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第三章 赤き性の仮面
負極界からの使者④
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“淫魔教帝”ババイヴ=ゴドゥエヴンⅥ世は生涯最悪の恥辱に塗れていた。
かつて自身が滅亡に追いやった蒼頭星の超技術が生み出した異形の刺客の奸計にまんまとハマり、思念を統一すれば最高時速マッハ3を叩き出す自慢の双翼を無残に爆砕されて雑木林に墜落したばかりか、負極界ならば決して一指をも触れさせなかったはずの我が身を、出自も定かではない下賤の輩どもの拳足によって恣に蹂躙されていたのであるから!
「お、おのれッ、よくも下郎の分際でッ…!
し…しかしどうやら、こやつらを送り込んだのが聖闘防霊団ではないことだけはたしかなようだな…煎じ詰めれば質量ゼロの〈精神体〉にすぎぬ連中とはあまりに戦闘スタイルが違いすぎる…。
ということは余がこれまで“大宇宙の不純物”として亡ぼしてきた知的生命体に遣わされた復讐者ということになるが…それならそれで心当たりが多すぎて見当もつかん──ぎゃほぎッ!!」
爆発と同時にもたらされた激痛によって強制的に現実に引き戻されたババイヴは、とにかく〈原住民〉の目から逃れるため全身を神層結露によって透明化したのであるが、むろん自らも(地上人からは)不可視の隠形モードとなった京龍丸と牙心坊の超視覚機能から逃れることは不可能であった。
──ガシッ、バキッ、ズンッ、ドカッ!!
Dr.蛸ノ宮の精緻極まる計算通りの無人地帯に緊急胴体着陸させられ、立ち上がる間もなくまずは後頭部に銀色の稲妻のごとくプチ巨大化(181→307センチ)して急降下してきた京龍丸の右拳に一撃されて目を白黒させていた矢先に三戦士中最重量(227→465キロ)を誇る、犀を擬人化したとおぼしき外貌の牙心坊による“燃え熾る隕石弾”を彷彿とさせる〈尻餅アタック〉に腰を直撃され、早くもグロッキー状態に追い込まれてしまった後は、
“我が同胞たちの無念を乗せて、ひたすら殴って蹴りまくれッ!!”
との〈創造主〉の檄に鼓舞された二体の猛撃に、およそ5分以上も曝され続けているのである。
『──うううッ、どうしたことだッ!?
間違いなく地球来星以来最大の怒りに震え、その波動は全身の細胞の暴発を促しておるというのに手足が全く言うことを聞かんではないかッ!?
も、もしや先程の連撃が余ですらも把握しておらなんだ負極界人の急所を抉り、運動能力を奪ってのけたというのかッッ!!??』
一方、飛翔基地内では“真紅の霊体戦士”が同様の畏怖に震えていた。
そもそも聖防霊の千里眼すら欺く神層結露の隠蔽力を完全無効化する特殊スクリーンによって焦茶色の魔神のブザマな窮境を余す所なく目の当たりにしているだけでも驚異であるのに、一度として解剖したわけでもない他星生物の神経構造とその指令伝達経路の連動性を見抜いて最大限のダメージを与えるための最適個所を息子たちに攻撃させた蒼頭星人の底無しの智力に今更ながら感嘆…否、戦慄せざるを得ぬではないか…!
『…だが傲岸不遜にも“銀河系最強存在”を僭称するババイヴのこと、決してこのまま坐して死を迎えることはあるまい…脅威の回復力を示すか何かしらの飛ひ道具を使うかは定かではないが、必ずや意想外の反撃に出るはず…。
もちろん博士のことだ、それを十二分に想定してまだまだ両戦士にはおそるべき異能を授けているに違いあるまいが…!』
──されど、淫魔教帝の心身は自身ですらも愕然とせざるをえぬほどに深刻なダメージに侵されていた!
『い、一体余の躰に何が起こったというのだッ!?
既に墜落してから10分近く経過しようというのに未だマヒ状態から回復せんッ!
し、しかも命中させた相手を必ずや死に至らしめた【神灰帝屍焔弾】を吐こうにもその片鱗すら湧き上がってはこんッ…!
も、尤も狙いを定めることもままならんこの体勢で発射してもただこの邪魔っけな杉林を焼き払うだけのことだが…!
むうう…この忌まわしい下郎どもによる卑劣な先制攻撃がかくも深く余の完璧な肉体を蝕むとは…!
そ、そしてこれは認めたくない事実ではあるが、“我が生涯の想い人”たる優彦を奪われた精神的ショックも相俟って、未だかつてないほどの窮地に陥ってしまったようだ…!
──ええいッ、墜落直後からSOSを念信しておるというのにベルバスは一体何をしておるッ!?
あの大役立たずめが、あと20数える内に救援に現れぬとあれば、いかなる手段を使ってでもあのだらしなくムダに伸びきった肉棒を微塵に切り刻み、獄中食として啖わせてやるわッッ!!!』
「ふふふ、ババイヴめ、かつて味わったことのない激甚な肉体的損傷を蒙ってかなり参っておるようだな…実に大変な難行であったが、彼奴の後背映像のみを手立てとした膨大なデータ解析の甲斐あってみごと運動中枢の破壊に成功したようだ──されど相手は宇宙屈指の悪魔的生命体、いかなる反撃手段を隠しておるか分からんッ!
ならば息子たちよ、おまえたちの必殺技を炸裂させる前に、今一度例の急所に【竜巻烈殲孔】をお見舞いしてやれッッ!!」
この指令によって一旦打撃を停止した京龍丸の頭頂部から直径3センチ、長さ30センチ長の凶々しい銀色のドリルが飛び出し、そして最大直径25センチの牙心坊の真紅の角が一気に70センチまで伸びて共に凄まじい回転をはじめる!
「──よし、翔べッ!!
そして今度こそ二度と指一本動かせぬ致命的痛撃を与えてやるのだッッ!!!」
かくて頷きあった両者は地を蹴って十数メートルも大跳躍し、鮮やかに反転すると同時に凶器のみならず全身をも巨大ドリルと化すべく高速回転を開始するが、まさにその刹那、神速で真横から飛来した漆黒の影が逆さになった京龍丸の頭部を直撃したのた!
そして吹っ飛ばされた銀色の躰は直ちに傍らの真紅の巨体に激突してあえなくバランスを失った“蛸ノ宮の息子たち”であったが、その超絶的身体能力(性能?)をいかんなく発揮して空中に踏み留まり、拳を固めて卑劣な奇襲を仕掛けてきた相手に向き合う。
「ほう…さすがは蒼頭星の超技術の結晶というべきか、一筋縄ではいかんようだな…!
だが手ひどい痛手を負われたババイヴ様を一刻も早く【宝麗仙宮】にお運びせねばならぬ手前、君たちと遊んであげられる時間はせいぜい7~8分といったところかな?
──それではかかってきたまえ、負極界にしてみれば不条理な逆恨みでしかない復讐の戦鬼たちよ…!」
それなりのパワーを込めた挨拶代わりの飛び蹴りに何らたじろがぬ京龍丸&牙心坊に半ば感嘆しつつ、ついに地球における初陣を迎えた“アクメピア星前統制官にして最強戦士”レイガルは立てた右人差し指をチョチョイと動かして宣戦布告した!
かつて自身が滅亡に追いやった蒼頭星の超技術が生み出した異形の刺客の奸計にまんまとハマり、思念を統一すれば最高時速マッハ3を叩き出す自慢の双翼を無残に爆砕されて雑木林に墜落したばかりか、負極界ならば決して一指をも触れさせなかったはずの我が身を、出自も定かではない下賤の輩どもの拳足によって恣に蹂躙されていたのであるから!
「お、おのれッ、よくも下郎の分際でッ…!
し…しかしどうやら、こやつらを送り込んだのが聖闘防霊団ではないことだけはたしかなようだな…煎じ詰めれば質量ゼロの〈精神体〉にすぎぬ連中とはあまりに戦闘スタイルが違いすぎる…。
ということは余がこれまで“大宇宙の不純物”として亡ぼしてきた知的生命体に遣わされた復讐者ということになるが…それならそれで心当たりが多すぎて見当もつかん──ぎゃほぎッ!!」
爆発と同時にもたらされた激痛によって強制的に現実に引き戻されたババイヴは、とにかく〈原住民〉の目から逃れるため全身を神層結露によって透明化したのであるが、むろん自らも(地上人からは)不可視の隠形モードとなった京龍丸と牙心坊の超視覚機能から逃れることは不可能であった。
──ガシッ、バキッ、ズンッ、ドカッ!!
Dr.蛸ノ宮の精緻極まる計算通りの無人地帯に緊急胴体着陸させられ、立ち上がる間もなくまずは後頭部に銀色の稲妻のごとくプチ巨大化(181→307センチ)して急降下してきた京龍丸の右拳に一撃されて目を白黒させていた矢先に三戦士中最重量(227→465キロ)を誇る、犀を擬人化したとおぼしき外貌の牙心坊による“燃え熾る隕石弾”を彷彿とさせる〈尻餅アタック〉に腰を直撃され、早くもグロッキー状態に追い込まれてしまった後は、
“我が同胞たちの無念を乗せて、ひたすら殴って蹴りまくれッ!!”
との〈創造主〉の檄に鼓舞された二体の猛撃に、およそ5分以上も曝され続けているのである。
『──うううッ、どうしたことだッ!?
間違いなく地球来星以来最大の怒りに震え、その波動は全身の細胞の暴発を促しておるというのに手足が全く言うことを聞かんではないかッ!?
も、もしや先程の連撃が余ですらも把握しておらなんだ負極界人の急所を抉り、運動能力を奪ってのけたというのかッッ!!??』
一方、飛翔基地内では“真紅の霊体戦士”が同様の畏怖に震えていた。
そもそも聖防霊の千里眼すら欺く神層結露の隠蔽力を完全無効化する特殊スクリーンによって焦茶色の魔神のブザマな窮境を余す所なく目の当たりにしているだけでも驚異であるのに、一度として解剖したわけでもない他星生物の神経構造とその指令伝達経路の連動性を見抜いて最大限のダメージを与えるための最適個所を息子たちに攻撃させた蒼頭星人の底無しの智力に今更ながら感嘆…否、戦慄せざるを得ぬではないか…!
『…だが傲岸不遜にも“銀河系最強存在”を僭称するババイヴのこと、決してこのまま坐して死を迎えることはあるまい…脅威の回復力を示すか何かしらの飛ひ道具を使うかは定かではないが、必ずや意想外の反撃に出るはず…。
もちろん博士のことだ、それを十二分に想定してまだまだ両戦士にはおそるべき異能を授けているに違いあるまいが…!』
──されど、淫魔教帝の心身は自身ですらも愕然とせざるをえぬほどに深刻なダメージに侵されていた!
『い、一体余の躰に何が起こったというのだッ!?
既に墜落してから10分近く経過しようというのに未だマヒ状態から回復せんッ!
し、しかも命中させた相手を必ずや死に至らしめた【神灰帝屍焔弾】を吐こうにもその片鱗すら湧き上がってはこんッ…!
も、尤も狙いを定めることもままならんこの体勢で発射してもただこの邪魔っけな杉林を焼き払うだけのことだが…!
むうう…この忌まわしい下郎どもによる卑劣な先制攻撃がかくも深く余の完璧な肉体を蝕むとは…!
そ、そしてこれは認めたくない事実ではあるが、“我が生涯の想い人”たる優彦を奪われた精神的ショックも相俟って、未だかつてないほどの窮地に陥ってしまったようだ…!
──ええいッ、墜落直後からSOSを念信しておるというのにベルバスは一体何をしておるッ!?
あの大役立たずめが、あと20数える内に救援に現れぬとあれば、いかなる手段を使ってでもあのだらしなくムダに伸びきった肉棒を微塵に切り刻み、獄中食として啖わせてやるわッッ!!!』
「ふふふ、ババイヴめ、かつて味わったことのない激甚な肉体的損傷を蒙ってかなり参っておるようだな…実に大変な難行であったが、彼奴の後背映像のみを手立てとした膨大なデータ解析の甲斐あってみごと運動中枢の破壊に成功したようだ──されど相手は宇宙屈指の悪魔的生命体、いかなる反撃手段を隠しておるか分からんッ!
ならば息子たちよ、おまえたちの必殺技を炸裂させる前に、今一度例の急所に【竜巻烈殲孔】をお見舞いしてやれッッ!!」
この指令によって一旦打撃を停止した京龍丸の頭頂部から直径3センチ、長さ30センチ長の凶々しい銀色のドリルが飛び出し、そして最大直径25センチの牙心坊の真紅の角が一気に70センチまで伸びて共に凄まじい回転をはじめる!
「──よし、翔べッ!!
そして今度こそ二度と指一本動かせぬ致命的痛撃を与えてやるのだッッ!!!」
かくて頷きあった両者は地を蹴って十数メートルも大跳躍し、鮮やかに反転すると同時に凶器のみならず全身をも巨大ドリルと化すべく高速回転を開始するが、まさにその刹那、神速で真横から飛来した漆黒の影が逆さになった京龍丸の頭部を直撃したのた!
そして吹っ飛ばされた銀色の躰は直ちに傍らの真紅の巨体に激突してあえなくバランスを失った“蛸ノ宮の息子たち”であったが、その超絶的身体能力(性能?)をいかんなく発揮して空中に踏み留まり、拳を固めて卑劣な奇襲を仕掛けてきた相手に向き合う。
「ほう…さすがは蒼頭星の超技術の結晶というべきか、一筋縄ではいかんようだな…!
だが手ひどい痛手を負われたババイヴ様を一刻も早く【宝麗仙宮】にお運びせねばならぬ手前、君たちと遊んであげられる時間はせいぜい7~8分といったところかな?
──それではかかってきたまえ、負極界にしてみれば不条理な逆恨みでしかない復讐の戦鬼たちよ…!」
それなりのパワーを込めた挨拶代わりの飛び蹴りに何らたじろがぬ京龍丸&牙心坊に半ば感嘆しつつ、ついに地球における初陣を迎えた“アクメピア星前統制官にして最強戦士”レイガルは立てた右人差し指をチョチョイと動かして宣戦布告した!
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