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第二章 遺恨編
遺恨ⅩⅩⅣ 天獄
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アルエットは夢を見ていた。かつて母親とともに野原でピクニックをした、幼き日の夢。
(ああ……懐かしい。春が来たら毎年のようにしてたな、これ。)
野原にマットを敷いているヴェクトリアは、アルエットの手が止まっているのに気付いた。
「どうした?早起きのしすぎで眠たくなったかい?」
「いえ、なんでもありませんわ。お母様。」
アルエットは慌てて、敷かれたマットに重しを置いたり荷物を広げたりする。
(毎回早起きして、お母様と一緒に弁当を作って。この頃は楽しかったなぁ。)
そんなことを考えながら、弁当の蓋を開ける。アルエットは色とりどりの食材に目を輝かせ、その中の少し形が崩れた卵焼きを箸で摘んで
「お母様、あーんしてください。」
と、ヴェクトリアに差し出した。ヴェクトリアは少し微笑んで、
「それ、アルが失敗したって言ってたやつじゃない。成功したやつが食べたいわ。」
と要望するも、アルエットは首を振り、
「成功したやつは、私が食べます。早く食べてください、お母様!」
と無理やり卵焼きを押し付けた。ヴェクトリアはやれやれと観念し、卵焼きを口に入れた。ゆっくりと味わうように咀嚼し、ごくりと飲み込んだ瞬間、アルエットは尋ねた。
「お味はどうですか?お母様。」
「ふふっ、あんたねぇ、お味が聞きたいなら尚更成功したやつを食べるべきではなくて?」
アルエットはハッと手を口に当てて、その手があったかといったような表情を見せる。それを見たヴェクトリアは笑いながら、
「あっはっはっは!まあでも、美味しかったわよ。次は形も上手くできるといいわね。」
とアルエットの頬を撫でる。ニコニコが収まらないアルエットは、今度は自分の番だとばかりに箸を差し出し、口を大きく開けた。
「んが!」
「え?私があーんしなさいって?」
アルエットは口を開けたまま頷く。
「仕方ないわねぇ。」
ヴェクトリアは微笑みながら、アルエットが苦手なキノコをひとつつまみ、アルエットの口に運ぶ。アルエットはもぐもぐをキノコを噛むが、
「んー!んー!!」
口の中の物の正体を知ると直ちに、ヴェクトリアを睨みつける。ヴェクトリアはしたり顔でアルエットを見つめ、
「好き嫌いはダメですよ、アルエット。」
アルエットはキノコを何とか飲み込むと、
「お母様、ばか!!」
ヴェクトリアに飛びかかり、ぽかぽかと殴りかかる。
「あっはっはっ、冗談じゃないか!はははっ!」
ヴェクトリアは満面の笑みを浮かべ、アルエットを宥める。アルエットも気が付けば、笑顔でじゃれついていた。
「お母様……!」
現世、ゼーレンの小屋にて、アルエットはそう呟き、跳ね起きた。目からは一筋、涙の跡が残っている。
「殿下、気が付いたんですね!」
広間を見渡すと、同様に倒れているアムリスとルーグ、そしてそれを見張るように座っていたガステイルがいた。
(確か、ネオワイズ盗賊団のラルカンバラに向かって行って……返り討ちにされたはずだが、どうなった?)
アルエットが現状把握を試みる間に、ガステイルがアルエットに向かって駆けてくる。
「みんなで、魔族も盗賊団もなんとか追い出したんです。ゼーレン様は今はエリフィーズに向かっています。」
「……ありがとう、ガステイル。」
「礼はアムリス達にも言ってやってください。その傷を治療して魔力を使い果たして、今は眠っちゃってますが……じきに起きるでしょう。」
アルエットはアムリスとルーグに目を向け、微笑んだ。
「すまない、迷惑をかけたようだが、まるで記憶がないんだ……。街の方は大丈夫だろうか?」
ガステイルは眉をひそませ言った。
「今、ゼーレン様が急いで向かっています。俺も行こうと思ったんですが、三人をこの状態のまま置いていくのも良くないと留守番するよう命じられました。ただ……ここからも見えるくらい巨大な炎で包まれてまして、正直族長の安否すら怪しいかと。」
ガステイルがそう言うと、アルエットは直ちに立ち上がり、広間の出口に駆け出そうとする。
「どこ行くんですか!」
「決まってるでしょ!この街はヴェトラ様と精霊樹さえ無事ならどうとでもなるのよ。私も二人を探してくるの!」
「お待ちください!」
ガステイルはアルエットの肩を掴み制止を試みるが、アルエットはガステイルの腕を振り払い、小屋の扉を開いた。
「えっ……」
アルエットは、エリフィーズの様子に呆然とする。煌々と輝く炎が……家を、街を、エルフを、精霊樹を食らっている。そして、
「アルエット殿下、目を覚ましたのね。」
小屋の前でアルエットに目配せしニコりと微笑むゼーレンがいた。その隣には、アルエットが今まで見たこともないほど真剣な眼差しで魔法陣を組む族長・ヴェトラがいた。
(ああ……懐かしい。春が来たら毎年のようにしてたな、これ。)
野原にマットを敷いているヴェクトリアは、アルエットの手が止まっているのに気付いた。
「どうした?早起きのしすぎで眠たくなったかい?」
「いえ、なんでもありませんわ。お母様。」
アルエットは慌てて、敷かれたマットに重しを置いたり荷物を広げたりする。
(毎回早起きして、お母様と一緒に弁当を作って。この頃は楽しかったなぁ。)
そんなことを考えながら、弁当の蓋を開ける。アルエットは色とりどりの食材に目を輝かせ、その中の少し形が崩れた卵焼きを箸で摘んで
「お母様、あーんしてください。」
と、ヴェクトリアに差し出した。ヴェクトリアは少し微笑んで、
「それ、アルが失敗したって言ってたやつじゃない。成功したやつが食べたいわ。」
と要望するも、アルエットは首を振り、
「成功したやつは、私が食べます。早く食べてください、お母様!」
と無理やり卵焼きを押し付けた。ヴェクトリアはやれやれと観念し、卵焼きを口に入れた。ゆっくりと味わうように咀嚼し、ごくりと飲み込んだ瞬間、アルエットは尋ねた。
「お味はどうですか?お母様。」
「ふふっ、あんたねぇ、お味が聞きたいなら尚更成功したやつを食べるべきではなくて?」
アルエットはハッと手を口に当てて、その手があったかといったような表情を見せる。それを見たヴェクトリアは笑いながら、
「あっはっはっは!まあでも、美味しかったわよ。次は形も上手くできるといいわね。」
とアルエットの頬を撫でる。ニコニコが収まらないアルエットは、今度は自分の番だとばかりに箸を差し出し、口を大きく開けた。
「んが!」
「え?私があーんしなさいって?」
アルエットは口を開けたまま頷く。
「仕方ないわねぇ。」
ヴェクトリアは微笑みながら、アルエットが苦手なキノコをひとつつまみ、アルエットの口に運ぶ。アルエットはもぐもぐをキノコを噛むが、
「んー!んー!!」
口の中の物の正体を知ると直ちに、ヴェクトリアを睨みつける。ヴェクトリアはしたり顔でアルエットを見つめ、
「好き嫌いはダメですよ、アルエット。」
アルエットはキノコを何とか飲み込むと、
「お母様、ばか!!」
ヴェクトリアに飛びかかり、ぽかぽかと殴りかかる。
「あっはっはっ、冗談じゃないか!はははっ!」
ヴェクトリアは満面の笑みを浮かべ、アルエットを宥める。アルエットも気が付けば、笑顔でじゃれついていた。
「お母様……!」
現世、ゼーレンの小屋にて、アルエットはそう呟き、跳ね起きた。目からは一筋、涙の跡が残っている。
「殿下、気が付いたんですね!」
広間を見渡すと、同様に倒れているアムリスとルーグ、そしてそれを見張るように座っていたガステイルがいた。
(確か、ネオワイズ盗賊団のラルカンバラに向かって行って……返り討ちにされたはずだが、どうなった?)
アルエットが現状把握を試みる間に、ガステイルがアルエットに向かって駆けてくる。
「みんなで、魔族も盗賊団もなんとか追い出したんです。ゼーレン様は今はエリフィーズに向かっています。」
「……ありがとう、ガステイル。」
「礼はアムリス達にも言ってやってください。その傷を治療して魔力を使い果たして、今は眠っちゃってますが……じきに起きるでしょう。」
アルエットはアムリスとルーグに目を向け、微笑んだ。
「すまない、迷惑をかけたようだが、まるで記憶がないんだ……。街の方は大丈夫だろうか?」
ガステイルは眉をひそませ言った。
「今、ゼーレン様が急いで向かっています。俺も行こうと思ったんですが、三人をこの状態のまま置いていくのも良くないと留守番するよう命じられました。ただ……ここからも見えるくらい巨大な炎で包まれてまして、正直族長の安否すら怪しいかと。」
ガステイルがそう言うと、アルエットは直ちに立ち上がり、広間の出口に駆け出そうとする。
「どこ行くんですか!」
「決まってるでしょ!この街はヴェトラ様と精霊樹さえ無事ならどうとでもなるのよ。私も二人を探してくるの!」
「お待ちください!」
ガステイルはアルエットの肩を掴み制止を試みるが、アルエットはガステイルの腕を振り払い、小屋の扉を開いた。
「えっ……」
アルエットは、エリフィーズの様子に呆然とする。煌々と輝く炎が……家を、街を、エルフを、精霊樹を食らっている。そして、
「アルエット殿下、目を覚ましたのね。」
小屋の前でアルエットに目配せしニコりと微笑むゼーレンがいた。その隣には、アルエットが今まで見たこともないほど真剣な眼差しで魔法陣を組む族長・ヴェトラがいた。
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