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第20話 恋は一方通行(5)
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「ただいまぁ…」
奏汰が家に戻ると、しょっぱくて甘い匂いが部屋に充満していた。すでに時刻は午後九時を回っている。まだ夕食を食べていない奏汰のお腹は、食欲を刺激されてぐうと鳴った。
「お帰りなさい!」
すぐに光輝が玄関まで駆け寄って奏汰に抱きついた。金曜日の今日、光輝は奏汰の家に泊まりにきたのだ。奏汰は光輝をぽんぽんと抱き返しながら
「あー、俺汗臭いかも…今日クーラーが一個故障しててさ…」
「そんなことないです、いい匂い」
と顔をこすりつけた。奏汰はベージュの麻のシャツを着ていた。光輝の頬をひんやり冷やして気持ちが良い。
「もうやめてよ」
と苦笑しながら光輝をやんわり引き離した。
「何作ってたの?」
「ビビンバ炒飯とはるさめスープと海藻サラダ」
と光輝は照れたように呟いた。
「何それうまそ」
と言うと光輝は嬉しそうに笑った。かわいいなあと思う。
夜ご飯を作りたいという光輝のために大学が終わったあと近くのスーパーで一緒に買い出しをした。光輝が「何が好きですか?」と尋ねると奏汰は「ラーメン」と答えてしまい、作り甲斐がないと文句を垂れた。
夜の六時から九時まで近所の塾で講師をする奏汰を見送って、光輝はその間にご飯を作っていた。
一人暮らしの部屋をよく知らない光輝には、キッチンのコンロが一口しかないのも衝撃だったが、小さいまな板を縦にしないとはみ出してしまう狭い作業スペースにも驚いた。その上、想像以上に奏汰は調理器具を所持しておらず、切りにくいおもちゃみたいな包丁でまごまごしながら調理をした。
今度作らせてもらえるなら、家である程度作って仕上げるだけにしておいた方がいいかもしれない。それから電子レンジを使ったレシピを開拓しよう…などと次回への妄想をしているとあっという間に三時間経ってしまった。
奏汰の帰りを待っているのは、同棲しているようで楽しかった。
「あれ?君は食べないの?」
ローテーブルに並べられていたのは一人分の食事だけだった。サンプル食品みたいに綺麗に盛り付けられている。
「ごめんなさい、俺先に食べちゃいました」
「え?」
「あ、それが…その…食器が全然なくて…」
奏汰の家には大小の皿が一枚づつとコップが二個しかなかった。仕方がないので光輝は自分の分だけ適当に食べて、再び皿を洗って盛り付けた。
「えっ、ああそっか…ごめん。俺も自炊するけど、そのままフライパンとか鍋から食べちゃうからなあ」
ということは奏汰はあまり他人をこの家にいれないのかもしれない。少なくとも手料理を食べてもらうという行為をしたのは自分だけかもしれないと光輝は密かに勝ったような気持ちになっていた。
「今度買いに行こうか。君の分の食器」
と奏汰が言うと光輝は顔を輝かせた。
「ほんと!?」
(すごい!一緒に暮らしてるみたい…!)
好きな人と一緒に平凡に暮らしたいという夢がある光輝は顔を紅潮させて密かに感動してた。
(ふふ、喜んでる喜んでる…)
奏汰には全てお見通しだったのだが。
光輝の作ったご飯は美味しかった。変にオシャレな気の張った料理ではなく単純な馴染みのある味つけであっという間に食べた。それでいて細い花弁のように切られたパプリカとかサイコロ型に切り揃えられたきゅうりなどを見ると、本当に料理が得意なのだろう。
光輝にシャワーを貸している間、奏汰は夕飯を思い返す。時刻は午後十時過ぎ。電子タバコを吸いながらこれから起こることを考える。まあ、どう考えてもセックスをするのだろう。
わくわくより、緊張してしまう。光輝は可愛い。それは本当だ。けれど出会った当初から変わらず発されている光輝の欲は「甘やかされたい、愛されたい、優しくされたい」だ。それが分かっていながら光輝に自分を抱かせることに違和感がある。
なら自分が抱いてあげればいい、と思う。自分は満たされないかもしれないが、両方満たされないよりマシだ。でもそれは光輝が嫌がるだろう。一時的ならともかく自分だってそんな関係がいつまでも続けられるとは思わない。今までもそうだった。性的なすれ違いは破局まっしぐらだ。
それでも、と思ってしまう。それでもセックスの満足度なんかより、光輝とならただ一緒にいることで満たされる関係を築けるかもしれない、いやそろそろ築かなければならない、とも思うのだ。奏汰にとって光輝とのお付き合いは賭けでありチャレンジだった。
「奏汰さんって美意識高いですよね」
といつの間にか風呂から上がった光輝がふいに話しかけてきた。奏汰はハッとして意識を戻す。
「え?」
「風呂場にスクラブとかヘアパックとか色々あったから」
「あー…そうかもね。今度使っていいよ」
(言えない。カイくんがうちに来る時に入念に肌を磨く用のスクラブだなんて言えない…)
間違っても今夜はカイの名前を出してはならないと奏汰は気を引き締めた。
「じゃあ、今度は俺が入るね」
ボロを出す前にシャワーに行こう。
「待っててね」
にこっと流し目で笑いかけられ、光輝はきゅんと胸が高鳴る。残された光輝はベッドの縁に腰かけて思わず姿勢を正す。
(よし、今日はちゃんと奏汰さんを気持ち良くさせてあげるぞ…ちゃんと色々予習(?)してきたし、きちんと聞き取りもして奏汰さんがして欲しいことしてあげるんだ…あのセフレの人を思い出させないくらい色々…)
(セフレの…人…)
「………」
セフレの男はこのベッドに上がったことがあるのだろうか。奏汰を何度抱いたのだろう。身長はどれくらいで、どんな顔をしていて、どんな性格なのだろうか。考えたくもないことを考えてしまう。
実を言うと、見せられたハメ撮りの衝撃は光輝から抜けきっていない。あの時の奏汰の顔、声が脳裏に焼き付いている。どうしたら自分も奏汰にあんな顔をあんな声を出させてあげられるのだろう。真面目な光輝はもんもんと考えこんでしまうのだ。
(ううう~奏汰さん早く戻ってきて…)
光輝はタオルケットを丸めて抱きしめるとベッドに横になった。香水が混じったような奏汰のいい匂いがする。
つけっぱなしのテレビではアニメ映画が放映されていた。何度もテレビで放映されているその映画は、光輝も見たことがある。
ヒロインは苦手だが、ヒロインが横恋慕している男を子供ながらにかっこいいと思ったものだ。
光輝はしばらくぼんやりと画面を見つめていた。
「…………」
「お待たせ」
奏汰が頭を拭きながらベッドに戻ると光輝はタオルケットを抱きしめて寝そべっていた。
「コウくん?」
呼んでも微動だにしない。よく見るとすやすや眠っている。
「ありゃ。寝ちゃってるよ」
寝顔は子供のようだった。そうだよな高校卒業したばかりだもんな、と奏汰は光輝のサラッとした髪を撫でる。起こすのも忍びなくて奏汰はタオルケットをかけ直してやった。
「ふふ、かわいい」
正直にいうとヤらなくていいことにホッとしてしまった。だけど、触れ合えなくて残念だなあと思う自分もいることに気付く。
「もっと好きにならせてね」
カイくんのこと忘れるくらい。
えっ。
どこここ。
見慣れない風景に光輝は一瞬パニックを起こしそうになったが、次第にここが奏汰の家で、泊まりに来ていたことを思い出す。さらに奏汰がシャワーから帰ってくるのを待っていたことも思い出した。
(俺寝ちゃったの!?なんで起こしてくれないんだよ!)
光輝は今日泊まりに来るために朝の五時に起きて、家事をしてから出てきたのだ。二日分の作り置きを作り、やっと晴れたから洗濯機を二回も回して溜まっていた洗濯物を干し、いつも週末にやる掃除をして家を出た。そんなことをしていたものだから、実はずっと眠かったのだ。けれどこれからというところで寝落ちしてしまうなんて。
隣を見ると奏汰が寝ていた。セミダブルのベッドは男二人だと狭い。奏汰は自分に背を向けて寝ていた。しばらく横になりながら奏汰の上下する肩を見ていたが、眠気はどこかに行ってしまった。
起こさないようにそっとベッドから抜け出してトイレに行った。トイレから戻るとスマホを探して時間を見た。三時半過ぎだった。まだ外も暗い。最寄りの駅から二十分程度離れたこの場所は、完全な住宅街で静かだ。室内も空調の音しかしない。
光輝はベランダに続く窓辺に立ってそっとカーテンを開けてみた。一階だから見晴らしは良くない。でも空は見えた。しかし曇っていて何も見えない。日中は晴れていたのに。
「………」
その後も光輝は寝付くことができず奏汰の呼吸音を聞きながら静かに朝を待っていた。
奏汰が家に戻ると、しょっぱくて甘い匂いが部屋に充満していた。すでに時刻は午後九時を回っている。まだ夕食を食べていない奏汰のお腹は、食欲を刺激されてぐうと鳴った。
「お帰りなさい!」
すぐに光輝が玄関まで駆け寄って奏汰に抱きついた。金曜日の今日、光輝は奏汰の家に泊まりにきたのだ。奏汰は光輝をぽんぽんと抱き返しながら
「あー、俺汗臭いかも…今日クーラーが一個故障しててさ…」
「そんなことないです、いい匂い」
と顔をこすりつけた。奏汰はベージュの麻のシャツを着ていた。光輝の頬をひんやり冷やして気持ちが良い。
「もうやめてよ」
と苦笑しながら光輝をやんわり引き離した。
「何作ってたの?」
「ビビンバ炒飯とはるさめスープと海藻サラダ」
と光輝は照れたように呟いた。
「何それうまそ」
と言うと光輝は嬉しそうに笑った。かわいいなあと思う。
夜ご飯を作りたいという光輝のために大学が終わったあと近くのスーパーで一緒に買い出しをした。光輝が「何が好きですか?」と尋ねると奏汰は「ラーメン」と答えてしまい、作り甲斐がないと文句を垂れた。
夜の六時から九時まで近所の塾で講師をする奏汰を見送って、光輝はその間にご飯を作っていた。
一人暮らしの部屋をよく知らない光輝には、キッチンのコンロが一口しかないのも衝撃だったが、小さいまな板を縦にしないとはみ出してしまう狭い作業スペースにも驚いた。その上、想像以上に奏汰は調理器具を所持しておらず、切りにくいおもちゃみたいな包丁でまごまごしながら調理をした。
今度作らせてもらえるなら、家である程度作って仕上げるだけにしておいた方がいいかもしれない。それから電子レンジを使ったレシピを開拓しよう…などと次回への妄想をしているとあっという間に三時間経ってしまった。
奏汰の帰りを待っているのは、同棲しているようで楽しかった。
「あれ?君は食べないの?」
ローテーブルに並べられていたのは一人分の食事だけだった。サンプル食品みたいに綺麗に盛り付けられている。
「ごめんなさい、俺先に食べちゃいました」
「え?」
「あ、それが…その…食器が全然なくて…」
奏汰の家には大小の皿が一枚づつとコップが二個しかなかった。仕方がないので光輝は自分の分だけ適当に食べて、再び皿を洗って盛り付けた。
「えっ、ああそっか…ごめん。俺も自炊するけど、そのままフライパンとか鍋から食べちゃうからなあ」
ということは奏汰はあまり他人をこの家にいれないのかもしれない。少なくとも手料理を食べてもらうという行為をしたのは自分だけかもしれないと光輝は密かに勝ったような気持ちになっていた。
「今度買いに行こうか。君の分の食器」
と奏汰が言うと光輝は顔を輝かせた。
「ほんと!?」
(すごい!一緒に暮らしてるみたい…!)
好きな人と一緒に平凡に暮らしたいという夢がある光輝は顔を紅潮させて密かに感動してた。
(ふふ、喜んでる喜んでる…)
奏汰には全てお見通しだったのだが。
光輝の作ったご飯は美味しかった。変にオシャレな気の張った料理ではなく単純な馴染みのある味つけであっという間に食べた。それでいて細い花弁のように切られたパプリカとかサイコロ型に切り揃えられたきゅうりなどを見ると、本当に料理が得意なのだろう。
光輝にシャワーを貸している間、奏汰は夕飯を思い返す。時刻は午後十時過ぎ。電子タバコを吸いながらこれから起こることを考える。まあ、どう考えてもセックスをするのだろう。
わくわくより、緊張してしまう。光輝は可愛い。それは本当だ。けれど出会った当初から変わらず発されている光輝の欲は「甘やかされたい、愛されたい、優しくされたい」だ。それが分かっていながら光輝に自分を抱かせることに違和感がある。
なら自分が抱いてあげればいい、と思う。自分は満たされないかもしれないが、両方満たされないよりマシだ。でもそれは光輝が嫌がるだろう。一時的ならともかく自分だってそんな関係がいつまでも続けられるとは思わない。今までもそうだった。性的なすれ違いは破局まっしぐらだ。
それでも、と思ってしまう。それでもセックスの満足度なんかより、光輝とならただ一緒にいることで満たされる関係を築けるかもしれない、いやそろそろ築かなければならない、とも思うのだ。奏汰にとって光輝とのお付き合いは賭けでありチャレンジだった。
「奏汰さんって美意識高いですよね」
といつの間にか風呂から上がった光輝がふいに話しかけてきた。奏汰はハッとして意識を戻す。
「え?」
「風呂場にスクラブとかヘアパックとか色々あったから」
「あー…そうかもね。今度使っていいよ」
(言えない。カイくんがうちに来る時に入念に肌を磨く用のスクラブだなんて言えない…)
間違っても今夜はカイの名前を出してはならないと奏汰は気を引き締めた。
「じゃあ、今度は俺が入るね」
ボロを出す前にシャワーに行こう。
「待っててね」
にこっと流し目で笑いかけられ、光輝はきゅんと胸が高鳴る。残された光輝はベッドの縁に腰かけて思わず姿勢を正す。
(よし、今日はちゃんと奏汰さんを気持ち良くさせてあげるぞ…ちゃんと色々予習(?)してきたし、きちんと聞き取りもして奏汰さんがして欲しいことしてあげるんだ…あのセフレの人を思い出させないくらい色々…)
(セフレの…人…)
「………」
セフレの男はこのベッドに上がったことがあるのだろうか。奏汰を何度抱いたのだろう。身長はどれくらいで、どんな顔をしていて、どんな性格なのだろうか。考えたくもないことを考えてしまう。
実を言うと、見せられたハメ撮りの衝撃は光輝から抜けきっていない。あの時の奏汰の顔、声が脳裏に焼き付いている。どうしたら自分も奏汰にあんな顔をあんな声を出させてあげられるのだろう。真面目な光輝はもんもんと考えこんでしまうのだ。
(ううう~奏汰さん早く戻ってきて…)
光輝はタオルケットを丸めて抱きしめるとベッドに横になった。香水が混じったような奏汰のいい匂いがする。
つけっぱなしのテレビではアニメ映画が放映されていた。何度もテレビで放映されているその映画は、光輝も見たことがある。
ヒロインは苦手だが、ヒロインが横恋慕している男を子供ながらにかっこいいと思ったものだ。
光輝はしばらくぼんやりと画面を見つめていた。
「…………」
「お待たせ」
奏汰が頭を拭きながらベッドに戻ると光輝はタオルケットを抱きしめて寝そべっていた。
「コウくん?」
呼んでも微動だにしない。よく見るとすやすや眠っている。
「ありゃ。寝ちゃってるよ」
寝顔は子供のようだった。そうだよな高校卒業したばかりだもんな、と奏汰は光輝のサラッとした髪を撫でる。起こすのも忍びなくて奏汰はタオルケットをかけ直してやった。
「ふふ、かわいい」
正直にいうとヤらなくていいことにホッとしてしまった。だけど、触れ合えなくて残念だなあと思う自分もいることに気付く。
「もっと好きにならせてね」
カイくんのこと忘れるくらい。
えっ。
どこここ。
見慣れない風景に光輝は一瞬パニックを起こしそうになったが、次第にここが奏汰の家で、泊まりに来ていたことを思い出す。さらに奏汰がシャワーから帰ってくるのを待っていたことも思い出した。
(俺寝ちゃったの!?なんで起こしてくれないんだよ!)
光輝は今日泊まりに来るために朝の五時に起きて、家事をしてから出てきたのだ。二日分の作り置きを作り、やっと晴れたから洗濯機を二回も回して溜まっていた洗濯物を干し、いつも週末にやる掃除をして家を出た。そんなことをしていたものだから、実はずっと眠かったのだ。けれどこれからというところで寝落ちしてしまうなんて。
隣を見ると奏汰が寝ていた。セミダブルのベッドは男二人だと狭い。奏汰は自分に背を向けて寝ていた。しばらく横になりながら奏汰の上下する肩を見ていたが、眠気はどこかに行ってしまった。
起こさないようにそっとベッドから抜け出してトイレに行った。トイレから戻るとスマホを探して時間を見た。三時半過ぎだった。まだ外も暗い。最寄りの駅から二十分程度離れたこの場所は、完全な住宅街で静かだ。室内も空調の音しかしない。
光輝はベランダに続く窓辺に立ってそっとカーテンを開けてみた。一階だから見晴らしは良くない。でも空は見えた。しかし曇っていて何も見えない。日中は晴れていたのに。
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