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5.暴かれる感情と、番の証明
律の体内に宿る“感応系魔力”――
それは、竜王ゼルの魔力に共鳴するように、日ごとにその精度と影響力を増していた。
他者の感情を“読む”だけでなく、
時には感情そのものに引きずられ、意識を攫われることすらある。
(嬉しさや悲しさが、波のように……僕の中に流れ込んでくる)
律は、日中の任務のなかで幾度もそう感じるようになっていた。
そしてついに、その“感応”が暴走を起こす。
◆
魔導学術院の地下区画。
魔力流通装置を検査していた律は、ふと胸の奥が軋むような痛みに襲われた。
「これは……この部屋の、魔力?」
「律殿、離れて。空気が異常に濁っています」
カイの声が飛ぶが、遅かった。
律の意識は、魔力の流れに飲み込まれ、ひときわ強い“負の想念”を拾ってしまう。
「……こんなものに、命を吸い上げられて……竜王に使われるために、生きてるんじゃない……!」
それは、魔導学術院に潜伏する“反竜派”のひとりが、制御装置に残した呪詛。
律は、その想念と“感情的に同調”してしまったのだ。
「僕だって、使い捨てられてた……社畜で、価値なんかなくて……!
だから、あの人に選ばれたって、信じられない――っ!」
律の目から涙があふれ、膝が崩れる。
強まる負の波動。空間が揺らぎ、魔力の流れが逆流する。
「だめだ……このままじゃ、暴走する……!」
カイが結界を張ろうとするが、その一歩手前で――
「……律」
重厚な扉を打ち破って、ゼルが現れた。
「律、お前は……我を信じられないのか?」
その声に、律の身体がわずかに震える。
「……信じたい……でも、怖いんだ。
あなたの“番”って言われても……僕なんか、本当にふさわしいのか、って……」
ゼルはゆっくりと、暴走する魔力の渦の中に踏み込む。
そして――
「ならば、信じるまで抱きしめる」
ずぶ濡れの魔力の中、ゼルは律を強く抱きしめた。
その腕の中で、律の感応魔力が静かに収束していく。
「お前は……自分を捨ててでも、人を想える。
その優しさが、痛みが、我にとっての“救い”なんだ。
他の誰でもない――律、お前だから、我は“番”として選んだ」
(ほんとうに、選ばれたんだ……ちゃんと、僕が)
ゼルの言葉が、魔力よりも強く、律の核に染み渡る。
ゆっくりと、感情の波が凪いでいく。
魔力が沈静化し、空間の乱れが止まった。
――静寂。
律は、ゼルの胸に顔を埋めながら、絞るように囁いた。
「……ごめん。怖かった。でも……やっぱり、あなたの隣にいたい。
今度こそ、ちゃんと“番”として……愛されたい」
「……番として、愛する。何度でも誓う。
だがそれ以上に――“律”という名の男を、我は愛している」
その夜、律はゼルの部屋で、ゆっくりと抱かれた。
快楽ではなく、愛の温度で。
「ん……ゼルさん……あ、そこ……っ、好き……」
「可愛い声を出す。……“番”としてではなく、“恋人”として、もっと甘やかしてやろう」
「んっ、あ……だめ、そんな奥……!」
快感の奥にある、幸福の震え。
ふたりの絆は、“魔力”ではなく“想い”で結び直された。
◆
翌日、王城。
「竜王陛下とその番、瀬名律殿の絆は――揺るぎなし。
今後、我々は“ふたりの在り方”を尊重することとする」
王宮の正式な布告が発表された。
カイ・ルグランはそれを聞きながら、小さく微笑んだ。
「ようやく、“番”の意味が定まったか……。
あの方は、確かに――陛下に必要な“光”だ」
---
🐉次章予告:第六章「光の中の影、再び交差する運命」
ゼルとの絆が深まり、王宮内での信頼を得た律。
だがその直後、“律の前世”に関わる謎が浮上する。
律が竜王の番となった本当の理由。そして、竜王と律が“出会うべきだった運命”の真実が、ゆっくりと明かされていく――
それは、竜王ゼルの魔力に共鳴するように、日ごとにその精度と影響力を増していた。
他者の感情を“読む”だけでなく、
時には感情そのものに引きずられ、意識を攫われることすらある。
(嬉しさや悲しさが、波のように……僕の中に流れ込んでくる)
律は、日中の任務のなかで幾度もそう感じるようになっていた。
そしてついに、その“感応”が暴走を起こす。
◆
魔導学術院の地下区画。
魔力流通装置を検査していた律は、ふと胸の奥が軋むような痛みに襲われた。
「これは……この部屋の、魔力?」
「律殿、離れて。空気が異常に濁っています」
カイの声が飛ぶが、遅かった。
律の意識は、魔力の流れに飲み込まれ、ひときわ強い“負の想念”を拾ってしまう。
「……こんなものに、命を吸い上げられて……竜王に使われるために、生きてるんじゃない……!」
それは、魔導学術院に潜伏する“反竜派”のひとりが、制御装置に残した呪詛。
律は、その想念と“感情的に同調”してしまったのだ。
「僕だって、使い捨てられてた……社畜で、価値なんかなくて……!
だから、あの人に選ばれたって、信じられない――っ!」
律の目から涙があふれ、膝が崩れる。
強まる負の波動。空間が揺らぎ、魔力の流れが逆流する。
「だめだ……このままじゃ、暴走する……!」
カイが結界を張ろうとするが、その一歩手前で――
「……律」
重厚な扉を打ち破って、ゼルが現れた。
「律、お前は……我を信じられないのか?」
その声に、律の身体がわずかに震える。
「……信じたい……でも、怖いんだ。
あなたの“番”って言われても……僕なんか、本当にふさわしいのか、って……」
ゼルはゆっくりと、暴走する魔力の渦の中に踏み込む。
そして――
「ならば、信じるまで抱きしめる」
ずぶ濡れの魔力の中、ゼルは律を強く抱きしめた。
その腕の中で、律の感応魔力が静かに収束していく。
「お前は……自分を捨ててでも、人を想える。
その優しさが、痛みが、我にとっての“救い”なんだ。
他の誰でもない――律、お前だから、我は“番”として選んだ」
(ほんとうに、選ばれたんだ……ちゃんと、僕が)
ゼルの言葉が、魔力よりも強く、律の核に染み渡る。
ゆっくりと、感情の波が凪いでいく。
魔力が沈静化し、空間の乱れが止まった。
――静寂。
律は、ゼルの胸に顔を埋めながら、絞るように囁いた。
「……ごめん。怖かった。でも……やっぱり、あなたの隣にいたい。
今度こそ、ちゃんと“番”として……愛されたい」
「……番として、愛する。何度でも誓う。
だがそれ以上に――“律”という名の男を、我は愛している」
その夜、律はゼルの部屋で、ゆっくりと抱かれた。
快楽ではなく、愛の温度で。
「ん……ゼルさん……あ、そこ……っ、好き……」
「可愛い声を出す。……“番”としてではなく、“恋人”として、もっと甘やかしてやろう」
「んっ、あ……だめ、そんな奥……!」
快感の奥にある、幸福の震え。
ふたりの絆は、“魔力”ではなく“想い”で結び直された。
◆
翌日、王城。
「竜王陛下とその番、瀬名律殿の絆は――揺るぎなし。
今後、我々は“ふたりの在り方”を尊重することとする」
王宮の正式な布告が発表された。
カイ・ルグランはそれを聞きながら、小さく微笑んだ。
「ようやく、“番”の意味が定まったか……。
あの方は、確かに――陛下に必要な“光”だ」
---
🐉次章予告:第六章「光の中の影、再び交差する運命」
ゼルとの絆が深まり、王宮内での信頼を得た律。
だがその直後、“律の前世”に関わる謎が浮上する。
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