超常的サスティナブル

成瀬くま

文字の大きさ
1 / 1

プロローグ『デウス・エクス・マキナ』

しおりを挟む
 ――超常現象。それは、大雑把に言うと科学的に説明することができないモノのことである。
 その条件は、神にも当てはまる。神の存在は科学的には説明出来ない、その筈だ。
 更に言えば、神などという非現実的なモノが存在しているかどうかなど、誰にも分からない。神が人間の世界に干渉してくることは無いのだから。

 が、違う。それは否だ、間違っている。

 神は人間の世界に干渉していない訳ではない。むしろ、積極的に干渉していると言っても過言ではない。
 では、なぜ神が人間の世界に積極的に干渉しているのに、その存在が真偽不明なのか。
 その理由は、単純明白。
 神は、直接、間接的に干渉している。何を言っているのか分からないだろうが、言葉の通りだ。

 神は、世界を俯瞰し、神の力が必要な場面に超常現象を起こしている。ここが、直接の部分だ。
 しかし、超常現象は起こってしまえば単なる超常現象だ。人間から見れば、それは神と関係のない、ただの奇跡である。超常現象が起こってからのことは神の関与しない地点の話。――故に、間接的に干渉しているという訳だ。

 科学的に説明できない力は、科学的に説明できない存在が引き起こしているモノなのだ。
 では一体、何故神は直接的に干渉しないのだろうか。自らが人間の世界に顕現し、崇拝される対象として玉座に鎮座して干渉すれば、神自身には多くの得があるだろう。現状では、誰も神の功績を讃えてくれないのだが、それをしない。その理由を、神が直々に教えてくれるらしい。

『どうやら、デウス・エクス・マキナというものが人間界にはあるらしいのだが、あれをやられると冷めるみたいなんだ』

 ――デウス・エクス・マキナ。ラテン語で『機械仕掛けの神』を意味する言葉で、演劇や文学、物語作品において、複雑な状況を突然に解決する手法や展開のことである。
 神の存在を知らない、世界を生きる人間からすれば、日常はかけがえのない人生と呼べるものなのだが、神からすればそれは一種の物語と呼べるものだ。
 それに干渉してしまっては、今を生きる人の人生を壊しかねない。
 それが、直接的な人間界への干渉を避けている理由だった。

 しかし、超常現象で人間の手助けをしている以上、多少はデウス・エクス・マキナとなってしまっている訳だが――、

『世界の神として、自分の世界は、守りたいだろ? この世界の人間はみんな、私の子供みたいなものなんだ。死ぬ時に、良い人生だったって、子供達が思い返せるような世界にしてあげたい。それだけだ』

 神は世界で最も優しい声色で、そう答える。比喩でも誇張でもない、本当に世界で最も優しい声で。

 ――だが、その神の愛する世界には、少し綻びが生じかけていた。
 神の起こした超常現象が、意思を持ち始めていたのだ。
何が起こっているのか分からないが、放っておけば大惨事を迎えかねない。早急に対処しなければならないのだが――、

『どうなってるんだ?』

 その神の一言で、逸した焦燥感に駆られていることが分かった。

『超常現象の削除が出来ない……?』

 神は数瞬考え、一時的に自分が起こした超常現象を全て世界から取り除こうとした。
 それが影響で何人かの子供達が傷つくことがあっても、致し方ないと、少しの躊躇いを覚えながら、心を痛める覚悟を決めて行動したのだが、それすらも、できなかった。

『一体どうすれば……』

 意思を持ち出した超常現象。神はその対処法を熟考し、熟考し、熟考する。
 そして、長時間に渡る熟考の末、一つの結論に至る。

『私が、人間界に降りて直接対処するか……』

 この天界からの間接的な力では対処できないと悟った神は、その判断をせざるを得なかった。
 だが、それでは完全にデウス・エクス・マキナとなってしまう。
 しかし、自分の可愛い子供達を危険に晒す訳にはいかない。

 では、どうするか。
 答えは決まっている。

 ――子供達を助けるに決まっているだろう。

 自分の可愛い子供達を守る為なら、デウス・エクス・マキナとなってしまっても良い。
 だが、最低限の細工は施す。自分を普通の人間と遜色無いスペックに仕立て上げ、人間界に降りる。直接的な干渉は、必要な時だけにする。普段の超常現象と変わらない力で対処し、なるべく神の存在を知られないようにする。
 これが、子供達の人生を守る最善の策だ。
 例え、神の存在が知られることになっても、それで可愛い子供達が守れるのなら構わない。

『待っていろ子供達よ。私が守ってみせる』

 善は急げ。そう言って神は、愛する子供達を守る為に人間界へと降りて行く。
 
 こうして、意思を持ち出した超常現象の原因を探り、愛する子供達を守る為の戦いの火蓋が切って落とされた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...