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腹ペコインフルエンサー璃子の事情

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 私はショート動画サイト『ティッカー』も始めた。それも伸びが好調でライプをやるようになってきた。

 ところがその頃から、だんだんと周りの様子が変わってくる。

「フォロワー一万人も超えてないのに、インフルエンサーとか笑っちゃう」「璃子ってかわいいと思って調子に乗ってるよね」と陰でいわれるようになった。

 それをわざわざ知らせてくれる友達の真由美。「あたしは璃子の味方だよ」なんて言ってながら、でも私はそんな話聞きたくないし、知りたくもない。

 一方真由美は私の情報を亜矢たちに流している。おかげで遊びに行くとき私服がかぶることが何度もあった。

 最近ではフォロワー数も前ほどのびない。やっぱり、そろそろ普通にバイトを始めようかと思う。でも、星稜は進学校のせいかほとんどバイトする子っていないんだよね。
 
 都立だから似たような家庭環境の貧乏な家の子が来るかと思ってたら、皆けっこういいおうちの子ばかりだった。

 普通に一軒家や立派なエントランスがあるマンションに住んでいる。
 
 長栄団地に住んでいるのは私だけ、こんな場所に友達呼べないよ。というか今の友達には住んでいる場所を知られたくない。高校に入ってせっかく築き上げてきた明るい璃子のイメージを壊したくないのだ。

 かわいそうな璃子ちゃんと呼ばれたり、長栄団地の子とは遊ぶなと馬鹿にされたりするのはこりごり。人に同情なんてされたくない。住んでる場所で馬鹿にされたくなんかない。

 なんか……闇落ちしそう。

 そのときピロンとすまほが鳴った。ファンからメッセージだ。『さいきんライブやらないんですね。いつもリリには癒されてます!』『リリちゃんにあえないとさみしよ』リリはわたしのハンドルネームだ。SNSの向こう側には悪意もあるし、こうして待っててくれるひとたちもいる。

 そんなメッセージを見るといつもほわりと気持ちが温かくなる。

 でも、今はなんだか、いろいろあって疲れちゃったな。ひっきりなしに来るメッセージやDM。私は通知をきった。




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