200年級ニートが魔王討伐という名目で厄介払いされる話

盈月

文字の大きさ
114 / 165
第五章 彷徨編

彷徨Ⅴ VSラムディア③

しおりを挟む
「思い出した……あの時の私は弟達だけじゃなく、アレックスもなんとか助けたくて夢中になっていた……」
「ふむ、そうだね。」
「それだけじゃない……前のルーグさんの治療の時も、みんなが諦めたのに私だけ……なんとしても助けたいと思ったから、フレンヴェルが応えてくれた。」
「なるほどなるほど。」
「私の助けたい気持ちの根幹にあるのは、どうしようもなくワガママな私の欲望……!!ようやく、思い出した……。」
「……うん、合格点かな。」

 アムリスは剣を支えに立ちながらゆっくりと目を開く。周囲の時は止まっていた。そしてアムリスの目の前に、一人のエルフの少年が立っていた。見た目はガステイルよりもさらに幼く、ブロンドの髪が特徴的であった。深い碧の大きな瞳に、アムリスは吸い込まれそうな感覚を覚えながら、エルフの少年に尋ねた。

「フレンヴェル・クラウディ……ね。」
「ご名答……こんなとき、なんて挨拶するべきなのかな?はじめましてって気分じゃないし。」
「御託はいらない……分かっているでしょ、力を貸して。」
「全く、積もる話のひとつやふたつもあるもんじゃないのかい?こういうときって。」
「時間がないの。ウインドールを守る力をちょうだい。」
「時間は僕が止めてるから暫くは大丈夫だよ。それにしても……うん、やっぱり君は理想家で頑固で……究極の欲張りなんだね。」
「……時間を止めてまで私を貶したいの?」
「いやいや、褒めてるのさ。僕の力は持ち主の野望を叶える力……叶えたい理想の具体的イメージがなきゃ扱えない。それに、この大それた力は使うべき人間を選んでしまう。ただ純粋なだけじゃない……うちに確固たる意志の強さがなければ、託すに値しないんだ。」
「意志の、強さ……」
「まあ……まさか君が自分自身の本質に気付くまでこんなにかかるとは思わなかったけどね。」
「余計なお世話よ。」
「それじゃ、無駄話もここまでにして……」

 フレンヴェルはアムリスに寄る。そして聖剣と自らの身体を重ね合わせアムリスに告げた。

「それじゃ……聖剣所有者マスター、準備ができたなら僕の刀身に力を込めてこう叫ぶんだ、『――』と。その瞬間から時は流れ、僕の機能が全て解放される。」
「分かったわ、フレンヴェル。」

 アムリスはそういうと、ゆっくりとフレンヴェルの柄を握り締め、魔力を送り込む。そしてふぅと息を吐き、目を見開きながら叫ぶ。

「私に、全てを守る力を……」
「『導いて』、フレンヴェル」「『導くぜ』、聖剣所有者マスター

 同時にどこからか聞こえた少年の声と共に、アムリスの中から尽きかけていた体力が戻っていった。傷口は塞がり自分の身体とは思えないような力が漲っていく。

「傷を治したのはサービスだ。聖剣所有者マスター、とっとと片付けようぜ。」
「うん。ありがとうフレンヴェル。」

 アムリスの変化を、ラムディアは気配で察知し再び向き直る。傷が癒え自らを強く睨みつけるアムリスを見て、ラムディアは驚きを隠せないでいた。

「信じられない……さっきまでとは別人だ……」
「ようやく、聖剣と心を通わせることができたの。ラムディア、改めて言うわ……貴女なんかに、この村は壊させない!!」
「減らず口……だったら今度は、本当に息の根を止めてやる!!」

 ラムディアはそう言うとアムリスに勢いよく突っ込んでいく。

「風穴ぶち空けるッ!三ノ舞……白穿雷雨!!」

 双剣による超スピードの刺突の雨が、アムリスを襲う。しかしアムリスはそれを避け、隙間を縫ってラムディアに急接近する。

「なっ!」

 ラムディアはアムリスの行動に驚き、重心がやや後退する。アムリスはその隙を突き、勢いそのままに体当たりをした。

「うぐっ……」

 ラムディアは数メートル先まで飛ばされるが、すぐに立ち上がりアムリスを見つめる。

「わ、私の剣速を見切っている……?こんな数分にも満たないような時間で、何がそんなに変わったのよ!」

 ラムディアの言葉を聞いたフレンヴェルはアムリスに言った。

『いろいろあるけど、さっき使った時間停止の応用と聖剣を通した魔力の質の向上が大きいと思うよ。今の聖剣所有者マスターの自己強化魔法、すっごい効果してるから。』
「なるほど……え、そうなの?」
『そうだよ。効率だけなら今までの3倍以上だと思う。』
「なっ……それ、後遺症とかになったりするんじゃ……」
『筋肉痛で数日動けなくなるかもね、はは。』
「はは。じゃないけど……」

 アムリスとフレンヴェルの茶番を後目に、ラムディアは怒りと屈辱に打ち震え拳を強く握りしめていた。

「……良いわ。こうなったら白兎剣舞の奥義で片付けてあげる。」

 ラムディアはそう告げると、アムリスからさらに数歩離れ、双剣を構える。そして魔力をさらに双剣に通し、

「白兎剣舞奥義……白鶴飛剣乱撃!!」

 そう叫ぶと、一気呵成に無数の斬撃を飛ばす。そしてそのすぐ後ろに付くように、ラムディアが双剣を構え追いかける。

『あの斬撃だけで普通粉微塵になるだろ……聖剣所有者マスター、分かってるよな。』
「うん。フレンヴェルの力は誰かを守る力……剣という形の先入観に、囚われたらダメよね。」

 アムリスは迫る斬撃とラムディアに正面から相対すると、剣先を下にし剣の背を真っ直ぐラムディアの方へと向ける。斬撃が聖剣に当たる瞬間、

『今だ!!』
「うん……弾き返して、堅守たる聖剣ガード・フレンヴェル!!」

 アムリスの叫び声に応じた聖剣が、アムリスを覆う程の巨大な盾に形を変えた。盾に触れた斬撃は全てラムディアへと跳ね返された。

「何だと!!!」

 ラムディア自身の突撃も跳ね返され、自身の放った無数の斬撃が打ち上げられたラムディアの身体を斬り裂いた。

「ぐああああ!!!」

 ラムディアの断末魔が轟く。妖羽化ヴァンデルンが解けたと同時に、彼女の肉体はぐしゃりと力なく倒れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...