嘘吐きは復讐の引き金

レティシア

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第2章 宵闇

無情の結氷

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誰も知らずに自分や他の物を憎んで恨んだ回数は計り知れないが、それも無意味だった。どれほど憤怒や嫉妬、後悔に怨恨を積み重ねてもなお、心の底から湧き出る言い表せない感情を消す事が出来なかった。何もかも消えていった。私の思い出も、喜びも、ありふれた日常までも。全てが歪んで狂っていった。しかしそれでも気にならなかった。かつて居た場所に帰る事、目的を果たす事さえ出来ればそれで良かった。それは一番難しい事と言うのは承知の上だ。この感情が無ければ大人しく何も考えずに指示に従う事も、現実から目を逸らして一日一日を誤魔化す事だって容易かった。でもこれだけは譲れない。誰に邪魔されようとこの任務だけは果たす。絶対にしなければならない物だ。愛に飢えている訳でもない。はたまた金に飢えたりしてたり、情報に不自由している訳でもない。ただ、無限に融けない氷の中に突っ込まれた事が、この絶境に疎開させられた事が何に代えても許せないだけだ。そしてこれを愛と呼ぶ彼らに抗えない妹を守る、その覚悟だった。ある日に彼らは言った。「そんなにここを馬鹿にしないでくれ」と。でも違う。かつて彼らはここで生まれて育った。だがそれも時が経てば変わるのだ。もう彼らが見ていた虚構は終わった。ここは無情の結氷で希望を閉ざされたのだ。それに気づかないふりして呑気な事をほざいてる程度の人間に自分の意志は曲げられない。



救われるのなら救われたかった。普通に友人やそこらの他人と同じように生きていたかった。それだと永遠に閉じ込められたままだと言う事は知っていた。だから私はそれを選べなかった。いやまだどちらを両立することは出来たかもしれない。時間さえあれば...時間はもうない。妹が殺される。愛の手で絞め殺される。本人達すらも気付けぬ行き過ぎた愛に殺される。時間なんてある訳ない。成功率を捨ててもいいなら今からでも行動しないといけないが、失敗したら私も妹も殺される。助けてなんて言えない。早とちりと言われる。何かを救う為には犠牲は付き物だ。誰も知りやしない。私がすることは犯罪すれすれ。誰も手は差し伸べない。たかが高校生二人死んでも隠蔽なんて簡単だ。子ども二人がいなくなったって誰も気づきはしない。ありふれたサーカスとして処理されるだけ。
救えやしない。これは消えかけの一人の独り言。「希望をください . . . _ _ _ . . . 
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