴気の引き金ですから」
「いや、あれは違うな…!」

 あの鳴き方は、悲しんでいるのではない。

 いずれにせよ、コンラッドを家に帰すしかないようだ。

 早速、私は騎士団へ伝令を飛ばした。




****

 体の奥が、ほんのり熱く燻っている。コンラッドにすりすりして、慰めてほしいのに、もう三日も帰ってこない。

 切なくて苦しくて、鳴き声が漏れてしまう。

「なぉ~、なぉ~ん…」

 ご飯を食べて、爪とぎして運動しても眠れない。こんなこと、初めてだ。

 これは一体、何なのだろう…?


 窓に向かって鳴いていると、待ち焦がれた馬の蹄の音が聞こえた。

 コンラッドだ…!

 俺は扉の前までコンラッドを迎えに走る。

 扉が開くと、一目散にコンラッドに飛びついた。

「ノワール…!」

 コンラッドは飛びついた俺を抱き上げてくれた。嬉しすぎて、ゴロゴロと大音量で喉を鳴らす。顔を擦り寄せるとくすぐったかったのか、コンラッドに笑われた。

「ずっと、風呂に入っていないんだ。湯を浴びるから、待っていてくれ」
やだっにゃぁっ!」

これが大好物なのに…!

 嫌だと鳴いてみたが、通じなかったようだ。

「ノワールも一緒に、入りたいのか…?」

 完全な誤解だが、一緒なら悪くない。抱っこされたまま、浴室へ連れて行ってもらった。

 コンラッドは脱衣所で待つ使用人を下がらせて人払いすると、俺と風呂場に入った。

 石鹸でたっぷりの泡をたてて、自分と俺を一緒に洗う。

 気持ち良いけど、まだ、何か足りない…。

 俺はコンラッドの指を甘噛みして、鳴いてしまった。

「なぉー…」
「ノワール、お前…。アドリア殿下が言うように、本当に、発情しているのか?」
にゃ…?」

 意外な言葉に、俺は驚いて固まった。

「ふ…!なんだその顔!口が半開き、目がまんまるだ!ノワール…、そんなに意外だったのか…?」

 俺の中にはなぜか、魔王の力が封印されている。そのせいで、生態がより獣に近付いているのだろうか…?

 今まで人間だったから発情がどういうものかは知らないが…、体がほんのり熱くて苦しい。

 俺はコンラッドの手にしがみついて体を擦り付けた。
 
「ノワール、体がほてるんだな…?」
うんなぉ~」
「……助けてやりたいが、子猫のままでは無理だ…」

 つまり、人の姿になれば、コンラッドが助けてくれる…?

 コンラッドはお湯で泡を流すと、俺を連れて湯船に浸かった。

 胸にピッタリとくっ付いたまま、魔法を解いて人間の姿になる。コンラッドは急に大きくなっても、俺をしっかりと支えて、抱きしめてくれた。

「ノワール…。もう、乳首も下半身も、勃っているじゃないか…」
「俺、子猫のノワールだったのに、発情期がきちゃったんだっ…!」

 あれからコンラッドに甘えるだけ甘えて生活していたら、少し大きくなって、いつの間にか成猫になり発情期まで来てしまったようだ。

 コンラッドはそっと俺の勃ち上がったものに触れる。

「以前した時は、射精しなかったな…?」
「う、うん…」

 そう言いながら、俺のものを優しく上下に扱いていく。つんと立った乳首も指でこりこりと撫でられ、コンラッドが動くたびに熱を持ち、腹の中が熱くうずく。

「だめっ!コンラッド…。出ちゃう…!」
「出して良いぞ…?」
「やだ…。コンラッドと一緒にいきたい…」
「ノワール…」

 コンラッドは浴槽の縁に俺をつかまらせて四つん這いの体勢にすると、後ろから腰を掴んだ。

「怪我をしないように…」

 そう言って後孔に魔法をかけると、後ろが湿った感覚がする。

「コンラッド、早く…」
「ノワール…!」

 待ちきれなくて尻を突き出すと、指が入って来た。中を慎重に、弄り、ほぐしている。

 指が入ってくると、瘴気の治療でコンラッドのモノが挿入されたことを思い出してしまった。我慢することが出来なくなり、浅ましく腰が揺れる。

「ん、ふ…、う…んん…♡」
「ノワール、気持ちいいのか…?」
「うん…♡もう、きて…!コンラッドぉ♡」
「ノワール!」

 コンラッドの名を呼ぶと、後孔に亀頭が密着した。入り口は押しつぶされ、ぬちゅ…、と音を立てながら大きな陰茎が侵入してくる。コンラッドの長大な陰茎が中をみちみちと押し広げた。

「あぅ…ッ、ああぁっ♡コンラッドッ…ッ♡♡ああぁっ、なか、キてる…っ!ひ、あ゛ッ♡♡」

 俺の尻にコンラッドの腰がぶつかると、俺の先端からはぷしゅ、と弱々しく精液が吹き出した。

「一緒にいくんじゃなかったのか?」
「だって…、だって…、気持ちよかったからっ…♡」

 後ろを振り向くと、コンラッドは薄く微笑んでいた。恥ずかしくて前に逃げようと動くと腰を掴まれ引き寄せられる。

「あ。あ、…ぁんっ!」
「もう一度、一緒にいこう…!」

 コンラッドは腰を後ろに引き、また奥まで突き入れるという動作をなん度も繰り返した。繰り返すたびに、少しずつ挿入が深くなっていく。

 動くたびにバシャバシャとお湯が跳ねて、敏感になった体を刺激する。

「あ、あっ、はぁ…、ん…っ♡ ん…っ!…っ!あっ…♡あぅっ♡」
「かわいい、ノワール。いいんだな…?ここ!」

 一段と大きな突き上げで、奥の行き止まりだと思われた部分に、亀頭が埋没した。

「…あっ!はぁっ…!あ、ぁ…っ!だめ、だめっ!」
「ノワール、出すぞ…!」
「あっ、はぁ…っ、も、…!ん゛っ、ぁ……ッ♡んん゛んんっ!!!」

 連続で奥を攻め立てられ、コンラッドの精液が注がれた。その刺激で俺もビュッと勢いよく射精する。

「ノワール…、いっぱいだせて、偉かったな…」
「うん…。コンラッド、俺を大人にしてくれて、ありがとう…。大好きだよ…」
「私もだ。ノワール…。愛してる」

 コンラッドにたくさんかわいがってもらえたから、俺は大人になれたんだ。

 コンラッド、ありがとう。

 これからはコンラッドを助けられるように、勉強もちょっとだけがんばって、もっと大人になる…!

 …大人になっても、ずっと、そばにいるよ…。

 首につけた鈴が、ちりーんと音を立てて揺れた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...