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一章
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目の前に水面が広がっている。
ここは庭園。私が不幸な事故に遭った場所。
そして…悪霊とのはじまりの場所。
ぐらりと体がゆれる。
水面が近づいてきて…。
『…ッ!何やってんのっ!!!』
身体が急に引っ張り上げられる。
声の方を向くと、悪霊が怒ったような、泣き出しそうな顔で影の手をつかって私を掴んでいた。
「やっと出てきたわね!!さぁ!腹を割って話すわよ!」
『…は?』
私はしてやったりとにやっと笑った。
私を支えていた影が霧散していく。悪霊はぽかんと口を開けて私を見つめていた。
※※※※※
『何度危ないことすれば気が済むわけ?
演技だろうと、池に飛び込むなんて馬鹿な真似は止してよ…。第一王子が泣くぞ…。』
「ふっふっふ。私が何も考えずに飛び込む訳ないじゃない!ちゃんとドレスの下に浮き袋を取り付けているわ!」
『どっから取り寄せたんだよ、それぇ。
とにかく危ない真似するのは勘弁してくれよぉ、無い筈の心臓が縮んだわ。』
悪霊が頭を抱えている。なによ、こうでもしなくちゃ出てきてくれなかったでしょう?
『それで話ってなに?』
私はすっと息を吸って言った。
「貴方が気に食わないのよ!」
『…喧嘩売りにきたの?』
あっ、こら!消えようとしないで!
「私、確かに貴方の事が怖いと思ったわ。だって当たり前じゃない!無垢な美少女の私にはあまりに刺激的すぎたんだもの!」
『なんかその言い方嫌なんだけど…。私が何かいかがわしい事したかの様に聞こえるんだけど。』
うるさいわね!最後まで聞きなさい!
悪霊が時々見せるあの表情が前から気に食わなかった。何かを諦めたかの様な、でもそれを理解も納得もしているかの様な。
あの事件の時もその表情を見せていた。ただ哀しげに揺れる黒曜石が嫌だった。
「私がいつ消えろと命じたのかしら?
勝手に決めつけて。
勝手に失望して。
勝手に居なくなって。
…ほんっと気に入らないのよ!
私を一体誰だとお思い?
この国の清く気高い王女、クリスティーナ・ラルファ=ディオニュリスよ!貴方が今まで失望してきた幾多の雑兵と一緒にするんじゃないわよ!陰気で捻くれ者の悪霊の1人、懐に入れるくらいどうって事ないのよ!
」
悪霊が目を見開いた。
「何が言いたいかと言うと、今まで通りあんたは居てもいいってことよ。
あんたとの日々は…まぁ退屈しないもの。
私が成仏させるその時まで、精々このクリスティーナに尽くすがいいわ!」
私は言い切ってビシッと悪霊を指差した。
指差された悪霊は暫くぽかんと間抜けな顔をしていたけれど、くしゃっと泣きそうな笑みを漏らした。
『…へぇ、姫さんって酔狂だよね。普通こんな得体の知れないのと一緒にいたいと思わないでしょ。…後で後悔しても知らないよ?』
悪霊はくすくすと笑っていた。
「酔狂ってどう言う意味よ?私の辞書には後悔という字はないわ!私は常に最善を尽くしているもの!」
『当てにならなそうな辞書だなぁ。…センスが良いって意味だよ。』
「何で顔を背けながら言うのよ…。嘘ついたわね!ほらっこっちを向きなさい!」
それから私達はどうでもいい会話を何個か続け、お城の中へ戻っていった。
途中会ったお兄様は私と悪霊を見て、顔を綻ばせていた。
悪霊曰く、近所のおばちゃんがわんぱく坊主達を見守る様な目だったそうだ。
だれがわんぱく坊主よ!
ここは庭園。私が不幸な事故に遭った場所。
そして…悪霊とのはじまりの場所。
ぐらりと体がゆれる。
水面が近づいてきて…。
『…ッ!何やってんのっ!!!』
身体が急に引っ張り上げられる。
声の方を向くと、悪霊が怒ったような、泣き出しそうな顔で影の手をつかって私を掴んでいた。
「やっと出てきたわね!!さぁ!腹を割って話すわよ!」
『…は?』
私はしてやったりとにやっと笑った。
私を支えていた影が霧散していく。悪霊はぽかんと口を開けて私を見つめていた。
※※※※※
『何度危ないことすれば気が済むわけ?
演技だろうと、池に飛び込むなんて馬鹿な真似は止してよ…。第一王子が泣くぞ…。』
「ふっふっふ。私が何も考えずに飛び込む訳ないじゃない!ちゃんとドレスの下に浮き袋を取り付けているわ!」
『どっから取り寄せたんだよ、それぇ。
とにかく危ない真似するのは勘弁してくれよぉ、無い筈の心臓が縮んだわ。』
悪霊が頭を抱えている。なによ、こうでもしなくちゃ出てきてくれなかったでしょう?
『それで話ってなに?』
私はすっと息を吸って言った。
「貴方が気に食わないのよ!」
『…喧嘩売りにきたの?』
あっ、こら!消えようとしないで!
「私、確かに貴方の事が怖いと思ったわ。だって当たり前じゃない!無垢な美少女の私にはあまりに刺激的すぎたんだもの!」
『なんかその言い方嫌なんだけど…。私が何かいかがわしい事したかの様に聞こえるんだけど。』
うるさいわね!最後まで聞きなさい!
悪霊が時々見せるあの表情が前から気に食わなかった。何かを諦めたかの様な、でもそれを理解も納得もしているかの様な。
あの事件の時もその表情を見せていた。ただ哀しげに揺れる黒曜石が嫌だった。
「私がいつ消えろと命じたのかしら?
勝手に決めつけて。
勝手に失望して。
勝手に居なくなって。
…ほんっと気に入らないのよ!
私を一体誰だとお思い?
この国の清く気高い王女、クリスティーナ・ラルファ=ディオニュリスよ!貴方が今まで失望してきた幾多の雑兵と一緒にするんじゃないわよ!陰気で捻くれ者の悪霊の1人、懐に入れるくらいどうって事ないのよ!
」
悪霊が目を見開いた。
「何が言いたいかと言うと、今まで通りあんたは居てもいいってことよ。
あんたとの日々は…まぁ退屈しないもの。
私が成仏させるその時まで、精々このクリスティーナに尽くすがいいわ!」
私は言い切ってビシッと悪霊を指差した。
指差された悪霊は暫くぽかんと間抜けな顔をしていたけれど、くしゃっと泣きそうな笑みを漏らした。
『…へぇ、姫さんって酔狂だよね。普通こんな得体の知れないのと一緒にいたいと思わないでしょ。…後で後悔しても知らないよ?』
悪霊はくすくすと笑っていた。
「酔狂ってどう言う意味よ?私の辞書には後悔という字はないわ!私は常に最善を尽くしているもの!」
『当てにならなそうな辞書だなぁ。…センスが良いって意味だよ。』
「何で顔を背けながら言うのよ…。嘘ついたわね!ほらっこっちを向きなさい!」
それから私達はどうでもいい会話を何個か続け、お城の中へ戻っていった。
途中会ったお兄様は私と悪霊を見て、顔を綻ばせていた。
悪霊曰く、近所のおばちゃんがわんぱく坊主達を見守る様な目だったそうだ。
だれがわんぱく坊主よ!
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