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第1章:灰色の空、銀色の招待状
1-1:終わりの始まり
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窓の外は、いつからかずっと、セピア色をしていた。
かつて青かったはずの空は、巨大隕石群「レクイエム」がもたらした微細な塵に覆われ、まるで古い写真のように色褪せていた。2025年10月12日、午後。東京の安アパートの一室で、高森大地は、ベッドの上で死体のように転がっていた。
部屋の空気はよどんでいる。最後に窓を開けたのはいつだったか、もう思い出せない。床には脱ぎ散らかした服と、読み終えた漫画雑誌が小さな山を築いている。カーテンの隙間から差し込む太陽光だけが、空気中を舞う埃をキラキラと照らし出し、この部屋に唯一の動きを与えていた。
つけっぱなしの液晶テレビが、無神経に明るい声を垂れ流している。
『――続いてのニュースです! 人類の希望を乗せた宇宙船「アーク」の第二次搭乗者リストが発表され、選ばれたエリートたちの歓喜の声が世界中に届けられました!』
画面には、純白の制服に身を包んだ同年代の若者たちが、涙を流して抱き合う姿が映し出される。彼らは選ばれた人間。知能指数、身体能力、遺伝的特性、あらゆる基準でふるいにかけられ、滅びゆく地球を脱出する権利を得た、新世界のアダムとイヴだ。
「……関係ない」
大地は、誰に言うでもなく呟いた。声は、乾いた唇からかろうじて漏れ出た空気の塊に近かった。
彼らにとって、それは現実なのだろう。だが、大地のような99.9%の「選ばれなかった」人間にとって、アーク計画は遠い宇宙の出来事であり、自分が出演しない映画の予告編でしかなかった。羨望も、嫉妬も、とうの昔に枯れ果てていた。ただ、そこにある事実として認識しているだけだ。
大地は重たい腕を上げ、枕元のスマートフォンを掴んだ。ロックを解除すると、意味のない情報が滝のように流れ込んでくる。どうでもいい芸能人のゴシップ。フィルターで加工された友人の笑顔。そして、世界のどこかで起きた暴動や食糧危機のニュース。すべてが等しく無価値に思えた。
親指が、乾いた音を立てて画面を滑る。スクロール、スクロール、スクロール。何かを探しているわけではない。ただ、そうしていないと、自分の意識がこのよどんだ部屋の空気の中に溶けて、消えてしまいそうだった。
テレビの明るい音声が、耳障りだった。だが、それを消すためにリモコンへ手を伸ばすことすら、億劫だった。
かつて青かったはずの空は、巨大隕石群「レクイエム」がもたらした微細な塵に覆われ、まるで古い写真のように色褪せていた。2025年10月12日、午後。東京の安アパートの一室で、高森大地は、ベッドの上で死体のように転がっていた。
部屋の空気はよどんでいる。最後に窓を開けたのはいつだったか、もう思い出せない。床には脱ぎ散らかした服と、読み終えた漫画雑誌が小さな山を築いている。カーテンの隙間から差し込む太陽光だけが、空気中を舞う埃をキラキラと照らし出し、この部屋に唯一の動きを与えていた。
つけっぱなしの液晶テレビが、無神経に明るい声を垂れ流している。
『――続いてのニュースです! 人類の希望を乗せた宇宙船「アーク」の第二次搭乗者リストが発表され、選ばれたエリートたちの歓喜の声が世界中に届けられました!』
画面には、純白の制服に身を包んだ同年代の若者たちが、涙を流して抱き合う姿が映し出される。彼らは選ばれた人間。知能指数、身体能力、遺伝的特性、あらゆる基準でふるいにかけられ、滅びゆく地球を脱出する権利を得た、新世界のアダムとイヴだ。
「……関係ない」
大地は、誰に言うでもなく呟いた。声は、乾いた唇からかろうじて漏れ出た空気の塊に近かった。
彼らにとって、それは現実なのだろう。だが、大地のような99.9%の「選ばれなかった」人間にとって、アーク計画は遠い宇宙の出来事であり、自分が出演しない映画の予告編でしかなかった。羨望も、嫉妬も、とうの昔に枯れ果てていた。ただ、そこにある事実として認識しているだけだ。
大地は重たい腕を上げ、枕元のスマートフォンを掴んだ。ロックを解除すると、意味のない情報が滝のように流れ込んでくる。どうでもいい芸能人のゴシップ。フィルターで加工された友人の笑顔。そして、世界のどこかで起きた暴動や食糧危機のニュース。すべてが等しく無価値に思えた。
親指が、乾いた音を立てて画面を滑る。スクロール、スクロール、スクロール。何かを探しているわけではない。ただ、そうしていないと、自分の意識がこのよどんだ部屋の空気の中に溶けて、消えてしまいそうだった。
テレビの明るい音声が、耳障りだった。だが、それを消すためにリモコンへ手を伸ばすことすら、億劫だった。
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