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番外編②自分らしく生きることを誓いました!
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『名誉男性』という言葉をご存知だろうか?
近年SNSでよく見かけるワードであるが、決して男性そのものを表す用語ではない。
ざっくりとした説明をするならば、男性社会に適応した大人版ブリっ子といった感じだ。要するに男ウケは抜群でも同性からは死ぬほど嫌われるタイプのこと。
名誉男性は痴漢やレイプは被害者にも落ち度があると言ってみたり、自分より下のブスを見下したり、子供を産め結婚しろと同性に対して辛辣な発言ばかりするため、場合によっては男以上に恨まれやすい。
何故こんな話をし始めたのかというと、英語の羽座井先生(第7話参照)がまさに名誉男性そのものだったからだ。
羽座井先生は学校の近所で痴漢やレイプが多発していることに対して、冷酷にもΩの生徒を批判し始めたのだ。
「痴漢やレイプが恐いなんて言ってるようなブスは自意識過剰だから男子たちは気にしちゃダメよ♡ そう言う子って、単に男に構って欲しいだけの甘ちゃんだからwww」
羽座井先生がそう言うと、クラスの男子たちはゲラゲラと笑い出す。
「誰もブスなんか痴漢しねえってのwww」
「分かるぅ~、モテなさ過ぎて男に飢えてんじゃねwww」
「つか、痴漢に遭いたくないならスカートなんかやめてスラックス穿けよwww」
うちの学校も校則が改正されてΩにもスラックスが認められるようになった。だがしかし、Ωカースト底辺になりたくないがゆえに殆どのΩは同調圧力でスカートを穿いている。ただ1人を除いては――。
「あ~ら、貴腐寺院さん。あなた、女なのにスカート穿かないのかしら~?」
羽座井先生は気持ち悪いほどデカ尻に貼りついたスカートを揺らしながら見下したような眼差しで貴腐寺院さんを見やる。
「別に校則違反をしているわけじゃないんだし、何か問題でも?」
毅然とした態度で貴腐寺院さんは即答するが、意に介さずに羽座井先生はたたみ込むように嫌味を飛ばす。
「だって~、貴腐寺院さんなら痴漢に遭う心配なんかないんだし、もっと生脚を晒け出して男の子にサービスしてあげてもいいんじゃないwww」
羽座井先生の露骨なまでの嫌味にクラスの男子たちは大爆笑する。
「ブスのキモい生脚とか誰得www」
「ブスを痴漢するとか、どんだけ勇者なんだよwww」
「誰からも狙われないブスで良かったなぁwww」
吐き気を催すほど邪悪なセクハラ発言を繰り返すクラスの男子に虫酸が走った。
実は貴腐寺院さんがスラックスを穿くようになった原因は電車の中で日常的に痴漢に遭うようになったからだ。
それからというもの、貴腐寺院さんは男に弄ばれたショックで自尊心が削られてしまい、塞ぎ込んでいた。
完膚無きまでにボロボロにされた貴腐寺院さんに鞭を打つ羽座井先生と男子たちが狂おしいほどに憎くて仕方がなかった。
「もう、いい加減にしてよッ!!! 美人じゃなくたって痴漢される人はいくらでもいるの! 男に身体をオモチャにされる身にもなってよ! 男だからって無制限に搾取することが許されると思わないで……」
カッとなった僕は日頃から思っていた感情をブチまけるように涙を流して怒鳴った。
日常的に身体という領域を不特定多数の男に踏み荒らされている僕たちは自分と他人の境目が曖昧になって情緒不安定に陥りやすい。
男から求められる規範に心がどんどん空虚になって追い詰められていき、自分が保てなくなる。
自分という境目が荒らされてズタボロになった僕たちの姿をオカズに男たちは今日も性的搾取の限りを尽くすのだ。
「おいおい、いきなりデカイ声出すんじゃねえよwww」
「Ωが泣きながら喚いたところで小動物がキャンキャン吠えてるようにしか見えねえぞwww」
「ブス同士の傷の舐め合いは見苦しいぜwww」
周囲の男子たちの冷酷無比な反応に僕は死にたくなるほど絶望した。
結局、男には自分の体をモノ化される僕たちの心の痛みなど到底理解できないのだ。
「あらあら、男にモテないからってヒステリー起こしちゃダメでしょ。そんなんじゃ、余計男の子から相手にされないわよwww」
その時、ガタッと椅子が勢い良く動く音がした。
立ち上がったエレンくんは僕たちに罵詈雑言を浴びせる男子たちの首根っこを掴むと、羽座井先生がいる教壇の方へ投げ飛ばす。
ガッシャーンと派手な音がした次の瞬間、羽座井先生は男子たちの下敷きになって倒れていた。
「男に構って欲しいだけの甘ちゃんはテメエの方だろ? なあ、先生ぇwww」
残念ながら完全に気を失っていた羽座井先生の耳にエレンくんの言葉は届くことはなかった。
目の前の光景に驚愕したクラスメイトはそそくさと帰りの準備を始める。
「バカな野郎の言うことは気にするな。奏が自分の領域を男に明け渡す必要なんかない。安心してくれ、奏の領域を乱暴に侵害しようする連中は俺がブチのめしてやるから♡」
日頃から男に尊厳を踏みにじられることに慣れてしまっていた僕は無意識に抑え込んでいた荒ぶる感情をエレンくんの腕の中で爆発させた。
泣き崩れる僕をエレンくんは1人の人間として扱うようにギュッと抱きしめる。こんな風に人として扱ってくれる唯一の男の子が傍にいてくれるだけで僕の心は満たされてしまう。
「奏くん、ありがとう♡ さっきは私のために怒ってくれて。奏くんのおかげで、ちょっぴり胸のつかえが取れた気がするよ」
貴腐寺院さんはそう言うと、カバンから自分のスカートを取り出した。
「今からスカートに穿き変えてくるね♡」
「えぇ⁉︎ でも……もう平気なの?」
僕の問いに貴腐寺院さんは満面の笑みで応えた。
「大丈夫、もう心までは男に奪わせないから♡ 今度、痴漢に遭ったら絶対警察に突き出してやるんだから! 男共め、覚悟しとけって感じwww」
そう言う貴腐寺院さんの笑顔に勇気づけられた僕はΩとしての性と己の心を切り離すことで自分らしく生きることを共に誓い合うのだった。
近年SNSでよく見かけるワードであるが、決して男性そのものを表す用語ではない。
ざっくりとした説明をするならば、男性社会に適応した大人版ブリっ子といった感じだ。要するに男ウケは抜群でも同性からは死ぬほど嫌われるタイプのこと。
名誉男性は痴漢やレイプは被害者にも落ち度があると言ってみたり、自分より下のブスを見下したり、子供を産め結婚しろと同性に対して辛辣な発言ばかりするため、場合によっては男以上に恨まれやすい。
何故こんな話をし始めたのかというと、英語の羽座井先生(第7話参照)がまさに名誉男性そのものだったからだ。
羽座井先生は学校の近所で痴漢やレイプが多発していることに対して、冷酷にもΩの生徒を批判し始めたのだ。
「痴漢やレイプが恐いなんて言ってるようなブスは自意識過剰だから男子たちは気にしちゃダメよ♡ そう言う子って、単に男に構って欲しいだけの甘ちゃんだからwww」
羽座井先生がそう言うと、クラスの男子たちはゲラゲラと笑い出す。
「誰もブスなんか痴漢しねえってのwww」
「分かるぅ~、モテなさ過ぎて男に飢えてんじゃねwww」
「つか、痴漢に遭いたくないならスカートなんかやめてスラックス穿けよwww」
うちの学校も校則が改正されてΩにもスラックスが認められるようになった。だがしかし、Ωカースト底辺になりたくないがゆえに殆どのΩは同調圧力でスカートを穿いている。ただ1人を除いては――。
「あ~ら、貴腐寺院さん。あなた、女なのにスカート穿かないのかしら~?」
羽座井先生は気持ち悪いほどデカ尻に貼りついたスカートを揺らしながら見下したような眼差しで貴腐寺院さんを見やる。
「別に校則違反をしているわけじゃないんだし、何か問題でも?」
毅然とした態度で貴腐寺院さんは即答するが、意に介さずに羽座井先生はたたみ込むように嫌味を飛ばす。
「だって~、貴腐寺院さんなら痴漢に遭う心配なんかないんだし、もっと生脚を晒け出して男の子にサービスしてあげてもいいんじゃないwww」
羽座井先生の露骨なまでの嫌味にクラスの男子たちは大爆笑する。
「ブスのキモい生脚とか誰得www」
「ブスを痴漢するとか、どんだけ勇者なんだよwww」
「誰からも狙われないブスで良かったなぁwww」
吐き気を催すほど邪悪なセクハラ発言を繰り返すクラスの男子に虫酸が走った。
実は貴腐寺院さんがスラックスを穿くようになった原因は電車の中で日常的に痴漢に遭うようになったからだ。
それからというもの、貴腐寺院さんは男に弄ばれたショックで自尊心が削られてしまい、塞ぎ込んでいた。
完膚無きまでにボロボロにされた貴腐寺院さんに鞭を打つ羽座井先生と男子たちが狂おしいほどに憎くて仕方がなかった。
「もう、いい加減にしてよッ!!! 美人じゃなくたって痴漢される人はいくらでもいるの! 男に身体をオモチャにされる身にもなってよ! 男だからって無制限に搾取することが許されると思わないで……」
カッとなった僕は日頃から思っていた感情をブチまけるように涙を流して怒鳴った。
日常的に身体という領域を不特定多数の男に踏み荒らされている僕たちは自分と他人の境目が曖昧になって情緒不安定に陥りやすい。
男から求められる規範に心がどんどん空虚になって追い詰められていき、自分が保てなくなる。
自分という境目が荒らされてズタボロになった僕たちの姿をオカズに男たちは今日も性的搾取の限りを尽くすのだ。
「おいおい、いきなりデカイ声出すんじゃねえよwww」
「Ωが泣きながら喚いたところで小動物がキャンキャン吠えてるようにしか見えねえぞwww」
「ブス同士の傷の舐め合いは見苦しいぜwww」
周囲の男子たちの冷酷無比な反応に僕は死にたくなるほど絶望した。
結局、男には自分の体をモノ化される僕たちの心の痛みなど到底理解できないのだ。
「あらあら、男にモテないからってヒステリー起こしちゃダメでしょ。そんなんじゃ、余計男の子から相手にされないわよwww」
その時、ガタッと椅子が勢い良く動く音がした。
立ち上がったエレンくんは僕たちに罵詈雑言を浴びせる男子たちの首根っこを掴むと、羽座井先生がいる教壇の方へ投げ飛ばす。
ガッシャーンと派手な音がした次の瞬間、羽座井先生は男子たちの下敷きになって倒れていた。
「男に構って欲しいだけの甘ちゃんはテメエの方だろ? なあ、先生ぇwww」
残念ながら完全に気を失っていた羽座井先生の耳にエレンくんの言葉は届くことはなかった。
目の前の光景に驚愕したクラスメイトはそそくさと帰りの準備を始める。
「バカな野郎の言うことは気にするな。奏が自分の領域を男に明け渡す必要なんかない。安心してくれ、奏の領域を乱暴に侵害しようする連中は俺がブチのめしてやるから♡」
日頃から男に尊厳を踏みにじられることに慣れてしまっていた僕は無意識に抑え込んでいた荒ぶる感情をエレンくんの腕の中で爆発させた。
泣き崩れる僕をエレンくんは1人の人間として扱うようにギュッと抱きしめる。こんな風に人として扱ってくれる唯一の男の子が傍にいてくれるだけで僕の心は満たされてしまう。
「奏くん、ありがとう♡ さっきは私のために怒ってくれて。奏くんのおかげで、ちょっぴり胸のつかえが取れた気がするよ」
貴腐寺院さんはそう言うと、カバンから自分のスカートを取り出した。
「今からスカートに穿き変えてくるね♡」
「えぇ⁉︎ でも……もう平気なの?」
僕の問いに貴腐寺院さんは満面の笑みで応えた。
「大丈夫、もう心までは男に奪わせないから♡ 今度、痴漢に遭ったら絶対警察に突き出してやるんだから! 男共め、覚悟しとけって感じwww」
そう言う貴腐寺院さんの笑顔に勇気づけられた僕はΩとしての性と己の心を切り離すことで自分らしく生きることを共に誓い合うのだった。
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