前世の記憶のせいで食事を拒んでいたら、極上の精気を注がれて本能に抗えず魔王専属インキュバスに任命されました

ひむかい

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7話 インキュバスは本能に抗えない 3 ※

 下の衣服が完全に取り払われた。いつ脱がされたかも覚えていない。全裸の身体が寝台の上に投げ出されて、灯火の光に照らされている。自分の身体が熱を帯びて紅潮しているのが見えた。

 ヴェルディオスの手が太腿の内側に移った。膝の内側から太腿へ、指先が這い上がっていく。やわらかい皮膚の上を爪が軽くなぞるだけで、脚が痙攣するように震えた。

 膝がぎゅっと閉じようとする。反射的な抵抗。

 ヴェルディオスの手がその関節を捉え、親指で円を描くように撫でた。力ではなく、精気。そこから裏側へと精気が流されて、筋肉から力が抜けていく。

「力を抜け」

「無理——」

「無理ではない。お前はインキュバスだ」

 二度目のその台詞を聞いたとき、トーヤの頭の片隅で前世の自分が「それ便利な言葉として使いすぎだろ」とツッコんだ。だが声には出せなかった。
 膝がゆっくりと開かされていく。抗えない。
 精気で弛緩させられた脚が、ヴェルディオスの手に導かれるままに左右に分かれる。所在なげな尻尾が、逃げるように力なくシーツを叩いた。

 開かされた。全部。

 その姿勢のまま、ヴェルディオスの視線を受ける。金の瞳がトーヤの露わになった身体を、隠す場所もなく晒されたすべてを、ゆっくりと見下ろした。

「……っ」

 顔も、身体中も熱い。見られている——それだけで肌が疼く。視線に精気はないはずなのに、見つめられることが触れられることの延長線上にあって、インキュバスの身体は欲望の視線にさえ反応する。

 ヴェルディオスの指がさらに深い場所に触れた。太腿の付け根を通り過ぎて、後方へ。

 ぬるい——濡れている。触れられてもいないそこが、すでに。

 ——嘘だろ。

「インキュバスの身体は精気の受け入れに適した構造をしている。こうなることは自然なことだ」

「自然って——ん、あ——っ」

 指先がその濡れた場所を撫でた。ぬるりと滑る感触。自分の身体から出たもので、ヴェルディオスの指が濡れていく。その音がした。ぴちゃり、という微かな水音が、静かな部屋にやけに響く。

「お前も知っているはずだ」

 知っている。夢魔の身体は性行為のために最適化されている。受け入れる側に回れば身体が勝手に準備を整える。男の身体であっても関係ない——そういう種族だ。

 知っていた。知っていたが、それとこれとは——

「あ——ぁ、おく——」

 指が入ってきた。一本。

 身体は確かに準備ができていて、抵抗がなかった。ぬるりと、指が内部に沈んでいく。体内に異物が入る感覚——ではない。入ってきたものを身体が歓迎している。内壁が指にまとわりつくように収縮して、精気を求めて吸いついた。

「——ぁっ」

 指が中で曲がった。内壁のある場所を押した瞬間、視界が弾けた。腰が跳ねる。

「ここか」

 ヴェルディオスの声は確認するような響きだったが、返事を待たずに同じ場所を再び押した。こすり上げるように、指の腹を使って。精気が指先から直接注がれる。

 悲鳴に近い声が出た。

「ぁあっ——! やっ——そこ——」

 中からの精気の流入は桁違いだった。粘膜が精気を直接吸い上げる。身体の中心を貫く快感に、腰が寝台から浮き上がった。腕が寝具を掴む。シーツが引き攣れる音。

 二本目の指が加わった。

「っっっ——!」

 内壁が押し広げられていく。痛みではない——圧迫と快楽が混ざった、名前のつけられない感覚。二本の指が交互に動いて内部を丁寧にほぐしていくたびに、くちゅ、くちゅ、と粘った音が自分の身体の中から聞こえる。

「お前の中は——飢えている」

 ヴェルディオスの声がわずかに低くなった。

「指を吸い込んで離さない。精気を送る端から飲み込まれる。——底なしだな」

「そんな——こと——言わない——ぁっ」

 指が奥の場所を擦り上げるたびに、身体がびくりと跳ね、尻尾がヴェルディオスの手首に無意識に絡みついた。声が止まらない。甘い声。切ない声。こんな声を出せることを知らなかった。喉から零れる音のひとつひとつがインキュバスの声で、精気を求めて鳴いている。

 三本目。

「——ぁっ、あっ——」

 限界だった。指が三本入っている。抜き差しのたびに粘着質な音が響く。ヴェルディオスの指が中で広がるたびに内壁が収縮を繰り返して、精気を搾り出すように絡みつく。

「ぁ——っ、だめ——もう——」

「まだだ。ここからが本題だ」

 指が抜かれた。

 ずるり、と内部を引き摺る感覚のあとに、空虚が残った。身体の内側にぽっかりと穴が開いたような喪失感。さっきまであった充足が消えて、器が再び足りないと叫び始める。

 ——嫌だ。空っぽは嫌だ。

 その衝動が自分のものなのかインキュバスの本能なのか、もう区別がつかなかった。

 衣擦れの音がした。ヴェルディオスが上着の留め具を外している。布が肩から滑り落ちる気配。トーヤは寝台に仰向けのまま、荒い呼吸を繰り返しながら薄く目を開けた。

 目に入ったのは、銀灰の髪の下の、白い肌。

 ヴェルディオスの上半身だった。灯火に照らされた鎖骨と胸と腹。均整の取れた身体に刻まれた筋肉の稜線。そこからにじみ出ている魔力の気配が、肌の表面で微かに光っているように見えた。

 ——綺麗だ。

 場違いな感想が頭をよぎった。

 ヴェルディオスが残りの衣服も取り払い、トーヤの脚の間に膝をついた。太腿の内側に硬く熱いものが当たった。

 その感触で、ぼんやりしていた思考が一瞬戻ってくる。

 ——ちょっと待て。ちょっと——

「そ、そんなの——入らない——!」

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