1 / 165
序章 旅立ち編
【悲報】日常、終わる
しおりを挟む
王国歴458年、王都フォーゲルシュタットにて。
「お嬢!いつまで寝てらっしゃるのですか!」
けたたましくこだまする声にうんざりしながら、私――アルエット・フォーゲルは目を覚ます。
「ルーグ、起きてる。うるさい。」
「まだ布団に篭ったままじゃないですか。至急準備してください。女王様が食堂にてお待ちでございます。」
「え、お母様が?」
確かに、普段なら朝は執事のブラックが起こしてくれるのに、今日は護衛のルーグだった。
「そうですよ。お嬢に何か話があるそうで。」
まあ、そうじゃなきゃあの人がこんな城の離れに来るわけがないんだけど。
「ルーグは何も知らないの?」
「もちろんです。俺にはお嬢を呼べとだけ。」
「憂鬱ね……。ところでルーグ?」
「どうされました?」
「いつまでここにいるつもりなの?」
「え、ああ、申し訳ございません!直ちに!」
慌てて部屋を出るルーグを後目に身支度を整える。
(お母様と朝食なんて、何十年ぶりだろうか……)
王女という身分は肩書きだけ、父親も分からない私は政治的利用価値も魅力も低く、権力を放棄しこの離れで細々と暮らしていた。
「ま、気楽でいいんだけどね。」
一つゆっくりと伸びをして、部屋を出る。
「お嬢、」
「いい加減、お嬢はやめて欲しいんだけど。私貴方よりも歳上なんだし。」
食堂に向かいながら、気を紛らわせたくてルーグと他愛ない話をする。
「むぅ……そう言われますとどうしようもございませんが、貴女様と女王様に関しましては、そのような物言いをなさるのはいささか大人気ないと言いますか……」
ルーグの言い分はもっともである。私は今年で243歳になる。まあ、見た目は普通の人の20歳くらいなのだが。第三者から見れば28歳のルーグとは兄妹くらいに思えるかもしれないが、私は彼の曽祖父くらいから見てきているのだ。子供扱いされるのは不満である。
「はぁ、分かりましたよ。アルエット様。」
「うむ。悪くないわね。」
「結局中身が子供っぽいとこあるんだよなぁ……」
「今失礼なこと言ったよね?」
「なんでもございませんよ。ほら、食堂です。」
はぐらかされたような気がする。
離れの食堂。見慣れた光景のはずだが、今日ばかりは逃げ帰りたいくらいの緊張感だ。
「失礼します。アルエットが参りました。」
いつもの何倍も、このドアに重みを感じる。
「早く入りなさい。朝食が冷めてしまうでしょう。ほら、ルーグも。」
女王ヴェクトリアは既に食事に手をつけていた。
「え、ああ、失礼します。」
ルーグは、手と足が同時に出ている。この男、普段から力自慢だとか偉そうにする割には肝心なところがヘタレだ。そのまま椅子に座り、無言で食事を始める。
「どうやら、あまり歓迎されてないようね。」
「ええ、まあ。」
いかんいかん。さっさと用事を済ませて欲しいオーラがダダ漏れだったようだ。ルーグも隣で顔色が目まぐるしく変化している。
「まあ、余も暇ではないのでな。単刀直入に本題に入るとしよう。」
「魔族の王を討て。手段は問わぬ。」
暫時、何も考えられなかった。
「人間と魔族の争いが激化していることは知っているな?」
「いやいや、お待ちください!魔族の王……って、ええ!?」
「下級魔族の雑兵程度なら軍でどうにでもなるんだが、最近は四天王を名乗る幹部達も前線に出てきているみたいでな…並の兵士だと太刀打ち出来んのだ。」
「いやいやいや、なぜ私なんですか!」
まあ、権力を持たない分自衛として武術と魔法はそれなりに修行してたからそりゃあ兵士よりは流石に強いと思うけど……。
「無論、お前だけとは言わぬ。ルーグも連れていくといい。」
「ぶふぉお!」
「そういうことじゃないよ!!」
ルーグ、かわいそうだとは思うけど吹き出したご飯は自分で掃除してくれ。というか、話がすごいスピードで進んでいく。人の話を聞いて欲しい。
「冒険者ギルドや世界各地の中立種族にも檄文は飛ばしてある。あとは教会にもだ。」
「中立種族……エルフやドワーフまで動くんですね。」
この人、昔から決断力とこういう根回しが本当に早い。伊達に人間の国の王を200年もしていない。……でもやっぱり、もう少し人の話を聞いて欲しい。
「お前が必要ならそちらにもある程度話を通しておく。無論他の協力も惜しむつもりはないが、何か聞きたいことはあるか?」
「あの、拒否権はありますか?」
「何か聞きたいことはあるか?」
「ふぐぅ」
こうして私は、魔王討伐と称した体のいい厄介払いで家を追い出されたのでした。
「お嬢!いつまで寝てらっしゃるのですか!」
けたたましくこだまする声にうんざりしながら、私――アルエット・フォーゲルは目を覚ます。
「ルーグ、起きてる。うるさい。」
「まだ布団に篭ったままじゃないですか。至急準備してください。女王様が食堂にてお待ちでございます。」
「え、お母様が?」
確かに、普段なら朝は執事のブラックが起こしてくれるのに、今日は護衛のルーグだった。
「そうですよ。お嬢に何か話があるそうで。」
まあ、そうじゃなきゃあの人がこんな城の離れに来るわけがないんだけど。
「ルーグは何も知らないの?」
「もちろんです。俺にはお嬢を呼べとだけ。」
「憂鬱ね……。ところでルーグ?」
「どうされました?」
「いつまでここにいるつもりなの?」
「え、ああ、申し訳ございません!直ちに!」
慌てて部屋を出るルーグを後目に身支度を整える。
(お母様と朝食なんて、何十年ぶりだろうか……)
王女という身分は肩書きだけ、父親も分からない私は政治的利用価値も魅力も低く、権力を放棄しこの離れで細々と暮らしていた。
「ま、気楽でいいんだけどね。」
一つゆっくりと伸びをして、部屋を出る。
「お嬢、」
「いい加減、お嬢はやめて欲しいんだけど。私貴方よりも歳上なんだし。」
食堂に向かいながら、気を紛らわせたくてルーグと他愛ない話をする。
「むぅ……そう言われますとどうしようもございませんが、貴女様と女王様に関しましては、そのような物言いをなさるのはいささか大人気ないと言いますか……」
ルーグの言い分はもっともである。私は今年で243歳になる。まあ、見た目は普通の人の20歳くらいなのだが。第三者から見れば28歳のルーグとは兄妹くらいに思えるかもしれないが、私は彼の曽祖父くらいから見てきているのだ。子供扱いされるのは不満である。
「はぁ、分かりましたよ。アルエット様。」
「うむ。悪くないわね。」
「結局中身が子供っぽいとこあるんだよなぁ……」
「今失礼なこと言ったよね?」
「なんでもございませんよ。ほら、食堂です。」
はぐらかされたような気がする。
離れの食堂。見慣れた光景のはずだが、今日ばかりは逃げ帰りたいくらいの緊張感だ。
「失礼します。アルエットが参りました。」
いつもの何倍も、このドアに重みを感じる。
「早く入りなさい。朝食が冷めてしまうでしょう。ほら、ルーグも。」
女王ヴェクトリアは既に食事に手をつけていた。
「え、ああ、失礼します。」
ルーグは、手と足が同時に出ている。この男、普段から力自慢だとか偉そうにする割には肝心なところがヘタレだ。そのまま椅子に座り、無言で食事を始める。
「どうやら、あまり歓迎されてないようね。」
「ええ、まあ。」
いかんいかん。さっさと用事を済ませて欲しいオーラがダダ漏れだったようだ。ルーグも隣で顔色が目まぐるしく変化している。
「まあ、余も暇ではないのでな。単刀直入に本題に入るとしよう。」
「魔族の王を討て。手段は問わぬ。」
暫時、何も考えられなかった。
「人間と魔族の争いが激化していることは知っているな?」
「いやいや、お待ちください!魔族の王……って、ええ!?」
「下級魔族の雑兵程度なら軍でどうにでもなるんだが、最近は四天王を名乗る幹部達も前線に出てきているみたいでな…並の兵士だと太刀打ち出来んのだ。」
「いやいやいや、なぜ私なんですか!」
まあ、権力を持たない分自衛として武術と魔法はそれなりに修行してたからそりゃあ兵士よりは流石に強いと思うけど……。
「無論、お前だけとは言わぬ。ルーグも連れていくといい。」
「ぶふぉお!」
「そういうことじゃないよ!!」
ルーグ、かわいそうだとは思うけど吹き出したご飯は自分で掃除してくれ。というか、話がすごいスピードで進んでいく。人の話を聞いて欲しい。
「冒険者ギルドや世界各地の中立種族にも檄文は飛ばしてある。あとは教会にもだ。」
「中立種族……エルフやドワーフまで動くんですね。」
この人、昔から決断力とこういう根回しが本当に早い。伊達に人間の国の王を200年もしていない。……でもやっぱり、もう少し人の話を聞いて欲しい。
「お前が必要ならそちらにもある程度話を通しておく。無論他の協力も惜しむつもりはないが、何か聞きたいことはあるか?」
「あの、拒否権はありますか?」
「何か聞きたいことはあるか?」
「ふぐぅ」
こうして私は、魔王討伐と称した体のいい厄介払いで家を追い出されたのでした。
1
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる