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【Name:眞守 鈴子 探究者ランクC 所属:月夜見】
表面にはシャンパンゴールドの文字でそう書かれている。
カードは光沢のないマッドな黒でカードの左下に満月に雲がかかった和風なマークがエンボス加工で施されている。
「なんか探究者になっちゃった…」
自室のベッドに横になりながらカードを見る。
「なんかよくわからないまま探求者になってクランに所属してしまった…」
一応『試験も何も受けないで探求者になるのは…!』と言ったのだけど、マンティコアを軽く倒せる子に試験なんて何を受けさせれば良いんだと言われて撃沈した。
『魔術が使えて、戦闘系スキルもいくつか持ってて、挙句の果てにレエアスキルも色々と持ってる…。海外勢にだって君ほどの能力者は居ないよ?』というのが白尾さんの言葉だった。
はじめは祖父母が残してくれたこの家を守りたい一心で頑張ってたんだけどなぁ…と思いながら窓を開けて庭を見る。
今うちのダンジョンには田淵さんたちが挑んでいる。
『3階層の階段を見つけたら戻ってきます』と言って入っていったのが2時間前で何事もなければそろそろ出てくると思うのだけれど…。
初めは2階層と言っていたけど2階層へはわりとすぐですよと言ったらさらに下となったようだ。
4階層まではスライムしか出てこないし心配のしようもないか――と思っていたら出てきた。
中に入っていたのはあの時マンティコアに挑んでいた田淵さんと横田さんと三橋さんだ。
田淵さんはダンジョン攻略第3部隊のリーダーさんで、横田さんと三橋さんはその部下。
明日以降にもう3人追加されて、3軒隣にある空き家に移り住むのだそうだ。
このダンジョン云々で老いた親を心配して呼び寄せる人が増えていて、近所でも今空き家が目立っている。
……その空き家を数件即お買い上げしてしまった会長さんはすごいし、良さそうな物件をリストアップしておきましたと無表情で言ってのけた桜子さんは格好良かった。
「でも…護衛か…」
どうやら私のことはすでに色々と漏れ出ているらしく、私と接触を取ろうとしている人がいるらしいのだ。
…というか今日送ってもらった時に既に居て、田淵さんが威圧しながらお帰り願っていた。
『私は政治家の○○先生の秘書で――』とか言ってたけど知りません。
横田さんが素早く何処かに電話していたのでその政治家さんはどうにかなってしまうかもしれないけれど。
「武力はあるけど、そっちの方面はからっきしだからなぁ…」
弁が立ちそうなのは桜子さんや寺門さん辺りだろうか?
契約魔法のスクロールを渡したら最強かもしれない。
「…アホみたいにあるスクロール、クランに寄付したほうが良いよねぇ…」
実は調書(?)の時に私が今まで得たドロップ品のことはマンティコアと戦った時に使った武器以外に何も聞かれなかったのだ。
検査入院のときに政府の人間だと名乗る人がドロップ品を提出しなさい!とか言いに来たけれど、その人達も田淵さんや白尾さんたちに引きづられてどこかに消えていったしなぁ…。
「桜子さんなら悪い使い方はしないだろうから桜子さんに渡そう」
そのまま一通りのスクロールと使うことがない武器も渡してしまおうかとリビングに向かう。
「おや?小腹でも空きましたか?」
「あ、いえ。手持ちのスクロールを一通り出してクランに寄付しようかと…。でも数が多いので一回出してから魔法の鞄に詰め直そうかと」
「あ、あるんですね、魔法の鞄」
私の言葉に苦笑するのは横田さんだ。
他の二人は拠点となる3軒お隣の家で使う布団や食器を買いに行ったようだ。
ダンジョンができる前だったら自転車で10分ほどのところに私が働いていたホームセンターがあったんだけどねぇ…。
「見てても?」
「大丈夫ですよ。むしろ使いたいものあったら言ってください。護衛してくれる人を強くするのも一つの手ですし」
「あはは、じゃあ見させてもらいますね」
横田さんは私から少しだけ離れたところに座る。
私はまず魔法の鞄を取り出して横に置いておく。
「それが?」
「はい。小サイズのウエストポーチ型で容量は4畳くらいの空間らしいです。これは重量もなくなるらしいですよ」
「不思議ですね~」
収納の道具も今のところ日本では出ていないしね。
海外ではチラホラと出ているらしいけど、それでも10に満たない数だったはず。
…私の手元にその半分ほどの数あるんですがね…。
「では、まずは戦闘系スキルを…」
言いながら次々とスクロールを出していく。
スクロールには付箋が貼っており、それになんの能力のスクロールなのかが既に書かれている状態だ。
どのスクロールも外見は一緒なのでいちいち鑑定しないとなんのスクロールなのかわからないのが困る。
「体術、身体強化、剣術、槍術、斧術、棒術…」
「結構あるんですねぇ」
ちょっと呑気に時折感心しながら声を上げた横田さん、次から次にスクロールを出す私を見て徐々にその顔をこわばらせ始める。
「眞守さん…?」
「弓術、長弓術、双剣術、大剣術に…鞭とかもあったんだ…」
結構あるので何があるのかもう自分でも覚えていなかった。
「…戦闘系スキルってまだあるのかな?」
「符術、拳闘術、刀術ともうちょっとありますね」
「そんなにあるとは思わなかったよ…」
ちょっと遠い目をしながら言う横田さん。
それから少しして戦闘術スキルのスクロールは終わった。
「では次は魔術関連ですね」
「魔術のスクロールは滅多にでないものなんだけどなぁ…」
「基本属性の火、水、風、土は元より光、闇、無、数は少ないけど聖と雷、氷、それから空間、召喚術と…」
「私の風属性のスクロール、二ヶ月かかってやっと得たスクロールだったんですけどねぇ…」
しょぼんとしてしまう横田さん。
「…なんか、ドロップ運とか宝箱運がめちゃくちゃ良くなるボーナスがありまして…」
言いながら普通のスキルのスクロールを出し始める。
「気配察知、魔力感知、魔力操作、罠感知、罠解除、隠密、付与、念力、テイム…」
「テイム?!」
「あ、興味あります?」
横田さんの鼻息が荒い。
「そりゃあ憧れますよテイム能力!」
もふもふとかもふもふですよ!と怪しい手付きで力説された。
「…でも王道だとあの踏んだだけで死んじゃうスライムが一番手なんですよ…。熟練度上げないと多分もふもふな魔物テイムできない…」
「ウルフ系がテイムできるのはいくつですか…?」
「…多分3あたり?」
「ガッデム!!」
私の言葉に横田さんは両手を床に叩きつけた。
そんなにもふもふテイムしたかったんですか…と聞いたら、兄弟に動物アレルギー持ちが居て飼えなかったんです…と教えてくれた。
「高校卒業したらこの道に入ったので動物が飼えるわけもなくて…」
ははっと少し自分が興奮していたことが恥ずかしかったのか笑う。
「…使います?」
「…いや、こういう事は隊長やクランメンバーさん達と話し合わなければ…!」
「因みに、この間の異常湧きでテイムのスクロールが2本手に入ったので3名様までです!」
「欲しいです!!!」
他にあるのならばと横田さんは綺麗な土下座を見せてくれた。
「じゃあ確保しておきますね~」
言いながら先程出した魔法の鞄と違った形状の魔法の鞄(肩掛け)に入れておく。
「因みにそっちの容量は?」
「こっちも4畳ほどのお部屋くらいですね~」
「それでもすごいですよ」
なんだか完全に麻痺したらしい横田さんがスクロールをしまうのを手伝い始めてくれた。
「しっかりしろ横田。眞守さんのは異常だからな?」
「っは!」
買うものを買って帰ってきた田淵さんにそう言われて横田さんが我に帰ったのは拠点の家に戻ったあとのことだったらしい。
表面にはシャンパンゴールドの文字でそう書かれている。
カードは光沢のないマッドな黒でカードの左下に満月に雲がかかった和風なマークがエンボス加工で施されている。
「なんか探究者になっちゃった…」
自室のベッドに横になりながらカードを見る。
「なんかよくわからないまま探求者になってクランに所属してしまった…」
一応『試験も何も受けないで探求者になるのは…!』と言ったのだけど、マンティコアを軽く倒せる子に試験なんて何を受けさせれば良いんだと言われて撃沈した。
『魔術が使えて、戦闘系スキルもいくつか持ってて、挙句の果てにレエアスキルも色々と持ってる…。海外勢にだって君ほどの能力者は居ないよ?』というのが白尾さんの言葉だった。
はじめは祖父母が残してくれたこの家を守りたい一心で頑張ってたんだけどなぁ…と思いながら窓を開けて庭を見る。
今うちのダンジョンには田淵さんたちが挑んでいる。
『3階層の階段を見つけたら戻ってきます』と言って入っていったのが2時間前で何事もなければそろそろ出てくると思うのだけれど…。
初めは2階層と言っていたけど2階層へはわりとすぐですよと言ったらさらに下となったようだ。
4階層まではスライムしか出てこないし心配のしようもないか――と思っていたら出てきた。
中に入っていたのはあの時マンティコアに挑んでいた田淵さんと横田さんと三橋さんだ。
田淵さんはダンジョン攻略第3部隊のリーダーさんで、横田さんと三橋さんはその部下。
明日以降にもう3人追加されて、3軒隣にある空き家に移り住むのだそうだ。
このダンジョン云々で老いた親を心配して呼び寄せる人が増えていて、近所でも今空き家が目立っている。
……その空き家を数件即お買い上げしてしまった会長さんはすごいし、良さそうな物件をリストアップしておきましたと無表情で言ってのけた桜子さんは格好良かった。
「でも…護衛か…」
どうやら私のことはすでに色々と漏れ出ているらしく、私と接触を取ろうとしている人がいるらしいのだ。
…というか今日送ってもらった時に既に居て、田淵さんが威圧しながらお帰り願っていた。
『私は政治家の○○先生の秘書で――』とか言ってたけど知りません。
横田さんが素早く何処かに電話していたのでその政治家さんはどうにかなってしまうかもしれないけれど。
「武力はあるけど、そっちの方面はからっきしだからなぁ…」
弁が立ちそうなのは桜子さんや寺門さん辺りだろうか?
契約魔法のスクロールを渡したら最強かもしれない。
「…アホみたいにあるスクロール、クランに寄付したほうが良いよねぇ…」
実は調書(?)の時に私が今まで得たドロップ品のことはマンティコアと戦った時に使った武器以外に何も聞かれなかったのだ。
検査入院のときに政府の人間だと名乗る人がドロップ品を提出しなさい!とか言いに来たけれど、その人達も田淵さんや白尾さんたちに引きづられてどこかに消えていったしなぁ…。
「桜子さんなら悪い使い方はしないだろうから桜子さんに渡そう」
そのまま一通りのスクロールと使うことがない武器も渡してしまおうかとリビングに向かう。
「おや?小腹でも空きましたか?」
「あ、いえ。手持ちのスクロールを一通り出してクランに寄付しようかと…。でも数が多いので一回出してから魔法の鞄に詰め直そうかと」
「あ、あるんですね、魔法の鞄」
私の言葉に苦笑するのは横田さんだ。
他の二人は拠点となる3軒お隣の家で使う布団や食器を買いに行ったようだ。
ダンジョンができる前だったら自転車で10分ほどのところに私が働いていたホームセンターがあったんだけどねぇ…。
「見てても?」
「大丈夫ですよ。むしろ使いたいものあったら言ってください。護衛してくれる人を強くするのも一つの手ですし」
「あはは、じゃあ見させてもらいますね」
横田さんは私から少しだけ離れたところに座る。
私はまず魔法の鞄を取り出して横に置いておく。
「それが?」
「はい。小サイズのウエストポーチ型で容量は4畳くらいの空間らしいです。これは重量もなくなるらしいですよ」
「不思議ですね~」
収納の道具も今のところ日本では出ていないしね。
海外ではチラホラと出ているらしいけど、それでも10に満たない数だったはず。
…私の手元にその半分ほどの数あるんですがね…。
「では、まずは戦闘系スキルを…」
言いながら次々とスクロールを出していく。
スクロールには付箋が貼っており、それになんの能力のスクロールなのかが既に書かれている状態だ。
どのスクロールも外見は一緒なのでいちいち鑑定しないとなんのスクロールなのかわからないのが困る。
「体術、身体強化、剣術、槍術、斧術、棒術…」
「結構あるんですねぇ」
ちょっと呑気に時折感心しながら声を上げた横田さん、次から次にスクロールを出す私を見て徐々にその顔をこわばらせ始める。
「眞守さん…?」
「弓術、長弓術、双剣術、大剣術に…鞭とかもあったんだ…」
結構あるので何があるのかもう自分でも覚えていなかった。
「…戦闘系スキルってまだあるのかな?」
「符術、拳闘術、刀術ともうちょっとありますね」
「そんなにあるとは思わなかったよ…」
ちょっと遠い目をしながら言う横田さん。
それから少しして戦闘術スキルのスクロールは終わった。
「では次は魔術関連ですね」
「魔術のスクロールは滅多にでないものなんだけどなぁ…」
「基本属性の火、水、風、土は元より光、闇、無、数は少ないけど聖と雷、氷、それから空間、召喚術と…」
「私の風属性のスクロール、二ヶ月かかってやっと得たスクロールだったんですけどねぇ…」
しょぼんとしてしまう横田さん。
「…なんか、ドロップ運とか宝箱運がめちゃくちゃ良くなるボーナスがありまして…」
言いながら普通のスキルのスクロールを出し始める。
「気配察知、魔力感知、魔力操作、罠感知、罠解除、隠密、付与、念力、テイム…」
「テイム?!」
「あ、興味あります?」
横田さんの鼻息が荒い。
「そりゃあ憧れますよテイム能力!」
もふもふとかもふもふですよ!と怪しい手付きで力説された。
「…でも王道だとあの踏んだだけで死んじゃうスライムが一番手なんですよ…。熟練度上げないと多分もふもふな魔物テイムできない…」
「ウルフ系がテイムできるのはいくつですか…?」
「…多分3あたり?」
「ガッデム!!」
私の言葉に横田さんは両手を床に叩きつけた。
そんなにもふもふテイムしたかったんですか…と聞いたら、兄弟に動物アレルギー持ちが居て飼えなかったんです…と教えてくれた。
「高校卒業したらこの道に入ったので動物が飼えるわけもなくて…」
ははっと少し自分が興奮していたことが恥ずかしかったのか笑う。
「…使います?」
「…いや、こういう事は隊長やクランメンバーさん達と話し合わなければ…!」
「因みに、この間の異常湧きでテイムのスクロールが2本手に入ったので3名様までです!」
「欲しいです!!!」
他にあるのならばと横田さんは綺麗な土下座を見せてくれた。
「じゃあ確保しておきますね~」
言いながら先程出した魔法の鞄と違った形状の魔法の鞄(肩掛け)に入れておく。
「因みにそっちの容量は?」
「こっちも4畳ほどのお部屋くらいですね~」
「それでもすごいですよ」
なんだか完全に麻痺したらしい横田さんがスクロールをしまうのを手伝い始めてくれた。
「しっかりしろ横田。眞守さんのは異常だからな?」
「っは!」
買うものを買って帰ってきた田淵さんにそう言われて横田さんが我に帰ったのは拠点の家に戻ったあとのことだったらしい。
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