君とは付き合いたくない!

風崎なをき/次作は四月くらい

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第17話 恋は一方通行(2)*

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「ちゃんとできないかも…」
 あの後、機嫌を損ねた光輝をなんとか宥めて、仕方がなく抱いていいよと言ってあげてシャワーを浴びて準備をして再びベッドに腰掛けるところまでは進めたが、再び奏汰は弱々しく呟く。
「そんなにそのセフレの人がイイんですか…?」
 光輝が奏汰の顔を覗き込む。光輝は綺麗な顔をしている。でも今は悲しそうな顔にしてしまった。
「ごめんね、萎えること言って」
「いいです、でも俺のこと好きになって」
 と光輝は奏汰の首に腕を回して唇を奪った。光輝は啄ばむように唇を食む。気持ちが逸っているのか動きが早い。まるで餌を欲しがる雛鳥だ。
「待って。キスはゆっくりする方がすきだなあ」
 奏汰は光輝から顔を離すと、今度は奏汰の方からキスをした。頬に手を添えて、そっと唇を重ねる。何度も唇を触れ合うだけのキスをゆっくりとされ、散々焦らされたのちに奏汰の舌先でツンと唇をつつかれただけで光輝は腰が抜けそうになった。
「ん、ふっ…奏汰さん…」
「ふふ、可愛いよ…コウくん…」
 奏汰は二人でいる時だけはまたコウくんと呼んでくれるようになった。耳障りの良いおっとりとした声で呼ばれるとそれだけで気持ちが良い。光輝は力が抜けてしまった。そのまま奏汰は光輝をそっと押し倒した。

「…って、俺にヤらせないつもりですか」
 光輝はガバっと起き上がりこぼしのように上体を起こした。
「わっ、危ないなあ」
「そんなに俺にされるの嫌なんですか!?」
「そーゆーわけじゃないけどさー…」
 勃たなかったり、イけなかったら申し訳ないなあと思ってしまう。
「わぁ!」
 煮え切らない奏汰を光輝は押し倒す。
「ここ、触ってもいいですか?」
「……いいよ…」
 光輝は奏汰の後ろの窪みにすっと指を沿わせた。奏汰はいい加減逃げるのを諦めたのか体の力を抜いた。
 光輝は奏汰の膝を立たせてその奥をまじまじと見た。
「…………」
 他人のこんなところをよく見るのは初めてだ。思ったよりも穴が小さい。入るのだろうか?
「……あのさ…そんなにガン見されんの恥ずいんだけど…」
「えっあ、ごめんなさい!奏汰さんの綺麗です!」
 光輝が慌てて素直な感想を言うと、奏汰はぷ、と吹き出すように笑った。
「何言ってるの?早くやって」
「すみません、じゃあ、すみません!」
 光輝は急かされてすみませんを連発しながら奏汰の秘所に指を差し込んだ。

「あ、」
 と声を上げたのは光輝だ。ローションの滑りを借りたとはいえ、想像よりスイッと指が入る。まるで最初からそこは何かを飲み込むかのように奏汰は光輝の指を受け入れてくれた。中は血が止まりそうなほどキツイ。指だけ血圧を測られているようだ。
「二本くらい入れて大丈夫だよ。三本入ったらもう挿れられるよ」
 光輝は初めて奏汰に触れられた時のことを思い出す。ひどく優しく大切に触れてくれていた。あの時の甘い時間を思い出すたび光輝は気持ちが昂ってしまう。結局、奏汰の思惑通り良い思い出になってしまっている。
 自分も奏汰に同じような思いをさせてあげられたら、と思う。
「あの…気持ちが良い場所ってどこですか?」
 知識としては知っていたが、いまいちどこか分からない。そもそも他人の体内など傷つけるのが怖くて指を差し込んだはいいが動かせない。
「もうちょっと奥かな…っていうかそんな恐々やらなくて大丈夫だよ」
 とは言うが、やはり痛い思いはさせたくない。光輝はじりじりと指を進める。
「………」
 一方、奏汰は光輝の生ぬるい愛撫に飽きてきた。本当はもっと責め立てられたりいじめられたりしたいのだ。でもまあ最初だしなあ、と思うと言えない。光輝のことは傷つけたくない気持ちがあるのだ。それに光輝にとってはこれが筆おろしになる。やはり年長者としては自分の欲より、光輝を優先させてあげたい…と奏汰はこんな時でも目の前であくせくしている光輝を見ていると、自分が満たしてあげなければ思うのだった。


「もう挿れていいよ」
 光輝の指が三本ほど入ったところで奏汰はストップをかけた。これ以上、光輝に後ろをふにゃふにゃぐちゃぐちゃされていても気持ち良くなれない。とりあえずさっさと光輝には童貞を捨ててもらうことにした。
「もう、いいんですか?」
「うん、大丈夫。来て…」
 奏汰は自分で足を抱えて光輝を誘った。恥ずかしい格好をすると少しだけ興奮する。あとは光輝が自分のことをちょっとでも責めてくれればいいんだけど…と内心期待せずにいられない。

 けれど。

「んっあ、入ってるっ」
 と最初に喘ぎ始めたのは光輝の方だった。いやいやそのセリフは俺が言うべきじゃない!?と奏汰は突っ込みそうになった。

「あっ、あっ、やばい…」
 ゆっくりと抽送し出すと光輝は初めての刺激に息を荒くして喘ぐ。性器を柔らかい肉の壁でぎゅうっと締め付けられて今まで感じた事のない快感が光輝を襲う。

 その様子を見て奏汰は可愛いなと思う気持ちはあるが、同時に冷静になってしまう。

(なんだかすぐイッちゃいそうだなあ。それならそれでいいけどさ…)

「あっ、はぁ、はぁ…」
「大丈夫…?」
「……奏汰さんの中…気持ち良い」
 感じ入るように深く吐息を吐きながら光輝は答える。
「そお?」
 と半分白けたように答える奏汰に光輝は焦る。
「なんでそんなに余裕なんですか?気持ち良いとこ当たってないですか?」
「いや体は気持ち良いんだけど、いまいち頭が盛り上がらないっていうか」
 やはり奏汰の被虐心を満たさないとダメらしい。
「う……じゃぁここはどうですか…?」
 光輝は自分が先にイッてしまわないようになんとか気を引き締めて、奏汰の前立腺を当てるように少し強めに動く。
「あっ」
 びくっと奏汰の身体が揺れる。その様子を見て奏汰は心がキュウとなる。
「奏汰さん可愛い」
 光輝は嬉しくなってさらに奏汰の良さそうなところを突いた。
「んっ…もっと…もっと色々言って」
 奏汰は光輝の言葉に反応をしていた。奏汰の目の色が恍惚としたように変わる。何かスイッチが入ってしまったようだ。
「奏汰さんの声可愛いです、もっと聞かせてください」
「あっ、ん」
 光輝は思いつくままに言ってみた。奏汰は息を荒くし始める。声が高くなる。目を切なげに細める。その様はひどく艶めかしく見えた。
 理解はしていたつもりだが、自分を優しくリードして抱いてくれた奏汰とは別人とセックスをしているようで、光輝は戸惑う。戸惑ってしまった自分にも戸惑う。
「あっ、あぁ、もっと…もっと俺のこと責めること言って」
 奏汰は目をとろんと蕩けさせてせがんできた。ぎゅっと腕を掴まれる。その強さと熱さに驚く。
「あと、は、えーと、えーと…」
 光輝はぐるぐると目を回して沸騰しそうになっていた。気づけば腰を動かすのも止まってしまった。
「…………」
 光輝が困っている様子を見て奏汰は急速に自身が冷めていくのを感じた。

「……………」
「……………」
 沈黙が訪れる。
「……語彙力ないな」
 やがて奏汰はずばっと感想を述べた。
「そんなはっきりと言わなくても!!!」
 光輝は顔を赤くして涙目になっていた。
「悪い悪い…可愛いよ」
 と言って奏汰は笑いながら頭を撫でた。光輝は可愛い。素直だしウブだし自分のことを好きでいてくれるし。彼を抱きたいだけだったら理想の相手だったと思う。自分に男に犯されたいと思う性癖があるのが悔しいくらいだ。
「ふう…もう好きにしていいよ」
「うう…」
 光輝は項垂れながらも再び腰を動かした。奏汰に諦められてしまった。もう少し勉強をしてくればよかった。と後悔した。次はもっと奏汰にカウンセリングをしてしっかり予習してこようと心に決める。
 あとはもっと抱く側に慣れたい。好きな人のナカは想像以上に刺激が強くて頭が真っ白になってしまった。
 見れば奏汰の陰茎はすっかり萎えてしまっている。気持ちよくないのかとがっかりする。
 せめて少しでも感じて欲しいと思いながら、光輝は奏汰の良いところに当てようと腰をぶつける。

「あっ、あっ、奏汰さん」
「ん、あ、」

 奏汰は動きに合わせて声を出してやる。場所としては気持ちがいいのだが、心が快感を感じてない。
 これがカイだったらもっと卑猥な隠語が飛び交うような応酬でもっと感じさせてくれただろう。

(もっと、もっと)

 頭の中でついついカイが自分を犯している妄想をしてしまう。

「あぁっ、あっ」

 妄想の中のカイが自分を責めたてる。『ほら、気持ちいい?』『ちゃんと気持ち良いですって言って』『どこが気持ち良いの』『違うでしょ、ここはなんていうの』『恥ずかしいやつ』『ごめんなさいは?』『カナタは恥ずかしいことが大好きな悪い子だもんな』

「あっ!」

 奏汰は自分の妄想に興奮して声を上げる。奏汰の陰茎も再び熱を取り戻してきた。そんなことは知らない光輝は自分に感じてくれているのかと少し嬉しくなる。

(あっ、イっちゃいそう、あぁごめんなさい、悪い子でごめんなさい、恥ずかしいことが大好きな悪い子でごめんなさい、あぁ、カイくん、カイくん、カイくん…)

「あっカイく…」

「!?」

(しまった……今声に出てた…?)

 光輝の動きが止まってしまい萎えていくのがわかった。

「…………」
「…………」
 光輝は何も言わなかった。奏汰も何も言えなかった。
 光輝は無言でベッドから降りると床に散らばった下着とズボンとTシャツを着た。
「コウくん…?」
 返事がない。そのまま玄関に向かってしまう。奏汰は慌てて光輝の肩を掴むが、光輝はその手を振り払うと

「触んじゃねー!ビッチ!」

 と叫んで部屋を飛び出してしまった。追いかけようとしたが素っ裸のままの奏汰は外に出ることができず、奏汰は部屋に取り残される。

 奏汰は光輝の暴言に茫然としながら、
「その口の悪さをベッドで発揮してよ…」
 と呟いた。
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