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四章
29.閨教育
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その後、俺はジークと魔法の練習をした。けれどやはり、何度魔法を唱えても、発動しない…。
「ジーク、今日はもう終わりにしよう」
「エリオ殿下、もう少し試してみましょう。あと少しで出来る気がするのです」
「いつもと同じじゃないか。無理だよ」
「エリオ殿下!」
ジークはやる気がない俺を、ジロリと睨んだ。「こいつわざとなんじゃ」と、疑われているようだ。
「では、私に逆さ言葉ゲームで勝てたら、終わりに致しましょう」
「え~…」
ジークはいつも、俺に言うことを聞かせたい時、このゲームを仕掛けてくる。このゲーム、ジークが得意だからだ。でも、楽しそうなのでいつも、断れない。
「では私から…、『さとう』」
「うとさ、うさぎ!」
「ぎさう、うきわ」
「わきう、うみ」
「みう、ウィスマリア・メモリオール・アーク・エテルナ」
「ナルテ…、なに?!」
「ナルテエ・クーア・ルーオリモメ・アリマスィウエリオ、です、殿下!まだ、呪文を覚えていないのですね?」
そうして、ジークの小言が再開した。今日はいつもにも増して長そうだ…。
だいたい、俺が出来ないのはわざとじゃ無い。
俺の魔力は「神聖な魔力」とされ、歴代の竜の番のみが持つ、従来の魔力測定器では反応しない特別なもの。神聖の魔力があると『浄化魔法』が使えるはずなのだが、『浄化魔法』が使えるのは歴史上、竜の番のみ。
つまり今、この世界でその魔力保有者は俺一人なのだ。誰も、魔法の使い方を知らないし、教えられない。
ジークは俺に魔力の巡らせ方を体現して見せてくれるが、それは一般的な方法で俺には当てはまらないようだ。
そもそも、本当に俺に、神聖な魔力があるのかも疑わしい。
ジークの小言を聞きながら、しぶしぶ練習したが、やはりその日も成果はなかった。
****
「竜王様は力を使うと瘴気を溜めてしまう体質なの。だから番が受け止めて、浄化するのよ」
竜が番を持つのは、溜まった体内の瘴気を番に浄化してもらうためらしい。
すると、浄化魔法が使えない番なんか、いらないよな…?だから、魔法がつかえなければ番として召し上げられないのではないかと、思ったのだが。
「瘴気は精の中に多く含まれるの。だから交合で番いの身体に出して、番は自分の身体で浄化するの」
「中に出す…?それって、魔法を使わなくても身体で浄化するということですか?」
ロザリーは「ええ」といって深く頷いた。…すると、魔法が発出できなくても召し上げられてしまうということだろうか…?
考えが甘かった…!
ーージークと遅くまで魔法の練習をした翌日、俺は王都の教会に来ていた。
来月の誕生日で十八歳、成人を迎える俺は、遂に『閨教育』が始まったのだ。しかし、竜との交合など誰も経験がないので古語が読める優秀な神官のロザリーが担当する事になった。ちなみにロザリーは俺たち兄弟の幼馴染であり兄の恋人である。
「でも竜といったら私の数百倍も身体が大きいのですから…どうやって交合を?超常現象的な、何かが起こるとか…?」
俺がそう言うと、ロザリーは吹き出した。
「ふふふ、大丈夫よぉ~!竜って人型になれるらしいわよ?」
「え?!そうなの……?」
「代々、竜はもの凄い美丈夫なんですって。美しい、黄金の瞳を持ち……」
「黄金……」
…金は神の恵みと言われているが、それで…?
そう言えば、ジークの瞳も金色で、美しい。彼が、水神の竜なら、どれだけ良かったか…。
「でもエリオは男性だから、交合は少し大変かもね。交合はうしろをーー」
「うしろをーー!?」
もう聞きたく無い!しかしロザリーは分厚い書物を開きながら指さす。
「その後に出産もあるのよ?その手前で怖気付いてどうするの?!」
「しゅ、出産?!」
「今の竜は男腹のお子らしいのよ」
「男腹の子?!」
ロザリーは分厚い書物を開きながら、神妙に頷く。
「だからエリオも番になったら子を成すの」
「ちょ…!待ってください!私は男!子宮がありません!」
「竜は男も孕ます力があるみたいで、子宮はいらないらしいわ!」
俺は開いた口が塞がらなかった。まさか、そんな……。そんな事ってある?子宮がないのに、孕むなんて。それに俺、産道もないよ?
これ以上知るのも怖いけど、知らないのもまた怖い気がする…!
「あの、子宮がないのに、一体どうやって産むのですか?」
「この書物によると、おえっと吐き出したらしいわ」
「吐き出した?!口から…?!」
「大丈夫、赤子は卵に入っていて、つるっとしてるから喉に引っかからないんですって!だからエリオ、安心して!」
全然安心できない事実を聞かされたー…!
俺は思わず机に突っ伏した。もうそんな恐ろしい話はお腹いっぱい…!
「……免疫のないエリオには刺激が強すぎる話だったわね。先を急ぎすぎたわ。誕生日は来月だけど、結婚は来年、魔法学校を卒業してからですもの。もっとゆっくり学びましょう!」
また次にしましょう、とロザリーは笑った。
「ところで、エリオはベルキア王国のアシュ王女歓迎の夜会には参加するんでしょう?お願いがあるんだけど…」
「お願い…?」
「エヴァルトが、当日、アシュ王女をエスコートするっていうのよ…」
ロザリーは目を伏せて悲しそうな顔をーー…。
「ふざけてると思わない?!」
……していなかった!
ロザリーって、気が強いんだよなあ~。エヴァルトは完全に尻に敷かれている。それなのに、ロザリーのエスコートを断るなんて、ベルキア王国は東の大陸の小国のはずだが、フェリクスはなにか弱みでも握られているのだろうか?
「だから当日、私をエスコートしてほしいの。徹底的にエリオを着飾って、度肝抜いてやるわ…!」
それは、誰が、誰の度肝を抜くのだ…?
アルバスの血が色濃い俺の容姿は生白い肌に茶色の瞳、茶色の髪…。着飾ってもたかが知れてる。とてもエヴァルトには敵わない。
「それよりロザリー様。書物には浄化魔法を発動する方法について、書かれていませんか?俺、いまだに魔法が使えなくて…。最近では力があるのかさえ分からなくなってしまって」
「エリオ…。調べてはみたんだけど、浄化魔法がどんなものかは書いてあるんだけど、発動方法については記述がないの。もう少し時間を頂戴。何せ、伝説の神官、『ジュリアス様』の残された書物は、すごい量なのよ…!」
「そんなに多いのですか……」
「ええ。ジュリアス様は生涯を信仰に捧げ、魔獣制圧に尽力されたらしいわ。加えて、この歴史書の編纂…!常人ではないわね」
そうか…。しかしそんな神官でさえ、発動法を知らないなんて…。俺はため息をついた。
「ロザリー様、また何かわかったら教えてください」
「エリオ…、次の『閨教育』の日までに調べておくわね!」
もう、閨教育は遠慮する…、そう心に決めて俺はロザリーに手を振った。
教会の建物を出て、車寄せに向かう途中、第一王子のエヴァルトに出くわした。
「エリオ、久しぶりだな!お前、魔法学校の成績がかなりまずい状況らしいじゃないか!結婚が延期になったらどうするつもりだ!?」
会った途端これだ…。エヴァルトは結婚が延期になったら水神の竜に愛想をつかされて、フェリクスが竜の恩恵を受けられないことを心配しているのだろう。
ただでさえ竜の怒りを買い、瘴気被害に苦しんでいるのだから。
「来月はお前の誕生日だ。今年はどの辺りに降臨されるのだ?できれば、北西にしていただきたいのだが…。あの辺りは最近、鉱石の産出量が減っていてな」
「さあ…全くわかりません。お会いしたこともないし…」
水神の竜がフェリクスを去って百五十年以上になるが、俺が生まれてからは一年に一回、誕生日に降臨されている。
俺はその姿を一度も目にしたことがないが、いつの間にか、窓際に贈り物が置いてあるのだ。
そして、俺に姿は見せないものの、毎年、いずれかのフェリクスの地に竜が現れ、その地域では旱魃が解消したり、鉱石の採掘量が増えたり…、という恵みがもたらされている。
「エヴァルト殿下、その辺りでご勘弁を。エリオ殿下が困ってらっしゃいます」
エヴァルトに無茶を言われて困惑していると、凛々しく美しい声が聞こえた。
声の主はジークだった。この男ときたら姿形だけでなく、声まで美しい…。
「ジーク…!エリオの魔法が使えないのは、お前の責任でもあるんだぞ、しっかりしてくれよ!」
エヴァルトはジークに文句を言うと、行ってしまった。
「……兄上もご心配されているようだ。どうです、何か進展は?」
「教会からは何も。ロザリー様が調べてくれる、とは言っていたけど…」
迎えに来たジークの横を、目が合わないように通り過ぎた。責めるような視線に耐えられなくなったのだ。
でも、と、思い直して、ジークを振り返る。
来月の誕生日で俺は十八歳、成人してしまう。
来年には竜の番になり、ジークにはもう、会えなくなる。今年は、ジークがいる最後の誕生日だ。だから最後は家族のように、仲良く、楽しく過ごしたいと思ったのだ。
「来月は俺の誕生日だ…最後に何かご褒美をくれよ。ジークから誕生日に何かもらったことって、ないんだけど…。それがあれば、もっと頑張る」
「贈り物なら毎年、竜王様に頂いているではありませんか。何が欲しいのです?竜王様にお伝えすれば…」
「……」
「また膨れてる…。そうですね、じゃあ私に逆さ言葉ゲームで勝ったら、なんでも差し上げます」
「それ、絶対勝てないやつ!」
――俺はまた直ぐに、ジークから目を逸らした。
胸の中に黒くて、もやもやしたものが渦巻いていく。
胸の中の黒い靄…これって『瘴気』じゃないのか?なんだか胸がモヤモヤして、自分の心さえ、よく分からなくなる。
「ジーク、今日はもう終わりにしよう」
「エリオ殿下、もう少し試してみましょう。あと少しで出来る気がするのです」
「いつもと同じじゃないか。無理だよ」
「エリオ殿下!」
ジークはやる気がない俺を、ジロリと睨んだ。「こいつわざとなんじゃ」と、疑われているようだ。
「では、私に逆さ言葉ゲームで勝てたら、終わりに致しましょう」
「え~…」
ジークはいつも、俺に言うことを聞かせたい時、このゲームを仕掛けてくる。このゲーム、ジークが得意だからだ。でも、楽しそうなのでいつも、断れない。
「では私から…、『さとう』」
「うとさ、うさぎ!」
「ぎさう、うきわ」
「わきう、うみ」
「みう、ウィスマリア・メモリオール・アーク・エテルナ」
「ナルテ…、なに?!」
「ナルテエ・クーア・ルーオリモメ・アリマスィウエリオ、です、殿下!まだ、呪文を覚えていないのですね?」
そうして、ジークの小言が再開した。今日はいつもにも増して長そうだ…。
だいたい、俺が出来ないのはわざとじゃ無い。
俺の魔力は「神聖な魔力」とされ、歴代の竜の番のみが持つ、従来の魔力測定器では反応しない特別なもの。神聖の魔力があると『浄化魔法』が使えるはずなのだが、『浄化魔法』が使えるのは歴史上、竜の番のみ。
つまり今、この世界でその魔力保有者は俺一人なのだ。誰も、魔法の使い方を知らないし、教えられない。
ジークは俺に魔力の巡らせ方を体現して見せてくれるが、それは一般的な方法で俺には当てはまらないようだ。
そもそも、本当に俺に、神聖な魔力があるのかも疑わしい。
ジークの小言を聞きながら、しぶしぶ練習したが、やはりその日も成果はなかった。
****
「竜王様は力を使うと瘴気を溜めてしまう体質なの。だから番が受け止めて、浄化するのよ」
竜が番を持つのは、溜まった体内の瘴気を番に浄化してもらうためらしい。
すると、浄化魔法が使えない番なんか、いらないよな…?だから、魔法がつかえなければ番として召し上げられないのではないかと、思ったのだが。
「瘴気は精の中に多く含まれるの。だから交合で番いの身体に出して、番は自分の身体で浄化するの」
「中に出す…?それって、魔法を使わなくても身体で浄化するということですか?」
ロザリーは「ええ」といって深く頷いた。…すると、魔法が発出できなくても召し上げられてしまうということだろうか…?
考えが甘かった…!
ーージークと遅くまで魔法の練習をした翌日、俺は王都の教会に来ていた。
来月の誕生日で十八歳、成人を迎える俺は、遂に『閨教育』が始まったのだ。しかし、竜との交合など誰も経験がないので古語が読める優秀な神官のロザリーが担当する事になった。ちなみにロザリーは俺たち兄弟の幼馴染であり兄の恋人である。
「でも竜といったら私の数百倍も身体が大きいのですから…どうやって交合を?超常現象的な、何かが起こるとか…?」
俺がそう言うと、ロザリーは吹き出した。
「ふふふ、大丈夫よぉ~!竜って人型になれるらしいわよ?」
「え?!そうなの……?」
「代々、竜はもの凄い美丈夫なんですって。美しい、黄金の瞳を持ち……」
「黄金……」
…金は神の恵みと言われているが、それで…?
そう言えば、ジークの瞳も金色で、美しい。彼が、水神の竜なら、どれだけ良かったか…。
「でもエリオは男性だから、交合は少し大変かもね。交合はうしろをーー」
「うしろをーー!?」
もう聞きたく無い!しかしロザリーは分厚い書物を開きながら指さす。
「その後に出産もあるのよ?その手前で怖気付いてどうするの?!」
「しゅ、出産?!」
「今の竜は男腹のお子らしいのよ」
「男腹の子?!」
ロザリーは分厚い書物を開きながら、神妙に頷く。
「だからエリオも番になったら子を成すの」
「ちょ…!待ってください!私は男!子宮がありません!」
「竜は男も孕ます力があるみたいで、子宮はいらないらしいわ!」
俺は開いた口が塞がらなかった。まさか、そんな……。そんな事ってある?子宮がないのに、孕むなんて。それに俺、産道もないよ?
これ以上知るのも怖いけど、知らないのもまた怖い気がする…!
「あの、子宮がないのに、一体どうやって産むのですか?」
「この書物によると、おえっと吐き出したらしいわ」
「吐き出した?!口から…?!」
「大丈夫、赤子は卵に入っていて、つるっとしてるから喉に引っかからないんですって!だからエリオ、安心して!」
全然安心できない事実を聞かされたー…!
俺は思わず机に突っ伏した。もうそんな恐ろしい話はお腹いっぱい…!
「……免疫のないエリオには刺激が強すぎる話だったわね。先を急ぎすぎたわ。誕生日は来月だけど、結婚は来年、魔法学校を卒業してからですもの。もっとゆっくり学びましょう!」
また次にしましょう、とロザリーは笑った。
「ところで、エリオはベルキア王国のアシュ王女歓迎の夜会には参加するんでしょう?お願いがあるんだけど…」
「お願い…?」
「エヴァルトが、当日、アシュ王女をエスコートするっていうのよ…」
ロザリーは目を伏せて悲しそうな顔をーー…。
「ふざけてると思わない?!」
……していなかった!
ロザリーって、気が強いんだよなあ~。エヴァルトは完全に尻に敷かれている。それなのに、ロザリーのエスコートを断るなんて、ベルキア王国は東の大陸の小国のはずだが、フェリクスはなにか弱みでも握られているのだろうか?
「だから当日、私をエスコートしてほしいの。徹底的にエリオを着飾って、度肝抜いてやるわ…!」
それは、誰が、誰の度肝を抜くのだ…?
アルバスの血が色濃い俺の容姿は生白い肌に茶色の瞳、茶色の髪…。着飾ってもたかが知れてる。とてもエヴァルトには敵わない。
「それよりロザリー様。書物には浄化魔法を発動する方法について、書かれていませんか?俺、いまだに魔法が使えなくて…。最近では力があるのかさえ分からなくなってしまって」
「エリオ…。調べてはみたんだけど、浄化魔法がどんなものかは書いてあるんだけど、発動方法については記述がないの。もう少し時間を頂戴。何せ、伝説の神官、『ジュリアス様』の残された書物は、すごい量なのよ…!」
「そんなに多いのですか……」
「ええ。ジュリアス様は生涯を信仰に捧げ、魔獣制圧に尽力されたらしいわ。加えて、この歴史書の編纂…!常人ではないわね」
そうか…。しかしそんな神官でさえ、発動法を知らないなんて…。俺はため息をついた。
「ロザリー様、また何かわかったら教えてください」
「エリオ…、次の『閨教育』の日までに調べておくわね!」
もう、閨教育は遠慮する…、そう心に決めて俺はロザリーに手を振った。
教会の建物を出て、車寄せに向かう途中、第一王子のエヴァルトに出くわした。
「エリオ、久しぶりだな!お前、魔法学校の成績がかなりまずい状況らしいじゃないか!結婚が延期になったらどうするつもりだ!?」
会った途端これだ…。エヴァルトは結婚が延期になったら水神の竜に愛想をつかされて、フェリクスが竜の恩恵を受けられないことを心配しているのだろう。
ただでさえ竜の怒りを買い、瘴気被害に苦しんでいるのだから。
「来月はお前の誕生日だ。今年はどの辺りに降臨されるのだ?できれば、北西にしていただきたいのだが…。あの辺りは最近、鉱石の産出量が減っていてな」
「さあ…全くわかりません。お会いしたこともないし…」
水神の竜がフェリクスを去って百五十年以上になるが、俺が生まれてからは一年に一回、誕生日に降臨されている。
俺はその姿を一度も目にしたことがないが、いつの間にか、窓際に贈り物が置いてあるのだ。
そして、俺に姿は見せないものの、毎年、いずれかのフェリクスの地に竜が現れ、その地域では旱魃が解消したり、鉱石の採掘量が増えたり…、という恵みがもたらされている。
「エヴァルト殿下、その辺りでご勘弁を。エリオ殿下が困ってらっしゃいます」
エヴァルトに無茶を言われて困惑していると、凛々しく美しい声が聞こえた。
声の主はジークだった。この男ときたら姿形だけでなく、声まで美しい…。
「ジーク…!エリオの魔法が使えないのは、お前の責任でもあるんだぞ、しっかりしてくれよ!」
エヴァルトはジークに文句を言うと、行ってしまった。
「……兄上もご心配されているようだ。どうです、何か進展は?」
「教会からは何も。ロザリー様が調べてくれる、とは言っていたけど…」
迎えに来たジークの横を、目が合わないように通り過ぎた。責めるような視線に耐えられなくなったのだ。
でも、と、思い直して、ジークを振り返る。
来月の誕生日で俺は十八歳、成人してしまう。
来年には竜の番になり、ジークにはもう、会えなくなる。今年は、ジークがいる最後の誕生日だ。だから最後は家族のように、仲良く、楽しく過ごしたいと思ったのだ。
「来月は俺の誕生日だ…最後に何かご褒美をくれよ。ジークから誕生日に何かもらったことって、ないんだけど…。それがあれば、もっと頑張る」
「贈り物なら毎年、竜王様に頂いているではありませんか。何が欲しいのです?竜王様にお伝えすれば…」
「……」
「また膨れてる…。そうですね、じゃあ私に逆さ言葉ゲームで勝ったら、なんでも差し上げます」
「それ、絶対勝てないやつ!」
――俺はまた直ぐに、ジークから目を逸らした。
胸の中に黒くて、もやもやしたものが渦巻いていく。
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