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第五章 彷徨編
彷徨Ⅴ VSラムディア③
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「思い出した……あの時の私は弟達だけじゃなく、アレックスもなんとか助けたくて夢中になっていた……」
「ふむ、そうだね。」
「それだけじゃない……前のルーグさんの治療の時も、みんなが諦めたのに私だけ……なんとしても助けたいと思ったから、フレンヴェルが応えてくれた。」
「なるほどなるほど。」
「私の助けたい気持ちの根幹にあるのは、どうしようもなくワガママな私の欲望……!!ようやく、思い出した……。」
「……うん、合格点かな。」
アムリスは剣を支えに立ちながらゆっくりと目を開く。周囲の時は止まっていた。そしてアムリスの目の前に、一人のエルフの少年が立っていた。見た目はガステイルよりもさらに幼く、ブロンドの髪が特徴的であった。深い碧の大きな瞳に、アムリスは吸い込まれそうな感覚を覚えながら、エルフの少年に尋ねた。
「フレンヴェル・クラウディ……ね。」
「ご名答……こんなとき、なんて挨拶するべきなのかな?はじめましてって気分じゃないし。」
「御託はいらない……分かっているでしょ、力を貸して。」
「全く、積もる話のひとつやふたつもあるもんじゃないのかい?こういうときって。」
「時間がないの。ウインドールを守る力をちょうだい。」
「時間は僕が止めてるから暫くは大丈夫だよ。それにしても……うん、やっぱり君は理想家で頑固で……究極の欲張りなんだね。」
「……時間を止めてまで私を貶したいの?」
「いやいや、褒めてるのさ。僕の力は持ち主の野望を叶える力……叶えたい理想の具体的イメージがなきゃ扱えない。それに、この大それた力は使うべき人間を選んでしまう。ただ純粋なだけじゃない……うちに確固たる意志の強さがなければ、託すに値しないんだ。」
「意志の、強さ……」
「まあ……まさか君が自分自身の本質に気付くまでこんなにかかるとは思わなかったけどね。」
「余計なお世話よ。」
「それじゃ、無駄話もここまでにして……」
フレンヴェルはアムリスに寄る。そして聖剣と自らの身体を重ね合わせアムリスに告げた。
「それじゃ……聖剣所有者、準備ができたなら僕の刀身に力を込めてこう叫ぶんだ、『――』と。その瞬間から時は流れ、僕の機能が全て解放される。」
「分かったわ、フレンヴェル。」
アムリスはそういうと、ゆっくりとフレンヴェルの柄を握り締め、魔力を送り込む。そしてふぅと息を吐き、目を見開きながら叫ぶ。
「私に、全てを守る力を……」
「『導いて』、フレンヴェル」「『導くぜ』、聖剣所有者」
同時にどこからか聞こえた少年の声と共に、アムリスの中から尽きかけていた体力が戻っていった。傷口は塞がり自分の身体とは思えないような力が漲っていく。
「傷を治したのはサービスだ。聖剣所有者、とっとと片付けようぜ。」
「うん。ありがとうフレンヴェル。」
アムリスの変化を、ラムディアは気配で察知し再び向き直る。傷が癒え自らを強く睨みつけるアムリスを見て、ラムディアは驚きを隠せないでいた。
「信じられない……さっきまでとは別人だ……」
「ようやく、聖剣と心を通わせることができたの。ラムディア、改めて言うわ……貴女なんかに、この村は壊させない!!」
「減らず口……だったら今度は、本当に息の根を止めてやる!!」
ラムディアはそう言うとアムリスに勢いよく突っ込んでいく。
「風穴ぶち空けるッ!三ノ舞……白穿雷雨!!」
双剣による超スピードの刺突の雨が、アムリスを襲う。しかしアムリスはそれを避け、隙間を縫ってラムディアに急接近する。
「なっ!」
ラムディアはアムリスの行動に驚き、重心がやや後退する。アムリスはその隙を突き、勢いそのままに体当たりをした。
「うぐっ……」
ラムディアは数メートル先まで飛ばされるが、すぐに立ち上がりアムリスを見つめる。
「わ、私の剣速を見切っている……?こんな数分にも満たないような時間で、何がそんなに変わったのよ!」
ラムディアの言葉を聞いたフレンヴェルはアムリスに言った。
『いろいろあるけど、さっき使った時間停止の応用と聖剣を通した魔力の質の向上が大きいと思うよ。今の聖剣所有者の自己強化魔法、すっごい効果してるから。』
「なるほど……え、そうなの?」
『そうだよ。効率だけなら今までの3倍以上だと思う。』
「なっ……それ、後遺症とかになったりするんじゃ……」
『筋肉痛で数日動けなくなるかもね、はは。』
「はは。じゃないけど……」
アムリスとフレンヴェルの茶番を後目に、ラムディアは怒りと屈辱に打ち震え拳を強く握りしめていた。
「……良いわ。こうなったら白兎剣舞の奥義で片付けてあげる。」
ラムディアはそう告げると、アムリスからさらに数歩離れ、双剣を構える。そして魔力をさらに双剣に通し、
「白兎剣舞奥義……白鶴飛剣乱撃!!」
そう叫ぶと、一気呵成に無数の斬撃を飛ばす。そしてそのすぐ後ろに付くように、ラムディアが双剣を構え追いかける。
『あの斬撃だけで普通粉微塵になるだろ……聖剣所有者、分かってるよな。』
「うん。フレンヴェルの力は誰かを守る力……剣という形の先入観に、囚われたらダメよね。」
アムリスは迫る斬撃とラムディアに正面から相対すると、剣先を下にし剣の背を真っ直ぐラムディアの方へと向ける。斬撃が聖剣に当たる瞬間、
『今だ!!』
「うん……弾き返して、堅守たる聖剣!!」
アムリスの叫び声に応じた聖剣が、アムリスを覆う程の巨大な盾に形を変えた。盾に触れた斬撃は全てラムディアへと跳ね返された。
「何だと!!!」
ラムディア自身の突撃も跳ね返され、自身の放った無数の斬撃が打ち上げられたラムディアの身体を斬り裂いた。
「ぐああああ!!!」
ラムディアの断末魔が轟く。妖羽化が解けたと同時に、彼女の肉体はぐしゃりと力なく倒れた。
「ふむ、そうだね。」
「それだけじゃない……前のルーグさんの治療の時も、みんなが諦めたのに私だけ……なんとしても助けたいと思ったから、フレンヴェルが応えてくれた。」
「なるほどなるほど。」
「私の助けたい気持ちの根幹にあるのは、どうしようもなくワガママな私の欲望……!!ようやく、思い出した……。」
「……うん、合格点かな。」
アムリスは剣を支えに立ちながらゆっくりと目を開く。周囲の時は止まっていた。そしてアムリスの目の前に、一人のエルフの少年が立っていた。見た目はガステイルよりもさらに幼く、ブロンドの髪が特徴的であった。深い碧の大きな瞳に、アムリスは吸い込まれそうな感覚を覚えながら、エルフの少年に尋ねた。
「フレンヴェル・クラウディ……ね。」
「ご名答……こんなとき、なんて挨拶するべきなのかな?はじめましてって気分じゃないし。」
「御託はいらない……分かっているでしょ、力を貸して。」
「全く、積もる話のひとつやふたつもあるもんじゃないのかい?こういうときって。」
「時間がないの。ウインドールを守る力をちょうだい。」
「時間は僕が止めてるから暫くは大丈夫だよ。それにしても……うん、やっぱり君は理想家で頑固で……究極の欲張りなんだね。」
「……時間を止めてまで私を貶したいの?」
「いやいや、褒めてるのさ。僕の力は持ち主の野望を叶える力……叶えたい理想の具体的イメージがなきゃ扱えない。それに、この大それた力は使うべき人間を選んでしまう。ただ純粋なだけじゃない……うちに確固たる意志の強さがなければ、託すに値しないんだ。」
「意志の、強さ……」
「まあ……まさか君が自分自身の本質に気付くまでこんなにかかるとは思わなかったけどね。」
「余計なお世話よ。」
「それじゃ、無駄話もここまでにして……」
フレンヴェルはアムリスに寄る。そして聖剣と自らの身体を重ね合わせアムリスに告げた。
「それじゃ……聖剣所有者、準備ができたなら僕の刀身に力を込めてこう叫ぶんだ、『――』と。その瞬間から時は流れ、僕の機能が全て解放される。」
「分かったわ、フレンヴェル。」
アムリスはそういうと、ゆっくりとフレンヴェルの柄を握り締め、魔力を送り込む。そしてふぅと息を吐き、目を見開きながら叫ぶ。
「私に、全てを守る力を……」
「『導いて』、フレンヴェル」「『導くぜ』、聖剣所有者」
同時にどこからか聞こえた少年の声と共に、アムリスの中から尽きかけていた体力が戻っていった。傷口は塞がり自分の身体とは思えないような力が漲っていく。
「傷を治したのはサービスだ。聖剣所有者、とっとと片付けようぜ。」
「うん。ありがとうフレンヴェル。」
アムリスの変化を、ラムディアは気配で察知し再び向き直る。傷が癒え自らを強く睨みつけるアムリスを見て、ラムディアは驚きを隠せないでいた。
「信じられない……さっきまでとは別人だ……」
「ようやく、聖剣と心を通わせることができたの。ラムディア、改めて言うわ……貴女なんかに、この村は壊させない!!」
「減らず口……だったら今度は、本当に息の根を止めてやる!!」
ラムディアはそう言うとアムリスに勢いよく突っ込んでいく。
「風穴ぶち空けるッ!三ノ舞……白穿雷雨!!」
双剣による超スピードの刺突の雨が、アムリスを襲う。しかしアムリスはそれを避け、隙間を縫ってラムディアに急接近する。
「なっ!」
ラムディアはアムリスの行動に驚き、重心がやや後退する。アムリスはその隙を突き、勢いそのままに体当たりをした。
「うぐっ……」
ラムディアは数メートル先まで飛ばされるが、すぐに立ち上がりアムリスを見つめる。
「わ、私の剣速を見切っている……?こんな数分にも満たないような時間で、何がそんなに変わったのよ!」
ラムディアの言葉を聞いたフレンヴェルはアムリスに言った。
『いろいろあるけど、さっき使った時間停止の応用と聖剣を通した魔力の質の向上が大きいと思うよ。今の聖剣所有者の自己強化魔法、すっごい効果してるから。』
「なるほど……え、そうなの?」
『そうだよ。効率だけなら今までの3倍以上だと思う。』
「なっ……それ、後遺症とかになったりするんじゃ……」
『筋肉痛で数日動けなくなるかもね、はは。』
「はは。じゃないけど……」
アムリスとフレンヴェルの茶番を後目に、ラムディアは怒りと屈辱に打ち震え拳を強く握りしめていた。
「……良いわ。こうなったら白兎剣舞の奥義で片付けてあげる。」
ラムディアはそう告げると、アムリスからさらに数歩離れ、双剣を構える。そして魔力をさらに双剣に通し、
「白兎剣舞奥義……白鶴飛剣乱撃!!」
そう叫ぶと、一気呵成に無数の斬撃を飛ばす。そしてそのすぐ後ろに付くように、ラムディアが双剣を構え追いかける。
『あの斬撃だけで普通粉微塵になるだろ……聖剣所有者、分かってるよな。』
「うん。フレンヴェルの力は誰かを守る力……剣という形の先入観に、囚われたらダメよね。」
アムリスは迫る斬撃とラムディアに正面から相対すると、剣先を下にし剣の背を真っ直ぐラムディアの方へと向ける。斬撃が聖剣に当たる瞬間、
『今だ!!』
「うん……弾き返して、堅守たる聖剣!!」
アムリスの叫び声に応じた聖剣が、アムリスを覆う程の巨大な盾に形を変えた。盾に触れた斬撃は全てラムディアへと跳ね返された。
「何だと!!!」
ラムディア自身の突撃も跳ね返され、自身の放った無数の斬撃が打ち上げられたラムディアの身体を斬り裂いた。
「ぐああああ!!!」
ラムディアの断末魔が轟く。妖羽化が解けたと同時に、彼女の肉体はぐしゃりと力なく倒れた。
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