ダークな乙女ゲーム世界で命を狙われてますSS集

夢月 なぞる

文字の大きさ
1 / 28
企画SS

人気投票御礼企画<紅原編>

しおりを挟む
今回は人気投票で惜しくも二票差で二位だった紅いののだよ。

※全てif話。物語の進行上にはまったく関係ございません。
※書きたかったからかいた、それだけです。苦情は受け付けません。

・舞台設定はゲーム終了後、恋人同士状態で、高校三年生ダネ。特に時系列は関係ないかな。
・多少恋人関係になれた時期、いちゃこらするだけ。オチはない。
・頂き物イラストより妄想の産物。

・キャラ崩壊しているかも?気をつけてご生還ください。
・本編のネタバレ要素はありませんが、本編読後がもちろん推奨

OKの場合、以下↓
------------------------


 人気の少ない校舎裏。
 机にいつの間にか入れられていた紙片によって呼び出された先で、あたしは絶体絶命のピンチに陥っていた。

「…えっと紅原…様?」

 あたしを壁とのあいだに囲い込み逃がさないとばかりに見下ろす赤毛の男の様子を恐る恐る見上げる。
 明らかに雰囲気が怒っている。
 その様子に何か怒らせるようなことをしたのかと思ったが、まるで覚えがない。
 そんな混乱するあたしを見下ろし、そっとにこやかに笑う男の目は笑っていない。

「環ちゃん。二人きりの時は名前で読んでって言っとるやろ?俺ら付き合っとるんやろ?」
「そ、それは…。まあ、でもここ学校…」

 流石に学園で絶大な人気のある月下騎士の一人と付き合っているなどと周りに知れればどんないじめをうけるか。
 考えるだに恐ろしいので、あたしたちの関係は内緒なのだ。
 学校ではあくまでも付き合っていることは内緒というのが暗黙の了解だと思っていたのでこんなふうに校舎裏で追い詰められるとは考えもしていなかった。
 しかもなんか怒っている。

「…なに怒ってんですか?」
「…怒っとらんよ」
「怒ってるじゃないですか?ほら、言ってください。言わなきゃわかんないです」

 めんどくさいことにこの恋人はこれまでいろいろ鬱屈された環境にいたせいか、自分の感情を外に出すのが非常に苦手なのだ。
 だから促してやらないと何を怒っているのか自分でも把握していないことが多いのだ。
 聞いてあげる体制になれば、怒っていた雰囲気が薄れ代わりに憮然とした顔があらわれ、ポツリとつぶやいた。

「…昨日の放課後、なんで待っとらへんかったん?」
「…え?昨日って」

 記憶をたどってようやくそれに該当するような出来事に行き当たる。

「昨日って、もしかして聖さんと双子と帰った時ですか?でもあの時は別に一緒に帰る約束してなかったじゃないですか」
「…それでもほかの男と帰ることないやろ?」
「でも、あれって聖さんとも一緒で……しかも無理やり連れて行かれたんですけど」
「それでも断り。俺と帰るとかどうとでも言えたやろ、双子相手なら」

 どうやら双子と帰ったことが非常に気に食わかなったらしい。
 考えてみれがその手が使えた。しくじったな。

「……まあ、それもそうですね」

 あっさり頷いて見せれば、なぜか円の顔が曇った。

「っ。…ごめんな」
「なんで謝るんですか?」
「…別に縛り付ける気はないんよ。ただ君のこととなったらなんや心狭くなるっちゅうか。…なんあ格好悪いな、俺」

 落ち込む彼の頭にそっと手を伸ばせば、驚いた顔が降ってくる。
 そのままいい子いい子と頭を撫でてやれば、複雑そうだが、僅かになでやすいように屈んでくれる。
 どこか気持ちよさそうに円は目を細めた。

「…なんや、子供扱い…」
「子供でもなんでもいいです。どっちにしろあなたにしかこんなことしません」
「……双子にも?」
「するわけないじゃないですか。あの振り回すしかしない子達に」

 思い出しても腹の立つ。
 帰るだけと言いながら、車でゲームセンターやらなんやら連れ回された。
 今日小テストがあったから勉強したかったのに、門限ギリギリまで連れ回され散々だった。
 回避できるならあの連中と下校などしたくない。

 円の見た目より柔らかい髪をなでていると、ささくれだった心が少しだけ癒された気もする。
 どれくらいなでていたのか、ポツリと円のつぶやきがため息の様の漏れた。

「…なんや自分の単純さに悲しくなってきたわ」
「単純って?なんで?」
「なんや頭撫でられただけやのに、怒ってたのもどうでも良くなった」
「単純結構じゃないですか。あたしは好きですよ?単純な方が」
「っ!……環ちゃん。それ不意打ちちゃう?」
「…何がですか?」

 本気でわからなくて聞いたのだが、呆れたようながっかりしたような顔をされた。
 一体なんなのか。

「俺って情けないなあ。振り回されてばっかりで…」
「別にそんなの今更じゃないですか?」
「…それって俺がいつも情けないってこと?」
「ヘタレの自覚はあるんでしょ?」

 言い返すと情けない顔をされた。

「…なんや余裕あるな?環ちゃん。この間までキス一つでも顔真っ赤にしとったのに」

 言われて、先日のキスを思いだし、次いでそのまま吸血されたのを思いだし顔が赤くなるのを感じた。

「あれ?なんや思い出した?」
「…こんな真昼間から何言い出すんですか!」
「…昼間からって、…なに想像したん?」

 にやりと笑われ、かっとなる。

「そ、そんなの言えるわけ…」
「言われへんような事なん?なんや環ちゃんも純情なだけかと思っとったけどなかなか…」
「…それ以上言うと、血、しばらくあげませんよ?」
「…御免なさい」
「よろしい」

 全く昼間っからなに思い出させるのやら。
 しかもここは学校。
 火照った気持ちを沈めようとしていたら、不意に影がさした。
 一瞬体が逃げるが、もともと壁に追い詰められていたのでそれ以上逃げることも叶わず、そのまま唇を奪われた。
 流石に学校だったことを考慮してくれたのか追い詰められるような深いものでなく、軽い触れるだけのキスだ。
 しかし。

「…顔真っ赤。…これじゃ、このあとの授業出られへんね?」

 頬を包まれ、意地悪く微笑まれれば、まだまだこういうことに関しては相手の方が余裕があることが苛立つ。

「っ!…誰のせいですか!」
「さあ、俺のせいか?だったら嬉しい」

 そう言って心底嬉しそうに笑われれば怒れない自分がなんだか悔しい。

「なあ、どうせ出られへんのやったら…このまま、血をもらってもええか?」

 するりと頬から首筋を撫でられれば熱がまた上がるのを感じる。

「数日前にあげたばっかりじゃ…」
「そうなんやけど。俺自分では淡白なつもりやったんやけど、結局親父の息子やったんやと今更ながら実感しとる」

 いや、あの人と同列に扱うにはやっぱりまだいろいろなにが足りないというか。
 …よく持つな、円のお母さん。たまに吸われるだけでもちょっと貧血気味になるのに、毎日吸われてるなんて。

「……環ちゃん?何か考えとる?」
「いや、円のお母さんよく持つな、と」

 そう言うと、一瞬顔がしかめられた後、溜息を吐かれた。

「あの人たちは…まあ特別というか」
「でも円のお母さんって、普通の人間でしょ?いくら花嫁になったとはいえ、結構きつくないかな、と」
「基本あの人もタフな人やからね。せやなかったら親父の相手なんかしてられへん。
 とはいえ最初の方は結構倒れてたらしいけど…」
「それをどう克服したんでしょう?今度遊びに行ったら教えてくれるかな?」
「……環ちゃん?
 こういう状況であの人たちの話はやめてほしいんやけど。
 もしかして血もろうたらあかん?」
「ダメといったらやめてくれるんですか?」
「一応考慮にはいれる」
「…やめるとは言わない時点でこちらに選択権はないんですね」

 そう言ったら少し困ったみたいな顔で微笑まれたが、その時点ですでにリボンタイを外されていた。
 所詮辞めるつもりはないようで、前回の吸血から経った日数を計算して、ギリギリだがまあいいかと思う。
 抱き寄せられ、そっと首筋に顔を寄せられた。
 そのまま噛まれるかと構えていると、首筋に僅かに唇を触れた状態で耳元で囁かれる。

「どうしてもダメならやめるけど…」

 その言葉に思わず溜息を吐いた。
 強引なのか弱気なのかたまにはっきりして欲しい時があるが、まあこれがこの人の悪いところでもあり、優しさでもあることはわかっている。
 あたしは返事の代わりに円の背中に手をまわし、そっと目を閉じた。
 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ヘタレはヘタレ。でも少しだけ強引に、でもヘタレというネタでした。
ネタ元の絵を書いてくださったらぴす様に捧げます!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら推しの婚約者でした。悪役令嬢ですが執着されてます!

桜咲ちはる
恋愛
社畜OLの癒しは乙女ゲーム【麗しの花姫】に出てくるチャラい系の公爵子息イーギス・グランドル。続編の発売日を楽しみにしてた矢先に交通事故に会って死んでしまう。彼女が目覚めたらそこは乙女ゲームの世界で、彼女はイーギス様の婚約者ナターシャに転生していた。 だが、ナターシャが辿る運命は婚約破棄からの没落。それも避けたい運命だが、それ以上に彼女は推しの幸せを願っていた。推しのために、平凡な彼女は奮闘する。 小説家なろう様にも同時投稿しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません

綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」 婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。 だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。 伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。 彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。 婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。 彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。 真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。 事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。 しかし、リラは知らない。 アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。 そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。 彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。 王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。 捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。 宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――? ※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。 物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...