潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第三章

マッチ売りの潤 4

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甘い情熱。

潤は、男の手を取った。

男は潤の手を引いて、雪の積もる道を大股で歩き出した。

潤は遅れをとらないように、スカートとダボダボのブーツで、必死について行った。

「黒い氷に気をつけろ」

と男は、つるっと滑りそうになった、潤の腕をとっさにぐいと引いて、叱るように注意した。

潤は男を見上げた。

「黒いところは、雪が溶けて濡れているように見えるが、石畳みが黒く凍っているんだ」

寒さのせいか少し赤ら顔になった男の顔から、白く凍りそうな息が吐かれた。

男は潤の肩を腕で抱いた。

「もう少しだから、気をつけて歩け」

男は髭面の顔を、潤からそらして、ぶっきらぼうに言った。

道は歩道も車道の境目も分かたず真っ白だ。

「溝にはまるな。あんまり端を歩くと溝に落ちる」

男は潤の腰を抱いて、ぐいと自分の方に引き寄せた。

男の息は少し乱れていた。

まるでセックスの時のように、と潤は思った。

早く抱かれたい。

そして食事にありつきたい。

あたたかい湯気のでた具のたくさん入ったスープをすすりたい。

ほくほくした黄色いジャガイモ。

オレンジ色の人参の香り。

煮込んだ緑のキャベツの甘さ。

願わくば鶏肉の端切れが入っていますように。

痛くてベタベタして気持ちの悪いセックスの後の嬉しいご褒美。

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