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鈴木海斗の場合4
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それからしばらく璃子の後をつけるのはやめた。
しかし、そんなある日俺はあの時のスーツの中年男が璃子の後をおうのを見つけた。前回のこともありもやもやしていたので、今度は俺が後をつける。
男は璃子の父親だと言っていたのに、璃子をつけるばかりで一向に声をかける様子はない。そうかあいつこそストーカーだと気付いた。
くらい路地に入ったところで璃子が駆け出した。つけられていることに気付いたのだ。どこかにでんわしている。すると男が「待ってくれ!」と璃子を呼び止めた。
やばい状況だ。
ここで、さっそうと璃子を助ければ、彼女は俺を好きになってくれるかもしれない。
でも、腕にはからきし自信がない。見なかったことにして逃げようか。
それとも何かあったときの為に証拠写真でも撮るか? 俺はスマホの動画を起動した。
そんな俺のよこを猛スピードで自転車がすり抜ける。ぎょっとして退いた。
自転車に乗った男はあっという間にスーツに中年に近寄り、自転車を乗り捨てとびかかり、そのまま羽交い絞めにして地面にねじ伏せた。
柔道でもやっているのか、鮮やかな手並みに俺は唖然として、一歩を踏み出す。すると男が振り返った。シャツインだ。
俺は驚愕のあまり一歩も動けなかった。
くそっ! 先を越された。俺は陰に隠れてようすを伺った。そのうち警官がやって来たので、職質などされたくないので俺はその場を後にした。
翌日学校に行くと、がしっとかたをつかまれた。
振り返るとシャツインだった。
「おまえ、昨日現場にいたよな? なんでだ?」
やっぱりこいつ気づいていたんだ。
「は? なんの話だよ。陰キャ、知らねえよ」
焦ってそうは言ったが、こいつは俺より背が高く、喧嘩も強そうだ。
「へえ、去っていくお前を見たんだが、成瀬の父親もお前を以前注意した言っていた」
俺は言葉につまった。
「二度とあいつのあとをつけるな。あいつがどれだけ怖い思いをしたと思っているんだよ」
いや、怖い思いをしているのは俺だ。
「あ、青木、そのこと誰にも言わないよな?」
璃子のストーカーなどという噂が広まったら、皆から軽蔑されるし、進学に響くかもしれない。俺はすぐさま保身に走った。それ以外何ができる。
「お前がストーカーをやめるなら」
「違う、たまたま見かけてついていっただけだ。でももうしない。絶対に」
成績どころか喧嘩でもこいつにかなわないことは昨日わかった。なぜ体育で剣道を選択しているのかわからないが、おそらくこいつは柔道の有段者だ。
悔しいが何もかもこいつの方が上だ。
俺は璃子が好きだった。ただそれだけだ。それなのに彼女が危険な目にあいそうになっているときに、助けることすらできなかった。
それどころか動画を撮ろうとさえしていた。最低だ。こいつに嫉妬する資格も何ほどに。
俺はすみっこずと馬鹿にされ、陰キャのはずのシャツインに完敗していた。もう二度とこいつは関わらない。俺はそう誓った。
しかし、そんなある日俺はあの時のスーツの中年男が璃子の後をおうのを見つけた。前回のこともありもやもやしていたので、今度は俺が後をつける。
男は璃子の父親だと言っていたのに、璃子をつけるばかりで一向に声をかける様子はない。そうかあいつこそストーカーだと気付いた。
くらい路地に入ったところで璃子が駆け出した。つけられていることに気付いたのだ。どこかにでんわしている。すると男が「待ってくれ!」と璃子を呼び止めた。
やばい状況だ。
ここで、さっそうと璃子を助ければ、彼女は俺を好きになってくれるかもしれない。
でも、腕にはからきし自信がない。見なかったことにして逃げようか。
それとも何かあったときの為に証拠写真でも撮るか? 俺はスマホの動画を起動した。
そんな俺のよこを猛スピードで自転車がすり抜ける。ぎょっとして退いた。
自転車に乗った男はあっという間にスーツに中年に近寄り、自転車を乗り捨てとびかかり、そのまま羽交い絞めにして地面にねじ伏せた。
柔道でもやっているのか、鮮やかな手並みに俺は唖然として、一歩を踏み出す。すると男が振り返った。シャツインだ。
俺は驚愕のあまり一歩も動けなかった。
くそっ! 先を越された。俺は陰に隠れてようすを伺った。そのうち警官がやって来たので、職質などされたくないので俺はその場を後にした。
翌日学校に行くと、がしっとかたをつかまれた。
振り返るとシャツインだった。
「おまえ、昨日現場にいたよな? なんでだ?」
やっぱりこいつ気づいていたんだ。
「は? なんの話だよ。陰キャ、知らねえよ」
焦ってそうは言ったが、こいつは俺より背が高く、喧嘩も強そうだ。
「へえ、去っていくお前を見たんだが、成瀬の父親もお前を以前注意した言っていた」
俺は言葉につまった。
「二度とあいつのあとをつけるな。あいつがどれだけ怖い思いをしたと思っているんだよ」
いや、怖い思いをしているのは俺だ。
「あ、青木、そのこと誰にも言わないよな?」
璃子のストーカーなどという噂が広まったら、皆から軽蔑されるし、進学に響くかもしれない。俺はすぐさま保身に走った。それ以外何ができる。
「お前がストーカーをやめるなら」
「違う、たまたま見かけてついていっただけだ。でももうしない。絶対に」
成績どころか喧嘩でもこいつにかなわないことは昨日わかった。なぜ体育で剣道を選択しているのかわからないが、おそらくこいつは柔道の有段者だ。
悔しいが何もかもこいつの方が上だ。
俺は璃子が好きだった。ただそれだけだ。それなのに彼女が危険な目にあいそうになっているときに、助けることすらできなかった。
それどころか動画を撮ろうとさえしていた。最低だ。こいつに嫉妬する資格も何ほどに。
俺はすみっこずと馬鹿にされ、陰キャのはずのシャツインに完敗していた。もう二度とこいつは関わらない。俺はそう誓った。
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