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1話 運命の出会いと始まり

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 ガッシャーンという音と共に、

「いってぇ~」

という男の声が建物に響く。黒の着物に刀を挿した白髪はくはつの男が背中から建物に落ちたようで床に背をつけている。

(いや、おかしいだろ。俺は崖から海に落ちたんだよ。なんで建物に落ちて穴開けてんだよ! ツッコミどころしかねぇわ!)

 を図った筈なのであるがなぜか建物で寝転がっている。そもそも心臓に突き刺した筈の刀が抜けている。傷もない。

(さて、どうするかな)

 困ったもんだと、思案していると、

「いや~、びっくりだね~。まさか空から人が降ってくるなんて! 世の中何があるか分からないもんだね」

 1人の20歳前半くらいのローブを着た黒髪セミロングの綺麗な女性が建物の2階から降りてくる、

「あ~、申し訳ない。あんたの家か? ここ? だとしたら弁償する」
 
(何て言ったものの金ねぇんだよな)

そうなのである。この男死ぬ予定だったので全財産ぜんざいさんを医療機関、孤児院、動物愛護団体等に寄付したのである。いったいどうする気なのやら。

「いやここは私のギルド『運命うんめい宿木やどりぎ』だよ。それよりも弁償しなくていいから、君、私のギルドに入ってよ。それで屋根に穴空けたのは見逃すよ。どう?」
「分かった、入ろう」

 即決である。金がないのだから。だがここである事に気づく。
 
(ん? ギルド?)

 ゲームやライトノベルでしかあまり聞かないような単語が出てきて疑問に思っていると、
 
「それじゃ、改めまして自己紹介だね。私は冒険者ギルド運命の宿木マスターのマイ・クルルガ、魔法使いだよ。よろしく!」

 そこで、この男、練龍牙れんりゅうがは、思考する。

(まさかとは思うが異世界転生したとかじゃねぇよな?)

 これが世界最強の男練龍牙と天才魔法使いの女マイ・クルルガのの出会いであり、いずれNo. 1になるギルド運命の宿木の始まりである。



(どうするかな)

 龍牙は自分の事をどう説明するか悩んだ。いきなり、「実は俺自殺をして目が覚めたら異世界転生しました」 なんて言おうものなら頭のおかしい人判定待ったなし。とりあえずは、

「リュウガ・レンだ。よろしく」

 と簡単に名前だけの紹介にしておいた。向こうが先に名乗ったおかげでこの世界に合わせて名乗る事はできるから妥当な判断だ。しかし、

「え~それだけ~。もっと話してよ~。職業と出身とか~」
(言える訳ねぇだろ!!)

 そりゃそうだ。ここが異世界だとしたら 「日本出身です」 と言ったところで通じない。職業に関しては彼の過去に関する話なのでまた後日語ろう。

「あ~出身は極東の島国だ。職業は剣士。これで良いか?」

 日本とは言わずに上手い具合に誤魔化した。剣士と言ったのはゲームやラノベで剣士が職業になったりするからだ。

「へ~、極東の島国ならワ国かな? ずいぶん遠くから来たね。確かに格好も剣もここらじゃ一部の人でしか見たことないしそれがワ国のスタイルなのかな?」
「まぁな」
 
 どうやらこれで良かったらしい。それでもまだ問題は山積みだ。彼はこの世界を知らないのだから。

(聞くしかねぇよな)
「田舎者の俺にここについて教えてくれよ」
「任せて、ギルドマスターだからメンバーに頼られるのは嬉しいね」
「それじゃ、まず他のメンバーは? これだけ騒いでも来ないが?」

 そうなのである。人が降って来るという異常事態に人はギルドマスターであるマイしか来ない。これはおかしい。

「あはは、実はギルドを作ったばかりで私と君しかいないんだ~」
「は?」

 まさかの返答である。そりゃ人が集まらない訳だ。

(弁償じゃなくてギルドに勧誘した理由が分かったな)

 屋根に穴を開けておいてギルドに勧誘で済む理由が分かって納得したところで、

(他に人がいないなら本当の事を話すか)

 1人くらいなら事情を知る人間がいるに越した事はない。ギルドメンバー全員に知られるのは面倒だがこの場合なら話は別だ。

「すまん! さっきのは嘘だ。実は・・・」

 彼はありのままを話した。自分がこの世界の人間でない事、自殺したら何故かここにいた事を話した。彼女は驚いた顔をしたが笑う事なくしっかりと聞いてくれた。

「なるほどね。不思議な事があるもんだ。でも納得したよ。普通この世界の人間は魔力があるんだけど君にはそれが無い。この世界の人間じゃ無いからかな?」
「頭おかしい奴だと思われるのを覚悟したがそんな簡単に信じるんだな」
「いや~、そりゃ不思議な事ではあるけどそうじゃなきゃいきなり人が建物の屋根破って落ちて来ないでしょ。とにかく君はこの世界について知らなきゃだね。簡単に説明するよ」

 そこからは、彼女による世界の説明が始まった。
 ここはガラン王国という国である事。
 この世界にはモンスターがいる事。
 冒険者には、剣士、弓使い、魔法使いの職業がある事。
 冒険者のランクはFからSまである事。
 同様にモンスターにもFからSのランクがある事を話してくれた。
 だがここで疑問が生じた。

「つーか、当たり前過ぎてスルーしたけど言葉通じるんだな、しかも文字も平仮名、カタカナ、漢字だし。まぁ名前はカタカナ表記だが」
「そういえば、そうだね。でも良かったよ。文字が違ってたら冒険者登録するのも苦労するからね」
「確かにな」

兎にも角にも彼はこの世界についてのある程度の常識は身につける事に成功した。

「それじゃ説明も済んだし冒険者登録しよう」
「ここで出来るのか?」

「全てのギルドの頂点の総本部はもちろん、ここでだって出来るよ。Fランクからだけどね。ただし年に一回特別試験があってSランクのモンスターを討伐したらSランクから冒険者になれるよ。まぁ、今まで成功者なしで死人を作るだけのものだけどね」

「その特別試験っていつだ?」
「丁度明後日だけど?」
「んじゃ、受けて来るわ」
「うん。いってらっしゃい♪・・・・って、

 え~~~~!!!!!!!」


 マイの驚きの声がギルド内に響いた。



「モンスターについて知りたい」

 1夜明けリュウガはマイに言った。マイはOKを出した。モンスターについて知ればSランク試験を受けるのを辞めるだろうとの判断からだ。

「モンスターについて知るなら国立図書館だね。案内するよ。ついでにカルダ街も案内するね」

 ギルドはカルダ街から少し離れた森に位置する。その森を抜けるとカルダ街が広がっている。綺麗な街並みだ。道は全てレンガで鋪装されており建物は木造建築からレンガ造りのものと様々だ。ガラン王国というだけあって王制なのだろう遠くには城も見えた。図書館までの道中にはギルド総本部そうほんぶ、飲食店などをマイは楽しそうに案内してくれた。

「ここが国立図書館だよ!」

 なるほど、国立というだけあってでかい。木造建築の2階建ての建物で奥行きも横の広さもある。

「それじゃ早速中に入ろうぜ」

 図書館の中は圧巻の一言に尽きる。見渡す限り本だらけだ。

「どこにあんだよ、モンスターの本?」

 探すのが大変に思われたが、
 
「はい、これ」

 マイが持ってきてくれていた。凄まじい厚さだ。50cmはある。

「まぁ、今日1日中あれば読めるよ」
「いや、そんないらねぇ。2で充分」

 そう言い、読み始める事2時間後、

「もう分かった。良い本を選んだな。分かりやすくて細かい所まで載ってて助かる」
「本当に読んだのこれを?」
「試しに問題出しても良いぜ、何ならモンスターの名前言えば載ってるページも言ってやるよ」

 と、自信満々だ。

「それじゃ、グランドタイガーは?」
「105ページに載ってる。そんでもってグランドタイガーは全長5~8mの虎。毛皮が高値で売れるAランクのモンスター」

 見事に正解した。これには彼女も目を丸くした。

「昔っから速読と暗記は得意なんだよ」

 との事だ。図書館から帰りギルドに戻り、

「それで? モンスターについて分かったならその危険も分かったでしょ? 明日のSランク試験は受けないよね?」

 不安そうに聞く。そりゃそうだ作ったばかりのギルド、その初メンバーがいきなり死ぬのは嫌に決まってる。だが彼の答えは、

「いや、受けるよ」

 変わらなかった。

「理由は2つある。1つ目 異世界だろうと俺は自分の強さはトップクラスの自信がある。今日街を歩いて冒険者らしき連中も見たが全員俺より弱い。2つ目 出来立てのギルドにSランク冒険者がいるというインパクトが欲しい。そうすれば依頼も来るしメンバーも増えるだろ」

 その通りだがそれでもマイは、

「死んでほしくないよ、、」

 心配そうな顔をする。

「心配すんな、2度目の人生。ここで死なねぇよ。それに俺達のギルドは運命の宿木だろ? なら昨日のの出会いを信じろ! マスター! 」

 その言葉に励まされたのか、

「そうだね、私は運命の宿木マスターなんだからね」

 笑顔で答えた。

 
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