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通学路だけの友達のそのあと。
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高1の6月の朝のことである。
俺の前にひょっこり現れたあいつ。
結局、あいつの正体も知れたし、満足だ――。
あのあと、俺たちは、とある約束を交わしあった。
その約束は、いまだに実行できていない。
◇
「ただいま」
返事はない。両親ともいないわけではない。父さんはいる。母さんは、生きているけれど、ベッキョだった……。
あいつの今頃の行動を考えてみる。もうあいつの行動は鮮明にイメージできるようになっていた。
そしてそれが、いま、俺がやってるのと同じだったから、俺はひとしきり笑った。
『どうして笑ったんだ』
無口な父さんが、喋ったもんだから、こみ上げてくる笑いは、いよいよ超特急になってきた。
◇
『1日目』の夜。窓を見上げると、布みたいな空が、黒に近い藍色を輝かせていた。
「そろそろ時間か……」
父さんにバレないように、俺はエイ団地のドアを開けて、空き地へ走り出した。
◇
俺たちの約束。それは――、「父さんと母さんを復縁させること」
幸い今はどちらも独身だから、簡単だったのだけれど、空き地の地面の上にどっかりと腰を下ろしたあいつは、とんでもないことを話し始めた。「母さんに縁談がきた」
◇
母さんに縁談がきた。
それが何をイメージするのか。
胸の中にこの空みたいな落とし穴……ブラックホールが渦まいて、しばらくわからなかった。
ぼんやりとはわかるが、それを言語化し、感じることができなかった。
5分ほどずっとうなっていた。
軽く眠るようにすることで、頭をすっきりさせようとしていた。
「……やばいな」
300秒間待って、吐き出せた言葉はそれだけだった……。
◇
となると、いよいよ2日目が決行の日となる。それは自明の理だったので、俺たちはあの後、すぐにめいめいの団地に引き返した。そして、倒れるように眠った。
「なあ、父さん」
「ん?」朝。父さんはコップを口に運ぶ手をとめた。その角度。麦茶が揺れて、いまにもこぼれそうだった。
「なんで復縁しないの?」
「……ぁ」しばらく間があった。父さんはうめくように何かつぶやいた。
そのあと。
俺のいった言葉が父さんにどう響いたのかはわからないが、間もなく二人は復縁に成功した。
多分俺じゃなくてあいつが成功したのだと思うが、二日目の夜の会合で、行動の交換をおこなったとき、あいつはまた意外なことをいった。
「僕もだいたいおんなじことをいったはずだけど……」
あれえ? まあ、もしかしたら、とは思っていたけれど。
だって、俺たちは兄弟で、相手のことをよく知っているのだから。
おしまい
俺の前にひょっこり現れたあいつ。
結局、あいつの正体も知れたし、満足だ――。
あのあと、俺たちは、とある約束を交わしあった。
その約束は、いまだに実行できていない。
◇
「ただいま」
返事はない。両親ともいないわけではない。父さんはいる。母さんは、生きているけれど、ベッキョだった……。
あいつの今頃の行動を考えてみる。もうあいつの行動は鮮明にイメージできるようになっていた。
そしてそれが、いま、俺がやってるのと同じだったから、俺はひとしきり笑った。
『どうして笑ったんだ』
無口な父さんが、喋ったもんだから、こみ上げてくる笑いは、いよいよ超特急になってきた。
◇
『1日目』の夜。窓を見上げると、布みたいな空が、黒に近い藍色を輝かせていた。
「そろそろ時間か……」
父さんにバレないように、俺はエイ団地のドアを開けて、空き地へ走り出した。
◇
俺たちの約束。それは――、「父さんと母さんを復縁させること」
幸い今はどちらも独身だから、簡単だったのだけれど、空き地の地面の上にどっかりと腰を下ろしたあいつは、とんでもないことを話し始めた。「母さんに縁談がきた」
◇
母さんに縁談がきた。
それが何をイメージするのか。
胸の中にこの空みたいな落とし穴……ブラックホールが渦まいて、しばらくわからなかった。
ぼんやりとはわかるが、それを言語化し、感じることができなかった。
5分ほどずっとうなっていた。
軽く眠るようにすることで、頭をすっきりさせようとしていた。
「……やばいな」
300秒間待って、吐き出せた言葉はそれだけだった……。
◇
となると、いよいよ2日目が決行の日となる。それは自明の理だったので、俺たちはあの後、すぐにめいめいの団地に引き返した。そして、倒れるように眠った。
「なあ、父さん」
「ん?」朝。父さんはコップを口に運ぶ手をとめた。その角度。麦茶が揺れて、いまにもこぼれそうだった。
「なんで復縁しないの?」
「……ぁ」しばらく間があった。父さんはうめくように何かつぶやいた。
そのあと。
俺のいった言葉が父さんにどう響いたのかはわからないが、間もなく二人は復縁に成功した。
多分俺じゃなくてあいつが成功したのだと思うが、二日目の夜の会合で、行動の交換をおこなったとき、あいつはまた意外なことをいった。
「僕もだいたいおんなじことをいったはずだけど……」
あれえ? まあ、もしかしたら、とは思っていたけれど。
だって、俺たちは兄弟で、相手のことをよく知っているのだから。
おしまい
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