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第29話 奏汰の迷走(4)*
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光輝に会えなくなってしまってから一週間ほどが経過した。もう八月に入り世間はすっかり夏休みムードに染まっている。
光輝と夏休みに会える機会はあと二回ある。サークルの懇親会と九月の合宿だ。懇親会という名の飲み会は恒例で毎年お盆の少し前にある。その時に話ができたら、と奏汰は願っていた。同時に奏汰は、光輝がサークルを辞めてしまうのではないかと懸念していて、業務連絡が来るたびに冷や汗をかいていた。
奏汰は光輝をこれ以上追いかけ回すのはしつこいか?諦めるべきか?と迷っていた。
奏汰はあまり自分から人を好きになったことがない。しかし、カイに実らない恋心を抱きつつも、別の人と付き合ったことなら何回かある。
けれど引き留めるほど好きになった人はいなかった。この人なら好きになれるかも…と付き合ったはいいが、自分の性癖と合致しそうな人を選べば、モラハラやDVまがいのことをされたり、奏汰が受け入れられないほどに変質的な趣味があって別れた。
もっと普通の人を…と選んでみたら光輝のように頑張って疲れ果てて去られる、といった具合だった。それを惜しんだこともなく、むしろカイ以上の人はいないのかもしれないとカイへの想いを強固なものにしていた。
だからこういう時の最善の行動が分からない。いや、客観的に見れば嫌がっている相手を追いかけ回すのは良くないだろう。それは分かっているのだが、もう一度だけ。もう一度だけ話す機会が欲しい。それで駄目だったら…奏汰は考えたくもなかった。
「………」
奏汰はシャワーから上がるとベッドに転がった。奏汰は相変わらず個人塾で高校生、中学生相手に英語や小論文を指導しているが、夏休みに入ってテンションが高くなった彼らを相手にするのはなかなか骨が折れる。特にこの年頃の女の子は集団になるとこちらがたじろぐようなことを平気で言う。
「はぁ…」
奏汰は疲労からため息を吐いた。光輝とあんなことになっていなければ、今頃二人でベッドの上で抱き合いながらごろごろしていただろうにと思うと、ベッドの隙間がやたら大きく感じる。
しばらく寝転がりながら動画サイトやSNSなどを眺めていたが、何をしても寂しさが埋まらない。
こんなことになるならカイと別れなければ良かったのではないか、と思ってしまう時がある。奏汰はイヤホンをつけると今までカイと及んだ性行為の動画を再生した。
「……んっ…」
奏汰は少しだけ下着をずらすと性器に手を伸ばした。
『カナタ』
イヤホンからダイレクトに自分を呼ぶ声が脳に伝わる。耳に息を吹きかけられているようなくすぐったさを感じ、奏汰は身をよじる。
『気持ちよかったらちゃんと言って』『もっと大きな声で』『もうイッたの?』『ちゃんと聞こえなかったからやり直し』
低い声が奏汰を責め立てる。
『可愛いよ、カナタ』
カイは普段は塩対応だが、セックスの時だけは随分優しかった。たくさん虐めてくれて、最後は優しくしてくれた。それが気持ちよかった。
カイが好きだった。すごく好きだった。彼とのセックスは自分を解放する手段だった。だけど、カイが自分を好きになってくれることはついになかった。
「あっ…ぁ…」
奏汰は小さく声を漏らしてカイとの快感の中に溺れようとしたのだが、どうしても光輝の顔がよぎる。光輝はずっと自分のことを好きだと言い続けてくれていた。
「………………」
奏汰は一度イヤホンを外すとふーっと息を吐いて手を止めた。
(だめだ。全然イケない……)
もうここ最近ずっと奏汰はカイとの性行為の様子を収めた動画を眺めていても達せなかった。いつも光輝が浮かんできて気持ちよくなれない。
「あー!!もうっ」
奏汰は勢いに任せてカイとの動画を全て削除した。光輝と付き合っている最中もいつか消さなくてはと思っていたが、ずっと消すことができなかった。ただ単に惜しかったわけではない。怖かったのだ。カイとの性行為だけが自分に生の実感を与えてくれた。それを失うのは怖かった。
だけど、光輝となら曲りなりにもそういう絆を築いていけるような気がしたのだ。
「コウくんとヤリたい……」
奏汰はタオルケットにくるまって情けない声で呟いた。
「あ、佐伯くん…久しぶり」
光輝の友人である佐伯は、すでに集合場所にいた。
「あ、浅見さん、お疲れ様です」
佐伯はぺこっと頭を下げた。
世間がお盆休みに入る少し前、奏汰たちの天文サークルの懇親会の日だ。三年生の幹事をしている奏汰と一年生の幹事をしている佐伯は三十分前には集合場所に来ていた。大学の最寄り駅だ。この駅周辺は栄えているとは言い難いが、学生御用達の居酒屋がある。他にはまだ誰も来ていなかった。
「あのさ…今日って…鳥羽は来るのかな…」
奏汰は気まずそうに佐伯に尋ねる。佐伯にはどこまで自分たちのことが知られているのか分からない。光輝が同性愛者だということは知っているようだが、奏汰と付き合っていたことまで知っているかは分からない。光輝は誰にも言わないとは言っていたが、彼と仲が良いのであれば自然と気づくだろう。
「…………」
佐伯はやや不審そうな顔をして奏汰を少し見つめた後、
「あの、ちょっと聞いていいですか?」
と聞いてきた。奏汰はドキっとして身構える。
「浅見さんって鳥羽と何かありました?同じバイト先だったとかも嘘ですよね」
「えっ」
「すみません、詮索する気は全然ないんですけど…」
「えっと…」
奏汰はどう返答するべきか迷った。どうにも佐伯は奏汰と光輝の何かあったらしいが、付き合っているとは思っていないらしい。カマをかけているようにも見えなかった。
「あの、鳥羽に変なことしないでください」
佐伯は少し迷ったあと、意を決したように言った。
「変なこと!?」
奏汰は驚いて思わず大きな声を出してしまい周りを見た。この駅はあまり学生以外の人がいない。特に誰も奏汰と佐伯に注目はしていなかった。
奏汰はホッとしながら考える。『変なこと』をしたと言えばいっぱいしてしまった気がする。やはり全て知っているのでは?と奏汰が内心びくびくしていると、佐伯は
「あー、あの…なんか鳥羽って…浅見さんに気があるのかなって思って…」
と言いにくそうに続けた。
「え、う…ん…?」
「別にそれで鳥羽を避けたりするのはいいと思うんですけど、からかったりとかはやめてください。俺もよく知らないけど、高校の時に嫌な思いしたと思うから…」
「…………」
奏汰はそこでやっと、なるほど、と思った。佐伯は、光輝が奏汰に気を持っているところまでは気づいていたが、付き合っていたことなど露知らず、その気持ちを奏汰が弄んでいないか心配に思っているようだった。
「高校の時に何があったの?」
光輝は以前に手痛い失恋をしたことはなんとなく知っていた。しかし深くは教えてはくれなかった。
「……それは俺もよく知らないけど…」
それきり佐伯は黙ってしまった。これ以上、トークを続けられる雰囲気でもなく奏汰も黙ってしまった。しばらくお互いに黙っていたが、やがて佐伯は口を開く。
「鳥羽は多分来ますよ。最初は行かないって…むしろサークル辞めるって言ってたからなんとか引き留めたんです。理由言ってくれなかったけど、浅見さんに失恋でもしたのかなって勝手に思っちゃって…」
「そうだったんだ…」
やはり光輝はサークルを辞めようとしていたらしい。引き留めてくれたらしい佐伯に密かに感謝した。
「だから変に気を持たせるようなことしないでほしいなって」
「分かってるよ。大丈夫。ありがとう」
奏汰は精一杯、笑顔を作って佐伯に笑いかけたが、こんなに心配している光輝に対して、自分がしてしまったことのあれやこれやがバレたらどうなるのかと、罪悪感に苛まれた。
それから、ほどなくしてぽつりぽつりと人が集まってきた。その中に光輝がいるのを確認して、奏汰は少し胸を撫でおろしたのだった。
光輝と夏休みに会える機会はあと二回ある。サークルの懇親会と九月の合宿だ。懇親会という名の飲み会は恒例で毎年お盆の少し前にある。その時に話ができたら、と奏汰は願っていた。同時に奏汰は、光輝がサークルを辞めてしまうのではないかと懸念していて、業務連絡が来るたびに冷や汗をかいていた。
奏汰は光輝をこれ以上追いかけ回すのはしつこいか?諦めるべきか?と迷っていた。
奏汰はあまり自分から人を好きになったことがない。しかし、カイに実らない恋心を抱きつつも、別の人と付き合ったことなら何回かある。
けれど引き留めるほど好きになった人はいなかった。この人なら好きになれるかも…と付き合ったはいいが、自分の性癖と合致しそうな人を選べば、モラハラやDVまがいのことをされたり、奏汰が受け入れられないほどに変質的な趣味があって別れた。
もっと普通の人を…と選んでみたら光輝のように頑張って疲れ果てて去られる、といった具合だった。それを惜しんだこともなく、むしろカイ以上の人はいないのかもしれないとカイへの想いを強固なものにしていた。
だからこういう時の最善の行動が分からない。いや、客観的に見れば嫌がっている相手を追いかけ回すのは良くないだろう。それは分かっているのだが、もう一度だけ。もう一度だけ話す機会が欲しい。それで駄目だったら…奏汰は考えたくもなかった。
「………」
奏汰はシャワーから上がるとベッドに転がった。奏汰は相変わらず個人塾で高校生、中学生相手に英語や小論文を指導しているが、夏休みに入ってテンションが高くなった彼らを相手にするのはなかなか骨が折れる。特にこの年頃の女の子は集団になるとこちらがたじろぐようなことを平気で言う。
「はぁ…」
奏汰は疲労からため息を吐いた。光輝とあんなことになっていなければ、今頃二人でベッドの上で抱き合いながらごろごろしていただろうにと思うと、ベッドの隙間がやたら大きく感じる。
しばらく寝転がりながら動画サイトやSNSなどを眺めていたが、何をしても寂しさが埋まらない。
こんなことになるならカイと別れなければ良かったのではないか、と思ってしまう時がある。奏汰はイヤホンをつけると今までカイと及んだ性行為の動画を再生した。
「……んっ…」
奏汰は少しだけ下着をずらすと性器に手を伸ばした。
『カナタ』
イヤホンからダイレクトに自分を呼ぶ声が脳に伝わる。耳に息を吹きかけられているようなくすぐったさを感じ、奏汰は身をよじる。
『気持ちよかったらちゃんと言って』『もっと大きな声で』『もうイッたの?』『ちゃんと聞こえなかったからやり直し』
低い声が奏汰を責め立てる。
『可愛いよ、カナタ』
カイは普段は塩対応だが、セックスの時だけは随分優しかった。たくさん虐めてくれて、最後は優しくしてくれた。それが気持ちよかった。
カイが好きだった。すごく好きだった。彼とのセックスは自分を解放する手段だった。だけど、カイが自分を好きになってくれることはついになかった。
「あっ…ぁ…」
奏汰は小さく声を漏らしてカイとの快感の中に溺れようとしたのだが、どうしても光輝の顔がよぎる。光輝はずっと自分のことを好きだと言い続けてくれていた。
「………………」
奏汰は一度イヤホンを外すとふーっと息を吐いて手を止めた。
(だめだ。全然イケない……)
もうここ最近ずっと奏汰はカイとの性行為の様子を収めた動画を眺めていても達せなかった。いつも光輝が浮かんできて気持ちよくなれない。
「あー!!もうっ」
奏汰は勢いに任せてカイとの動画を全て削除した。光輝と付き合っている最中もいつか消さなくてはと思っていたが、ずっと消すことができなかった。ただ単に惜しかったわけではない。怖かったのだ。カイとの性行為だけが自分に生の実感を与えてくれた。それを失うのは怖かった。
だけど、光輝となら曲りなりにもそういう絆を築いていけるような気がしたのだ。
「コウくんとヤリたい……」
奏汰はタオルケットにくるまって情けない声で呟いた。
「あ、佐伯くん…久しぶり」
光輝の友人である佐伯は、すでに集合場所にいた。
「あ、浅見さん、お疲れ様です」
佐伯はぺこっと頭を下げた。
世間がお盆休みに入る少し前、奏汰たちの天文サークルの懇親会の日だ。三年生の幹事をしている奏汰と一年生の幹事をしている佐伯は三十分前には集合場所に来ていた。大学の最寄り駅だ。この駅周辺は栄えているとは言い難いが、学生御用達の居酒屋がある。他にはまだ誰も来ていなかった。
「あのさ…今日って…鳥羽は来るのかな…」
奏汰は気まずそうに佐伯に尋ねる。佐伯にはどこまで自分たちのことが知られているのか分からない。光輝が同性愛者だということは知っているようだが、奏汰と付き合っていたことまで知っているかは分からない。光輝は誰にも言わないとは言っていたが、彼と仲が良いのであれば自然と気づくだろう。
「…………」
佐伯はやや不審そうな顔をして奏汰を少し見つめた後、
「あの、ちょっと聞いていいですか?」
と聞いてきた。奏汰はドキっとして身構える。
「浅見さんって鳥羽と何かありました?同じバイト先だったとかも嘘ですよね」
「えっ」
「すみません、詮索する気は全然ないんですけど…」
「えっと…」
奏汰はどう返答するべきか迷った。どうにも佐伯は奏汰と光輝の何かあったらしいが、付き合っているとは思っていないらしい。カマをかけているようにも見えなかった。
「あの、鳥羽に変なことしないでください」
佐伯は少し迷ったあと、意を決したように言った。
「変なこと!?」
奏汰は驚いて思わず大きな声を出してしまい周りを見た。この駅はあまり学生以外の人がいない。特に誰も奏汰と佐伯に注目はしていなかった。
奏汰はホッとしながら考える。『変なこと』をしたと言えばいっぱいしてしまった気がする。やはり全て知っているのでは?と奏汰が内心びくびくしていると、佐伯は
「あー、あの…なんか鳥羽って…浅見さんに気があるのかなって思って…」
と言いにくそうに続けた。
「え、う…ん…?」
「別にそれで鳥羽を避けたりするのはいいと思うんですけど、からかったりとかはやめてください。俺もよく知らないけど、高校の時に嫌な思いしたと思うから…」
「…………」
奏汰はそこでやっと、なるほど、と思った。佐伯は、光輝が奏汰に気を持っているところまでは気づいていたが、付き合っていたことなど露知らず、その気持ちを奏汰が弄んでいないか心配に思っているようだった。
「高校の時に何があったの?」
光輝は以前に手痛い失恋をしたことはなんとなく知っていた。しかし深くは教えてはくれなかった。
「……それは俺もよく知らないけど…」
それきり佐伯は黙ってしまった。これ以上、トークを続けられる雰囲気でもなく奏汰も黙ってしまった。しばらくお互いに黙っていたが、やがて佐伯は口を開く。
「鳥羽は多分来ますよ。最初は行かないって…むしろサークル辞めるって言ってたからなんとか引き留めたんです。理由言ってくれなかったけど、浅見さんに失恋でもしたのかなって勝手に思っちゃって…」
「そうだったんだ…」
やはり光輝はサークルを辞めようとしていたらしい。引き留めてくれたらしい佐伯に密かに感謝した。
「だから変に気を持たせるようなことしないでほしいなって」
「分かってるよ。大丈夫。ありがとう」
奏汰は精一杯、笑顔を作って佐伯に笑いかけたが、こんなに心配している光輝に対して、自分がしてしまったことのあれやこれやがバレたらどうなるのかと、罪悪感に苛まれた。
それから、ほどなくしてぽつりぽつりと人が集まってきた。その中に光輝がいるのを確認して、奏汰は少し胸を撫でおろしたのだった。
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