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第一章 地上から来た教軍超兵
ボクは異世界遭難者⑤
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『……コイツの話がホントだとしたら、教聖はその操獣師をどうするつもりなんだろう?
もちろん、こんなバケモンが狙ってるような下劣なことはなさらんだろうが……。
だがこのミイラ野郎に直接捕獲させず、ただ搬送係を命じられただけってことは、結局のところコイツのとんでもなく高え自己評価とは裏腹に、戦闘要員としては全くアテにされてねえってことじゃね?』
……十数秒間の無意味な沈黙が流れ、再び口を開いた煬赫が妙なことを訊ねてきた。
「なあおい……オマエ、戸倉一志って名前、聞いたことがあるか……?」
「──戸倉?
いいえ、知り合いにそんな人はいませんけど……?」
一瞬の間を置いた後、カラフルミイラは面妖にもどこかホッとした口ぶりでこう返す。
「バカ野郎ッ、一般庶民に過ぎねえテメエの知り合いなんかじゃねえよ。
TVやネットでこの不幸な若者について見聞きしたことはねえかって訊いてんのッ!
一度もねえってんなら、若えくせにオメエかなりの情弱だなッ!」
不可解にも最後は半ギレする怪人に半端ない嫌悪を覚えつつも、亘の脳裡に薄っすらとした記憶が浮かび上がってきた。
「そういえば……何かニュースで耳にしたような気が……あれは何だったかな?
ああそうだ、思い出したッ!
たしかソイツ、何年か前にバイト先で何人か刺し殺してから放火して、そのまま逃げて指名手配されたんじゃなかったでしたっけ?
そういや未だに捕まったって話聞かないけど、おそらくどっかでもう自殺してんじゃないかってことになってたような……。
ええ、TVで大々的にやってたからハッキリ覚えてますよ……それが何か?」
「バカッ!もういいッ!!
ただ訊いてみただけだッ、オマエが社会情勢にも関心のあるマトモな頭の持ち主かどうかをたしかめるためになッ!!」
「?……ただの凶悪な人殺しが社会情勢と何か関係あるんですか?」
「ぐッ……あ、あたりめえだろうがッ!
この戸倉って好青年をこれだけの凶行に駆り立てたってことは、テメエが昨日まで住んでた地上世界にゃとんでもねえ欠陥が潜んでる何よりの証拠だろうがよッ!
ま、オメエみてえにヌボーッと生きてるだけの〈羊〉は一生こんな高尚な哲学的命題に悩まされることもねえんだろうがなッ!!」
「あの凶悪犯が好青年って……??
ひょっとしたら煬赫様は戸倉と知り合いなんですか?」
相手の激昂を封じるため、虫唾の走る思いで敬称で呼びかけたのが功を奏したか、怪人は少し正気に戻った様子で「そ、そんなワケねえだろうッ!」と否定する。
「アホがッ!これはただの一例として出しただけだッ!!
ちょっと昔の事件を選んだのもオマエの記憶力を試す意味もあったからで、更に今の反応からキサマが憶測…いや邪推だけで物事を決めつけるお粗末な思考回路の持ち主であることもよ~く分かった──後でしっかりと教聖に報告しておいてやるからそのつもりでなッ!
さて、ここで改めてオレ様に対する口の利き方について指導しておいてやるが、さっきテメエが口にした煬赫様がまず以て基本としても、これからは執教士長様と改めてもらいてえのよ。
というのもこのティリールカ愛華領を制圧した後、この煬赫様は偉大なる教聖の代理人としてこの地を直接管理運営することが決定してるんでな……!」
──こんなマヌケ野郎にそんな大役が務まるのかよと腹の底で嘲笑しつつも、我が身の安泰のためにはひたすら猫を被り続けねばならぬ。
しかし自分でも重々承知しつつも詮索好きな血が騒ぐのをどうしても抑えきれず、遭難少年は聞かずもがなの質問をぶつけてしまうのであった。
「……はあ、それはおめでとうございます。
ですがそうなると、現在大刃獣に乗り込んで直接交戦中であられるしっきょうしちょう様の〈お師匠〉はどんな褒賞にあずかられるのでしょうか……?」
これは相手の虫の居所によってはガチで命に関わるとびきりセンシティブなクエスチョンであったが、意外にも煬赫は気色の悪い含み笑いをしながら愉快そうにこう答えた。
「ぬふふふッ……小僧め、アホのくせに利いたふうな口をききおって……。
まあいい機会だから教えといてやるがな、そもそも我が軍の刃獣は敵の絆獣のように操者の搭乗を必要とするようなチンケなシロモノではない。
強いて刃獣たちをコントロールする存在があるとすればそれは偉大なる教聖ご自身であり、その意を〈以心伝心〉で汲んだ彼らはいわば巨大なる教軍超兵として自律的に行動──即ち戦場の状況に合わせて臨機応変に対応し、即座に最適解となる戦法を採用して最大限の戦果を挙げることが可能なのだッ!
次に我が師匠・樊尨について言及するなら、あの方の使命はいわば神牙教軍の三軍(陸海空)における陸軍の最高責任者=【地極将】であり、常に教聖の傍らにあってご意思を全土に散らばった執教士長たちに伝達する重責を担われておる──従ってその身は常に果原の最奥部に聳えしダロバスラ山に佇立する総司令部=極天霊柱内部にあるということだッ!
ならば上司である氏を何故オレ様が師匠と呼ぶか?
クククッ……それはだな、教軍超兵として再生したこの戸倉一志に殺光術をはじめとする超戦闘法を1から叩き込んでくれたのが他でもない地極将だからよッッ!!!」
もちろん、こんなバケモンが狙ってるような下劣なことはなさらんだろうが……。
だがこのミイラ野郎に直接捕獲させず、ただ搬送係を命じられただけってことは、結局のところコイツのとんでもなく高え自己評価とは裏腹に、戦闘要員としては全くアテにされてねえってことじゃね?』
……十数秒間の無意味な沈黙が流れ、再び口を開いた煬赫が妙なことを訊ねてきた。
「なあおい……オマエ、戸倉一志って名前、聞いたことがあるか……?」
「──戸倉?
いいえ、知り合いにそんな人はいませんけど……?」
一瞬の間を置いた後、カラフルミイラは面妖にもどこかホッとした口ぶりでこう返す。
「バカ野郎ッ、一般庶民に過ぎねえテメエの知り合いなんかじゃねえよ。
TVやネットでこの不幸な若者について見聞きしたことはねえかって訊いてんのッ!
一度もねえってんなら、若えくせにオメエかなりの情弱だなッ!」
不可解にも最後は半ギレする怪人に半端ない嫌悪を覚えつつも、亘の脳裡に薄っすらとした記憶が浮かび上がってきた。
「そういえば……何かニュースで耳にしたような気が……あれは何だったかな?
ああそうだ、思い出したッ!
たしかソイツ、何年か前にバイト先で何人か刺し殺してから放火して、そのまま逃げて指名手配されたんじゃなかったでしたっけ?
そういや未だに捕まったって話聞かないけど、おそらくどっかでもう自殺してんじゃないかってことになってたような……。
ええ、TVで大々的にやってたからハッキリ覚えてますよ……それが何か?」
「バカッ!もういいッ!!
ただ訊いてみただけだッ、オマエが社会情勢にも関心のあるマトモな頭の持ち主かどうかをたしかめるためになッ!!」
「?……ただの凶悪な人殺しが社会情勢と何か関係あるんですか?」
「ぐッ……あ、あたりめえだろうがッ!
この戸倉って好青年をこれだけの凶行に駆り立てたってことは、テメエが昨日まで住んでた地上世界にゃとんでもねえ欠陥が潜んでる何よりの証拠だろうがよッ!
ま、オメエみてえにヌボーッと生きてるだけの〈羊〉は一生こんな高尚な哲学的命題に悩まされることもねえんだろうがなッ!!」
「あの凶悪犯が好青年って……??
ひょっとしたら煬赫様は戸倉と知り合いなんですか?」
相手の激昂を封じるため、虫唾の走る思いで敬称で呼びかけたのが功を奏したか、怪人は少し正気に戻った様子で「そ、そんなワケねえだろうッ!」と否定する。
「アホがッ!これはただの一例として出しただけだッ!!
ちょっと昔の事件を選んだのもオマエの記憶力を試す意味もあったからで、更に今の反応からキサマが憶測…いや邪推だけで物事を決めつけるお粗末な思考回路の持ち主であることもよ~く分かった──後でしっかりと教聖に報告しておいてやるからそのつもりでなッ!
さて、ここで改めてオレ様に対する口の利き方について指導しておいてやるが、さっきテメエが口にした煬赫様がまず以て基本としても、これからは執教士長様と改めてもらいてえのよ。
というのもこのティリールカ愛華領を制圧した後、この煬赫様は偉大なる教聖の代理人としてこの地を直接管理運営することが決定してるんでな……!」
──こんなマヌケ野郎にそんな大役が務まるのかよと腹の底で嘲笑しつつも、我が身の安泰のためにはひたすら猫を被り続けねばならぬ。
しかし自分でも重々承知しつつも詮索好きな血が騒ぐのをどうしても抑えきれず、遭難少年は聞かずもがなの質問をぶつけてしまうのであった。
「……はあ、それはおめでとうございます。
ですがそうなると、現在大刃獣に乗り込んで直接交戦中であられるしっきょうしちょう様の〈お師匠〉はどんな褒賞にあずかられるのでしょうか……?」
これは相手の虫の居所によってはガチで命に関わるとびきりセンシティブなクエスチョンであったが、意外にも煬赫は気色の悪い含み笑いをしながら愉快そうにこう答えた。
「ぬふふふッ……小僧め、アホのくせに利いたふうな口をききおって……。
まあいい機会だから教えといてやるがな、そもそも我が軍の刃獣は敵の絆獣のように操者の搭乗を必要とするようなチンケなシロモノではない。
強いて刃獣たちをコントロールする存在があるとすればそれは偉大なる教聖ご自身であり、その意を〈以心伝心〉で汲んだ彼らはいわば巨大なる教軍超兵として自律的に行動──即ち戦場の状況に合わせて臨機応変に対応し、即座に最適解となる戦法を採用して最大限の戦果を挙げることが可能なのだッ!
次に我が師匠・樊尨について言及するなら、あの方の使命はいわば神牙教軍の三軍(陸海空)における陸軍の最高責任者=【地極将】であり、常に教聖の傍らにあってご意思を全土に散らばった執教士長たちに伝達する重責を担われておる──従ってその身は常に果原の最奥部に聳えしダロバスラ山に佇立する総司令部=極天霊柱内部にあるということだッ!
ならば上司である氏を何故オレ様が師匠と呼ぶか?
クククッ……それはだな、教軍超兵として再生したこの戸倉一志に殺光術をはじめとする超戦闘法を1から叩き込んでくれたのが他でもない地極将だからよッッ!!!」
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