ダークファンタジーで乙女ゲームな世界で主人公のルームメイトが生き残りをかけてあがいております番外編

夢月 なぞる

文字の大きさ
5 / 7
別視点番外

とある吸血鬼の花嫁の面会記録

しおりを挟む
 天城は珍しい来客に会うため、教務課棟に向かっていた。
 裏戸学園は基本部外者立ち入り禁止だ。しかし、生徒の身内のみではあるが、その目的が本人へ面会のみであれば、一定の手続きののち敷地内への立ち入りが許可されていた。
 その制度を利用しての面会ではあったが、天城はこうして呼び出されたのは初めてのことだ。
 そもそも裏戸学園自体生徒の自主性と自立心を養うという校訓を持っており、学内で生徒が親族に会うこと自体推奨していない。
 さらに父兄参観などの行事もあり、『届け』さえ出せば週末の帰宅も許されている。面倒な書類を出し、面会を申請しても学内で面会希望者が動ける範囲など教務課等の応接室のみで、学内でわざわざ子に会うメリットは皆無だ。
 そのためこの制度を利用する親は少ない、と天城を呼びに来た事務員も言っていた。あまりに珍しいことに手続きの書類を出すのに手間取ったと苦笑いしていたくらいだ。

 そんな珍しい面会なのだが、呼びに来た事務員に応接室まで先導されながらも、天城は少なからず緊張していた。
 天城は身内と縁が薄い。すでに父母はおらず、天城の当主であり後見人ではあるが兄は彼女を疎んじており、面会どころか週末の帰宅すらもほとんどしたことがなかった。
 彼女が帰るべき場所は双子のいるところのみであり、夏休みなどの長期休暇ですら黄土家に厄介になっているくらいだ。
 そんな彼女に面会を申し込んできた人物の名前を聞いて、天城は驚いた。
 当たり前の話だが、その人物は天城の確かに身内と呼べる人、つまりは天城家の人間だ。天城の人間がまさか学園にまで天城を訪ねてきてくれるとは思わなかった。

 応接室の扉の前まで案内して、事務員が去っていく。しかし、天城はすぐに入ることなく、扉の前で立ち止まり考え込む。
 一体どういう用向きだろう。全く理由が思いつかない。
 ただ、その人物とは本当に久し振りに会う。実に数年ぶりの再会で、思わず期待よりも不安が強く胸に過ぎる。
 面談の連絡を受けたとき、天城は自分の耳を疑い、何度も事務員に聞いてしまった。そのため、事務員に本当に身内か疑われる自体に陥ってしまったが、なんとか誤解をときここにいる。
 それ位、天城を疎んじいる当主より予想外の相手だった。想像すら出来なかった人物だけになにか良くないことでも本家で怒っているのではと不安になる。
 悪い予感に二の足を踏んでいると突然、目の前の扉が開いた。驚く間もなく扉の隙間から見えた、黒い瞳に見下ろされ、天城は硬直した。
 年はたしか三十半ばほどになると思うが、長身で若々しいスポーツマンのような体躯はまだ二十代と言っても十分通用しそうな若々しさを持っている。
 真っ黒で直線的な髪を短く整えられ、真っ黒な喪服のようなスーツに身を包んでいる。
 太い男らしい眉の下の黒目がちの一重の瞳には強い意思の光がやどり、いかにも天城の武人らしい雰囲気を持っている。
 数年ぶりだというのに、記憶と寸分違わぬその姿に驚いていると、相手は表情の読めない顔で天城を見下ろす。

「入らないのか?」

 そう、バリトンの声で呟かれ、天城はそれまで自分が一言も言葉を発していないことに気がついた。

「お、お久しぶりです。ふ、双葉ふたばお兄さま!」

 慌てたためやや挙動不審になったが黒スーツの男、天城双葉は特に気にした様子もなく、頷いてくれた。

「ああ、久しぶりだな」

 そう言いながら、双葉は無骨な手で天城の頭をなでてきた。
 小柄な天城は天城一族の中でも長身の部類に入る双葉が頭を撫でるのよちょうど良い高さになるのか、会うと何かとぐりぐりと頭を撫でてくれる。
 不器用ながらも優しい動きに天城は不思議な思いがした。天城にとっては双葉は父の本妻の末息子、つまりは普段から天城を疎んじ、冷たい目でにらんでくる天城家当主の実弟だ。
 天城家人間は誰も彼も美香を疎んじるのになぜか双葉だけは出会った当初から優しかった。

「大きくなったな」

 言外に「前はもっと小さい気がしたのに」と匂わされれば、自分の小柄を少なからず気にする天城は思わずムッとする。しかし、別にそれは悪意あっての言葉ではないのはわかっていたし、なにより身内の優しい反応に天城はどう返して良いのか分からず困惑する。とりあえずお礼を言った。

「あ、ありがとうございます」

 天城の礼に特段反応を見せず無言で頷き、双葉は天城を応接室に招き入れた。
 ソファを勧められ座れば、その向かいに双葉が腰をかける。それから無言でじっと天城の顔を見つめられた。
 一重の深い色合いの瞳に見つめられ、天城は別に悪いことをしたわけでもないのになぜかそわそわしてしまう。どのくらいの沈黙だったか。そろそろ居た堪れなさに声をかけようかと天城が思った矢先、ようやく双葉が口を開いた。

「……理恵りえ先輩。お母さんに似てきたな」

 思いがけない言葉にどきりと胸が跳ね上がる。それから胸に広がる複雑な思いに天城は俯いてしまった。
 天城の母、今川いまがわ理恵と双葉は天城の生まれる前からの知り合いらしい。高校時代の先輩後輩だったと双葉からは聞いていた。
 だが、それを聞いたのは母と離された以降なので母から直接聞いたことはなかった。聞きたくても天城は母が生きているか死んでいるかすら知らなかった。
 母のことを思い出し俯いてしまった天城の意識をそらすように双葉が話しかけてくる。

「改めて久し振りだな」

 元気にしていたか?と社交辞令されれば頷き返す。

「はい。お兄様もお元気そうで」
「ああ、ありがとう。それで?学校はどうだ?友達は?」

 一通り当たり障りのない近況を聞くような会話が続き、天城は首を傾げた。質問は飛んでくるものの、その真意がわからない。
 目的が天城の近況でないことは確かだろう。なにせこの兄は忙しい。
 天城の本家の中で最も隠密としての術に長け、最強の隠密と名高い彼だ。
 最近ではグローバル化してきている黄土の事業の手伝い、あるいは海外に公演などをする当主の護衛などに引っ張りだこなのだ。
 そんな相手がただ、天城に会いに来たとは考えられなかった。

 だが、天城にはその目的がなんなのか想像もつかない。

 双葉の考えはいつだって天城には読めない。
 彼は不思議な兄だった。先代天城当主の正妻の息子で、現当主の実弟だが、不思議と容姿は似ていない。
 彼はいつも本宅にはおらず、幼い天城も彼を本宅で見かけたのは数える程しかなかった。
 そしてひと目のあるときは決して天城には近づいてこなかった。他の親族がおらず、ひとりきりで泣いている時にそっと近づいてきて、他の親族に折檻されて怪我をした天城を介抱してくれたり、外国製の珍しい菓子をくれたりした。
 彼とは母親がいなくなったあとから双子と出会うまでの短い期間の接触しかない。
 双子が現れて以降、天城は黄土の別宅に住居を移したので、それ以来随分と会っていない気がした。
 小さかったため、そこまではっきりした記憶ではないが、おぼろげに覚えている彼の姿はいつだってどこか悲しそうで、そしてひどく無口な印象だった。
 名前を聞き出すことも苦労したほど、彼は天城に喋りかけてくれなかった。別に無視したわけではないのは、天城が喋っていれば相槌を短い言葉でくれるのでわかっていた。
 彼はいつでも天城を悲しそうに見ていた。そういうことは幼いながらも天城は感じ取れていた。しかしなぜそんな目で見られていたのかわからない。
 ただ他の親族が天城を見る目とは違う彼のことが幼い天城にとっては救いとなっていたのは事実。
 彼はいつだって優しくただ無言で天城の頭を撫でてくれた。ただなにかの罪に耐えるかのようにじっとしながら。

 だからこそ、今、目の前の彼の姿が天城には信じられなかった。昔の彼は決して無駄な言葉を発しようとはしなかった。
 たまに彼の声を忘れそうなほど、聞かなかった声だ。たまに聞ければひどく嬉しかったのを覚えている。
 その声が大盤振る舞いのように耳に響く事実に天城は警戒心を強めた。

(それに……)

 過去を思い出せば、彼が近づいてくるのはいつだって、誰もいない時だ。このように表立って近づいてくるのは初めてのことだけに天城は不安にかられる。

「……どうかしたか?」

 不意に問いかけられ、自分の考えに少し浸っていた事に気づいて天城は顔を赤くした。

「ご、ごめんなさい。ちょっと呆としてしまって」

 天城の顔に双葉は僅かに目線を落とした。

「いや……済まなかった」
「え?」

 突然謝られて天城は困惑する。
 すると、懺悔のように彼の口からするりと言葉が紡がれる。

「突然押しかけて嫌な思いをさせた。……天城の人間などお前には敵でしかないのに」

 そう俯かれれば、天城は慌てた。なにせ彼は天城の恩人なのだ。変に勘ぐりすぎたかと思い反省する。

「あ、いえ。そんなつもりではないんです!それに双葉お兄様は他の方々と違いますし……」

 そう言い訳するのが、なんだか妙に気恥ずかしく天城は俯いてしまった。
 慣れない優しい親族への対応に、粗泥も泥になる天城の耳にクスッと笑った声がして慌てて顔を上げれば、天城を見つめる双葉の優しいけれどどこかさみしげな瞳とぶつかる。

「ありがとう。嘘でも嬉しいものだな」

 嘘ではないのだが、初めて見た異母兄の僅かに口端だけを上げた笑にそれ以上言葉が出てこず、天城は俯くことしかできなかった。

 俯き何も言葉を発しない天城に双葉は何を思っているのか。なぜか怖くて顔を上げられない天城にバリトンの声が不意に届いた。

「さて、俺などの面白くもない話に付き合わせるのも悪い、本題に入ろう」

 本題とは一体なんだろうと首を傾げる天城にまるで先程からの世間話の延長かのように双葉は天城に質問した。

「お前は〈古き日の花嫁〉ラ・マリエ・ダンタンを知っているか?」

 兄の言葉に天城は一瞬顔を固くしてしまう。それはほんの一瞬だったが、相手はそれを見逃してくれるような人ではない。
 自分の顔色を読まれるなど隠密修行をしてきた天城からすればとんでもないことだが、相手が双葉では仕方がない気がした。
 双葉は天城でもトップクラスの隠密だ。実は見かけによらず護衛としての能力よりも諜報戦に長けており、他人の感情の機微に聡いと聞いている。
 天城としては無口な彼しか知らないので、それを聞いたときはなんの冗談かと思ったが、事実らしい。その実力は天城の当主さえも抜くとされている。
 そんな彼にここまでバレてしまえばもはや隠すのも無意味だろう。だが詳細を漏らすのは例え唯一身内で優しくしてくれた相手だろうと双子との約束があるのでできない。
 天城は動揺を悟られないよう、心の中で深呼吸した。

「それがなにか?」
「……そう、警戒するな。無理やり聞き出すつもりなどない」

 俺は吸血鬼とは違うからな、と珍しい冗談さえも飛ばされるが、とてもではないが警戒は解けない。
 双葉は天城の当主の実弟なのだ。天城は自分に言い聞かせるように唱えた。
 天城家は黄土家の一人を主人と定め、絶対の忠誠を誓う。
 双葉の主人は彼の実兄である天城家当主と同じ黄土家の当主だ。
 今の当主ももちろん黄土の当主である双子の父親のためならどんなことでもする。それは例え身内を殺めることになろうとも絶対だ。
 そしてそれは双葉も同じだ。彼も生まれた時から、黄土の当主のためなら命を投げ出し、どのような残酷なことでも躊躇うなと教えられている。
 双子は父親から愛されているが、それも彼らが服従しているときだけだ。
 黄土の当主は天城から見れば自己愛が強い人で、その分他人に対して容赦がない。
 天城にとって双子こそが至上なのだ。双子に不利になるようなことは避けなければならない。この身に変えても守らなければ。
 例えそれが身内で唯一優しくしてくれた人であってもだ。

「どうしてそのようなことを聞くのですか?」

 感情を出さないようにできるだけ平坦に言えば、何か観察されるように目を細められた。
 その目をできるだけそらさないように見返せば、双葉は何を思ったのかあっさり応えた。

「ちょっとした噂を聞いてな」
「噂ですか?」

 聞き返せば、どうせ広まることだから、と双葉は天城が呆気にとられるくらいあっさりと教えてくれた。

「〈古き日の花嫁〉が裏戸学園に現れた、と」

 双葉の答えに天城は表情を変えなかった。しかしあまりのことに内心僅かにひゅっと息を飲む。
 〈古き日の花嫁〉の存在を教えてもらった日から漠然と恐れていたことだった。
 今、吸血鬼の一族は深刻な子供不足だ。花嫁となれる女性を作っても、なかなかお腹に宿らなかったり、死産だったりが増えており、どんどん若い吸血鬼たちが減っている。
 そしてその中でも純血の減少は特に深刻だ。混血でさえなかなか生まれないのだ。純血が生める女吸血鬼も今や片手で足りる。吸血鬼の一族の力の低下は深刻だ。
 その中で突然現れた伝説の存在が一族にバレれば必ず何らかの混乱が起こるとは思っていた。
 おそらくそれは黄土家でも同じ。それこそ天地がひっくり返るような情報だろう。
 現在、黄土家は純血である瑠衣はいるが、当主は混血だ。そして当主は純血に固執している。
 純血は一族の宝、その父親も一族の中で強い発言権を得る。そのため黄土家当主、光晴は純血の自分の血を引いた子供を欲しており、その執着は並々ならぬものがあった。
 天城はポーカーフェイスを貫きつつ、内心ではひどく焦りを感じた。

(やはり光晴様は統瑠くんか翔瑠くんかに〈古き日の花嫁〉をと……?)

 〈古き日の花嫁〉である聖利音を思い出す。彼女を双子の花嫁に、との当主の考えがありありと浮かんで、僅かに胸が嫌な音を立てる。
 双子と利音。最近、仲良くしている様子は伺えたが、天城としては本当に仲の良い遊び仲間のようにしか思っていなかった。
 昔から双子は女の子にじゃれるのが好きだったため、かつては天城も嫉妬に身を焦がしていた時期もあった。
 しかし最近では、その感情も落ち着いていた。多少の複雑な思いはあるものの、一緒に遊んでも女の子を見る双子の目は変わらない。相手に対して恋愛感情を見せることもなくさほど気にしなくても良い気がしていた。
 けれど現実に恋敵となり得る存在が目の前に現れたことに、天城はひどく動揺した。
 天城は二人が好きだ。今のところ優劣はない。いずれはどちらか選ばなくてはならない日が来るだろうが、まだ先の話だと思っていた。
 天城は二人が大事だ。一緒にいられるだけで幸せだ。三人一緒であることが幸せ。そんな幼い幸せが今崩されようとしている。

 今まで考えなかったわけではない。だが想像することも恐ろしくて天城には今まで避けていた。
 聖利音が彼らのどちらかと、ということになったとき本当に自分の居場所は残るのだろうか、と。
 道理としてはもちろん双子は二人いるのだから、どちらかは天城の元に残ってはくれるだろう。しかし双子は常に行動を共にしている。
 双子同士の絆は天城と双子の絆等よりずっと深い。本来であれば双子には互いがいれば、ほかの人間は必要ないほど彼らの世界は彼らで完結している。
 そこに無理やり入っている自覚が天城にはある。もし、もうひとり強制的にその位置に誰かが入るとなった場合、果たして双子は本当に天城を必要としてくれるのだろうか。
 彼らは確かに優しい。でもとても残酷な生き物でもある。天城には彼らしかいないのに、彼らは別に天城は必要ではないのだ。
 その想像に天城は知らず肩を戦かせる。
 そんな様子の天城を冷静に見つめていた双葉がそっと口を開く。

「この噂はまだほんの出始めだ。まだ一族の殆どは知らないんだが」

 そう前置きしてから少し寂しそうな目を双葉は天城に向けた。

「お前の様子では〈古き日の花嫁〉は本当にここにいるんだな」

 双葉の言葉に天城は動揺を表しそうになる体を無理やり押さえ込む。
 どうやら双葉は〈古き日の花嫁〉がいるということが半信半疑だったようだ。この異母兄は実に用心深い。
 基本噂などを鵜呑みにせず常に自分が確信を得るまでは信じない。そして誰にも伝えない。
 その彼が、一族に広がる伝説の存在である〈古き日の花嫁〉の話をすぐに信じるはずがない。
 だから、確証を得るために天城に面会を申し出たのだと、今更ながら気付かされた。
 学園内の内情に一番通じているのはやはり学生だ。そしてその学生の中で一番情報を得やすいと思われたのが自分であったことに天城は内心ひどく動揺する。
 そんな口の軽い女に思われていたことに対する憤りも大きいが、それ以上に双葉にそう思われたのだと、利用しやすい相手だと思われたことに対する衝撃が大きかった。
 天城はそのことに衝撃を受けている自分が情けなくて唇を噛み締める。

 おそらく天城は、わずかでも期待してしまっていたのだろう。
 この兄の目的がほかの打算でも何でもなく、ただ自分に会いに来てくれたのだと。
 一族で唯一優しくしてくれた彼が忙しい中天城に会いに来てくれたのだと一瞬でも期待してしまった。
 だからこんなふうに衝撃を受けているのだ。
 自分の弱さに泣きたい気分だが、泣いている場合ではない。
 それならばそれで天城は双子の隠密として黄土の当主の隠密である彼と対峙しなければならない。
 例え、彼が天城一と言われる相手であっても、双子を守るために彼に情報をただ渡すわけにはいかない。
 幸い、天城は自分が心中の動揺を表に出したつもりはない。
 天城や黄土で師について教わった精神を表情に出さない訓練は続けてきたつもりだ。
 そう簡単に見破れられるとは思っておらず、天城はそっと感情を押さえ込んだ声で黄土の当主の隠密を見据えた。

「何を証拠に?」

 硬い口調の天城が問えば、双葉はさみしそうに目を細めた。それから彼は何を考えたか、そっと立ち上がると天城の横まで移動して、その大きな手で天城の目元を覆った。
 突然塞がれた視界とその手の暖かさに思いがけず驚く。

「……無理をする必要はない。顔が真っ青だ」

 その言葉に、天城は完全な敗北を悟った。なんという未熟な自分、顔色さえもコントロールできないとは。
 だが嘆いてばかりもいられない。これ以上失態を重ねないためにも天城は折れそうになる自分を叱咤する。
 こうなればせめて相手の真意を説いて、状況を見極めようと、顔覆っていたその温かい手を無理やりどけて、天城はいつの間にか横に座る黄土当主の隠密をにらみあげた。

「このことを光晴様に……」

 質問をぶつけようとした天城だったが、睨みつけた双葉の様子がおかしいことに気付く。
 一瞬なぜか息を飲んだ気配がしたかと思えば、珍しく目を見開き固まっている。

「……せん…ぱ…い…?」

 微かな音の漏れる唇を天城は読み取った。『せんぱい』、『先輩』か?
 双葉のいう先輩という単語に思い出されるのは母だけだが、今の話の流れで母が出てくるはずもなく天城は首をかしげた。
 それよりも聞きたいことを聞こうと天城は僅かに苛立ち、双葉の名を読んだ。

「双葉お兄様!それよりも聞きたいことがあるのです」

 天城が呼べば、その言葉に何か気付いたように、彼の肩が僅かに跳ね上がる。
 次に見えた兄の目はどこか目が覚めたばかりのような色をしていた。
 表情もいつもの無表情ではなく呆然としていたかと思うと、いつの間にか天城のそばまで伸びていた手で自身の額を抑え、なにかをこらえるように目を閉じた。
 一体どうしたのか。困惑しかない天城だが、珍しく隙だらけの双葉の様子にチャンスだと思い、再度質問をぶつけた。

「光晴様にこのことを報告するのですか?」

 すると双葉は案の定というか、あっさりと首を振った。

「……いや、噂の話はすでに光晴様はご存知だ。そもそも俺に話を聞かせたのも光晴様だしな」

 どうやら噂を先に聞き及んでいたのは双葉ではなく当主らしい。では当主の言葉を疑っていたのか、と天城が驚けば双葉は僅かに目を気まずそうに細めた。

「こと情報は自分の命どころか、主の命にも関わるからな」

 主の言葉と言えど丸飲みには出来ないと言われれば、なるほどと思うしかない。用心深い双葉らしい理由だ。だからこそこの兄は侮れない。

「しかも完全に信じ込んで、すでにいろいろな準備を始めているようだな」
「準備とは……?」

 聞けば、流石にそれには首を振られた。

「流石にそこまでは教えられないな。一応俺の仕事の範疇に入ってしまうからな」

 双葉の言葉にそれ以上の情報を得られないと断念する。
 天城家は黄土家の護衛であり隠密としての役割も担う。
 仕事に関する情報は例え親兄弟に対しても漏らすことはないし、漏らしてはいけない。もし漏らせば、どれだけ逃げようと一族からの制裁という名の死が待っている。
 おそらく、双葉が漏らした情報はすでに天城家全員に広まっているのだろう。話していい範囲で教えてくれたのだ。
 そのことを悟って、天城は内心安堵の息を吐く。弱り目に問い詰めておいてなんだと思われるかもしれないが、双葉に制裁などのひどい目にあって欲しいわけではない。
 彼は天城にとっては恩人なのだから。

 思い出す双葉との出会いはまだ天城が幼かった頃、双子に出会う前のことだ。
 まだ母親と引き離されて間もない頃のこと。父親の死と同時に別宅にいた母は追い出され、天城だけが冷たい親族のみがいる天城家に取り残された。
 母親だけ追い出し、血をひいているという理由だけで残された天城だが、待っていたのは決して彼女を天城家の人間だと認めないという親族たちの冷たい視線と罵倒、理不尽な暴力だった。
 外に出れば親族たちに見つかり何をされるかわからなかったため、その頃はずっとひとり離れの小部屋に引きこもっていた。
 死なせないようにと僅かな食べ物だけが運ばれる離れで、ずっとひとりきりだったある日。天城は外に積もった雪を見て、思わずふらりと外に出てしまった。
 かつて母と遊んだ雪の日を思い出していた天城だが、それをうっかり意地悪な親戚に見つかってしまった。
 殴られることはなかったが、その親戚は離れに鍵をかけて天城を部屋に入れないようにしてしまった。
 天城は絶望に立ち尽くした。離れを開けるには本宅の人間に頼まなくてはならないし、天城にいる人間は使用人であっても天城を見下し、決して言うことを聞いてくれない。
 当主である兄に言えば、世間体やらなにやらを考えて開けてくれるだろうが、その際必ず殴られる。
 そう考えたとき、疑問に思った。
 なぜそこまでして、この場所で生きなければならない。部屋に戻らなければならないのだろう。
 このまま外にいれば、いずれ体は動かなくなるだろうけれど、それが悪いことのようにはその時の天城は思えなかった。
 そう思った時天城は確かに自分が久しぶりに笑みを浮かべたことに気が付いた。
 あきらめきってしまえば、もはやどうでもよかった。
 離れの壁にそっと背を預け、じっと時が来るのを待った。
 しんしんと降る雪に優しい思い出だけを夢見つつ、天城はいつの間にか眠っていた。
 そうして、次に目覚めたらきっと自分は天国にいるんだと思ったら、ひどく苦しくて暑くて。その感覚にうっすらと目を開けたとき、見慣れた離れの灰色の天井があった。
 どうやら自分は死ねなかったのだと絶望的な思考に再び目を閉じる。そのまま気を失うように眠った後、ふと上から冷たい雨のようなものが降ってきた気がして幼い天城は再び目を開く。
 そこには知らない男の人が天城を覗き込みなぜか泣いていた。表情の乏しい男で、どこか父親に似ている気がした。
 だが天城や母の存在をあまり良しとしていなかった天城の父は存命中、母と暮らした離れに来ることはめったになく、天城はほとんど知らなかった。
 夢現の思考で天城は何か男に呼びかけた。すると、男はなぜか「ごめん」とつぶやいて、天城を毛布ごと抱きしめた。彼の目が落とす大粒の水の冷たさは熱が出て熱くなった天城の肌に心地よい気がした。
 それがおそらく双葉との最初の出会い。
 あいまいな最初の記憶から数日、天城の体調が回復するまで彼は毎日天城と一緒にいてくれた。
 甲斐甲斐しく汗を拭いて、氷嚢も変えてくれた。体力が回復するまでそばにいてご飯も食べさせてくれたし、天城がせがめばたどたどしくも童話も読み聞かせてくれた。
 母親がいなくなって、初めて優しくしてくれた大人に天城はすっかり懐いてしまった。
 数日後仕事でしばらく来れない、と言われた時は思わず泣いてすがってしまったほどだ。
 それからも時々仕事から帰ってくれば、天城の様子を見に現れる双葉との交流だけがともすれ絶望で死に向かいかける天城の思考をこの世に繋ぎとめた。
 それから数年ののち、天城は双子と出会う。
 彼がいなければきっと天城は今生きていない。彼との交流が、双子と出会うまでの天城をなんとかこの世につないでくれていた。寂しくて悲しくてしんどくて。孤立無援の天城の家の中で自分に優しい人がひとりでもいる事実だけが、あの時の天城には支えだった。
 だから決して双葉に不幸せになってほしいだなんて思わない。
 そう思うからこそ、たまに不安に思う。
 もし、双子と当主が敵対することになって、どうしてもこの兄と戦うことになった時。自分はこの兄を殺せるのか。それだけが不安だった。

 そんな思考に沈む天城の頭に懐かしい大きな手が置かれる。
 くしゃりとかき乱すような手の不器用な動きにも、なんだか懐かしくて涙が浮かびそうになる。

「お前に鎌をかけるつもりは本当はなかったんだ」

 つい仕事のくせで、と言い訳が頭上から降ってくる。その心地いいバリトンの声ににじむ罪悪感に天城はそっと目を閉じた。
 なぜかいつだって天城に対する双葉の声は罪悪感が滲んでいる。
 出会った当初は気付かなかったが、天城も成長しいろいろな経験をした結果、いつしかそれに気が付いた。
 なぜ彼が天城に対して罪悪感を抱いていのか、わからない。
 それはまるで懺悔のような、すがるようなそんな感情。なんとなく母が関わっている気はしたが、天城にはなんとなく聞くのが怖くて双葉に母のことを聞けていなかった。

(もしかしたら、ここが聞き時なのかもしれませんね)

 そんな思いに双葉の手を頭に感じたまま、天城がそっと彼を見上げた時だった。

「双葉、お兄様。お母様とはどういう………」
「美香ちゃんから離れろ、このロリコン!」

 突然の言葉とともに頭の上の感触と隣にいたはずの兄の気配が消えた。
 驚いて、身を固めた天城によく知る別の気配が抱きついてきた。
 頬をくすぐる猫のような柔らかい毛先に驚いて目を見開く。

「み、統瑠くん?」

 一体いつの間に入ってきていたのだろう。驚く天城を双子の片割れ、統瑠がすっぽり包み込んでいる。
 状況が分からず目を白黒させていると、天城の隣から突然消えた双葉がいつの間にか少し離れた場所に片膝をついて頭をたれていた。
 珍しく鋭い犬歯をむき出しにし、威嚇するように統瑠は双葉の視線を向けている。その様子に天城は困惑しきりだが、顔を上げた双葉は涼しい顔だ。

「……殿下。お久しぶりです」

 主家の御曹司の一人に恭しく語りかける双葉に、天城を抱きしめたまま統瑠が唸る。
 双葉はなぜか双子を殿下と呼ぶ。理由はわからないが昔からなので、特別問題にすることもなく統瑠は応えた。

「ああ、久しぶりだね。いつの間に帰ってたの?」

 帰ってこなくてよかったのに、そんな憎々しげな統瑠の声に天城は驚きつつ、声を上げることもできず固まる。
 天城を守るように統瑠の包容が強くなる。痛いくらい肩を掴まれ、統瑠から漏れる力に天城は知らずに震えた。
 双子は吸血鬼だ。人ではない存在。それは知っていたけれど、普段の彼らが無邪気すぎて忘れていた自分に気づかされる。
 普段は彼らを守ることを自分に科している天城だが、それが思い上がりだと感じずにはいられないほどの圧倒的な力の差。
 彼らの力を知らないわけではなかった。昔から彼らとともにいて何度となく見てきたつもりだった。
 だが力の使い方にも慣れて、隠す術も学んだ最近の彼らの力を目にする機会はほとんどなくなっていた。
 そのためどれくらい彼らが力を持っていたのか、自分でも忘れていたらしい。
 嫌悪感はないけれど、それでも本能的な恐怖に身がすくんだ。
 そんな天城と統瑠の様子を見ていた双葉はすっと目を細めた。

「殿下。力を抑えなさい。美香が怯えている」
「そんなわけは……美香ちゃん?」

 そこでようやく美香の様子がおかしいことに気づいたらしい統瑠は慌てたように力を抑える。
 そのことで緊張感から解放され、天城はようやく硬直から脱し、息をついた。それから気遣わしげに覗き込む統瑠に安心させるように微笑んだ。

「……美香ちゃん?」
「ごめんね。統瑠くん。大丈夫。ちょっと驚いただけだから」

 僅かに顔を青くしている天城を統瑠が複雑そうな表情で見下ろしている。
 その表情がいつになく辛そうで、天城は不思議に思って声をかけようとした時だった。

「統瑠く……」
「……さて、それでは邪魔者は退散させていただきます」

 いつの間にか立ち上がっていた双葉の声に天城は、慌てて双葉に視線を向けた。
 しかし、慌てる天城に双葉は微笑むだけで、動きは止まらない。

「ふ、双葉お兄様?邪魔者なんて、そんな……」
「それではな。美香、いい子で」

 口端だけ持ち上げた笑みを浮かべ、隠密らしく足音も立てずに去る姿を呆然と見送る。
 統瑠が警戒を濃くして睨みつけていると、不意に双葉が扉の前で顔だけを振り向かせた。
「殿下」と一言統瑠に向かってバリトンの声を響かせる。

「一つ老婆心ながらご忠告を」

 その言葉と共に双葉の姿が一瞬で消える。
 驚いた次の瞬間、背後にぞっとする気配が生まれた。何事かと確認する前に、統瑠に掴まれた肩の手の上から更に大きな手が重なり、天城と統瑠は二人まとめて引き寄せられた。
 さらりと見えた黒髪に双葉だとわかったが、一体いつの間にと思う間に驚く二人を尻目に双葉は統瑠の耳元でだけ何かを囁く。
 あまりにも小さな声に、天城の耳をもってしても聞こえない。何を言われたか気になるところではあるのだが囁かれた次の瞬間、統瑠の顔がカッと赤くなった。

「お、お前……」

 肩越しに伝わる統瑠の動揺した姿に、天城は目を見開き、双葉は珍しく意地悪そうに口端を歪めた。

「背後を取られるとはまだまだ。まあ、殿下はまだ十五ですし、そのへんは仕方がないとして、ほかのことにはそろそろ気づかないと……」
「……黙れ」

 統瑠のものとは思えないような暗く感情のこもらない声に、天城は驚く。
 だがそれもつかの間、感情に任せたような統瑠の力を乗せた一撃が、背後の双葉に放たれる。
 しかし、その一撃も読んでいたかのように双葉は何事もなく交わすと二人から距離を取ったのが見えた。

「殿下。……時間は無限ではないし、言葉にしなければ思いは伝わらない」

 珍しく饒舌な兄に驚きつつ、その瞳に感情のような色が浮かぶのが見えて、天城はどきりとした。

「言葉にしなくてもわかってくれるなんて幻想でしかない」

 努努お忘れなきよう、とどこかさみしそうに告げる異母兄の姿に天城は何を言っているのかまるでわからない。
 だが、統瑠にはわかっているのか、視線を鋭くして双葉を睨みつけた。

「……おまえに言われるまでもない」

 いつもの無邪気さがなりを潜めたように、緊張感を孕む統瑠の様子に天城はわけのわからず、混乱する。
 不安を感じつつ兄と統瑠を見回すが、双葉はかすかに肩を竦めて見せるだけだ。

「それならば良いのです。それでは御前を失礼します」
「……二度と顔を見せるな」
「出来得ます限り」

 双葉はそっと頭を下げると同時に一陣の風が吹く。
 その風を感じて瞬き一つ。その間に部屋から双葉の気配が遠ざかり、目を開けた時には応接室には天城と統瑠だけが取り残された。
 いつ見ても不思議な術だと思う。
 双葉は天城のように風を操れるわけではない。至って普通の人間だ。
 しかし古くからある隠密の技には相手の気を一瞬別のものにそらし、素早く撤退する術がある。
 天城は途中から得た吸血鬼の花嫁としての力を伸ばす方向に育てられたため、そちらの術についてはほとんど知らない。
 師から弟子へ口頭で伝えられる技なので天城に知る術はない。
 兄の去った場所を呆然と見ていれば、不意に横合いから強く抱きすくめられた。 
 抱き込まれて胸に顔を押し付けられているため、顔はわからないが、こんなことをする相手は一人しかいないため天城はまったく慌てなかった。

「統瑠くん?」

 名前を呼べば、そっと力が緩んで顔が見えた。

「……ごめん。美香ちゃん」

 突然謝られて困惑する。

「何がでしょう?」
「その、双葉と一緒なの邪魔して……」

 珍しく気を使うような統瑠の物言いに驚きつつ、天城はそっと安心させるように微笑んだ。

「いえ、別に大丈夫ですよ。……すでにお話は終わっていました」

 先程双葉との会話で感じた敗北感を思い出し天城は笑みに自嘲を混ぜた。
 先ほどの術といい情報の引き出し方といい、流石は双葉か。
 最強の天城との呼び声の高い、異母兄。完敗だった。
 自分の未熟さの反省ばかりをしていた天城は統瑠の様子に気づけない。

「話って、なんだったの?」
「それは……」

 流石に自分の失敗の話などしにくく、視線を反らせて口ごもる。

「僕に話せないことなの?」
「……えっと、それは」

 そこまできて天城はようやく統瑠の様子がおかしいことに気がついた。 

「……本当に話せないの?」

 いつの間にか至近距離で囁かれるように問い詰められ困惑する。
 統瑠の顔はなぜか真っ青で、その表情も普段の無邪気さがなりを潜め、肩を掴む力は一向に緩まない。
 普段にない状況に不安が増した。

「どうかしたんですか?統瑠く……」

 抱き込まれたまま顔を上げれば至近距離に統瑠の顔がある。
 その瞳を見つめた瞬間ドクン、と全身が音を立てた気がした。体が硬直して動かない。
 その感覚に覚えがあった。天城家は黄土の隠密として吸血鬼たちと対峙することも可能性としてあるため、彼らの精神攻撃から身を守る術を教わっていた。
 基本は掛かる前に防ぐ方法だが、精神修行により、普通の人間よりは耐性を身につけている。吸血鬼の精神攻撃で情報が他に漏れることを防ぐため、完全に掛かる前に自害する時間稼ぎのための修行だった。
 統瑠の目を見たときに感じた力の本流は吸血鬼が相手の精神を制御しようとする力だった。なぜ、そんな力を統瑠が天城に使うのか。天城は混乱したが、その意識も混濁していく意識にあっという間に解けた。それでも意識はまだ完全には飲まれてはいない。
 だが、今はギリギリ意識の淵で耐えているだけの状態に過ぎない。いずれは力に飲まれることだろう落ちていくことは容易に想像できた。
 一度受けてしまった力に抗う力は、吸血鬼の花嫁であってもただの人間でしかない天城にはなかった。
 そのまま周囲の景色は曖昧になり、すべての意識が統瑠に集中する。
 薄れゆく意識の中でもはっきりと統瑠の表情だけが見えた。統瑠はいつになく辛そうな表情で天城を見下ろす。
 それがまるで泣いているように見えて、天城は力の入らない手を伸ばそうとしたができなかった。
 どうしてこんな表情をされるのかわからない。こんな表情の統瑠を天城は初めて見た。一体何の要因が彼にこんな辛そうな顔をさせるのか。
 天城には見当もつかなかった。

(……いえ、本当に?)

 ちらりと行き過ぎる既視感に天城は自分の思考に疑問を呈す。
 この統瑠の表情は本当に初めてだっただろうか。
 もっと幼い頃。ずっと昔に、どこかでこんな表情の彼を見たような。あれは一体どこだっただろうか。
 白濁する意識の中で僅かに残った思考で考える天城の耳に統瑠のつぶやきに似た声が届く。

「美香ちゃん。君は僕を裏切らないで……君は、消えないで……」

 言葉と共になにか冷たいものが落ちてくる。
 それはいつかの雪の日に感じたあの悲しい色の水に似ていて。
 それが何か知る前に天城の意識は奈落に落ちるように消えていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
双子の親衛隊、天城視点
月明かりの下での少しだけ前の話。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてます

夢月 なぞる
ファンタジー
高2の春、時期はずれの転校生聖利音を目にしたあたしは、瞬間思い出した。前世だかなんなのか知らない記憶にこの世界は乙女ゲームの世界だと知る。しかも死亡フラグありのダークファンタジー要素を含んだ学園物だから青ざめた。攻略対象たちはまさかの人外の吸血鬼!ぎゃー、ありえねーっ!って、あたしってば主人公のルームメイトとかめちゃめちゃ死亡フラグたちまくりのキャラなんですけど!嘘でしょ!高校生で死亡とかありえない!ってなわけでせいぜい抗わせていただきます! ※内容は書籍版のダイジェストです。 とある事情で語り手が非常にうざいかつ読みにくいかつ分かりにくいかもしれませんが、ご了承ください。 ※本作の設定はウェブ版仕様です。黄土の双子、紅原の名前の呼び方などWEB版と書籍版とは内容がかなり異なります。ほぼ別物語としてご覧いただけると幸い。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...