前世の記憶のせいで食事を拒んでいたら、極上の精気を注がれて本能に抗えず魔王専属インキュバスに任命されました

ひむかい

文字の大きさ
8 / 10

8話 インキュバスは本能に抗えない 4 ※

 声が裏返った。太腿に触れている熱の大きさが尋常ではない。どう考えても物理的に不可能だ。不可能なはずだ。絶対に——

「お前はインキュバスだぞ?」

 ヴェルディオスが三度目のその台詞を口にしたとき、トーヤの頭の片隅は大絶叫だった。便利な言葉か? それは万能の免罪符か?

「無理なわけがない」

「いや——あの——物理的に——」

「やってみればわかる」

 ヴェルディオスの手がトーヤの片脚を持ち上げた。膝の裏を支え、ゆっくりと折りたたむ。太腿が胸に近づく。身体が開かれる。その姿勢で、もう片方の手がトーヤの腰を引き寄せた。位置を合わせるように。

 先端が触れた——熱い。ほぐされた場所に押し当てられる。

 呼吸が止まった。

「力を抜け。——お前の身体は、知っている」

 痛みがない。痛みがないどころか、入ってくる感覚そのものが快楽だった。指とは比較にならない太さと熱が、内壁を押し広げながらゆっくりと奥へ進んでいく。身体の内側がヴェルディオスの形に沿って開いていく。ずるり、と中が拡げられる音がした。ぬちゅ、という粘った音が繋がった場所から漏れる。

 内壁が、押し入ってくるものを歓迎するように収縮した。絡みつき、精気を求めて吸い上げる。魔王の精気が——これまでの指やキスとは桁違いの密度で——直接注ぎ込まれてくる。

「っ——あ、ああ、あ——」

 声が途切れ途切れに漏れる。入ってくる。まだ入ってくる。奥へ、もっと奥へ。こんな深い場所があったことすら忘れていた——いや、あの記憶が蘇ってから、この身体のことを知ろうとしてこなかったのだ。ヴェルディオスが、本人が知らなかった場所を押し開いて、埋めていく。

 完全に入りきった瞬間、トーヤの喉から細い声がこぼれた。

「っ——ぁ——」

 深い。身体の奥の奥まで、ヴェルディオスで満たされている。繋がった場所から精気が堰を切ったように流れ込んで、内壁がその熱に反応してひくひくと痙攣する。止められない。自分の中がヴェルディオスに吸いついて離さない。

「指のときとは比べものにならないな」

 ヴェルディオスの声が頭上から降ってきた。わずかに息が重い。微かな変化だが、さっきまでの完璧な平静からは確実に崩れている。

「吸い上げる力が凄まじい。——よくできた身体だ」

「っ——そういうこと——言わ——」

 言い終わる前に、ヴェルディオスが腰を引いた。

 ずるり、と内壁を擦りながら引かれる感覚。それだけで、背筋を甘い痺れが貫いた。中が空になっていく寂しさと、擦られる快楽が同時に来る。

 そして——押し戻される。

「ぁ——ッ」

 一度目の突き入れ。奥の壁にぶつかる感触。内臓が押し上げられるような圧と、同時に爆発する精気の流入。視界が散った。

 トーヤは寝台のシーツを両手で掴んだ。掴まなければ身体ごと持っていかれる。指が白くなるほど布を握りしめた。

 ヴェルディオスが動き始めた。

 最初はゆっくりと。引いて、押して——そのたびに繋がった場所から湿った音がする。くちゅ、ぐちゅ、と精気と体液が混ざり合う音。トーヤの身体がヴェルディオスを受け入れるたびに、部屋に粘着質な響きが広がった。

「あっ——ん、ぅ——あ——」

 声が止まらなくなった。

 ヴェルディオスが突き入れるたびに声が漏れる。抑えようとしても無駄だった。口を閉じれば鼻から漏れ、手で覆えば指の隙間から零れて、身体のいちばん深い場所を抉られるたびに声帯が勝手に震える。

 インキュバスの声は、精気を摂取しているときに甘くなる。それは種族の特性で、本人の意思とは関係ない。ヴェルディオスの精気を吸い上げるほどに、トーヤの声は甘く、高く、蕩けた音に変わっていく。

 自分の声が自分のものではないように聞こえた。

 ヴェルディオスの律動が速くなった。

 ぱん、と肌がぶつかる音がした。ヴェルディオスの腰がトーヤの身体に打ちつけられる。その響きが律動的に部屋を満たし始める。ぱん、ぱん、と。肉が肉を打つ衝撃。その合間にトーヤの喘ぎ声。くちゅ、くちゅ、と繋がった場所から漏れる粘着質な水音。シーツの擦れる擦過音。寝台が立てる低い軋み。

「あっ——ぁああ——っ、そこ——!」

 奥の、指で触れられたのと同じ場所を、ヴェルディオスの先端が抉った。指の比ではない。太さも、長さも、精気の密度も。その一点を突かれた瞬間、快楽が背骨を駆け上がり、頭のてっぺんまで突き抜けた。

「ここか」

 ヴェルディオスの声。低い。その声にまだ余裕がある。トーヤがもう自分の名前すら忘れかけているのに、この男は——

 同じ角度で再び突かれた。深く。強く。腰を掴む手に力が入って、逃がさない。

「ぁあっっ——!」

 身体が跳ねた。背が弓なりに反る。両脚がヴェルディオスの腰に巻きつき、細い尾もまた、本能のままに彼の腿へしがみついた。意思ではない。身体が勝手に、もっと深くと求めて、抱え込むように脚を絡める。

 その体勢で——角度が変わった。さらに奥に届く。さっきとは違う場所を抉られて、声にならない音が喉から漏れた。

「ぁ——っ、あ、あ、あ——」

 ヴェルディオスの腕がトーヤの膝裏を抱え上げた。脚をさらに大きく開かせて、身体を折りたたむ。その体勢で打ちつけられると、ぱん、ぱん、という音の間隔が短くなった。

 トーヤの声が壊れていく。

 快楽が身体を埋め尽くしていた。精気で満たされていく充足と、身体の奥を突かれる快感と、肌が触れ合う温かさが全部混ざって判別がつかない。理性も、倫理も、羞恥も、もう何の足しにもならなかった。

 ヴェルディオスの手が、繋がったまま、トーヤの反り返った部分に触れた。先端から溢れているものを指先で拭い、そのまま掴む。腰の律動に合わせて、手が上下する。

「ッ——あっ、ぁ——だ、め——」

 中と外。同時。二重の刺激に、頭が完全に壊れた。

「っ、ぅ——も——だめ——もう——」

「もう、か?」

 ヴェルディオスの声が近づいた。身を屈めて、トーヤの耳元で囁く。その息が耳の縁をかすめた。髪が頬に触れた。銀灰の。

「中が脈打っているな」

 低い声。息が混じっている。さっきより——少しだけ——乱れている。ヴェルディオス自身も、快楽を感じている。トーヤの身体に精気を吸い上げられることが——

「——いいぞ。いけ」

 声がさらに低くなった。

「お前が果てるところを見せろ」

 その声で——声だけで——腹の底の何かが弾けた。

「あ——ッ」

「——っ」

 トーヤの内壁が絶頂の痙攣でヴェルディオスを強烈に締め付けた瞬間——魔王の身体も限界を迎えた。

 奥で、熱いものが脈打つように放たれる。

 どく、どく、と。その奔流が——射精とともに、桁外れの密度で直接注ぎ込まれてくる。行為中にじわじわと流れ込んでいた精気とはまるで違う。堤防が決壊したような奔流が器を直撃して、全身が白い光に飲まれた。

 声が出たかどうかも分からない。背が寝台から完全に浮き上がり、指先から尾の先までが、びくびくと小刻みに痙攣する。腹の上にも温かいものが飛び散って、内側からも外側からも同時に達した身体が、ばらばらになりそうなほど震えた。

 ヴェルディオスの低い呻きが頭上で聞こえた。あの泰然とした声からは想像もつかない、掠れた、喉の奥から搾り出すような音。中でまだ脈打っている。そのたびに精気が波のように注がれ続けて、器が一気に押し広げられる。

 長い長い痙攣のあと、身体が寝台に落ちた。

 息を継ぐ。肺が膨らむ。喉が渇いている。目の端に涙の跡がある——いつ泣いたのかも覚えていない。全身が弛緩して、指一本動かせなかった。

 ヴェルディオスが身を屈めた。額に唇が触れる。汗に濡れた前髪を指が払い、露わになった肌へもう一度それを落とす。優しい接触。

 しかし次の言葉は優しくなかった。

感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

「大人扱いしていい?」〜純情当主、執務室で策士な従兄の『相性確認』にハメられる〜

中山(ほ)
BL
「ルイン、少し口開けてみて」 仕事終わりの静かな執務室。 差し入れの食事と、ポーションの瓶。 信頼していた従兄のトロンに誘われるまま、 ルインは「大人の相性確認」を始めることになる。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【完結】逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。抱かれたら身代わりがばれてしまうので初夜は断固拒否します!

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>