【完結】AnazonでVRを買い、トリセツで飼い猫と神になりました。

第3章 夢の世界はバグだらけ

最終話 生きるためにはしがみつけ！

　ゲームの世界から出て、わたしたちは公園に向かう。ＹＡＭＡＤＡと話そうと思ったわけではない。寧ろ会いたくはなかった。あの頃とはたしかに甘美な刃だ。たしかに、脆いポールだ。でも、わたしの背後から壁がじりじりと近づいてきていて、わたしの目の前に毒沼が迫っているというような想像をしてみてほしい。

　たとえ、それがどんなに脆いポールであっても、飛びつくしか生き残る術はなかろう？

　というのは、ショウワの勝手な開き直りだろうか。最近は、ショウワとレイワのジンテーゼのような世界を求める声も多く聞かれるようになってきたが、今度は「この部分はショウワだ！」「いいや、そこだけはレイワだ。譲れないぞ」というような戦いがはじまっている。

　その中で、わたしたちはどう生きていくべきか――

　ハチ太郎とロチが、ＹＡＭＡＤＡに見つかる。みんなで逃げる。ショウワから、あのころから。
　
　上から垂れてくる脆いポールにしがみついても、結局は落ちるんだろう？　ならば、最初から落ちてしまえばいいじゃないか。

――たしかにそれはそうだ。でも、いちかばちか、賭けてみないか？

「賭けるよ！」

　わたしは力の限り叫んだ。それが伝わったのか、ハチ太郎やロチ、いおりんが一瞬震えたのがわかった。なりふり構わず歩道を走る。

　１キロを４分４０秒程度のペースで走る。――そう、分かったのは、ほぼ並走しているランナーが１０キロを走り４９分程度だったからだ。

　後ろのＹＡＭＡＤＡは、余裕の表情を見せているが、ハチ太郎が、そろそろ危ない。ロチといおりんは、わたしとほぼ並走している。野生の逃走本能のようなものが目覚めたのだろうか？

『おい……』ＹＡＭＡＤＡが思わず微笑を浮かべる。目の前の信号が赤・黒と点滅している。間に合え――逃げ切ってくれ。

　きみも、わたしと一緒に逃げよう。そして戦おう。逃げることとは、わたしたちを非難する人と戦うことだ。