悪役令嬢に転生して悔いのない人生を送ります

大商店での労働

大商店では、多くの若い女性が働いていた。
表の華やかさと比べて、裏側は過酷だった。
「私が来なくなったら、精神的に病んだと思ってください」
と、オリビアに告げる者もいたくらいだ。

オリビアは食堂で毎日、穀物の粉を練って細くした物を食べた。
それが一番安かったからだ。
それに、労働で疲れた精神を休めるために、なるべく考えたくなかったからだ。
それは、すばやく食べられる物だった。
ゆえに、休憩時間を長くとれた。

オリビアは、大商店での労働の契約期間を終えた。
「続けて働きませんか？」
オリビアは誘われたが、もうたくさんだと思い断った。
オリビアと同様の立場で働く女性たちは、客のこない時間に労働に関する不平不満を、いつもひそかに愚痴っていた。
オリビアは、それらの表面化することのない愚痴を、契約を終える時、文章にしたためて提出した。

その大商店への、率直な文書のせいだろう。
契約終了手続きの時、オリビアへの大商店の態度は怒りに満ちていた。
改善提案したのに、酷いわね。
でも別にかまわないわ。二度と働かないのだし。私は悪役令嬢ですもの。
とオリビアは思った。

「ともかくも、これだけの資金があれば、脱出できるわ」
しかし、どうやったら魔王に気づかれず脱出できるのかが問題だった。
しかも、うまく脱出できたとしても魔王が追いかけてくる危険性があった。