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第六章 総力戦の火蓋!
怪物・太鬼真護⑦
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一瞬にして臨戦態勢を整えた太鬼真護の金色の凶眼に見据えられながら、舘森隼矢は興奮のあまり失念していた松神理事長の言葉を今更ながら想起していた。
『所詮は地獄耳でかき集めた真偽不明の伝聞をもっともらしい話術でこれ見よがしに披露するだけの情報屋、と甘く見ていたがどうやらそれだけじゃなさそうだな…。
だがコイツがオレの見立て通りの実力者かどうかハッキリするのはこれからだッ!!』
標的に両掌を向けた隼矢は、発射出力の高低によって単なる麻痺から必殺技まで幅広い運用が可能な風神甲衣の主力戦法【衝流旋波】をMAXの《レベルJ》から二段階下の《H》で放つ!
高◯県のМ岬まで足を伸ばした夜間初飛行訓練の往路にて、ほとんどエンドレスで流された蛸ノ宮直々の〈性能講義〉によると、50メートルの至近距離からこの出力をおよそ5秒間継続すれば分子結合が完全破壊されて厚さ30センチの鋼板に〈発射口〉である掌サイズの空洞を穿つことは確実であるという──。
そして段階が最強の《J》に設定された時、その分解力はついに素粒子レベルに達するということだが、それを使用すれば風神甲衣を稼働する【量子力エネルギー】が【パワーストレージ】にフルの状態であっても、一気に4分の1まで激減してしまうというのだ!
“…従ってレベルJの衝流旋波を撃てるのは、わがサンダーベースが背後に控えている時のみということになるな…”
✦
「やっ、やったぞッ!」
──凄まじい破壊力を秘めた必殺技であるにも関わらずそれがあまりに迅く、そして無色透明であるためか一切の回避行動を取ることなく、モロに被弾してしまった鋼の黒鬼が胸部装甲板から閃光を発しながら大きくのけ反るのを目撃して思わず勝利の雄叫びを上げた隼矢であったが…。
「よしッ、この一撃で一気にキメるぞッ!
何しろ今日はこの一戦だけに専念すればいいのだから、エネルギー消費を気にする必要もないしなッ!!
──何ッ!?」
どうしたものか、一方的に猛射されているはずの衝流旋波が押し戻されている感触があるのだ!
気が付けば相手も同じく右掌をこちらに向けているが…まさか、太鬼が衝流旋波を?──そんなバカなッ!!
『だ、だが事実としてアイツから放たれた何かによってオレの攻撃が阻まれ、そしてジリジリと後退っているのは間違いないッ…!?
ということは、少なくともレベルHに固定したままではいずれ均衡は破れ、最悪の場合新品の甲衣に屈辱的な亀裂を生じさせてしまうかもしれないのだッ!』
密かに自負する“聖闘防霊団最強戦士”のプライドにかけても、それだけは避けねばならなかった。
「かくなる上は《レベルI》──それでもダメなら迷うことなく《J》だッッ!!」
かくてより強力な指令念波を発射するため一旦無念無想となった舘森隼矢であったが、実はこの行為は創造者から厳に戒められていた禁忌であったのだ。
“戦闘中…そしてそれが苛烈な死闘であるほど、一瞬の停滞が敗北に直結する──むろん防霊団に選ばれるほど傑出した資質を有する君たちのことだ、それしきの条理を理解しておらぬはずもないが、私が最も懸念しているのは、慣れぬ甲衣を操作する際に指令念波が寸断されることなのだ。
尤もこれは地球人の心理原則上やむを得ぬことなのだが、スピードやパワーのギアを上げようと決した刹那、意識に僅かナノ秒レベルとはいえ空白を生じさせてしまいがちだ。
もちろん経験を積むことで解消に向かうはずだが、当面はこのクセに留意して改善に努めてもらいたい。
ここで重ねて強調しておくが、私の会心作である雷神&風神甲衣の運用に一切の精神的緊張は不要なのだ…”
──だが、遅かった。
衝流旋波の強度を一段階上げるために生じた一刹那の遅滞、敵はそれを逃すことなく、まさに瞬間移動に等しい神速で隼矢の眼前に出現したのだ!
『所詮は地獄耳でかき集めた真偽不明の伝聞をもっともらしい話術でこれ見よがしに披露するだけの情報屋、と甘く見ていたがどうやらそれだけじゃなさそうだな…。
だがコイツがオレの見立て通りの実力者かどうかハッキリするのはこれからだッ!!』
標的に両掌を向けた隼矢は、発射出力の高低によって単なる麻痺から必殺技まで幅広い運用が可能な風神甲衣の主力戦法【衝流旋波】をMAXの《レベルJ》から二段階下の《H》で放つ!
高◯県のМ岬まで足を伸ばした夜間初飛行訓練の往路にて、ほとんどエンドレスで流された蛸ノ宮直々の〈性能講義〉によると、50メートルの至近距離からこの出力をおよそ5秒間継続すれば分子結合が完全破壊されて厚さ30センチの鋼板に〈発射口〉である掌サイズの空洞を穿つことは確実であるという──。
そして段階が最強の《J》に設定された時、その分解力はついに素粒子レベルに達するということだが、それを使用すれば風神甲衣を稼働する【量子力エネルギー】が【パワーストレージ】にフルの状態であっても、一気に4分の1まで激減してしまうというのだ!
“…従ってレベルJの衝流旋波を撃てるのは、わがサンダーベースが背後に控えている時のみということになるな…”
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「やっ、やったぞッ!」
──凄まじい破壊力を秘めた必殺技であるにも関わらずそれがあまりに迅く、そして無色透明であるためか一切の回避行動を取ることなく、モロに被弾してしまった鋼の黒鬼が胸部装甲板から閃光を発しながら大きくのけ反るのを目撃して思わず勝利の雄叫びを上げた隼矢であったが…。
「よしッ、この一撃で一気にキメるぞッ!
何しろ今日はこの一戦だけに専念すればいいのだから、エネルギー消費を気にする必要もないしなッ!!
──何ッ!?」
どうしたものか、一方的に猛射されているはずの衝流旋波が押し戻されている感触があるのだ!
気が付けば相手も同じく右掌をこちらに向けているが…まさか、太鬼が衝流旋波を?──そんなバカなッ!!
『だ、だが事実としてアイツから放たれた何かによってオレの攻撃が阻まれ、そしてジリジリと後退っているのは間違いないッ…!?
ということは、少なくともレベルHに固定したままではいずれ均衡は破れ、最悪の場合新品の甲衣に屈辱的な亀裂を生じさせてしまうかもしれないのだッ!』
密かに自負する“聖闘防霊団最強戦士”のプライドにかけても、それだけは避けねばならなかった。
「かくなる上は《レベルI》──それでもダメなら迷うことなく《J》だッッ!!」
かくてより強力な指令念波を発射するため一旦無念無想となった舘森隼矢であったが、実はこの行為は創造者から厳に戒められていた禁忌であったのだ。
“戦闘中…そしてそれが苛烈な死闘であるほど、一瞬の停滞が敗北に直結する──むろん防霊団に選ばれるほど傑出した資質を有する君たちのことだ、それしきの条理を理解しておらぬはずもないが、私が最も懸念しているのは、慣れぬ甲衣を操作する際に指令念波が寸断されることなのだ。
尤もこれは地球人の心理原則上やむを得ぬことなのだが、スピードやパワーのギアを上げようと決した刹那、意識に僅かナノ秒レベルとはいえ空白を生じさせてしまいがちだ。
もちろん経験を積むことで解消に向かうはずだが、当面はこのクセに留意して改善に努めてもらいたい。
ここで重ねて強調しておくが、私の会心作である雷神&風神甲衣の運用に一切の精神的緊張は不要なのだ…”
──だが、遅かった。
衝流旋波の強度を一段階上げるために生じた一刹那の遅滞、敵はそれを逃すことなく、まさに瞬間移動に等しい神速で隼矢の眼前に出現したのだ!
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