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第二章 凶祭華同盟の虜囚
鬼舞嵐太郎、傷だらけの半生
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JRN瀬駅から徒歩で5分ほどの理髪店や肉屋が雑然と並んだ“銀座通り”(事実、すぐ傍に地銀の支店があるのだ)の片隅に、ポルノショップ【いたる堂】の古ぼけた1階建て店舗がひっそりと佇んでいる。
ここでは鬼舞嵐太郎の父親・愛太郎が長らく書店を営んでいたのだが、関西の大学に通っていた倅が2年の冬休みに下着泥棒(常習)で捕まって退学処分を受けて帰郷したのをきっかけに、周囲の反対を押し切って「しゃーねえがな、どうせアイツにゃ勤め人は務まらんじゃろうし、田舎の本屋なんざかったるうてやっとれんちゅうんじゃから…ほんならやっぱ、好きな道じゃねえと続かんじゃろうしなあ…」と、それこそ地域で嚆矢となる愛太郎称するところのピンクショップとして、屋号自体はむしろこちらの方がハマっている?ことを理由に大胆にもそのままで再出発を期したのである…。
ちなみに、一般家庭であればそれこそ“末代の恥”として絶縁モノの破廉恥狼藉も、愛太郎が渾身の拳骨を食らわした後、さめざめと啼泣しつつ洩らした「いつかこの日が来ると思っとった」との述懐からも窺えるように、それこそ小学生時代から“H町はじまって以来の色餓鬼”として地区の鼻つまみ者(それもスカート捲りのようなカラッとした英雄的行為ではなくリコーダーペロペロや上履き泥棒のようなコソコソジットリの陰性犯行ばかりであったことがより一層皆の嫌悪を誘った)であったバカ息子を「何の因果か分からんが、授かったモンはしゃーない…これも鬼子母神の思し召しじゃ」との諦観の眼差しで、それこそ妻の早逝後、男手一つで育ててきた身としては何を今更といった心境であったのかも知れぬ。
なお、新生・いたる堂の発足後、さすがに周囲の目が気になるのか先代が殆ど店に出なくなったのをいいことに、反省の色など皆無の性犯罪者は類は友を呼ぶとの法則通りこの魔窟に吸い寄せられてきた、鬱屈した性欲だけは人並み以上に持ち合わせる暗い目つきの好事家たちと共に朝から晩まで商売そっちのけでビデオ、ゲーム、コミックの“エロ三種の神器”に惑溺していたのだが、表面上の快活さとは裏腹にその精神は以前にもまして昏く内攻していったのである。
というのも、その頃からかねてより恐怖していた遺伝的疾患がいよいよ現実のものとなったのだから──即ち、本格的にハゲはじめたのである!
そして過酷な運命に打ちひしがれた本人は知る由もなかったが、実にこの時、嵐太郎の前途にはそれを凌駕する暗雲が立ち込めていたのだ──そう、地球侵攻の機会を窺って虎視眈々と情報収集に勤しんでいた“負極界の淫魔教帝”ババイヴ=ゴドゥエブンⅥ世の貪婪な目に捉えられてしまったのである!
しかも更に悲劇的なのは、全世界の憑依候補者を差し置いてこの弱冠23歳のポルノショップ経営者に白羽の矢が立てられた最終的な理由というのが、この若禿によって生来(特にエロ方面に)突出した狂気を秘めていた嵐太郎の“無敵の人化”が宇宙レベルで急速に進行したことであり、「まさに地球に生を受けながら負極界人の心性を有するこの傑出せる〈容れ物〉ならば、“銀河系最強者”たる余の輝かしい戦歴においても史上最大規模の死闘が予想される《地球淫界化計画》の遂行にも十分に耐えられよう…!」と過分なる?評価を得てしまったことによるのであった…。
されど、この淫魔教帝の“見えざる抜擢”が実に数十光年も離れた鬼舞を無意識的に呪縛したことで、将来を悲観し自暴自棄となり、酒とエロ浸りの日々を送る彼がいつしでかしても不思議ではなかった暴発(もし起きれば、犯罪史上稀に見る空前の惨劇となっていたことであろう)を押し留めたのであるから、見方によってはババイヴこそは嵐太郎の恩人であったのではないか…?
さて、かくのごとく隅々まで漆黒に塗り潰されたいたる堂二代目主人の半生であったが、死期を迎えた愛太郎が末期の苦しい息の下から震えながら伸ばした痩せ衰えた手を仕方なしに握りしめる“ウルトラ親不孝者”への「…頼むけえ◯姦だけはせんとってくれえよ、あの世でオカンに顔向けできんけえな…」と、どちらかといえば救い難き極道息子よりも一足先に旅立った亡妻への想いが横溢する遺訓だけは辛うじて守っておよそ19年が過ぎた、現在からおよそ2年前──9月半ばの中国地方が巨大台風に直撃されて臨時休業した深夜1時過ぎ、自宅二階の四畳半で当時全国で爆発的ヒット中であった〈革新的オナホール〉を密かに人類屈指と自負する【純粋妄想】だけをオカズに堪能していたのであるが、日付をまたいで実に4度目の射精を終えて清めのシャワーを浴びるために渋々身を起こして廊下に出、豪雨に叩かれる窓が凄まじい轟音を伴って稲妻に照らされたのに驚いて視線を投げたまさにその瞬間、古硝子全面を覆い尽くす、実に20年以上を費やした長旅の果てにようやく眷恋の惑星に辿り着いた淫魔教帝の怪異なる巨影を発見して卒倒し、そのままめでたく憑依されて今日にいたるのであった──。
ここでは鬼舞嵐太郎の父親・愛太郎が長らく書店を営んでいたのだが、関西の大学に通っていた倅が2年の冬休みに下着泥棒(常習)で捕まって退学処分を受けて帰郷したのをきっかけに、周囲の反対を押し切って「しゃーねえがな、どうせアイツにゃ勤め人は務まらんじゃろうし、田舎の本屋なんざかったるうてやっとれんちゅうんじゃから…ほんならやっぱ、好きな道じゃねえと続かんじゃろうしなあ…」と、それこそ地域で嚆矢となる愛太郎称するところのピンクショップとして、屋号自体はむしろこちらの方がハマっている?ことを理由に大胆にもそのままで再出発を期したのである…。
ちなみに、一般家庭であればそれこそ“末代の恥”として絶縁モノの破廉恥狼藉も、愛太郎が渾身の拳骨を食らわした後、さめざめと啼泣しつつ洩らした「いつかこの日が来ると思っとった」との述懐からも窺えるように、それこそ小学生時代から“H町はじまって以来の色餓鬼”として地区の鼻つまみ者(それもスカート捲りのようなカラッとした英雄的行為ではなくリコーダーペロペロや上履き泥棒のようなコソコソジットリの陰性犯行ばかりであったことがより一層皆の嫌悪を誘った)であったバカ息子を「何の因果か分からんが、授かったモンはしゃーない…これも鬼子母神の思し召しじゃ」との諦観の眼差しで、それこそ妻の早逝後、男手一つで育ててきた身としては何を今更といった心境であったのかも知れぬ。
なお、新生・いたる堂の発足後、さすがに周囲の目が気になるのか先代が殆ど店に出なくなったのをいいことに、反省の色など皆無の性犯罪者は類は友を呼ぶとの法則通りこの魔窟に吸い寄せられてきた、鬱屈した性欲だけは人並み以上に持ち合わせる暗い目つきの好事家たちと共に朝から晩まで商売そっちのけでビデオ、ゲーム、コミックの“エロ三種の神器”に惑溺していたのだが、表面上の快活さとは裏腹にその精神は以前にもまして昏く内攻していったのである。
というのも、その頃からかねてより恐怖していた遺伝的疾患がいよいよ現実のものとなったのだから──即ち、本格的にハゲはじめたのである!
そして過酷な運命に打ちひしがれた本人は知る由もなかったが、実にこの時、嵐太郎の前途にはそれを凌駕する暗雲が立ち込めていたのだ──そう、地球侵攻の機会を窺って虎視眈々と情報収集に勤しんでいた“負極界の淫魔教帝”ババイヴ=ゴドゥエブンⅥ世の貪婪な目に捉えられてしまったのである!
しかも更に悲劇的なのは、全世界の憑依候補者を差し置いてこの弱冠23歳のポルノショップ経営者に白羽の矢が立てられた最終的な理由というのが、この若禿によって生来(特にエロ方面に)突出した狂気を秘めていた嵐太郎の“無敵の人化”が宇宙レベルで急速に進行したことであり、「まさに地球に生を受けながら負極界人の心性を有するこの傑出せる〈容れ物〉ならば、“銀河系最強者”たる余の輝かしい戦歴においても史上最大規模の死闘が予想される《地球淫界化計画》の遂行にも十分に耐えられよう…!」と過分なる?評価を得てしまったことによるのであった…。
されど、この淫魔教帝の“見えざる抜擢”が実に数十光年も離れた鬼舞を無意識的に呪縛したことで、将来を悲観し自暴自棄となり、酒とエロ浸りの日々を送る彼がいつしでかしても不思議ではなかった暴発(もし起きれば、犯罪史上稀に見る空前の惨劇となっていたことであろう)を押し留めたのであるから、見方によってはババイヴこそは嵐太郎の恩人であったのではないか…?
さて、かくのごとく隅々まで漆黒に塗り潰されたいたる堂二代目主人の半生であったが、死期を迎えた愛太郎が末期の苦しい息の下から震えながら伸ばした痩せ衰えた手を仕方なしに握りしめる“ウルトラ親不孝者”への「…頼むけえ◯姦だけはせんとってくれえよ、あの世でオカンに顔向けできんけえな…」と、どちらかといえば救い難き極道息子よりも一足先に旅立った亡妻への想いが横溢する遺訓だけは辛うじて守っておよそ19年が過ぎた、現在からおよそ2年前──9月半ばの中国地方が巨大台風に直撃されて臨時休業した深夜1時過ぎ、自宅二階の四畳半で当時全国で爆発的ヒット中であった〈革新的オナホール〉を密かに人類屈指と自負する【純粋妄想】だけをオカズに堪能していたのであるが、日付をまたいで実に4度目の射精を終えて清めのシャワーを浴びるために渋々身を起こして廊下に出、豪雨に叩かれる窓が凄まじい轟音を伴って稲妻に照らされたのに驚いて視線を投げたまさにその瞬間、古硝子全面を覆い尽くす、実に20年以上を費やした長旅の果てにようやく眷恋の惑星に辿り着いた淫魔教帝の怪異なる巨影を発見して卒倒し、そのままめでたく憑依されて今日にいたるのであった──。
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