潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第三章

【3章】〈1節〉マッチ売りの潤 1 19世紀欧州(妄想)

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僕の赤革の手枷をされた手首と、潤の黒革の手枷をされた手首が、僕らの視界でクロスした。

囚われの虜囚たちの儚い夢。

ひと時の夢。

幻想。

消えやすい、泡沫の想い。

継続しがたい断片的な感情。

熱しやすく冷めやすい炎。

それゆえに、消えてはマッチを擦り、消えてはマッチをすり……。

狂ったマッチ売りの少女は潤だった。

窓の棧に粉雪が積もっている。

最初はガラス部分に付くと溶けていた雪も、棧に降り積もっていくにつれて冷えていく、窓ガラスを埋めていく。

赤い、フードつきのマントを被り、厚ぼったい地味なチャコールグレーのウールのスカートに、外側は防水のオイルレザー内側はモコモコのウールの膝まであるブーツを履いている。

黒く不恰好な男物のブーツだ。

ここは19世紀欧州の街角。

白い雪が肩にかかる。

冷えてきた。

雪は横殴りになって、昼の間から、もとよりどんより重く、厚く雪雲のたれこめていた空は夕刻になったのかさらに暗くなってきた。

意識が遠のきそうになる。

今朝から何も食べていない。

夕べお湯のような、腐った野菜の端切れの入ったスープーーー潤はそれを肉のスープと呼んでいた、肉は入っていないけど、スープは肉の匂いがしたし、肉の脂が浮いていたからーーーと、かたいパンの端切れをかじっただけだ。






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