THUNDER⚡️ANGELS

幾橋テツミ

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第七章 迫り来る凶影

三人の超戦士〈中編〉

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 候補者の自宅から近い市内有数のT公園に車を止め、の午前10時半までの間まではまだ1時間以上もあることから、とりあえず時間潰しに散歩することにした。

 もはや互いのトレードマークとなった白Tシャツにジーンズ、黒い丸襟のコットンシャツに同色のスラックスといった出で立ちの両者が肩寄せあって歩を進める姿は詠斗のマッチョボディも相俟ってある意味異様であったが、共にタイプは違えど甲乙つけ難い美丈夫とあって、行き交う高齢者が多数を占める来園者たちはチラリと横目で窺いながら“”と妙に納得した表情で通り過ぎて行く…。

「…せっかく緑豊かな自然の懐に抱かれてるってのに何か居心地悪ィいな…。

 もちろん星王様の〈選考基準〉にイチャモンをつける気はないが、毎日こんな不摂生な生活送ってて、果たしてD‐EYESのハードな任務が務まるのかね…?」

 を目にして以来継続している陰鬱な気分を振り払うようにエルドか陽光に目を細めつつ空を見上げるが、あえて一歩退いて続く怜我はすれ違う散歩者たちににこやかに目礼しながら「はあ、そうですねえ…」と捉えどころのない声音で応じる。

「…相変わらず愛想がいいな。

 まぁ、そういう雑多なコミュニケーションをマメにこなせるところが買われて誰もがイヤがる淫獣人どものお守りを任されてるんだろうが…。

 しかしチームのお荷物であるアイツらもそろそろお役御免のようで、因堂そっちしてるんしゃないのかい?」

 この口ぶりには若干の皮肉と同情と、“大教帝ババイヴの負の遺産”凶祭華同盟への隠しようのない嫌悪が含まれていたが、〈世話係〉は何ら気にする風もなかった。

「ははは、相変わらず連中に大しては辛辣ですね…。

 まぁ、星王様と大教帝によるでは彼らにも何らかの役割が与えられる予定で、〈作戦参謀〉を仰せつかった私も密かに張り切っていたものですが、結局はD‐EYES諸君の【特装戦甲】デビュー戦の相手という、実験動物モルモット同然の扱いにまでスケールダウンしてしまうとは…。

 あくまで個人的な意見ですが、何とも勿体ない使い方ですねえ…」

 珍しく相手の心中を慮ったのか、詠斗も小さく頷く。

「──たしかにそうだ。

 このまま何の装備も無しにの前に立たせるのは些か不憫な気がせんでもない…。

 D‐EYESアイツらのことだ、哀れな淫獣人れんちゅうが原型を留めないほどグッチャグチャに粉砕しちまうだろうからな…。

 ──話は式澤洋彦に戻るが、先行する三人は星渕特抜生というアドバンテージがあるからすんなり当確となったものの、四人目の高野義泰は未だ球型戦艦内のトレセンを卒業できず、ヘタしたらということも考えられる…おッ、それで思い出したが、例の“スキャルピングの鬼姫”の変身メタモルフォーゼはどうなったんだい?」

 この一件には触れてもらいたくなかったらしい因堂怜我は表情を曇らせながら苦笑し、

「…まあ、第1段階は無事クリアしました。

 星王様も急いではいないと仰られていますから、三池先生の躰に負担のないペースでじっくり進めて行きますよ…」

 頷いた詠斗もこれ以上この話題には触れず、今回の遠征の目的である式澤洋彦へと立ち戻る。

「…傭兵志願者の高野とは対照的に、式澤の夢はらしいが…。

 オレもチラッと見たけど、〈ゲーム実況〉ってのはワケ分からん世界だな…」

「──あっ、見ましたか?

 たしかにわれわれ負極界人の感覚では何が面白いのか理解に苦しみますよね…。

 しかも彼の場合、他の人気配信者みたいに当意即妙のトークができるわけでもないし…それならプレイが凄いのかといえば下手ではないんでしょうが素人目にも〈超絶級〉かといえばそこまでとも思えんし…。

 夢は夢として、このレッドオーシャンで生き抜いていくのはどうやらキビしいようですし、生活環境は寒風吹きすさぶ荒野のような父子家庭…しかも親父は外に別の家庭をこさえて僅かな生活費だけ渡して滅多に帰って来ないというありさま…。

 高校も中退してしまい、兄弟姉妹も無いわけですからわれわれの許に身を寄せるというのも本人的にはアリなんでしょうけど、星王様は彼のどこをそこまで評価しているのか…?」

 首をひねるレイガルをチラリと振り返りながら、ラゼム=エルドが苦笑混じりに言葉を被せる。

「…どうやら主力勢とは違って“パイロット一本”で使う腹積もりのようだ。

 実際問題として、〈白兵戦〉を免除されるってんならジャンクフードを主食とする昼夜逆転生活者の基礎体力でも訓練についていけると判断されたんだろうよ…。

 ま、最大の理由は今そっちが言った通り候補者がってことなんだろうが、な…」

  ここでエルドの脳裡に一瞬息子ファラトのあどけない貌が浮かんだが、“いくら何でも式澤コイツの親父よりはマシだろう”と自らを慰める…。

 されど振り返ろうとした刹那、彼は背後に異様な気配を察した。

 素早くレイガルの表情を窺うと、彼も緊張した表情で前方を凝視している。

 かくて素早く踵を返した網崎詠斗ことラゼム=エルドは5メートルほど先に、黒いジャージに身を包んだ長身の…息を呑むほど美しい少年が微笑を浮かべて立っているのを見た。

『…コイツは式澤じゃない。

 そもそも全然似てないし(ハッキリ言ってだ)、アイツはまだ家で寝てるはずだ…。

 全く、この惑星に来てこれほどの美少年ははじめて見たぞ…。

 チームにもここまでの容貌の者はおらん…!

 たがこの目つき…

 尤も、われわれに対して敵意を抱いている様子は無さそうだが…。

 一体、コイツは何者なのだ…!?』

  あたかもそれにタイミングを合わせるように、美少年は朗らかに名乗った。

「──はじめまして。

 自分は星渕学園特抜学級〈格技部〉の太鬼真護という者です…!」

 

 

 

 




 
 



 

 




 


 
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