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7 異世界ノスタルジー

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 最近、僕は寝ている時に妙な夢を見るようになった。
 夢の中の世界は剣と魔法のファンタジーにありがちな感じで僕は何故かエルフの姿をしていた。


「待てぇ~ッ、今夜の獲物はコイツで決まりだぜwww」


 奴隷狩りを繰り返す人間共に追われる僕は必死になって逃げる、逃げる、逃げる。
 通行人たちが何事かという目で逃げる僕と追う奴隷商人を見つめていたが、誰も助けてくれる者はいなかった。
 エルフのことを人間は精液を吐き出すためだけの肉便器ぐらいにしか思っちゃいない。
 溜まったらヌクという、ただそれだけの低俗な男という生き物に対して夢の中の僕は日々うんざりしているようだった。
 僕の身体中の穴という穴に精液をぶっ込む勢いで追ってくる人間たちの執念に心底恐怖しながら全力疾走し続ける。
 肉便器としての役割を果たさないエルフを人間は快く思わない。肉便器を肉便器らしくさせてやる、と企てながら男達は必死で僕を追い求めてきた。
 逃げている僕もただ必死になっているだけで、どこへ逃げようなんてことも頭にない。
 ただ男達が追ってくるから逃げているだけで方向すら頭になかった。
 僕の足がもつれた。もう限界だった、
 万事休すと思った瞬間、目の前に絵路井えろい先生にそっくりな冒険者風の男がいた。
 奴隷商人の1人が僕に飛び掛かるタイミングに合わせて、絵路井えろい先生が振り向きざまに上段回し蹴りをカウンターで放つ。


「ウオオオオオオオオオオオオ!!!」


 凄まじい咆哮が唸りを上げた瞬間、男の顔面に見事クリーンヒットした。鼻血を吹き出しながら地面に頭から着地した男はチンぐり返しのポーズで瞬時に気絶する。


「もう大丈夫だよ。すぐにやっつけちゃうから♡」


 仲間がボコられたにもかかわらず、残りの2人は倒れた男を指差してヘラヘラ笑う。知能が低い野郎同士の関係には友情も絆も存在しないということを心底痛感させられる。


「オレらが本気になったら、テメエなんぞサンドバッグになる以外に道はねえんだからよwww」
「ほほう、そいつは恐いねぇ。じゃあ、サンドバッグにされる前に息の根を止めるとしようか」


 一瞬のうちに間合いを詰めると、絵路井えろい先生は奴隷商人の手をひねり上げる。


「いででででででッ!!!」


 腕の骨を容易に折られた男が悲鳴をあげる。


「んの野郎、ナメんじゃね~ッ、ゴラァ!!!」


 もう1人がいきり立って叫んだ。叫んだだけでなく、一直線に絵路井えろい先生に突っ込んでいった。


「ったく、やれやれ……仕方ない」


 絵路井えろい先生が指関節をポキポキと鳴らすのと、奴隷商人が襲いかかってくるのは同時だった。
 が、次の瞬間。
 天地の逆転する感覚を覚えた男は、そのまま弧を描いて地面に叩きつけられていた。
 それは見事なまでの一本背負いだった。


「お、おいッ! お前ら、はよ立てや~!」


 最後に残った男の声援にも関わらず、倒れた2人の奴隷商人はピクリともしなかった。


「ひょええ……」


 勝ち目がないと悟った男は仲間を置いて一目散にとんずらこくのだった。


「エルフの一人歩きは危ないよ。この辺りでは人間による奴隷オークションが毎日のように行われているんだ。異種族は早く逃げた方がいい」


 絵路井えろい先生の言に狼狽しつつも素直になれない僕は反論を試みる。


「べ、別にいいでしょ! そもそもエルフの尊厳を踏み躙り、奴隷として扱う人間側に問題があるんだから……」
「なるほど、君の言うことは尤もだ。よし、これからは私が君の護衛をしよう♡」


 そう言う絵路井えろい先生の眼は僕の汗で化繊の生地が透けた胸を見ていた。


「いやッ!」


 僕は思わず両手でバストを隠してしまう。日頃から人間の男に身体を見られることがしばしばあって、最近は特に意識している。
 それからというもの、欲望の虜になった男の餌食にされる度に絵路井えろい先生は何度も何度も僕を窮地から救ってくれた。
 絵路井えろい先生との楽しい冒険の日々を通して僕の中の人間という生き物への恐怖心と絶望は和らぎ、やがて癒されていった。


「大丈夫、これからもずっと傍にいるから♡」


 ふと絵路井えろい先生の声が聞こえた。まるで恋人のように手を優しく握られる感覚に僕は目を覚ました。


「あれ……絵路井えろい先生?」


 見慣れた自室の天井が見えると、すぐ傍で絵路井えろい先生が僕の手を握っていた。


「いい寝顔だったね♡ 楽しい夢でも見ていたのかなぁ?」
「はい、とっても。それに……ちょっぴり懐かしいような不思議な夢でした」


 夢の中で単に自分の願望を投影しただけだと思うが、まるで過去に実際に自分が体験したことがあるような現実感があった。


「そっか……懐かしい夢だったんだね。本当に良かった♡」


 絵路井えろい先生は会心の笑みを浮かべながら僕をギュッと抱きしめると、お互いに心だけでなく自然と身体も求め合うのだった。
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