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裏設定
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「クレイジーホーネットの生息地域は、スターテインの北側の沼地になってますね」
「あぁ、依頼主から説明を受ける様にと依頼書に記載さているから、先ずはそっちだな」
俺とソラは、始まり街スターテインの北にあるキタレ村に行く為に、巡回馬車へと乗り込んだ。キタレ村まで行くのに、普通に徒歩や走って行くには数時間かかるとクエスト案内所の受付の女性から聞いていたが、同時に巡回馬車の存在も教えられた。巡回馬車は、スターテインから離れている街へと高速で移動出来る乗り物だった。
「確かに、これなら数十分で移動が可能だな」
「ですよね、馬車って言うよりバスって感じのスピードです。大きい街に行けば転移門がありますから一度訪れて登録さえすれば、主要都市間の移動は一瞬で済みますけど、周辺の村は転移門はありませんからね。コレで移動時間は少なくなるのは有難いです。移動時間だけで、遊ぶ時間が終わっちゃうとか嫌ですしね」
ソラは楽しそうに流れていく外の景色を見ながら、ワクワクした様子で話しをしていた。俺は都市間を瞬時に移動できる転移門がある事自体に驚いていたが、どうやら別のゲームとやらでも、その様な魔道具があるらしくソラは大して気にもしていない様だった。更にこの世界の上級職と呼ばれるジョブの中には、自分の行った場所なら転移門の無い村にも転移出来る魔法を覚える事が出来るジョブがあるらしい。
転移や転送等の術はかなり高度な術式であった筈だが、この世界の理ではレベルを上げさえすれば、比較的容易に覚えられるという説明をソラから聞いたときは、耳を疑ったものだ。
そもそもレベルと言うのはどう言う事なのかが、理解が難しかった。どうやらソラ達の『擬似肉体』は、モンスターを倒すと魔力を吸収するらしく、ある一定の魔力が擬似肉体の体内に蓄積すると擬似肉体の位階が上がり、その行為を冒険者はレベル上げと称する様だ。しかも、際限が無いという事は、時間さえかければ最終的には、神に匹敵する擬似肉体が造られるという事では無いのかと戦慄したものだ。
「この世界限定の活動出来る肉体だったとしても、不気味だな」
「ん? 何がですか?」
「いや、何でもない。それより、もう着くみたいだな」
「ですね! 『誰も受けないクエスト』とかって、逆に楽しそうですよね!」
「そうだな、さて行ってみるか」
「はい!」
馬車の中にいた冒険者で、『キタレ村』で降りたのは俺とソラの二人だけだった。巡回馬車から降り立った場所には立て看板が立っており、キタレ村への矢印の通りに歩いて向かったのだった。
「なんか……完全に廃村してそうな気配なんですが……ここであってますよね?」
ソラが、『キタレ村』と書いてある看板がかかる崩れかけた門を潜ると、思わずそう口にしていた。ハスレ村も酷かったが、彼処は襲撃された結果として家屋の傷跡が酷かったが、此処は襲撃の跡が家屋に見えるわけではなく、単純に人の気配が極端に少なく、その所為で家屋が痛んでいるといった雰囲気だった。
「看板も『キタレ村』と記載があったからな、此処で合っている筈だが……確かに既に打ち捨てられた村の様だが、一応人は居そうだな」
俺とソラは、村の中を歩いて回りながら様子を見ていると少ないながらも、村民は生活している様だった。
「ですが、魔王様……見かける村人NPCが、全員老人なんですが」
「あぁ、そうだな」
キタレ村の村内で見かけるNPC達は、全員が老人だったのだ。子供は勿論の事だが、青年から中年に至る者すら見かけなかった。
「済まないが、ギョクサという者がいる筈なのだが、何処に居るか知っているか?」
木の木陰に腰を下ろしていた老人に俺は、『クレイジーホーネット駆除』クエストの依頼人であるギョクサという者が何処にいるのかを尋ねた。老人はゆっくりと、ある家を無言で指差した。
「あの家か? すまないな、助かった」
その老人が指差した家に向かって、俺たちは再び歩き出したがソラの表情が暗くなっている様に見えた。
「どうした? 顔色が優れないようだが?」
「はい……なんだか、既にこの時点で良い予感のしない暗そうなクエストだなと」
「そうだな、少なくとも明るい類の話ではなさそうだな」
そして、俺とソラは老人の指差した家の扉を叩いたのだった。
「なんじゃお主らは? その面妖な格好は見たこと無いが、そっちの女子の格好からすると冒険者か。 冷やかしなら、さっさと帰ることじゃな。お前らが楽しいと思う事など、此処には無いぞ」
家の扉が開くなり、名乗りを挙げる間も無く老人が捲し立てるように言葉を吐き出してきた。
「おじいちゃん、私達『クレイジーホーネット駆除』を受領した冒険者なんだけど、依頼書にギョクサさんて人に先ず話を聞くようにって書いてあったの。おじいちゃんが、ギョクサさんで合ってますか?」
ソラが、目の前の老人に向かって堂々と問いかけていた。
「あぁ、そうじゃ。儂がギョクサじゃ。久しぶりに、物好きな冒険者がやってきおったか……話を聞きたいのじゃろ。水すら出せんが、中に入るがよろしい」
ギョクサ爺さんは、そう言うや否や中へと戻って行ってしまった。
「俺たちも、中に入るか」
「はい、でもギョクサさん、クエスト受けに来たのに、あんまり嬉しそうな顔をしてなかったですね」
「そうだな。その辺の理由も、中で聞けるかもしれないな」
そして、俺たちはギョクサの後を追って部屋に入り話を聞くこととなった。そして、俺はこの世界の理不尽をまたしても目の当たりにする事となり、ソラはギョクサの話を聞き涙を流した。
俺たちは、ギョクサから話を聞いた後に、改めてクエストを達成してくる事を約束し家を出てきた。そしてそのまま、クレイジーホーネットが生息しはじめた沼へと向かって歩き出したのだった。
「魔王様……さっきの話って、いくらNPCって言っても、余りにあんまりな設定ですよね……」
「それが、この世界に生きると言う事なのだろう。どの世界にも理不尽と言うのはあるものだ」
「そうなんでしょうけど……真逆人気がなくなった狩場が、あんな事になる設定なんて、性格悪すぎませんか? 実装した人の性格を、疑いますね」
ソラは、怒りながら沼地へと向かっていた。その口からは神運営への文句が多かったが、俺はソラの文句を相槌を打ちながらなるべく冷静に聞いていた。そしてソラの文句から、沼地に起きた事が大方理解出来た。
この世界はシリルから聞いた『理の改変』の後に新しいモンスターが生まれる事が多いらしい。クレイジーホーネットも、ギョクサの話では十数年前の理の改変の後に、突然現れるようになったそうだ。
最初は冒険者も多く集まっていたそうだが、何回目かの理の改変後にぱったりと冒険者が来なくなったそうだ。ソラ曰く、おそらく他にもっと効率の良いレベル上げが出来るエリアが出来たのだろうという事だった。
しかし、冒険者が来なくなったからと言って沼地のモンスターが消える訳ではない。元々この沼地では、キタレ村の村民NPCでも対応出来る程度のモンスターしか出現しなかったらしい。その為、沼で獲れる魚を街で売ったりしていた。ここの沼で獲れる魚は、大層旨かったそうで評判が良く、街でも良く売れたそうだ。
しかし、クレイジーホーネットはNPCが対応出来る強さではなかった。
沼地での漁は壺のような罠を設置するだけだったらしいが、冒険者はNPC及びNPCの所持品にも攻撃する事が出来ない為、冒険者が増えた事による弊害と言うのは然程なかったそうだ。寧ろ冒険者達に驚いた魚が余計罠にかかり獲れる量も増えたらしい。
それも、冒険者がいる期間の間だけだった。
冒険者がここの場所から居なくなれば、残るはクレイジーホーネットだけとなる。決死の覚悟で村民NPCが打ち倒したとしても、時間が経てば際限なくモンスターは出現し続ける。村民が『クレイジーホーネット討伐』を出し駆除している間に罠を張り、再び罠を回収する時にもクエストを受けてくれた冒険者が必要となる。当然、クエスト報酬は用意しなくては成らない上に、時間が経つにつれクエスト自体も受ける冒険者が減っていき、最近では受けるものは全くいなくなってしまったと言う。
その結果として村は寂れ、動ける若い者から村から出て行った。
「こんな裏設定を作る必要があったのかと、ちょっと思っちゃいますよね。NPCだと分かってても、気持ちが沈んじゃいます」
「裏設定?」
「えぇ、特にクエストなんかに明記されている訳ではないですが、実装した運営の遊び心みたいなものですよ。プレイヤーには明らかにされない隠れたストーリーや設定を作っておいて、それを知ったプレイヤーが『こんな設定があったのか!』的に、プレイヤーをより楽しませる趣向みたいなものです」
「遊び心か……」
俺は目の前のに広がる広い沼地に狂った様に飛び回るクレイジーホーネットを、睨みつけていた。俺とソラは、目的の沼地に到着していた。
「どうします? 結構沢山いますけど、クエスト達成討伐数は二十体ですから沼地の端の方でちまちま倒せば、群がられる事もないと思いますけど。そもそも、私の魔法で簡単に倒せるか確認してないので、先ずそこから確認をぉおって!? 何故私は、魔王様の脇に抱えられて!?」
「神運営とやらの『遊び心』とやらを、存分に楽しんでやろう」
「……えっと……どう言うぇぇええええええ!?」
俺はソラ脇に抱えたまま、沼地中心に向かって跳んだ。
「はぁ、びっくりした……魔王様! いきなりびっくりするじゃないですか! それにあり得ないくらいジャンプしてましたけど、どう言う事……って……デッカい蜂さんが……いっぱい」
「ソラは、そのまま魔法を唱えればいい。このまま駆け回るからな、しっかり狙いを定めて撃てば狙いを定める鍛錬にもなるだろう。レベル上げにも、丁度良い感じだな」
「私は魔王様の武器ですか!? って……魔王様……素直に謝りましょ? この数は、ちょっとやり過ぎたんですよね?」
俺とソラ周りには、 見渡す限り大量のクレイジーホーネットに囲まれていた。
「問題ない」
「……逃げます?」
「逃げると思うか?」
「ですよね……魔王様に逃げの文字は無いですよね、やっぱり」
「さぁ、行くぞ? 『深淵』」
「『深淵』ぅぅうう!? ほぁああ! はい! 魔王様!」
そして、俺とソラは『クレイジーホーネットの駆除』クエストを開始したのだった。
「あぁ、依頼主から説明を受ける様にと依頼書に記載さているから、先ずはそっちだな」
俺とソラは、始まり街スターテインの北にあるキタレ村に行く為に、巡回馬車へと乗り込んだ。キタレ村まで行くのに、普通に徒歩や走って行くには数時間かかるとクエスト案内所の受付の女性から聞いていたが、同時に巡回馬車の存在も教えられた。巡回馬車は、スターテインから離れている街へと高速で移動出来る乗り物だった。
「確かに、これなら数十分で移動が可能だな」
「ですよね、馬車って言うよりバスって感じのスピードです。大きい街に行けば転移門がありますから一度訪れて登録さえすれば、主要都市間の移動は一瞬で済みますけど、周辺の村は転移門はありませんからね。コレで移動時間は少なくなるのは有難いです。移動時間だけで、遊ぶ時間が終わっちゃうとか嫌ですしね」
ソラは楽しそうに流れていく外の景色を見ながら、ワクワクした様子で話しをしていた。俺は都市間を瞬時に移動できる転移門がある事自体に驚いていたが、どうやら別のゲームとやらでも、その様な魔道具があるらしくソラは大して気にもしていない様だった。更にこの世界の上級職と呼ばれるジョブの中には、自分の行った場所なら転移門の無い村にも転移出来る魔法を覚える事が出来るジョブがあるらしい。
転移や転送等の術はかなり高度な術式であった筈だが、この世界の理ではレベルを上げさえすれば、比較的容易に覚えられるという説明をソラから聞いたときは、耳を疑ったものだ。
そもそもレベルと言うのはどう言う事なのかが、理解が難しかった。どうやらソラ達の『擬似肉体』は、モンスターを倒すと魔力を吸収するらしく、ある一定の魔力が擬似肉体の体内に蓄積すると擬似肉体の位階が上がり、その行為を冒険者はレベル上げと称する様だ。しかも、際限が無いという事は、時間さえかければ最終的には、神に匹敵する擬似肉体が造られるという事では無いのかと戦慄したものだ。
「この世界限定の活動出来る肉体だったとしても、不気味だな」
「ん? 何がですか?」
「いや、何でもない。それより、もう着くみたいだな」
「ですね! 『誰も受けないクエスト』とかって、逆に楽しそうですよね!」
「そうだな、さて行ってみるか」
「はい!」
馬車の中にいた冒険者で、『キタレ村』で降りたのは俺とソラの二人だけだった。巡回馬車から降り立った場所には立て看板が立っており、キタレ村への矢印の通りに歩いて向かったのだった。
「なんか……完全に廃村してそうな気配なんですが……ここであってますよね?」
ソラが、『キタレ村』と書いてある看板がかかる崩れかけた門を潜ると、思わずそう口にしていた。ハスレ村も酷かったが、彼処は襲撃された結果として家屋の傷跡が酷かったが、此処は襲撃の跡が家屋に見えるわけではなく、単純に人の気配が極端に少なく、その所為で家屋が痛んでいるといった雰囲気だった。
「看板も『キタレ村』と記載があったからな、此処で合っている筈だが……確かに既に打ち捨てられた村の様だが、一応人は居そうだな」
俺とソラは、村の中を歩いて回りながら様子を見ていると少ないながらも、村民は生活している様だった。
「ですが、魔王様……見かける村人NPCが、全員老人なんですが」
「あぁ、そうだな」
キタレ村の村内で見かけるNPC達は、全員が老人だったのだ。子供は勿論の事だが、青年から中年に至る者すら見かけなかった。
「済まないが、ギョクサという者がいる筈なのだが、何処に居るか知っているか?」
木の木陰に腰を下ろしていた老人に俺は、『クレイジーホーネット駆除』クエストの依頼人であるギョクサという者が何処にいるのかを尋ねた。老人はゆっくりと、ある家を無言で指差した。
「あの家か? すまないな、助かった」
その老人が指差した家に向かって、俺たちは再び歩き出したがソラの表情が暗くなっている様に見えた。
「どうした? 顔色が優れないようだが?」
「はい……なんだか、既にこの時点で良い予感のしない暗そうなクエストだなと」
「そうだな、少なくとも明るい類の話ではなさそうだな」
そして、俺とソラは老人の指差した家の扉を叩いたのだった。
「なんじゃお主らは? その面妖な格好は見たこと無いが、そっちの女子の格好からすると冒険者か。 冷やかしなら、さっさと帰ることじゃな。お前らが楽しいと思う事など、此処には無いぞ」
家の扉が開くなり、名乗りを挙げる間も無く老人が捲し立てるように言葉を吐き出してきた。
「おじいちゃん、私達『クレイジーホーネット駆除』を受領した冒険者なんだけど、依頼書にギョクサさんて人に先ず話を聞くようにって書いてあったの。おじいちゃんが、ギョクサさんで合ってますか?」
ソラが、目の前の老人に向かって堂々と問いかけていた。
「あぁ、そうじゃ。儂がギョクサじゃ。久しぶりに、物好きな冒険者がやってきおったか……話を聞きたいのじゃろ。水すら出せんが、中に入るがよろしい」
ギョクサ爺さんは、そう言うや否や中へと戻って行ってしまった。
「俺たちも、中に入るか」
「はい、でもギョクサさん、クエスト受けに来たのに、あんまり嬉しそうな顔をしてなかったですね」
「そうだな。その辺の理由も、中で聞けるかもしれないな」
そして、俺たちはギョクサの後を追って部屋に入り話を聞くこととなった。そして、俺はこの世界の理不尽をまたしても目の当たりにする事となり、ソラはギョクサの話を聞き涙を流した。
俺たちは、ギョクサから話を聞いた後に、改めてクエストを達成してくる事を約束し家を出てきた。そしてそのまま、クレイジーホーネットが生息しはじめた沼へと向かって歩き出したのだった。
「魔王様……さっきの話って、いくらNPCって言っても、余りにあんまりな設定ですよね……」
「それが、この世界に生きると言う事なのだろう。どの世界にも理不尽と言うのはあるものだ」
「そうなんでしょうけど……真逆人気がなくなった狩場が、あんな事になる設定なんて、性格悪すぎませんか? 実装した人の性格を、疑いますね」
ソラは、怒りながら沼地へと向かっていた。その口からは神運営への文句が多かったが、俺はソラの文句を相槌を打ちながらなるべく冷静に聞いていた。そしてソラの文句から、沼地に起きた事が大方理解出来た。
この世界はシリルから聞いた『理の改変』の後に新しいモンスターが生まれる事が多いらしい。クレイジーホーネットも、ギョクサの話では十数年前の理の改変の後に、突然現れるようになったそうだ。
最初は冒険者も多く集まっていたそうだが、何回目かの理の改変後にぱったりと冒険者が来なくなったそうだ。ソラ曰く、おそらく他にもっと効率の良いレベル上げが出来るエリアが出来たのだろうという事だった。
しかし、冒険者が来なくなったからと言って沼地のモンスターが消える訳ではない。元々この沼地では、キタレ村の村民NPCでも対応出来る程度のモンスターしか出現しなかったらしい。その為、沼で獲れる魚を街で売ったりしていた。ここの沼で獲れる魚は、大層旨かったそうで評判が良く、街でも良く売れたそうだ。
しかし、クレイジーホーネットはNPCが対応出来る強さではなかった。
沼地での漁は壺のような罠を設置するだけだったらしいが、冒険者はNPC及びNPCの所持品にも攻撃する事が出来ない為、冒険者が増えた事による弊害と言うのは然程なかったそうだ。寧ろ冒険者達に驚いた魚が余計罠にかかり獲れる量も増えたらしい。
それも、冒険者がいる期間の間だけだった。
冒険者がここの場所から居なくなれば、残るはクレイジーホーネットだけとなる。決死の覚悟で村民NPCが打ち倒したとしても、時間が経てば際限なくモンスターは出現し続ける。村民が『クレイジーホーネット討伐』を出し駆除している間に罠を張り、再び罠を回収する時にもクエストを受けてくれた冒険者が必要となる。当然、クエスト報酬は用意しなくては成らない上に、時間が経つにつれクエスト自体も受ける冒険者が減っていき、最近では受けるものは全くいなくなってしまったと言う。
その結果として村は寂れ、動ける若い者から村から出て行った。
「こんな裏設定を作る必要があったのかと、ちょっと思っちゃいますよね。NPCだと分かってても、気持ちが沈んじゃいます」
「裏設定?」
「えぇ、特にクエストなんかに明記されている訳ではないですが、実装した運営の遊び心みたいなものですよ。プレイヤーには明らかにされない隠れたストーリーや設定を作っておいて、それを知ったプレイヤーが『こんな設定があったのか!』的に、プレイヤーをより楽しませる趣向みたいなものです」
「遊び心か……」
俺は目の前のに広がる広い沼地に狂った様に飛び回るクレイジーホーネットを、睨みつけていた。俺とソラは、目的の沼地に到着していた。
「どうします? 結構沢山いますけど、クエスト達成討伐数は二十体ですから沼地の端の方でちまちま倒せば、群がられる事もないと思いますけど。そもそも、私の魔法で簡単に倒せるか確認してないので、先ずそこから確認をぉおって!? 何故私は、魔王様の脇に抱えられて!?」
「神運営とやらの『遊び心』とやらを、存分に楽しんでやろう」
「……えっと……どう言うぇぇええええええ!?」
俺はソラ脇に抱えたまま、沼地中心に向かって跳んだ。
「はぁ、びっくりした……魔王様! いきなりびっくりするじゃないですか! それにあり得ないくらいジャンプしてましたけど、どう言う事……って……デッカい蜂さんが……いっぱい」
「ソラは、そのまま魔法を唱えればいい。このまま駆け回るからな、しっかり狙いを定めて撃てば狙いを定める鍛錬にもなるだろう。レベル上げにも、丁度良い感じだな」
「私は魔王様の武器ですか!? って……魔王様……素直に謝りましょ? この数は、ちょっとやり過ぎたんですよね?」
俺とソラ周りには、 見渡す限り大量のクレイジーホーネットに囲まれていた。
「問題ない」
「……逃げます?」
「逃げると思うか?」
「ですよね……魔王様に逃げの文字は無いですよね、やっぱり」
「さぁ、行くぞ? 『深淵』」
「『深淵』ぅぅうう!? ほぁああ! はい! 魔王様!」
そして、俺とソラは『クレイジーホーネットの駆除』クエストを開始したのだった。
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