神運営と魔王様〜ゲームのバグは魔王様!? ここが何処であろうと、我は魔王なのである!〜

イチ力ハチ力

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「魔王様……あなたは一体……」

 ソラが、俺を見ながら惚けているので、再度教えてやった。

「だから魔王だと言ってるだろう」

「そ……そう言う事じゃなくて! まさか魔王様は、実はベテランの攻略組トッププレイヤーだとか!?」

「一人で盛り上がっている所悪いが、三人が金やらアイテムやらをばら撒いていったぞ? 拾いに行かなくていいのか?」

 俺が、飛んできた『メテオアロー』の矢を、そのまま相手の頭に投げ返してやった所、三人は光の粒子となり消えていった。そして、三人がそれぞれ金やらアイテムやらをばら撒いていったのが見えた。

「はっ!? 確かに! 時間が経つと消えちゃいます! サクッと回収しちゃいましょう!」

 先程襲ってきた相手の落としていったものを、躊躇なく回収していくソラを見て、この世界の女は逞しいなと思う俺であった。

「よし! 一応パーティ共通のアイテムボックスと、財布にお金を回収出来ました! 今回は、あのPKトリオを魔王様が一人でやっつけちゃいましたから、全部魔王様のものですよ!」

「いや、半分ずつに出来るものは、全部に分けておこう。確かに倒したのは、俺だがソラは囮役みたいなものだったしな。それに、金やらアイテムやらを貰っても使い道がわからん」

「そんなぁ! そんなのおかしいですよ! 私なんて、別に何もしてませんし、頂けません!」

 俺が、ソラと半分にしようと提案したが、ソラは中々縦に首を振らなかった。

「では聞くが、今回パーティを組むときに、報酬の分け方を決めていたか?」

「そう言えば、決めていなかったですね。それが何ですか?」

「決めてなければ、パーティを組んでいる以上は半々にするべきだろう。そのためにパーティを組んだのではなかったのか?」

「うぐっ……」

「それに、どっちがどれだけ役に立ったから、どれだけ貰うとか考える事が面倒だ」

 俺は、特にお金もアイテムも必要としていない為、その辺の分配を考える事自体が面倒なのだ。

「確かに、それはそうかもしれませんね。それじゃあ、魔王様とパーティを組むときは、取り敢えず半々で!」

 ソラがすっきりしたと言う顔をしていた。

「だから、さっきからそう言っているだろうが」

 俺は苦笑していたが、ソラは笑っていた。

「一個しかないアイテムは、どうします?」

「俺は、この世界の事は何も知らんからな、ソラに任せる」

「分かりました。そしたら、取り敢えず大事っぽいのは魔王様が持っておいて下さい。その方が安全そうですから。街に行けば、確かパーティの預かり所があったと思ったので、そこに私たちのパーティを登録して預けときましょう」

「うむ、任せておけ。それで、構わん」

 PK絡みがひと段落した所で、ソラがニマニマと顔を緩めていた。

「どうした? そんなにPKから奪い取った事が嬉しいのか?」

「違いますよ! ふふふ、クエストが終わってから言おうと思ってましたが……レベルが上がったのです! きゅぴーん!」

 口で『きゅぴーん』と言われても、よく分からんが兎に角嬉しいという事は、よく伝わってきた。

「ゴブリンとスライム達を倒したので、『魔術師』レベル3になりました! ひゃっほい!」

「そうか、それは良かったな」

「魔王様は、どうですか?」

「ん? 俺は、『無職』レベル1のままだな」

「え?……あぁあああ!」

 ソラが突然叫び声を上げた。

「どうしたのだ? そんなに、顔一杯に申し訳なさそうにして」

「『無職』は、『何でも出来るけど、何にも出来ない職』でした……ジョブクエストで説明があったのを浮かれて忘れていました……本当にすみません」

 ソラが、またもや泣き出しそうな程に、申し訳ないといった顔をするので、理由を尋ねた。

「『何でも出来るけど、何にも出来ない職』とは何なのだ?」

「『無職』は初めてこの世界にログインしてきた時の、ジョブなのですけれど、ジョブを選ぶ為のお試しジョブなんです。なので、どの装備も初級魔法も使えるといいましたよね?」

「あぁ、そうだったな」

「そして、『無職』はお試しの為のジョブなので、レベル1から上がらないんです……だから、『無職』のままだと、ジョブスキルも何も新しく覚える事が出来ないんです!」

 ソラが頭を俺に向かって下げているが、俺にはその理由が理解できなかった。

「何故頭を下げるのだ?」

「だって、折角パーティを組んでいるのに、魔王様は経験値が入ってもレベルがあがらなかっただなんて、私だけ申し訳なくて」

「俺は、自らの力のみで構わん。それに、何をそんなにビクビクしているのだ? 俺の事がそんなに怖いか?」

 ソラが、さっきから俺の顔色を伺うような言動をしてくるので、もしや俺が怖がられているのかと思い聞いてみた。

「だって……折角、知り合いになれたのに、嫌われたくないですし……」

「ほほう、ソラは俺がその程度の事で、誰かを嫌いになる程度の、器の小ささと思っているのか……あっはっはっは!」

「ふぉお! なんですか!? そんな爆笑しちゃって!?」

 ソラは、俺が笑っている理由がわからずに困惑した表情をしていた。

「あっはっは! 当たり前だろう! その程度の事で、俺がソラを拒むようになると? そこまでバカに・・・されては、笑う他ないだろ! あまり魔王を舐めるなよ?」

「ひぇ!?」

「俺は全てを受け入れる! そして、一度でも受け入れた者を、絶対に見捨てたりはしない! お仕置きくらいはするがな? あっはっは!」

 俺がそう言うと、ソラは信じられないという顔で俺を見ていた。

「なんで……そんな事が言えるんですか?」

「決まっているだろう?」

 俺は、笑いながらソラに答えた。



「『魔王』だからだ」

「魔王様……」



「さっきから、コレのやり取りを何回やらせるのだ。流石に飽きてきたぞ?」

「まぁ、そう言わずに! あっ!」

 丁度その時に、ソラが慌てるような声を上げた。

「どうしたのだ?」

「朝起きる時間の、アラームです! あっそっか、自分のアラームは他の人には聞こえないんですね! 急いで、クエスト案内所戻りますよ! 魔王様!」

「あぁ、構わんぞ」

 俺たちは、急いで街へと戻りクエスト案内所に向かった。

「お二人とも、クエスト完了です。お疲れ様でした、報酬は既にマジックバックに入っておりますので、ご確認下さい」

 そして、報酬を確認するなりソラが俺に笑顔を向ける。

「今日は楽しかったです! 怖い思いもしたけど、それも含めて楽しかったですね!」

「あぁ、そうだな。中々、面白い世界だなここは」

「それじゃ、私はログアウトしますので、また一緒に遊んでくださいね!」

「勿論だ。また、会おう」

「はい! それじゃ!」

 ソラはそう言うと、体が徐々に薄くなり消えていった。

「これが、『ログアウト』か……転移陣もなしに魂と肉体の痕跡を残さずに消えるとは……」

 俺は、『ログアウト』したソラの居た場所を見ながら、静かに呟いた。



「ふぁああ…よく寝た? の? 本当に説明通り、プレイしてる間は身体は休養してるんだ。しっかり寝たみたい」

 私は、『the Creation Online』をログアウトし、現実世界へと戻ってきた。

「『魔王様』だって……お兄ちゃん、異世界に転生でもしちゃったの?」

 美宇宙ミソラは、写真立て中の家族写真を見ながら呟いた。

 そこには、スーツ姿で優しく微笑む青年が美宇宙の横に写っていた。

「さぁ、今日もしっかり勉学に励みますかなっと!」

 美宇宙は、独り言を言いながら大学へと向かう準備を始めるのだった。



「おはようございます」

「おはようさん」
「おはよぉ」
「お疲れぇ」

 私は、運営本部のあるフロアへと出社し、既に出社していた先輩方に挨拶を交わし、席へと着いた。

「上井、ちょっとこっちこぉい」

 PCを立ち上げ、昨日の依頼の公文書の承認依頼が社内ネットワーク上で、全員分無事に承認されているのを確認し、そのまま発行作業を完了した所で、笹本先輩から呼ばれた。

「何でしょうか? 依頼書なら今発行しましたけど」

「それは、俺にもメールで回ってきて確認した。結構早く承認してくれて、良かったな」

「そうなんですか? むしろ昨日のうちに何でくれないのかと、思いましたけど」

「そう言うなって、マーケティング部なんかは他にも承認依頼がわんさか来たりするからな。電話であらかじめ話してても、後回しになったりするもんだ。っと、いきなり横道に逸れたが、呼んだのはその話じゃない。これを見てみろ」

 笹本先輩が、私にPCの画面を見せた。

「何ですか?……計測不能?……」

「これは、今日の今朝方の事だが、第1フィールドの何処かで一瞬だけ異常なステータス上昇が観測されたとの報告書だ。技術保全部から、今朝報告が上がっていた」

「第1フィールドの何処か? もっと詳しく分からなかったんですか?」

「報告書を読む限りじゃ、異常なステータスは一瞬観測された後に、すぐさま正常値内に戻ってしまったという事と、そもそも計測不能域まで振り切った異常なステータスだった為に、正確な観測が難しいらしいな」

 私は、笹本先輩からその事を聞きながら、異常なステータスの出現について考えていた。

「ステータスを、不正に操作出来ているという事ですか?」

「恐らくそうだろうな、昔の漫画みたいに戦闘力を自在に変えられるんだろうさ」

「何ですかそれ? そもそも、そんな異常なステータスが一瞬でもフィールドで検知出来たのであれば、プレイヤー情報から特定出来なかったんですか?」

「あの名作を知らんのか……まぁ、いい。当然、その点について問い合わせしたが、プレイヤー情報には異常なステータスを示した・・・プレイヤーは、いなかったそうだ。発覚したのは、あくまでフィールドにおける異常なステータス上昇だ」

「登録されているプレイヤー情報では異常が検出されなかった・・・・・・のに、フィールドでは異常が検出された・・・んですか?」

 私は、そのおかしな状況に思わず首を傾げた。

「うちのシステムにどう言う状態で侵入しているかわかっていないから何とも言えんが、それぐらいやってのける相手という事だろう。兎に角だ、やっこさん大人しくするつもりは余りないらしい。案外早く見つかるかもな」

 笹本先輩は、少し笑いながらコーヒーを飲んでいた。

「それだと、いいんですけどね」

 私は、自分の席に戻りながら小さく呟いた。

 何故だか、そんなにうまい事行く気がしなかったのだ。



 そして再び自分のデスクに戻り、メールをチェックしながら、私はふと窓の外に目を向けた。


「あなたの分まで、頑張るね」


 私の呟きは、誰にも聞かれる事なく、窓の外の空に吸い込まれていった。

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