オメガバース(タイトル仮

小夜時雨

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学園生活

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 学園には徒歩で向かう。
小中高も一貫校なので、顔見知りばかりである。ただしオメガはそのバース特有の性質のせいで、アルファ、ベータクラスからも離されている。花園、とも言われているが、普通にアルファもベータも行き来ができるところに教室は置かれている。警備や監視カメラつきの安全設計だ。
 入学前から僕はオメガだと判明していたので、オメガクラスにいた。小学校からずっとクラスメイトとは同じで、他のオメガクラスとはまた別のきゃっきゃうふふなクラスともいえる。小さな頃からずっとそうだったから、だから、僕はずっと、この仲睦まじいオメガクラスにいるとばかり考えていたのだ。
 (でも……、これからは……)
 そう、親にもまだ伝えていないことを、学校側に告知しても果たして良いものか?
 (自分自身さえ、いまだに信じられずに驚いているというのに)
 頭の中が真っ白だ。今日はただの翌日でしかない。
 こう言う時、親友、とかいたら。
 思わずにいられないが、友達は同じオメガクラス。在籍しているクラスメイトと仲良しこよしだ。
 明るく、優しい彼らに自分の境遇を教えたところで、困惑させてしまうのは目に見えていた。
 なんせ、初めてのケースだ。ニュースにだって、そんなバース性が変化するなんてこと、今まで言われたことがない。いや、僕だけが知らないケースなのかもしれなかった。
 高級住宅地のど真ん中に位置する、このバース性にこだわらずに入園できる学園へ、生徒たちは吸い込まれるようにして流れ込んでいく。僕もまた、その一人。

 「おはよう、サギリ!」
 「あ、おはよう……」

 なんだ元気ないなぁ、なんて言われつつ、僕はオメガらしく真ん丸な瞳を瞬かせる同級生に、笑いかけた。

 


 重たい足取りをどうにか進ませ、僕は授業を受ける。
授業の合間の休憩時間や移動時間も騒がしい花園クラスの隙間で、僕はそっと嘆息する。
 (……あと、数時間で終わる)
 カバンから取り出したスマホには時刻。
 再び、僕は名前を出した。
 婚約者の名を。

 「……レイ……」

 (僕は、君の婚約者には、なれないかも……、
  ううん、なれない……。
  この婚約は……)
そこから先は考えたくなくて、ぎゅっと両目をつむる。
 



 (心が……。
  ああ、心臓が、痛い。息苦しい)
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