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第十五章 晩餐にて
通過儀礼の名のもとに
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「あぁぁ……」
キッチンから、うめき声が聞こえてきた。
瑶と潤は、駆けよって戸のすき間から、覗いた。譲が、おじ様に抱かれていた。譲は、もう完全に自分から腰を振っていた。
「ああ……」
壁に手をついた譲が苦しげにうめいた。
「いいか?」
息があがって、かすれたような、おじ様の声が言った。
「もっと……」
譲が、泣きそうな声で、懇願した。
瑶は、潤の耳にささやいた。
「おじ様が譲さんを、地下室に鎖でつないだって、ほんとかな?」
潤は、軽べつしたように聞いた。
「瑶は、そんなことに興奮してるんだ?」
瑶は答えた。
「うん。潤だって興奮してるじゃない……」
瑶は、潤の熱く火照った身体を抱きしめた。砂漠のような熱い起伏。粘膜が、サバンナの動物が集まる水場のように、うるおっていた。
「興奮なんてするもんか」
潤は、拒否するように言った。瑶は、軽い失望をおぼえて潤の身体を放した。潤は、
「お腹すいた」
と言って、テーブルに戻った。潤は、犬であることをやめたらしく、床に置いてあったお皿をテーブルに戻して、人間のようにスプーンで食べ始めた。サラダもパンも食べ出した。
瑶も席に戻った。瑶が、溶けそうになった野菜とシャンピニオンのゼリー寄せを食べていると、潤がため息をついた。
「ああ、ショック。叔父様が譲と地下室を使ったなんて。地下室は、他の誰にも使わせないって約束してたのに。もう叔父様なんて知らない」
潤はそう言うと、やけになったように、またパンに手をのばした。
瑶は、晩餐の続きが気になり、席を立ってキッチンのようすを再び戸のすき間から、今度は一人で覗いた。
おじ様と譲が、会話していた。
「こんなこと……」
と譲がためらうように言えば、おじ様が、
「これは通過儀礼さ。これからは出世の武器に使うんだな」
などと、長男の譲にむかって、罪悪感もなさげに勝ち誇ったように余裕の表情で答えていた。
「上司とか取り引き先に抱かれろってこと?」
譲は今は大学生だが、大学を卒業したら就職する予定らしい。
「政財界のドンにでも、抱かれてほしいね。これで、お前は、どんな相手でも、喜ばせられるようになったわけだ。あまり開発されすぎていても、相手の所有欲を満たせないから、このくらいにしておこう」
叔父様が、覗いている瑶に気づいて、
「おいで」
と言って手招きした。
瑶は、戸を開けて、ふらふらと二人のそばに近寄った。獲物の匂いを嗅ぎつけた獅子のような獰猛な四つの目が、ひたと瑶に向けられた。二人の手が伸びて、瑶は捕まえられた。
おじ様と譲の唇が、両側から瑶のほほに触れた。
「あっ」
「かわいいよ、ヨウくん」
おじ様と譲の舌が、瑶の身体を這った。
「ああん……」
瑶は、隣室のダイニングで食事中の潤に聞こえそうな声で喘いでしまった。
「さすが潤の友達だ。かわいいのにエッチな子だね」
おじ様がけしかけるように言えば、譲も、瑶の脚を広げさせて、ももの内側を舐めてきた。
「やあっ、あっ」
おじ様が指にオイルをたらした。ぬるっとしたおじ様の指が、瑶の肛門に入ってきた。
「はっ、あっ……」
瑶は、もがいた。
「気持ちいい?」
「あぁん……」
瑶は、喘ぐしかできなかった。
「この子は、よその子だから、責任が持てない。この辺で、やめておこう」
おじ様が言って、瑶のうしろから指を抜いた。
「潤も、自分で開発したいからヨウ君にさわるなって言ってたよ。俺のものだとかなんとか」
譲が告げると、おじ様は笑って、
「潤に、してもらいなさい」
と、瑶を解放した。
「シャワーを浴びて来るよ」
と、おじ様も、キッチンを出て行った。
中途半端にされて、うずうずする気持ちと、ほっとした気持ちが瑶の中で同居していた。ここで譲にねだれば続きをしてもらえるだろうけど、瑶には、もっと気になる続きがあった。
「食事の続きってあるんですか?」
と瑶は譲に聞いた。
「あっ、ごめんね。お腹すいたでしょ?」
譲が聞いた。
「潤なんか、すごい勢いでパン食べてますよ」
「あいつ胃が痛いとかいいだすから、とめといてよ」
譲は、自分の乱れた服を整えながら言った。
「やけ食いみたいですよ。譲さんが、おじ様とからんでたのがショックみたいで」
瑶は、落ち込んでいた潤を思い出して言った。譲は、きまり悪げに、
「気にすることないのに。単なる通過儀礼なんだから」
譲は、おじ様が言ったそのままを言った。譲は背も高くたくましくて強そうに見えるけれど、大洗家では、その譲でさえ、おじ様の言いなりなのだろうか。
「潤が、そんなにショック受けてる、か。俺がしたくてこうなったわけじゃないんだけどな」
譲は、石鹸で入念に手を洗いながら責任逃れのように言いわけした。
「じゃあ、潤に、そう言ってあげてください。僕からも潤に伝えますけど」
瑶が言うと、
「機会があったらね」
と譲は、手を水で洗い流しながら答えた。
キッチンから、うめき声が聞こえてきた。
瑶と潤は、駆けよって戸のすき間から、覗いた。譲が、おじ様に抱かれていた。譲は、もう完全に自分から腰を振っていた。
「ああ……」
壁に手をついた譲が苦しげにうめいた。
「いいか?」
息があがって、かすれたような、おじ様の声が言った。
「もっと……」
譲が、泣きそうな声で、懇願した。
瑶は、潤の耳にささやいた。
「おじ様が譲さんを、地下室に鎖でつないだって、ほんとかな?」
潤は、軽べつしたように聞いた。
「瑶は、そんなことに興奮してるんだ?」
瑶は答えた。
「うん。潤だって興奮してるじゃない……」
瑶は、潤の熱く火照った身体を抱きしめた。砂漠のような熱い起伏。粘膜が、サバンナの動物が集まる水場のように、うるおっていた。
「興奮なんてするもんか」
潤は、拒否するように言った。瑶は、軽い失望をおぼえて潤の身体を放した。潤は、
「お腹すいた」
と言って、テーブルに戻った。潤は、犬であることをやめたらしく、床に置いてあったお皿をテーブルに戻して、人間のようにスプーンで食べ始めた。サラダもパンも食べ出した。
瑶も席に戻った。瑶が、溶けそうになった野菜とシャンピニオンのゼリー寄せを食べていると、潤がため息をついた。
「ああ、ショック。叔父様が譲と地下室を使ったなんて。地下室は、他の誰にも使わせないって約束してたのに。もう叔父様なんて知らない」
潤はそう言うと、やけになったように、またパンに手をのばした。
瑶は、晩餐の続きが気になり、席を立ってキッチンのようすを再び戸のすき間から、今度は一人で覗いた。
おじ様と譲が、会話していた。
「こんなこと……」
と譲がためらうように言えば、おじ様が、
「これは通過儀礼さ。これからは出世の武器に使うんだな」
などと、長男の譲にむかって、罪悪感もなさげに勝ち誇ったように余裕の表情で答えていた。
「上司とか取り引き先に抱かれろってこと?」
譲は今は大学生だが、大学を卒業したら就職する予定らしい。
「政財界のドンにでも、抱かれてほしいね。これで、お前は、どんな相手でも、喜ばせられるようになったわけだ。あまり開発されすぎていても、相手の所有欲を満たせないから、このくらいにしておこう」
叔父様が、覗いている瑶に気づいて、
「おいで」
と言って手招きした。
瑶は、戸を開けて、ふらふらと二人のそばに近寄った。獲物の匂いを嗅ぎつけた獅子のような獰猛な四つの目が、ひたと瑶に向けられた。二人の手が伸びて、瑶は捕まえられた。
おじ様と譲の唇が、両側から瑶のほほに触れた。
「あっ」
「かわいいよ、ヨウくん」
おじ様と譲の舌が、瑶の身体を這った。
「ああん……」
瑶は、隣室のダイニングで食事中の潤に聞こえそうな声で喘いでしまった。
「さすが潤の友達だ。かわいいのにエッチな子だね」
おじ様がけしかけるように言えば、譲も、瑶の脚を広げさせて、ももの内側を舐めてきた。
「やあっ、あっ」
おじ様が指にオイルをたらした。ぬるっとしたおじ様の指が、瑶の肛門に入ってきた。
「はっ、あっ……」
瑶は、もがいた。
「気持ちいい?」
「あぁん……」
瑶は、喘ぐしかできなかった。
「この子は、よその子だから、責任が持てない。この辺で、やめておこう」
おじ様が言って、瑶のうしろから指を抜いた。
「潤も、自分で開発したいからヨウ君にさわるなって言ってたよ。俺のものだとかなんとか」
譲が告げると、おじ様は笑って、
「潤に、してもらいなさい」
と、瑶を解放した。
「シャワーを浴びて来るよ」
と、おじ様も、キッチンを出て行った。
中途半端にされて、うずうずする気持ちと、ほっとした気持ちが瑶の中で同居していた。ここで譲にねだれば続きをしてもらえるだろうけど、瑶には、もっと気になる続きがあった。
「食事の続きってあるんですか?」
と瑶は譲に聞いた。
「あっ、ごめんね。お腹すいたでしょ?」
譲が聞いた。
「潤なんか、すごい勢いでパン食べてますよ」
「あいつ胃が痛いとかいいだすから、とめといてよ」
譲は、自分の乱れた服を整えながら言った。
「やけ食いみたいですよ。譲さんが、おじ様とからんでたのがショックみたいで」
瑶は、落ち込んでいた潤を思い出して言った。譲は、きまり悪げに、
「気にすることないのに。単なる通過儀礼なんだから」
譲は、おじ様が言ったそのままを言った。譲は背も高くたくましくて強そうに見えるけれど、大洗家では、その譲でさえ、おじ様の言いなりなのだろうか。
「潤が、そんなにショック受けてる、か。俺がしたくてこうなったわけじゃないんだけどな」
譲は、石鹸で入念に手を洗いながら責任逃れのように言いわけした。
「じゃあ、潤に、そう言ってあげてください。僕からも潤に伝えますけど」
瑶が言うと、
「機会があったらね」
と譲は、手を水で洗い流しながら答えた。
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