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第二章 凶祭華同盟の虜囚
Dr.蛸ノ宮、怨念の爆撃!
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放棄した前線基地から脱出するにあたり淫魔教帝があえて垂直離陸という方式を採ったのは、むろん背中に張り付いた鬱陶しい障害物=京龍丸を天井に直撃させることにあったのだが、そもそもが分厚いコンクリート屋根をブチ抜いて登場してきた彼に対して致命的なダメージを与え得ると本気で期待していたわけではなかった。
「目下最優先すべきは何よりもあの緑色に攫われた優彦を奪還することにある──そして銀色とてむざむざ余と天井にサンドイッチされたくはあるまいッ!!」
…たしかに焦茶色の怪物が鈍い響きと共に屋根に亀裂を入れ、圧倒的なパワーによって十数秒後に大きくヘシ割った瞬間、京龍丸の姿はそこにはなかった。
「ぐわははははッ、思ったとおりだ、この根性無しめがッ!
おそらく下郎ならではの防衛本能で彼我の実力の懸隔に怯え、その小賢しい脳髄を握り潰される前に逃げ出しおったかッ!!
さて、これで心おきなく我が想い人の救出に専念できるというもの…しかも緑色の行先は聖闘防霊団の地球における拠点であろうから、後顧の憂いを断つためにもこのまま乗り込んで根絶やしにしてくれるわッ!
──うむッ、見つけたぞッ!
愚か者めがッ、その程度のスピードで“銀河系最強存在”である余から逃れ得ると思うのかッ!?」
この傲岸な物言いは決してハッタリではなく、およそ500メートルは離れていたであろう両者の距離は無情にも見る間に接近してゆく…。
「──ま、まずいッ!
このままではババイヴは確実に幻護郎氏に追いついてしまう…しかも神野くんを抱えたまま戦闘状態に突入するのはあまりに危険ッ!
ドクター、私もすぐに瞬間移動で参戦しますッ!!」
実はこの申し出は三度目であり、その都度青い触手による強い制止を受けていたのであったが、既に“紅の霊体戦士”の肚は決まっていた──されど、蛸ノ宮博士はまたもやそれを押し留めたのである!
「戦士エジュミンよ、心配には及ばぬ。
実は出撃にあたり、私は精神感応によってあの両名にある戦法を授けておいた。
そして先程、予定どおり京龍丸から準備完了の報告を受けたのだッ!
こう申せば聡明な貴君ならば即座に察せられたであろうが、彼が敵の背中から去ったのはむろん怯懦のためではなくそのためであり、更に想定外の火災発生を受けてその消火活動に従事するためであるのだ…。
しかもこれも目論見どおりというべきか、ババイヴめは自身の妄執に囚われて隠形モードとなって200メートルほど下方から追跡してくる“第三の刺客”牙心坊に全く気付いておらぬようだ…!」
「おお、そうだったのですか!?
全く失礼致しました──さすがは深謀遠慮の蛸ノ宮博士、既にあなたが緻密な作戦を立案されておったというのに、部外者の私ごときが賢しらに口を挟んだことを深くお詫び致します…」
「部外者とな?いやいや、何を仰られるのか──もちろん百戦錬磨の貴君に出撃して頂ければ私も我が息子たちも千万の援軍を得た思いではあるが、ここはどうしても悪逆極まる淫魔教帝の魔手にかかって宇宙の藻屑となってしまった数十万の同胞の霊を弔うためにも、蒼頭星人を代表して痛撃を加えずにはおられぬのだッ!!」
常に温厚にして沈着冷静なる蛸ノ宮が同志(聖防霊)にはじめて見せた烈しい感情──しかもその底知れぬ智力を象徴するかのような深いブルーの体色は、ただならぬ感情の昂りを示すかのように濃紺に染め上げられているではないか!?
『ううむ…当然といえば当然だが、この肉体的変化一つとっても博士のババイヴに対する凄まじいまでの怨念が窺える…!』
そして金色のメッキを施した牙を猛悪にギラつかせ、無限に湧き出るらしい黄褐色の涎を空中に撒き散らしつつ、これも牙と同色の短剣のごとき鉤爪が生え揃った両手を目一杯伸ばして接近する淫魔教帝がおよそ250メートルまで迫った時、蛸ノ宮は絶叫した!
「よしッ、ここまで引きつければ高度も十分だッ!
この1800メートルの上空から墜落すれば、さしもの怪物とて無事では済むまいッ!
そして周辺には民家も存在せぬから彼奴が墜落しても地上への被害は皆無であるはずッ!
そうともッ、京龍丸と幻護郎のベルトから外され、彼奴めの醜悪な翼に取り付けられた【円型爆弾】──小さいからとて侮るでないぞ、その激越な破壊力はキサマの命を奪えぬまでも飛行手段は確実に破壊するはずだッ!!
──“大宇宙の恥部”たる負極界の首魁よ、キサマの暴虐の犠牲となった無辜の民草の恨みを今こそ思い知れッッ!!!」
同時に触手が赤い三角ボタンを力を込めて叩くと、鬼舞の部屋に幻護郎が駆けつけた時に京龍丸に託され、彼によってババイヴの左右の羽根に六個ずつセットされていた爆弾が一斉に起爆したのである!
「目下最優先すべきは何よりもあの緑色に攫われた優彦を奪還することにある──そして銀色とてむざむざ余と天井にサンドイッチされたくはあるまいッ!!」
…たしかに焦茶色の怪物が鈍い響きと共に屋根に亀裂を入れ、圧倒的なパワーによって十数秒後に大きくヘシ割った瞬間、京龍丸の姿はそこにはなかった。
「ぐわははははッ、思ったとおりだ、この根性無しめがッ!
おそらく下郎ならではの防衛本能で彼我の実力の懸隔に怯え、その小賢しい脳髄を握り潰される前に逃げ出しおったかッ!!
さて、これで心おきなく我が想い人の救出に専念できるというもの…しかも緑色の行先は聖闘防霊団の地球における拠点であろうから、後顧の憂いを断つためにもこのまま乗り込んで根絶やしにしてくれるわッ!
──うむッ、見つけたぞッ!
愚か者めがッ、その程度のスピードで“銀河系最強存在”である余から逃れ得ると思うのかッ!?」
この傲岸な物言いは決してハッタリではなく、およそ500メートルは離れていたであろう両者の距離は無情にも見る間に接近してゆく…。
「──ま、まずいッ!
このままではババイヴは確実に幻護郎氏に追いついてしまう…しかも神野くんを抱えたまま戦闘状態に突入するのはあまりに危険ッ!
ドクター、私もすぐに瞬間移動で参戦しますッ!!」
実はこの申し出は三度目であり、その都度青い触手による強い制止を受けていたのであったが、既に“紅の霊体戦士”の肚は決まっていた──されど、蛸ノ宮博士はまたもやそれを押し留めたのである!
「戦士エジュミンよ、心配には及ばぬ。
実は出撃にあたり、私は精神感応によってあの両名にある戦法を授けておいた。
そして先程、予定どおり京龍丸から準備完了の報告を受けたのだッ!
こう申せば聡明な貴君ならば即座に察せられたであろうが、彼が敵の背中から去ったのはむろん怯懦のためではなくそのためであり、更に想定外の火災発生を受けてその消火活動に従事するためであるのだ…。
しかもこれも目論見どおりというべきか、ババイヴめは自身の妄執に囚われて隠形モードとなって200メートルほど下方から追跡してくる“第三の刺客”牙心坊に全く気付いておらぬようだ…!」
「おお、そうだったのですか!?
全く失礼致しました──さすがは深謀遠慮の蛸ノ宮博士、既にあなたが緻密な作戦を立案されておったというのに、部外者の私ごときが賢しらに口を挟んだことを深くお詫び致します…」
「部外者とな?いやいや、何を仰られるのか──もちろん百戦錬磨の貴君に出撃して頂ければ私も我が息子たちも千万の援軍を得た思いではあるが、ここはどうしても悪逆極まる淫魔教帝の魔手にかかって宇宙の藻屑となってしまった数十万の同胞の霊を弔うためにも、蒼頭星人を代表して痛撃を加えずにはおられぬのだッ!!」
常に温厚にして沈着冷静なる蛸ノ宮が同志(聖防霊)にはじめて見せた烈しい感情──しかもその底知れぬ智力を象徴するかのような深いブルーの体色は、ただならぬ感情の昂りを示すかのように濃紺に染め上げられているではないか!?
『ううむ…当然といえば当然だが、この肉体的変化一つとっても博士のババイヴに対する凄まじいまでの怨念が窺える…!』
そして金色のメッキを施した牙を猛悪にギラつかせ、無限に湧き出るらしい黄褐色の涎を空中に撒き散らしつつ、これも牙と同色の短剣のごとき鉤爪が生え揃った両手を目一杯伸ばして接近する淫魔教帝がおよそ250メートルまで迫った時、蛸ノ宮は絶叫した!
「よしッ、ここまで引きつければ高度も十分だッ!
この1800メートルの上空から墜落すれば、さしもの怪物とて無事では済むまいッ!
そして周辺には民家も存在せぬから彼奴が墜落しても地上への被害は皆無であるはずッ!
そうともッ、京龍丸と幻護郎のベルトから外され、彼奴めの醜悪な翼に取り付けられた【円型爆弾】──小さいからとて侮るでないぞ、その激越な破壊力はキサマの命を奪えぬまでも飛行手段は確実に破壊するはずだッ!!
──“大宇宙の恥部”たる負極界の首魁よ、キサマの暴虐の犠牲となった無辜の民草の恨みを今こそ思い知れッッ!!!」
同時に触手が赤い三角ボタンを力を込めて叩くと、鬼舞の部屋に幻護郎が駆けつけた時に京龍丸に託され、彼によってババイヴの左右の羽根に六個ずつセットされていた爆弾が一斉に起爆したのである!
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